どうも我が身を省みるに、歳を重ねるごとにストライクゾーンが広くなってきているように思えて……ああそういう話ではありませんでした。
台湾に林志玲というモデル出身の美女がおりまして(いまもモデル?)、台湾では並み居るアイドルを押しやって、男性の圧倒的支持を受けてナンバーワンの人気を誇っているそうです。評判は台湾海峡を越えていまや大陸(中共)でも有名。
某巨大掲示板の情報によると日本観光のキャンペーンに一役買ったりもしているそうですが、もちろん台湾や大陸のCMでも引っ張りだこです。大陸では「宝潔」(P&G)の広告に出ているとのこと。
ところが。最近になって大陸のあるサイトで政治的理由から林志玲排斥運動が巻き起こり、ちょっとした話題になっているのです。
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相手が「台湾人」で「政治的理由」ということになれば、中共政権下ではもう「緑」か「青」かの話にしか落ち着きません。要するに台湾独立派(緑)か大陸との統一派(青)かということで、排斥運動が起こるとすれば当然「緑」。で、林志玲も「緑」認定されてしまったという訳です。
林志玲の両親が独立派でしかも陳水扁・台湾総統との縁が深い、ケガで入院した林志玲を総統夫人が見舞った……などという話が「排斥」の根拠となっているようです。だから何?という反応が日本なら出る訳ですが、中共政権下においては政治的に悪ならその人物の人格から仕事(小説とか音楽とか)までの一切をごく当然のように否定します。全否定です。
林志玲にもその危機が迫っているのかどうかは知りませんが、具体的には「天涯社区」という掲示板で、
「林志玲はP&Gの広告から降板しろ署名」
「電話やメールでP&Gに林志玲降板を要求しよう運動」
「林志玲降板まではP&G製品の不買運動」
なる活動がスタートしたということです。
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この動きを最初に報じた上海紙『東方早報』によると、「天涯社区」での署名は延べ40万人に達しているので決して小規模なムーブメントではないとのことです。
……て何で報道するんですかそんなこと。火に油じゃないですか。いやいや最初から火に油を注ぐつもりで取り上げたのなら「うーん」とこちらは首をひねるしかないのですが。
という訳で状況をみてみるに、これはどうも「火に油」を企図しているようです。
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●東方早報-新浪網(2005/08/09/07:02)
http://ent.sina.com.cn/s/h/2005-08-09/0702804395.html
●東方早報-大洋網-広州日報-新浪網(2005/08/09/09:34)
http://ent.sina.com.cn/x/2005-08-09/0934804969.html
●東方早報-新華網(2005/08/09/13:23)
http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-08/09/content_3329521.htm
●東方早報-網易(2005/08/09/13:23)
http://news.163.com/05/0809/13/1QNGIL160001124U.html
●東方早報-東北新聞網-新浪網(2005/08/09/16:32)
http://news.sina.com.cn/c/2005-08-09/16326649258s.shtml
●東方早報-重慶晩報-新浪網(2005/08/10/11:20)
http://ent.sina.com.cn/x/2005-08-10/1120805965.html
●東方早報-新華網山東頻道(2005/08/10/11:22)
http://www.sd.xinhuanet.com/news/2005-08/10/content_4847804.htm
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大手ポータルサイトはおろか、「新華網」(国営通信社・新華社の電子版)にも転載されています。続報がないのでまだ確かなことは言えませんが、初動としてみるならこれは一種のキャンペーンですね。林志玲を叩いているのではなく、台湾独立派や見解を異にする党内の政治勢力に向けたプレッシャーではないかと。
「林志玲の政治的立場が不鮮明?ネット署名による排斥運動発動」
というのが第一報である『東方早報』の見出しでした(芸能人のニュースで「政治的立場」が云々されるとは怖い社会です)。P&Gはこの騒ぎについて、
「林志玲のプロダクションから、彼女の政治的立場は巷間伝えられているようなものではないと説明されている。しかも当社は純粋にビジネスをしているのであって、政治とくっつけて語られる筈がない」
とコメントしています。いやはや、政治的立場まで顧慮しなければやっていけない中共政権下の社会。これは息苦しくもあり、例えば日本や米国の社会では配慮する必要のないものまで慎重にならざるを得ないのですから、ある種の余計なコスト(制度的コスト)を伴うものといえますね。
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要するにこの一件、林志玲はダシに使われただけであって、鉾先はまず台湾独立派に向けられています。それと同時に、中共上層部が台湾問題に関し温度差の点で割れていることを示すものかも知れません。その一方の政治勢力(強硬派)が、意見の合わないグループに対してこういう方法でデモンストレーションをしてみせた、というものです。
今年3~4月の反日騒動でも「反日度」をめぐって党内に温度差があり、胡錦涛派と別の一派が綱引きを演じました。あれと同じようなものではないかと思います。
あのときと同じようにネット署名、排斥運動、不買運動と来ました。今後これに「反日」が加わってくるのでしょうが、ともあれこれは「権力闘争の夏」がスタートしたことを伝える烽火かも知れないと私は思うのです。
余談ですけど、中共のいう「台湾同胞」には陳総統や李登輝氏ほか台湾独立派は含まれていないのでしょうね。このままいけば林志玲もその列に加えられることになるのでしょう。
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http://news.bbc.co.uk/chinese/trad/hi/newsid_3570000/newsid_3572400/3572456.stm
良くも悪くも芸能人は大きな影響力を持っているわけで、その影響力を利用しようとする向きによってあらぬことに巻き込まれますね。中の人も大変だ。
今回は広告商品の不買運動に発展しているということですから、去年の話に比べてもますますアレな方向に突っ走ってますね。
ほんと商売で中国に進出するのは命がけだと思いますよ、何で難癖つけられるかわかりゃしませんから。
郵政だけがこの世の最大無二の問題で、反対者は抹殺です。
郵政反対派にも立派な人物が沢山いるのにねえ。
自分の目的のためなら手段を選ばず
よく似てません?
