日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 ちょっと小ネタをひとつ。

 先日、自民党の中川秀直国会対策委員長ら与党議員団が訪中し、北京で唐家セン国務委員と会談したようです。

 唐家センは外相時代の「ゲンメイしました」発言が有名ですね。いかにも「奸知に長けた」という顔をしているのですが、これは個人的感想です。下記が日本の関連記事。

 ●靖国・ガス田開発で応酬…与党議員団と中国幹部が会談(読売新聞)
 http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20050111i115.htm

 この記事によると、日中双方は靖国問題や中国原潜による日本領海侵犯、それに東シナ海のガス田開発で応酬したようです。

 で、記事の最後の方に、

「一方、日中双方は、両国の人的な交流拡大を目的とした新たな「友好基金」を創設することで合意した。基金は、日中両国政府や企業などが資金を拠出し、日中両国にそれぞれ設置される。総額で50億円規模となる見通しだ。」

 とあります。

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 さて、この件に関する中国側の報道をみてみますと、

 ●中日両国が交流基金設立で合意、日本側が25億円出資(新浪網)
 http://news.sina.com.cn/c/2005-01-13/06224814328s.shtml

 さらに「新華網」が掲載した新華社系週刊紙『国際先駆導報』。

 ●中日両国が50億円出資し民間交流奨励 若い世代に着目した新基金
 http://news.xinhuanet.com/world/2005-01/13/content_2455622.htm

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 中国側の記事だけ読むと、雪解けムードが多少漂う内容の記事となっています。というのは、主にこの交流基金の話しか出てこないからです。

「靖国問題」
「中国原潜による日本領海侵犯」
「東シナ海のガス田開発」

 には全く触れられていません。原潜と東シナ海の話はともかく、中国側から斬り込んだ筈の靖国問題についても国内で報道させていないのは、やはり
中国指導部にとっては、国内がこの話題で盛り上がってほしくはないからでしょう。

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 前にも書きましたが、いまや靖国問題はカードというよりアキレス腱。ついつい「参拝するな」と首脳会談で口にしてしまったために、かつそれを国内的に大きく報じたために、胡錦涛と温家宝がリスクを負ったことになるのです。

 小泉首相が今年また参拝すれば、二人の首がキューッと締まる(笑)。

 戦後60年(自称)ということで、中国側は南京、大同、重慶の各なんたら事件での政治的イベントを準備しているらしいことは、最近の動きからもうかがえます(※1)。

 日本にとっては、正真正銘の戦後60周年です。小泉首相には毅然と靖国神社を参拝してもらいたいものですね。

 それによる関係悪化云々なんて論法は片腹痛い。どうせなら悪くなるところまで悪くなって、お互いに相手国についての認識を正確にした方がいいのです。……あ、ちょっと違うかも知れません。日本の世論はそれによって対中認識をいよいよ正確なものとするでしょうか、中国にとって靖国は国内問題(笑)。オリンピックが開けなくなるかも知れませんね。


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 【※1】当ブログ「わらわらと湧いて出た『歴史問題』」(2005/01/10)



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 前回は急に仕事が入ったため、尻切れトンボになってしまい申し訳ありませんでした。

 ひと仕事終えて、じゃあ寝ようかい(私は仕事の必要上、昼夜逆転生活を強いられています)とした矢先。香港の友人からの電話です。やや興奮した語気で、

「今日の東方が趙紫陽死去をトップで伝えている。見たか?」

 と、噛み付くようにまくし立てました。そういう話題が好きな奴なのです。私も好きですけど……この間も香港政府が馬英九・台北市長にビザを出さなかったことで電話してきましたし。まあ、今回はわざわざ電話して来るだけの価値のあるニュースではありますけどね。それで香港のヤフーその他で関連記事を一応拾ってから就寝しました。

 香港メディアは過去にもトウ小平を何回も殺していますし、趙紫陽も数回は「名誉回復で復活」を遂げています。だからこの種のニュースにはちょっと鈍いくらいがいいのです。記者ならともかく、こちらは素人ですし。でも、もし事実なら周恩来と命日が同じになるんですね。

