剣呑剣呑。最近当ブログでよく使っている言葉ですが、実際にそう感じさせるニュースが次々に出てくるのですから仕方ありません。
例えば香港紙『明報』電子版(2007/01/22)の記事。
「新疆の青少年が分裂・破壊活動に関与している」
という見出しを掲げられたら読まずにはいられないでしょう。華僑向けの中共系通信社・中国新聞社が配信した記事です。……のっけから、
「敵対勢力が新疆の青少年を分裂・破壊活動に参与するようそそのかしている形跡が明らかだ。専門家はこの傾向を抑制するよう呼びかけている」
といきなり本題に入っています。ただ記事自体は新疆ウイグル自治区で青少年犯罪が増加傾向にあるという内容です。『新疆日報』の報道によると、同自治区における青少年犯罪者数が全体に占める割合はは2000年の14.2%から昨年(2005年)には19.5%へと増加。特に新疆籍の「流浪児童」による犯罪件数は増加の一途をたどり、2005年は2000年の2倍に達したそうです。
「流浪児童」がいて、その犯罪が増加しつつあるということ自体が新疆ウイグル自治区の社会状況の悪化を物語っているといえますが、この記事はそれとは別に、
「一方で注目に値するのは、ここ数年来、敵対勢力が目標を青少年へと移し、一部の青少年を分裂・破壊活動に参加するようそそのかしていることだ」
とはっきりと指摘しています。だから対策を急ぎ講じなければならない、という専門家の声でこの記事は締めくくられているのですが、同自治区におけるウイグル人の若年層が、「注目に値する」ほど政治的に尖鋭化・過激化しているという事実は、わざわざ言及しているだけに、実際には記事が伝える以上の深刻な状況が広がりつつあるのだと思います。
だいたい若年層が「分裂・破壊活動」に関与しているということは、それだけ中共政権にとって見過ごせない事件が新疆で頻発している、ということでしょう。それらはいちいち報道されないものの、こういう年間統計レポートで垣間見えてしまうといったところです。重要なシグナルと考えていいと思います。
●『明報』電子版(2007/01/22/15:35)
http://hk.news.yahoo.com/070122/12/20ejy.html
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それから1980年代に保守派の重鎮として慣らした薄一波が先日死去し、22日に荼毘に付されました。胡錦涛や江沢民をはじめ、党中央の最高意思決定機関である政治局常務委員やそれに準じる政治局委員がこぞって参列したようですが、お約束の通り、政治局常務委員・黄菊とすでに政治局委員の職務停止処分を受けている陳良宇・前上海党委員会書記の名前はありませんでした。
個人的には懐かしい名前が並んでいました。薄一波もそうなのですが、やはり保守派バリバリのトウ力群、そして李鵬、喬石、劉華清、李鉄映、楊白氷、田紀雲、胡啓立……といったあたりは、学生時代に大学図書館で毎日のように読みふけっていた香港の政論誌『九十年代』『争鳴』や反体制組織・中国民聯の『中国之春』、そして台湾の『中共研究』などにしばしば登場した政治家です。
そして葉選平、これは四人組逮捕で活躍した葉剣英将軍の息子で、1990年代初期の広東省のボスでしたね。……そう、当時は広東省が独立王国然としていて、中央に逆らったり、経済特区として中央に奪われてしまった深セン市をイジメていたりしたものです。
●「新華網」(2007/01/21/18:14)
http://news.xinhuanet.com/politics/2007-01/21/content_5633181.htm
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さて本題。先日中国の2006年流行語大賞みたいなものが発表されて、「和諧社会」「社会主義栄辱観」なんて言葉が選ばれていたようですが、私にとっては2005年に出た言葉ながら、未だに印象的なものがあります。ひとつは時折紹介していますが、胡錦涛・国家主席が2005年9月の「反ファシスト闘争何たら60周年記念式典」における重要演説をはじめ、しばしば口にしていた、
「落後就要挨打」(立ち後れれば喰いものにされる)
という胡錦涛慣用句です。「立ち後れれば喰いものにされる」とは19世紀から20世紀半ばに至る、列強各国から散々痛い目に遭わされたことに対する教訓でしょう。ただそれをこういう表現で、21世紀の現在に口にするというのは、明らかにある種の野心を伴うものです。
簡単にいえば、
「今度はこっちがやる番だ」
ということです。こういうスタンスで一党独裁政権でしかも軍拡路線まっしぐらなんですから、中国脅威論が台頭するのも当然といえるかと思います。
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ただ「今度はこっちがやる番だ」といっても19世紀のようなあからさまなことができる時代ではありませんから、中共なりに洗練された形でそれをやろうといったところでしょう。中国語の定着と中共政権のイメージアップを同時に狙った「孔子学院」を世界各国で100カ所以上設立しているのはその一端で、なるほどソフィスティケートされたやり口です。
入植という言葉がありますが、親中派養成機関である「孔子学院」をベースに各国で親中派を育成する一方、そうした国々に中国人をどんどん入植させてしまうのです。これは日本でいえば社民党や共産党のような中共が共闘すべき親中勢力が政界ですっかり退潮したことに対する新たな一手。日本でも重視すべき問題ですが、特にアフリカやロシアへの働きかけが余りに露骨なので、欧州から「新植民地主義だ」という声があがるのも無理からぬところです。
でも所詮は「銃口から政権が生まれる」という言葉を生んだ野蛮で民度の低い政権ですから、台湾総統選挙に合わせた軍事演習やミサイル試射を行ったり、「反国家分裂法」の制定、そして先日のミサイルによる衛星破壊実験のようなことをやって地金が出てしまいます。
「今度はこっちがやる番だ」を前世紀的思考と方法論で押し通そうという勢力がいるのでしょう。衛星破壊実験における中共系メディアの奇妙な足並みの乱れ=中共上層部内の意見不統一はそれを反映したものであり、乱暴な真似を辞さない向きも一定の勢力を保持しているという点で注視すべきです。
さらに勘繰れば、中共上層部でそういう強硬派を後援することで胡錦涛の足を引っ張ろうとする連中がいるのかも知れません。上海閥を裏切り、その撲滅に大いに働いた曽慶紅・国家副主席が武功の証として胡錦涛に国家主席の座を譲るよう求めているという報道が香港の観測筋から出ていましたが、単純な強硬派の暴走ではなく、あるいはそういう権力闘争めいた背景があるかも知れない、ということです。
ちなみに、靖国問題への容喙や中共史観の押しつけ、東シナ海ガス田紛争や2005年春の反日騒動も「今度はこっちがやる番だ」に含まれていいでしょう。それ以前に舐められているようでもあります。そういう所業を放置して、中共の言いなりになってペコペコしてきたに等しい従来型(小泉政権以前)の日本政府にも責任があります。
……あれ?本題と言いつつ話の枕でここまで書いてしまったような気がしないでもありません(笑)。
(「下」に続く)
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