日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 前回の続きのようなものですが、話の範囲をもっと広げてみたいと思います。

「『低コスト・高リスク』で突っ走り、低コストの拠り所は人命(低賃金)であり、高リスクについては人命と地元当局との癒着でカバーしていく。そういう事例はいくらでもあります。……というより、それこそが「中国の特色ある」経済成長なのではないかと思えるほどです」

 と前回の文末でふれました。

「低コスト+高リスク=高収益」

 という公式はふつう成立しにくいものですが、中国ではごく当たり前のようにそれが実現してしまいます。ここ十数年の経済成長そのものがこの公式に拠っているといってもいいかも知れません。「低コスト+高リスク=高収益」こそが、すなわち中国経済の成長モデルだと。……いや、正確には無理無体なる「魔法」を使って、

「低コスト+低リスク=高収益」

 という図式に無理矢理変えてしまっているのですが。

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 前回述べたように、この公式を成立させているのは第一に人命軽視であり、第二に官民癒着です。例えば「低コスト」なら、それを支えているのは搾取し放題かつ無尽蔵、また福利厚生も薄くて済む廉価労働力であり、土地の安さなどもその範疇に入れていいでしょう。土地が安いのは、本来の価値に見合わぬ少額の補償金で農民から耕地を取り上げているからです。

 「高リスク」は、前回の炭坑でいえば安全面・衛生面などでケアしなければならない部分、それに販路(闇ルート)などです。本来顧慮しなければならないこうした方面の手当てを、官民癒着と人命軽視によって無視できるようにして、「低リスク」に変えてしまう。これが「無理無体なる魔法」というものです。「低コスト+低リスク」なら、イコール「高収益」が成立します。

 人死にがあったりしても、そこは官民癒着で揉み消しがききます。100人もまとめて死ねばさすがに隠し切れませんが、それは調子に乗り過ぎたか運が悪かったかのどちらか。そういう体たらくに立ち至っていない、つまり私たちの視界に入ってこない無数の事例が全国各地でいま現在も行われているのです。

 石炭や天然ガスの採掘だけではありません。都市の再開発における強制収用も同じ性質のものです。「低コスト+高リスク=高収益」。土地を安く買い叩く。言うことを聞かない住民には警官隊を出すか、あるいはチンピラを集めた「私兵」に暴れさせて叩き出すか。

 むろん官民癒着ですから、滅多なことがない限りニュースにはなりません。河北省・定州市の6死48傷事件をはじめ、この種の事件は当ブログでも随分取り上げていますが、これらもみな氷山の一角。調子に乗り過ぎたか運が悪かったかのどちらかなのでしょう。

 ……炭坑以外の実例を出して見せろと?ごもっともです。

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 ●上流の工業廃水で下流に「ガンの村」出現(「新華網」2005/08/20)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-08/20/content_3380474.htm

 無惨な話です。河南省を発する白河という河川、これが同省・南陽市の製紙工場から出る工業廃水で汚染され、白河という名前とは裏腹に河水は真っ黒に。その白河が湖北省に入ったところにある農村が昔からこの川を唯一の水源として生活してきたのですが、人口3000名のこの村でここ数年の間に100名以上がガンで死亡。その多くは30~50代の働き盛りだというのです。

 湖北省疾病控制中心(疾病抑制センター)がこの水を調査したところ、発ガン性物質であるフェノールの含有量が基準値の5倍以上に達していたとのこと。過マンガン酸カリウムに至っては1?平均420mgで基準値の28倍。道理でガンでバタバタと人が死ぬ訳です。

 記者が汚染の元凶である河南省・南陽市当局に取材したところ、「製紙企業はもう100社ばかりが工場を閉じて、いまは5社を残すだけだ」との回答。ところが現場に行ってみると工場を閉じたどころか、生産規模を拡大しつつガンガン稼動しているではないですか。ここにも官民癒着があり、廃水処理や下流住民へのケアを無視するという「魔法」で「低コスト+低リスク=高収益」という公式が成立しているのです。

 もっとも地元の環境保護部門では「法律が緩いからだ。企業の汚染行為を発見しても、すぐにやめさせることができない。こちらが手を出せるようになるまでに3カ月もかかる」としています。この言い分は聞いておきましょう。ただ如何に法制が整っていようとも、法治が確立しなくては意味がありません。この点において、いまの中国では「官民癒着」で法をねじ曲げられる余地が十分にあります。

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 ●工場の汚染で警官隊と衝突、農民100名以上が負傷(『太陽報』2005/08/22)
 http://the-sun.orisun.com/channels/news/20050822/20050822020416_0001.html

 これは以前、「21世紀型農民暴動」(2005/07/01)で紹介した事件の続報ですね。浙江省の田舎にある「蓄電池の里」との異名をとる企業城下町、ここの大手企業による大気汚染で鉛中毒者が村民に続出し、堪忍袋の緒が切れた農民たちが立ち上がり、騒乱に発展したケース。「反公害型」なのが新しいということで「21世紀型」としたのですが、まだ片付いていなかったんですね。