 まあ趙紫陽氏の件は必要があれば稿を改めて書くつもりです。

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 さて今回も住民へのアンケート調査結果から現代中国の某かを読み取ろうというのが主題です(大袈裟ですね)。前回の浙江省、北京市に続いて、今度は広東省。

 浙江省では農村と都市の格差の拡大、北京市の調査では都市部における貧富の差の拡大が明らかになった訳ですが、広東省はちょっと違って、多くの住民が「中流意識」を持つようになっているという話です。中流、しかも「中の上」を自認する人が増えている、と。

 では、具体的な数字を交えつつみていきましょう。

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 まず「中流」、正確には「中等収入者」と呼ばれるのですが、この言葉は2002年の第16回党大会の報告の中に「中等収入者の比重を炊く害しよう」という形で登場します。ただ明確な定義づけがないため、広東省統計局があれこれ考えて「モデル」を出したようです。それによると、

 ●生活水準は「富裕」と「小康」(ややゆとりがある)の中間レベル。
 ●1人当たり平均可処分所得が1.2万-3.0万元。
 ●1人当たり平均住居面積が31.7-39.6平方米。
 ●定職に就いている。

 ……というようなものになりました。実にわかりやすいですね。で、現在広東省にはこのレベルに相当する人が都市住民全体のうち35%に達しているとのこと。中国の目指す「全面的小康社会の実現」には、この比率が全国で60%に達しなければならないようです。実現するまでに中共が潰れてしまうような気もします。

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 ちなみに、「1人当たり平均可処分所得が1.2万-3.0万元」、「1人当たり平均住居面積が31.7-39.6平方米」とありますが、広東省ではこれを3段階に分けています。

 ●「中の下」(1.2万-1.8万元、31.7-37.4平方米)
 ●「中の中」(1.8万-2.4万元、37.4-39.6平方米)
 ●「中の上」(2.4万-3.0万元、39.6平方米以上)

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 さて、上のように「中等収入者」の基準を定めた上で現在の広東省都市住民にあてはめ、その実像を浮き彫りにしていくことになりますが、現在都市住民の35%を占める「中等収入者」の職業は、国有経済部門内の機関・事業部門(具体的なイメージが浮かばぬまま訳しておきます)、科学研究機構、一部の収益のよい国有企業、が主流となっています。広東省における各職業の就業者数に占める上記「中の下」「中の中」「中の上」の比重は、

 国有経済部門(53.8%、56.8%、64.0%)
 都市集団所有制事業体(9.2%、7.4%、7.0%)
 個人事業経営者(2.7%、6.3%、5.5%)
 その他の職業(19.6%、20.5%、13.1%)
 離職・退職者(9.75%、11.7%、7.4%)、

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 これとは別に、中山大学広東発展研究院と中山大学政治・公共事務管理学院社会学部が「広東社会変遷基本調査」を7日に発表しています。調査対象者は18歳以上で広東省の都市戸籍を保有、かつ現住所に在住1年以上、合計2000人余りとなっています。調査は2000年7月-10月と2004年7月-10月に実施され、4年間で広東省都市住民による様々な問題に対する意識の変化をみようという意図のものです。

 この調査によると、半数以上の都市住民が自分の生活レベルを「中の上」と考えています。これはあくまでも意識調査ですから、広東省統計局の分類した上記「中の下」「中の中」「中の上」という基準とは無関係ですが、この「中の上」意識の比率はは高まる傾向にあるそうです。

 意識の上で自分を「中の上」と捉えているのですから、これを選択した人々は、たぶん社会に対しては現状肯定派が多いのではないでしょうか。調査主催者側はこのほか「広東経済の発展に対する自信、それに自分の生活状況に対する満足感がみてとれる」としています。

