標題の通りです。四川豚の奇病もいいんですけど、やっぱりもうヤマを越えているように私には思えます。
とりあえず最新の発病者数を出しておきましょうか。8月1日正午時点での発病者数は198名、うち実験室検査により感染が確認された者38名、臨床診断による者107名、疑い例53名。また完治して退院した者18名、危篤状態30名、死亡者36名となっています。
http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-08/01/content_3296187.htm
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もちろん、油断してはいけないんですけどね。……とは過去の類似例に基づいた話です。何でも1998年7月下旬から8月中旬にかけて、江蘇省如皋市と同市に隣接する海安市、泰興県で原因不明の病気による症例が数十件記録されているようです。いやこれは「新華網」(国営通信社の電子版)が掲載したニュースですから当局御墨付きなのです。
「急性感染性中毒性出血性ショック総合症」(中国語そのまんま)と一応名付けられたのですが、死亡率はなんと40%にも及んだとのこと。一部の患者の血液や脳髄液から連鎖球菌が発見されたそうです。
病人は発病前2日以内に病気か死んだ豚、あるいは来歴不明の豚肉に直接触れていたのが共通点。……云々というものです。
http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-08/01/content_3296217.htm
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しかしまあ、四川省の方はあとは地元官僚の責任論が焦点でしょう。資陽市雁江区のトップなどすでに3人のクビが飛んでいますが、これが市のトップや省衛生庁レベルまでいくかどうかですね。言うなれば死者多数の炭坑事故のようなもので、事態がヤマを越えると責任論が出てきます。それが怖いから地元当局が報道統制を敷いたりすることになります。官僚にしてみれば、変なことを書かれて累が自分に及んでは困る訳です。
香港紙『明報』(2005/07/31)によれば、四川省の宣伝部門は省内の各メディアに対し、発病者の出た地区や入院患者のいる病院への取材を禁じ、新華社の記事だけを使うようにとの命令が下っているそうです。四川省外の中国国内メディアはというと、確か地元以外の地域で起きた事件・事故の取材は許されていない筈です。だからこちらは無問題。
http://hk.news.yahoo.com/050730/12/1f2g0.html
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でも香港を含む海外メディアは規制対象外のようで、『明報』記者は防疫服(というのでしょうか)も着けないまま病室に案内されて患者に取材しています。相変わらずこういう扱いを許しているというのは、中共当局が事態の成り行きに対して多寡をくくっている証拠です。もっとも今後本当のピークがきたら大騒ぎになるでしょうが、そのときは私も一緒に慌てまくることにします(笑)。
http://hk.news.yahoo.com/050731/12/1f310.html
更迭は資陽市のトップあたりまでいくのではないでしょうか。何せあの気骨のあるというか上をも恐れぬというべきか、とにかくあの『重慶晩報』が執拗に弾劾していたように、最初の発病者(6月24日、当局発表ですけど)が出てから20日近くも関連部門への報告を怠っていたのですから(「四川の奇病は漢方で治せ。負けるな重慶晩報!」2005/07/28)。その当事者たる雁江区の打首はすでに済んでいる訳ですが、これだけ世の中を騒がせている訳ですから、監督不行届きで市レベルの責任者にも詰め腹を切らせない訳にはいかないでしょう。
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それよりも、と言うと不謹慎になりますが、鳥インフルエンザ、そっちの方が怖いように思うのですがどうでしょう。WHO(世界保健機関)も今回の奇病が突発するまではbird-flu一本で、データを開示しろ、サンプルを見せろ、現地を調査させろ……と何度も申し入れているのですが、中国政府が首を縦に振らないため事態の解明は全く進んでいません。もちろん、今回の奇病騒ぎが鳥インフルエンザ問題隠蔽のために使われているとは思いませんけど。
個人的に注目しているのは、H5N1型が猖獗を極めて人死にも出ていると伝えられる青海省の他に、WHOは新疆ウイグル自治区のカザフスタン国境近辺の調査も求めていたことです(「疫病三国志演義」2005/07/26)。
ああそれから広州で突如大量死したコサギを付近の農民が喜んで食べたり市場へ売りに行ったりした一件がありました。
●広州で謎の大量死――コサギ300羽(『香港文匯報』2005/07/25)
http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0507250039&cat=002CH
これについては広東省当局がすぐ「あれは病死ではない」と火消しに回って、同省動物防疫監督総所からも「湖水からもコサギの死体からもH5N1型ウイルスは発見されなかった」との発表が出ています。
当の現場である広東省野生動物保護中心は「6月30日から7月4日にかけて210羽が死んだ」ことを認めてはいますが、その原因については「水不足と輸送中に押し込まれて現地へ運ばれた(コサギは鳥類違法運輸により当局が業者から没収されたもの。それを現地へと移送した)ために負った外傷によるもの」との見方を示しています。うーんそれで210羽ですか。……とりあえずその後は関連報道がありません。
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ところが今度は香港で野生の鳥が大量死したのです。8月1日付の香港紙『東方日報』とその姉妹紙『太陽報』によるスクープ?です。「相思鳥」と香港では呼ばれている雀ぐらいの小さい鳥が、香港は粉嶺郊外(粉嶺自体が郊外地区ですが)のバーベキュー場付近でまとまって死んでいるのを発見されました。合計171羽です。
●『太陽報』(2005/08/01)画像つき
http://hk.news.yahoo.com/050731/197/1f3dr.html