中国共産党は日本なんかに比べると抜群にプロパガンダがうまいのに、時々そういう計算ができませんね。林志玲、前々から美人だとは思ってましたが、これで中共が追い込まれて亡国のきっかけにでもなれば、歴史に名を残すかもしれませんねえ。
台湾:モデル・林志玲さん、中国で批判の的に 家族の陳総統指示、人気に影
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/asia/china/news/20050813ddm007030100000c.html
ネット版の見出しが
狙ってないよね?
まるで悪者扱いですね
まあ毎日新聞的には「悪者」なんでしょうけどw
度重なる中国人による凶悪犯罪+昨年のアジアカップで庶民レベルでは対中国・中国人認識が固まりつつあると思います。それに加えてあの反日騒動+プチ暴動や呉儀のドタキャン。東シナ海ガス田紛争や中国原潜による領海侵犯もありました。パンダだシルクロードだといった思い入れのある世代(糞ですな)は別ですが、もうマスコミがどう取り繕うにも無理な段階にあると思います。
>>零細企業の親父さん
>自分の目的のためなら手段を選ばず
>よく似てません?
全く似ていません。並べて論じること自体が愚劣な行為だと思います。「同じようなもの」とはこれまた御冗談を。
自衛隊は国家よりも自民党・公明党のみに絶対的な忠誠を誓っていますか?
日本では法制をねじ曲げる人治がまかり通っていますか?
日本では法律で合法とされても与党が「政治的に悪」と判断すれば社会的に完全に抹殺されますか?
他にも色々ありますけど、切りがないので、とりあえず。
>>「書生くん」さん
「緑色芸人」という言葉があるんですよね。要するに独立支持派芸能人。阿妹もそうですが、F4とかもやられていましたね。仮にいい仕事をするプロでも、「政治的に悪」なら仕事ぶりから人格まで全否定。それが中共です。前例はいくらでもありますね。
>>月光さん
あれも愚昧極まる事件だったと思います。何かステージに上がった男に殴られたり汚物をぶちまけられたりしませんでしたっけ?(ちょっと記憶が不確かですが)「民度+民度を低く留めておく教育」のなせる業なんでしょうか。
>>masaさん
>この人は現在、ビジット・ジャパン・キャンペーン台湾親善大使です。
そうなんですよね。なんたって「台独+親日」ですからこれ最強。この情報を大陸のネットに流せばいい燃料になると思います(笑)。
もっとも中共が自らそれをやるかも知れませんけど。
>>fukusimaさん
この毎日のニュース、北京発の提灯記事かと思いきや、何と台北特派員が書いているんですよね。
台北発の記事なのに情報量はほぼ中国国内と大差なし。
地元紙のニュース引き写してちょっと掲示板をのぞいただけ。仕事しなくていいなんて楽な御身分ですよね。ウェブサイトにでるニュースは別ですが、私は都市対抗野球のときしか毎日は買いません。
>>@さん
日本でも人気が出れば「独立派のマドンナ」路線はアリだと思います。でも人気出ますかね……。
>>heedraさん
「傾国の美女」に座布団一枚!
最近の中共によるプロパガンダはどうも硬質な感じを受けます。軍部(の一部?)主導で行われているのかも知れません。例の核戦争発言も軍人が放言したのを外交部が慌てて火消しに走ったりしています。ところで「傾国」で傾くのは中共ですよね?
ポータルサイト場のニュース一面には写真入りでだいたい毎日でてます。もちろん普通の新聞の国際面にも。次回の総選挙も分析したり、郵政法案の解説とか、、、。自国民に選挙権ないのにね、国民うらやましがるんじゃないでしょうか?
PS さっき学校の事務所の人が来て15日、極力学校から出ないように、お達しがありました。
>自国民に選挙権ないのにね、国民うらやましがるんじゃないでしょうか?
まず記者が羨ましがるでしょうね。そういう気持ちのこもった記事があるかも知れません。
私は中国の「反日電波浴」でかなり免疫がついていると思うのですが、靖国神社の参拝を「拝鬼」とわざわざ書くメディアがありますね。それも記者の思いがこもった結果(笑)なのかも知れませんけど、あれだけは許せません。
15日の件、学校側は何か動きを掴んでいるのでしょうか。香港・台湾や反体制系ニュースサイトにはまだこれといった動きが出ていません。何か情報が出ればここで速報するつもりです。
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