たびたびここで書いていますが、私は平素完全夜型生活でして、昼間は寝るものと決まっております。
なぜ夜にしか仕事をしないのかといえば、仕事仲間である「香港チーム」も「台湾チーム」も夜にしか仕事をしてくれないからです。正午近くに電話をかけると、眠そうな声で応答してきます。前夜から働いて泊まり込んでいる奴らです。ええ、みんな寝袋持参で(常識)。
だから仕方なく私も連中に合わせているのですが、日本サイドは当然ながら昼間に仕事をします。それでも午前11時出勤のだらけた業界なのですが、打ち合わせなどで人と会ったりするときは昼間(午後)ですから、私は徹夜同然になります。実に理不尽です。
その代わり、そういう用件で飯田橋や市ヶ谷、青山や神保町あたりに出ると、帰途に靖国神社へ立ち寄ることができます。靖国神社、実は拙宅から地下鉄ですぐなのですが、こういう機会でもないと、あとは初詣やお花見といったイベントにしか来る機会がありません。だいたい昼間は寝ていますし。
立ち寄るときは、まず参拝してから遊就館で零戦を眺めつつ海軍コーヒーや海軍カレー、と私には決まった型があります。悦楽の時間であります。
――――
私の配偶者は香港人です。仕事を持ってはいますが、時間の融通がききます。それで私が昼間に出かけると、きまってどこかで合流して、一緒に靖国神社へ行きます。
配偶者も靖国神社が好きだと申しております。花より団子、つまり出店に猿回し……というのもありますが、都心なのに公園のように緑に包まれていて、散歩できるので癒されるとのことです。
言われてみれば確かにそうですね。春は桜、夏は蝉時雨、秋はイチョウの葉の色が変わっていくのを楽しんで、冬はあの冴え冴えとした青空。都心で四季を感じられる場所は他にもあるでしょうが、「零戦+海軍コーヒー」というオプションまでついてくるところは靖国神社しかありません(笑)。
ちなみに、私は配偶者に参拝を強要していません。参拝するときもあれば、参拝せずに私が参拝するのを眺めていたりします。ひそかに観察していると、どうも節目節目には参拝しているようです。初詣はもちろんですが、昨年配偶者が軽い手術をすることになったとき、私がお守りを買ってきて配偶者の手に握らせて、
「お前には日本がついているから、大丈夫だ」
と訳のわからないことを言って聞かせて恩に着せたのですが、配偶者も訳がわからないまま安心していたようです。それで全快したときに、
「ありがとうを言いに行くから」
といって参拝していました。あとは香港に里帰りするときも前後に参拝しています。
「香港に帰るから、挨拶」
「日本に帰ってきたから、挨拶」
だそうです。私も小さいころ、夏休みや冬休みで親の実家に行くと、まず仏壇でお線香をあげて手を合わせて挨拶して、帰るときもそのようにしていました。従兄弟たちもそうしていましたし、ごく自然な習慣でした。配偶者の「挨拶」参拝も、そういうものなのかなあ、と考えたりします。
――――
どうもチナヲチから外れて雑談モードですが、例えば反日サイトや中国国内メディアの大手サイト、例えば「新華網」(新華社)、「人民網」(人民日報)、それに大手ポータルの「新浪網」(sina)や「捜狐」(sohu)などで靖国関連のニュースが出ると、よく使われる写真があります。いちばん多いのは、小泉首相が和服姿で参拝するカットでしょうか。
あと「日本の右翼は軍国主義の復活を目指している」といったキャプションを伴って、軍服姿のお爺さんたちが整列している写真などもよく見かけます。あれは8月15日の風景なのでしょうか(私はその日に靖国神社へ行ったことがないのでわかりません)。これは反日サイトでは常用されていて、「新華網」や「人民網」などでは特集記事の際に使われたりします。
正直に申し上げます。あの写真、最初は、なんだかなー、と思っていました。
若い人が軍服姿でいる写真には「コスプレかいっ」と内心ツッコミを入れていたのですが、まあ趣味や信条は自由だし違法性もないのだからいいだろうと。