第一段階の調査では幸いこちらも鳥インフルエンザとは無縁だったようで、別の地区で鳥かご数十個がゴミ捨て場にまとまって置かれていた目撃談があることから、誰かが自然に放したものの、適応できずに死んだという説も出ています。……でも200羽近くが狭い範囲にまとまって死んだりするなんてことがあるものでしょうか。
今朝の『太陽報』(2005/08/02)によると、翌日にまた同じ場所で70羽が死んでいたのを発見されたそうです。
http://the-sun.com.hk/channels/news/20050802/20050802022411_0001_4.html
「相思鳥」とは何とも可憐な名前ですが、日本でもそのまま「ソウシチョウ」(相思鳥)と呼ばれているんですね。ひとつ利口になりました。
ちょっと利口にはなりましたが、やはり気になります。ええ、広州のコサギも青海省や新疆ウイグル自治区の現状についても。
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「新疆つながりで、ホレホレ」
という声が聞こえた気がしたので(笑)ついでに書いておきましょう。台湾・中央通信が8月1日に伝えたところによると、新疆ウイグル自治区の新疆兵団でここ数年、「原籍地に帰らせてほしい」という兵の声が高まっているものの一顧だにされないため、兵団内部での武装暴動がしばしば発生しているとのことです。
http://tw.news.yahoo.com/050801/43/24n5t.html
新疆兵団に対する知識がなかったので調べてみますと、何だか屯田兵のようなものなんですね。
「1954年設立。国が賦与した耕地の開墾と国境警備の任務を担当し、管轄区内の開墾区で、国と新疆ウイグル自治区の法律、法規に従い、内部の行政、司法事務を自主的に管理し、国の指導の下で独自の経済計画を制定する特殊な社会組織であり、中央政府と新疆ウイグル自治区人民政府の二重の指導を受けている」
http://www.jica.go.jp/china/library/seitai/pdf/06.pdf
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で、この耳寄りなニュース、反体制系ニュースサイト「大紀元」「博訊網」でも報じられているのですが、如何せんどちらも中央通信電の引き写し。中央通信は新疆独立を目指す東トルキスタン情報センターが8月1日に発表したものとしています。香港電ですからたぶん香港にある組織なのでしょうが、香港各紙はいずれもスルー。このため目下のところ情報としての確度は低いです。
香港メディアなどが動き出したり、「大紀元」「博訊網」あたりが各々独自報道を流し始めたなら話は別ですが、まだそうなっていません。現時点では、夕べそういう夢を見たなあ、ぐらいに思っていればいいのではないかと(笑)。
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それへの当てつけ記事かいな?
>新疆ウイグル自治区の新疆兵団でここ数年、「原籍地に帰らせてほしい」という兵の声が高まっているものの一顧だにされないため、兵団内部での武装暴動がしばしば発生しているとのことです。
本当でしたら、いとおかし。
『労改』(ラオカイ)
―― 中国強制収容所を告発する
著 者:ハリー・ウー、ジョージ・ベクシー
出版社: TBSブリタニカ
新疆兵団とは、中国強制収容所の番人ではないでしょうか??
ttp://www.uygur.org/china/et/2005/0801.htm
ここの和文担当者と見られる人が2chのスレ乗っ取って広報活動してまつ
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050802-00000010-san-int
中国軍もかなり危険そうです。
しかし、また何でいまさら帰りたくなったんでしょうね。
http://www.uygur.org/japan/etic/information_merkizi.htm
ついでに
東トルキスタン亡命政府
http://eastturkistan-gov.org/
日本語ページはまだ作成中みたいですが・・・。
知人さんが中国から無事帰国。重慶に行っていたようで、空気の悪さとホテルのエアコンで体調を崩したそうです。重慶で何を食べていたかは分からないのですが、死んだ豚じゃなきゃ大丈夫とか言っておりました(中国に付き合うと色々とタフになるようです)。
重慶の都市部はいたって普通?だったようですが、市井の人たちと話しをしていたら、安徽省タクシーストの件を聞かされ、情報の伝わりの早さに少々びっくりとのことでした。
鳥インフルエンザの件、知人さんも同じことを言っておりました。豚より何よりかなり重要な扱いで、事態はかなり深刻という感じです。場合によってはオリンピックなど簡単に吹っ飛ぶようなことがあるかもしれませんが、とにかく今は隠蔽隠蔽のようです。
五中全会が10月にある予定ですが、コヨウホウ降ろしの会議になる可能性が高いようです。後釜は誰になるのか気になりますが、軍人さんが気が触れたと言わんばかりに内外で煽っているので、どうも平和な雰囲気とはなりそうにないようです。
追伸
新疆兵団の件も言っておりました。実際に新疆兵団から帰ってきた人に会って来たそうです。こちらからは深くは聞きませんでしたが、かなりごたごたしている模様。
中越紛争にも従軍していた人で、彼が言うには酷い負け戦だったそうです。
レスが散漫ですみません。
コキントウをコヨウホウと書いてしまいました。
すみません。
御家人様ほどの方が新疆兵団をよくご存知なかったとは以外です。
山内昌之東大教授は「満蒙開拓団+屯田兵+アメリカの騎兵隊」というイメージであると語ってられますが、実のところ新疆への移民の主体的な存在みたいです。総数254万人の軍閥といったところでしょうか。
Wiki新疆生産建設兵団
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E7%96%86%E7%94%9F%E7%94%A3%E5%BB%BA%E8%A8%AD%E5%85%B5%E5%9B%A3
1日には北京市が四川省産のブタ肉の入境禁止措置を取って、肉の産地来歴検査を市境で強化したとも出てましたが。
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