 地元当局が調停に入った、というところまでは伝えられていましたが、また官民衝突ということは談判決裂ですか。結局大手企業の税収を当て込んでいる地元当局が村民の肩を持つことはないのでしょう。

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 ●炭坑による水質汚染で衝突――重慶(『蘋果日報』2005/08/26)

 有料制なのでURLを出せませんが、香港最大手紙『蘋果日報』の報道です。重慶市で新たに開かれた炭坑が付近住民数千名の生活用水を汚染したため、8月22日、住民代表約100名が炭坑経営者との話し合いに臨もうとしたときに起きた事件です。住民が話し合いの場に向かう途中、自動車に道を塞がれたかと思うと、車内から突然刃物や棍棒を手にした男数名が飛び出し、村民に暴行。村民6名が負傷し、うち2名は重傷とのことです。

 ただこの記事のタイトルは原文だと「械闘」(双方が武器を手に戦うこと)となっているほか、「どうも双方とも組織的なまとまりがあったようだ」(特別調査チーム筋)とのことで、詳しい事情はまだ明らかになっていません。「械闘」なら住民も武器を持っていたことになります。問題の炭坑はとりあえず操業停止となっているようです。

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 ●地上げで放火、デベロッパー社員3名に判決――上海(『蘋果日報』2005/08/26)

 これは1月9日起きた事件の判決が出たというものです。舞台は上海市・徐匯区、立ち退きに応じない住民に業を煮やした開発業者が、あろうことか住民宅に放火、老夫婦が焼死したという事件です。放火を命じた上司と実行犯であるその部下に執行猶予付きの死刑判決、事件に関わったもう1名の社員は無期懲役となりました。

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 改めて強調しておきますが、新聞記事になったこれらのケースは、「越後屋+お代官」の官民癒着側が調子に乗り過ぎたか、運が悪かったかのどちらか。いずれにせよ氷山の一角にすぎません。

 ただ、昨年以来暴動事件が相次いで報じられるようになったのは件数自体の増加とメディアの努力もあるでしょうが、「低コスト+高リスク=高収益」の「高リスク」を「低リスク」に変えてしまう「無理無体な魔法」がそろそろ効かなくなっていることを示すものかも知れません。我慢にも限界というものがあります。

 でも各地で似たような事件が散発的に火花を散らしているだけでは、中共政権は危惧を抱きつつも恐怖することはないでしょう。各地の不満分子が有機的連携をとるようになると、話は変わってきます。

 その意味で、前回紹介した
広東省の炭坑閉鎖騒動への反発が何らかの火種になるかどうかにちょっと注目しています。

「お前ら無免許だな。安全基準も満たしていない。炭坑封鎖だ」

 と問題解決に積極的かつ強腰で取り組むのもいいのですが、ヤミ炭坑の経営者は以て瞑すべしとしても、その封鎖によって生じる失業者(炭鉱夫)をどうケアするのでしょう。封鎖措置に対する反発は経営者からも炭鉱夫からも、つまり労資双方から出ています。何たってツルハシに爆薬。市庁舎を吹っ飛ばしたら気持ちいいでしょうねえ(笑)。

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 それからこういうニュースもあります。

 ●退役軍人、自製爆薬で自殺(『太陽報』2005/08/26)
 http://the-sun.orisun.com/channels/news/20050826/20050826020432_0001.html

 香港紙の記事ですが、中国国内メディアも取り上げています。この手製爆薬、自殺以外の目的で使われたらどうなっていたでしょう。……ということは措くとして、この自殺した退役軍人は地元地区の
民兵の教官だったんです。民兵なら火器類も豊富です。自家製爆薬の材料もそこから調達したものかも知れませんよ。……あ、雷管と導火線は民兵の武器庫からくすねてきたものだったそうです。

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 何だか中国はいざというとき手に入りやすいところに恰好な危険物が転がっている感じですね。中共一党独裁制のもとで喘ぐ奴隷諸君、「反日」をやっても拭えない閉塞感は爆薬で吹き飛ばすというのは如何?


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山場 (まかぼろ)
2005-08-27 01:25:10
中国の農民は本能的に官憲を恐れます。なにせ3000年間圧政を受け続けてきている(現在進行形)のですから。でも物には限度があって、官憲が調子に乗ってやりすぎると逆に大爆発します。中国の歴史はまさにこの繰り返しでした。



そういう視点から中国を見ると、最近の中国も一つの山場を迎えつつあるのかな、という気がしてきます。



この記事を中国BLOG記事アーカイブプロジェクトに推薦しておきました。



http://www.chinawalkers.net/weblog+details.blog_id+49.htm
 
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