でも80歳前後であろうお爺さんたちが軍服姿で整列している写真、さすがにあれを見てコスプレとは思いませんでしたが、どこか馴染めないもの、要するに「なんだかなー」という違和感を抱いていたのも事実です。
浅慮でした。
――――
この間、配偶者と「みたままつり」に行ったとき、献灯をひとつひとつ見て歩きました。有名人のものもありますし、普段は市井の一隅で暮らしているであろう人のものもあります。
その中に、献灯いっぱいを闊達な文字で埋めているものがありました。読んでみますと、戦死した戦友たちへのメッセージなのです。
「自分は不覚にも生き残ってしまい、今では孫までできて、老いさばらえてしまった、みんなに合わす顔がない、申し訳ない」
……詳しい文意は忘れてしまいましたが、そういう趣旨だったかと思います。文字も闊達なら語り口も飄々としたものでしたが、それだけに胸を打たれる内容でした。様々な献灯が並んだ中で、私にとってはいちばん印象的なものでした。
それで、ようやくわかったのです。お爺さんたちがなぜ軍服姿なのかということが、愚鈍な私にも理解できました。
お爺さんたちには、たぶんあれが正装なんですね。私などとは違って、お爺さんたちにとって靖国神社は、戦没した仲間たちに向き合う場所なのでしょう。それに際して、あの服装こそが正装であり、礼服であり、いわばタキシードのようなものなのだと。
もちろん、お爺さんたちみんながみんな軍服を着て参拝する訳ではないでしょうが、「なんだかなー」とは、浅慮でした。
――――
翻って中国をみるに、「新華論壇」や反日サイトの掲示板などで、
「もしおれが日本人だったら必ず靖国神社に参拝する。国のために命を捧げた英雄に感謝の意を表すのは当然のことだ」
という意見がしばしば出てくるのは可哀想な気がします。中国には靖国神社に相当するものがありません。社会主義を標榜している以上、神聖的なオブジェは御法度なのでしょうか。烈士墓所のようなものはありますが、つまりはお墓が並んでいるだけで、象徴的な場所、という訳ではありません。
記念碑のようなものも各都市にありますけど、全中国を代表した場所なら、やっぱり天安門広場の人民英雄記念碑でしょうか。でも毛沢東(充電中)にはわざわざ記念堂を建ててやっているのに、その他一同は石碑で済ますというのも可哀想ですね。
しかも現在の社会状況に照らせば、厳かに献花することすら難しいかも知れません。献花しようとすれば、恐らく厳戒中の警官や私服警官がデモか陳情者のアピールかとすっ飛んできて、地面にねじ伏せられかねません。
その人民英雄記念碑ですが、そもそも「人民英雄」とはどういう定義になっているのでしょう。革命に命を捧げた人(烈士)を悼むという意味だとすれば、国民党に殺された人も含まれるでしょう。国民党との内戦で散った人も含まれます。それから、日本軍との戦闘で死んだ人も。……でも実際に中国戦線で日本軍の正面を担当したのは国民党軍です。さてその戦死者も含めているのかどうか。
「一つの中国」とか「台湾は不可分の領土」とか寝ぼけたことを中共は言っていますけど、この「人民内部の矛盾」(笑)については一度胡錦涛を問い詰めてみたいところです。胡錦涛といえば最近夢の中に奴が出てきて私が何かインタビューしていました。電波浴が過ぎるとビョーキになるようですから皆さんも御注意を。
――――
徹宵のせいか、それとも蝉時雨の中を歩いて「零戦+海軍コーヒー」を楽しんできたせいか、本当は別なことを書くつもりだったのにとうとう雑談で終わってしまいました。すみません。
| Trackback ( 0 )
|
http://www.sankei.co.jp/news/050807/morning/07pol003.htm
きっと靖国神社のHPも標的に入ってるんでしょう。
ここはひとつ、コテンパンにやっちゃってください!我が日本の精鋭諸君。
遠方のためなかなか靖国神社には行けないのが残念です。15日に行ってみたいなぁ。休みとれんのかいな、しかし。
軍服姿のお爺さんの話しは、私も不思議と思っていたのですが、納得です。
実は先週の日曜日に靖国神社と千鳥ヶ淵を訪ねました。靖国神社では遊就館を見学し、庭を見て回りました。
清潔で雰囲気ある空間でした。つぶさに展示物を見て回りました。特にソ連参戦のところは妻ともども憤り一杯となってしまいました。
妻は最後の部屋に展示されているある特攻隊隊員の手紙に涙を流しておりました(手紙の最後にお母さんお母さんと書いているくだりで)。妻は靖国に来たことは無く、私も幼少時に来たかすかな記憶しかなかったので、何十年ぶりかになります。
妻にとっては靖国は怖い右翼?がいるところというイメージを持っていました。私が思い出したように靖国に行こうといったときの妻の不安そうな顔、百聞は一見にしかず。見て怖ければ二度と誘わないからといって連れて行ったら、最後は私以上に熱心に展示物をみておりました。
私は海軍カレーを食べ、娘は稲庭うどん、妻は横浜カレー。娘はUFOの玩具をねだったので買ってあげました。
その足で千鳥ヶ淵にいきました。240万人の名も無き身より無き日本人の眠る地。靖国の清潔さ、様式とは異なり、木々に囲まれた簡素な風景。
私はその数字と、その結果としてある今の風景に戦争のもたらし悲劇の結末を結びつけることに困難を感じました。妻と一緒に献花して眠ってしまった娘を抱きかかえ家路に着きました。
戦後60年。戦争を知らない世代である私ですが、皮肉にも中国のはちゃめちゃな靖国批判のお陰で日本の過去を見るようになり、今を理解する上で大切な機会を得ることとなりました。
実は靖国神社に軍服で参拝される方々の写真を見た時は、私も御家人さんと同じく「なんだかなー」と言う印象を持っていました。
しかし、あの戦争に参加した人々にとってはあれが正装なんですね。御家人さんのブログを読んで、私もおかしく思ったことを反省しました。
ちなみに某巨大掲示板によると、軍服を着た方々は8月15日に来られるそうです。
本日中国の掲示板を見ていたら、タイトルで「国民党の戦死者は抗日烈士ではないのか?」と言う書き込みがありました。ですから「人民英雄」には含まれていないのではないでしょうか?結局共産党だけの話でしょう。
米国の戦死者を祭るアーリントンはさまざまな宗教のお墓の集合体だそうです。中国の烈士墓所と同じようなものと思いますが、御家人さんの思っておられることを勘違いしていたらすいません。
>
>「もしおれが日本人だったら必ず靖国神社に参拝する。国のために命を捧
> げた英雄に感謝の意を表すのは当然のことだ」
>
> という意見がしばしば出てくる
のですか。よろしければ、今後は是非、中国のそうした意見も時々ご紹介頂ければと思います。そうした人々とは、正々堂々と大喧嘩し、お互いに疲労困憊したら飲み比べに移行し、そしてアルコールの助けを借りて最後の力を振り絞り、殴り合いが出来そうな気がしますので。
(軍人はおなじ国の民間人より、敵国の軍人と共感しあうことが多い)
満州帰りの親を持つ私は、靖国を軍服で訪れるのはごく自然なことと思っていました。御家人様が「最も印象深かった」と仰る献灯のような話は、そうした親を持つ人間にとっては小さい頃から慣れ親しんだ話でしたから。歴史がきちんと伝わっていないのですね。ううむ。
こんばんは。いつも楽しく拝見してます。
中国関係の仕事をしていると、どうしても靖国神社問題は避けてとおれないようです。
先日も同僚の中国人に”何で戦犯を祭っている神社に総理大臣が参拝するのか?”と吹っかけてきます。日本人の死生観を説明するのですがわかってもらえないので、(死者に鞭打つ習慣がないとか、死んだら皆仏さんになるとか)”あんたの国も国共合作で抗日戦争を戦ったんでっしゃろ?つまりお国のために死んだ兵士は皆、中国の抗日戦士やんか。国民党の戦死者はどうなってんの?主義主張は違ってもお国の為に殉死したのは間違いないやん、とうぜん烈士廟に御祭りしてんのやね?”と逆襲したら、黙りました。どうやら御祭りしてないようです。死んで花実が咲くものかというところですか。
GJです!
個人的にはそれも宜しいかと思います。
シナ方面を記載し続けていると何処か感覚が麻痺してきますからね。
(こちらは拝見させて頂いてるだけで恐縮ですが)
私も夏の内に靖国に足を運んでみたくなりました。
>「もしおれが日本人だったら必ず靖国神社に参拝する。国のために命を捧げた英雄に感謝の意を表すのは当然のことだ」
もしかすると彼等が騒ぐのは単なる”妬み”が根元なのかもしれません。
羨ましいから攻撃してみた。
羨ましいから取り上げようとした。
しかし取り上げた所で自分達のものにはならないので止めさせようとしてみた(現在進行中)。
…実はたったそれだけの事だったのかもしれませんね。
で無関係ですが、こんなニュースを見掛けました…。
【中国】汚職幹部の海外逃亡多発、死刑の実効性に異議
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050809-00000001-scn-int
なんと言うか
まるで”火事の前に逃げ出す○○○”というか”沈没する船から姿を消す○○○”というか。
古くからそういう小○党と言われる連中は、やっぱり鼻が利くんですかね…。
(というか傍からみてると既にヤバイのバレバレだけど…)
さて、火事になるのか沈没するのか・・・。
だいぶ以前一度おじゃました者です。
いつもROMしております。
中国人が「愛国」と言う度に、私はどうも妙に納得が
いかない気分にさせられます。
ホントにそう思ってる?と聞きたくなるというか・・。
汚職幹部の海外逃亡のニュースもそうですが、
日本人の愛国と中国人の言う愛国とは、そもそも
同じような感覚なのだろうかと考えさせられてしまいます。
私はまだ靖国神社には行ったことがないのですが、
今年こそは訪れてみるつもりです。
記憶にある戦争といえば「湾岸戦争」な世代ですが、
やはり日本人としてあの戦争で亡くなった方達には、
一度手を合わせておこうという気持ちがあります。
何だかまとまりのない雑感ですみません。
暑い日々が続いていますが、ご自愛下さい。
しょうね。
その力で、ロシアまで倒しちゃいましたから。^^
御家人さん、いい話をありがとうございました。
ちょっと泣けたでつ。(つωT)
さて、東方佳人さんにちょっとコメント、私の個人的感触では愛国というスローガンを使うときの中国という領土の概念は(多くの中国系=華人をもが共感できる)大中国の版図=中華圏の版図そのものであるような気がします。しょせんは中共も絶えず自国の領土を広げるという中華思想を振り払えていないのと、領土の拡大=周辺国との摩擦ですから、そこに送り込んだ華人系との連携を図るにも、精神的に理解できる共通理解の構造に愛国という用語でイメージされる中国の領土という概念を置き換えることが人為的(中共の情報操作)、及び共通理解的(中華人の精神構造)に一体になっているかも。
できれば8月15日に。
皆が皆、上級将校格好しておかしいと思わないほうが不自然
それよりもDQN暴走族やヤクザ紛いの
右翼が問題だろ
「鎮魂」に来てるんじゃ な い ん で す か ?
以下の話の内容は記憶が曖昧で保障できませんが、その方はたしか日本の戦争を記憶する記念館のようなものを長野県あたりで運営されていて、大変ユニークな方だと書かれていたように思います。
記憶違いだったらゴメンナサイ!
※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。