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 この「中の上」意識保有者の特徴を列挙してみましょう。

 まずは余暇の娯楽。これについては豊富な選択肢を持っているものの、多くは自宅でのんびりとDVDやVCDで映画を観たりCDで音楽を聴いて過ごすことが多いようです。インターネットは常識。夜に街に遊びに出たり、スポーツに勤しむ人は少ないようです。

 「家庭と仕事のどちらが大切?」という設問には大半が「家庭」と回答しています。

 広東省といえば商売人という印象を持つ人も多いでしょうが、この4年間で貯蓄意識が大きく伸びたのに対し、投資意欲は大幅ダウン。国債や株への投資熱はすっかり冷め、いまは宝くじや保険へお金を使う傾向が次第に高まってきています。特に株式投資の減衰ぶりは著しく、2000年調査では11%いた株式投資者が、2004年にはわずか3%になってしまっています。それよりも銀行や保険、という訳です。

 さらに社会に対する意識をみてみましょう。回答者の61%は「政府の制定した政策は大多数の国民の利益を代表している」とし、「政府は突発事件に対する処理能力が高い」も59%に達しています。

 しかし、政府による情報公開などの透明度、また事務効率の高さや無私公平、廉潔であるかどうかに「YES」と回答したのはわずか33%。消費者協会が消費者の利益を擁護しているかという設問に頷いた人も33%だけでした。

 ●関連資料
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-01/06/content_2422430.htm
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-01/08/content_2431015.htm

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 ざっとこんなところです。他にも色々と言及されているのですが、それについては上記URLを参照して下さい。

 ともかくも半数以上が自分を「中の上」レベルと回答したことをはじめ、いずれも経済先進地らしい自信に満ちあふれた反応です。もちろん、以前紹介した東莞暴動(※1)のように実際には所得格差や出稼ぎ労働者との軋轢も存在するのですが、都市戸籍保有者に対象を限ると上のような明るい印象の調査結果になります。それでも政府に対しては一言あるようですが。


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 【※1】当ブログ「速報:広東省東莞市で暴動発生!」(2004/12/26)及び「広東東莞暴動(2):当局公認バージョン」(2004/12/28)。


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 先日、当ブログの「浦島太郎」(2005/01/08)で所得格差、貧富の差が開く一方だという問題にふれましたが、新暦でいう年明け、旧暦でいう年末という時期が時期だからでしょうか、住民アンケートの調査結果が浙江省、北京市、広東省から上がってきました。

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 まず浙江省のものですが、『社会発展形勢分析報告』という全省を対象にしたと思われるレポートです。
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-01/04/content_2412950.htm

 このレポートで強調されているのは農村部と都市部の格差が拡大している、という点です。

「現在、浙江省の社会発展領域には依然として計画経済体制時代の痕跡が残り、経済構造の転化に比べて社会構造の転化が立ち後れ、また経済制度の変革に社会制度の変革がついていけないでいる。社会発展領域の一部の管理体制や運行メカニズムにも改革がまたれる。だから『病気になっても診てくれる医者がいない、子供に教育を受けさけたくても近くに学校がない』といったことが今なお民衆が第一に挙げる問題だ」

 と、同レポートは率直に現状の問題点を指摘しています。

 そのあと、これを報じた「新華網」記者からの解説として「格差」の問題に言及されます。それによると、都市部の発展に比べ農村部の社会事業の立ち後れは改善はまさに急務で、農村部における基礎教育や医療衛生サービス体系などは最も強化が必要な分野だとしています。その上で、浙江省を11区に分けた「発展水平指数」(算出法不明)における最高値と最低値の差は「37.54」から「41.88」に拡大した、としています。

 この「発展水平指数」が都市部と農村部の「発展度」をそれぞれ示す指標のようで、これをモノサシにしてみると、都市と農村の発展の度合いが以前より開いている、という訳です。「新華網」の記事(上記URL)自体、標題に「城郷差別拡大」(都市と農村の格差が拡大)を持ってきています。

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 続いて北京市統計局の発表した『北京市社会発展七大領域発展指数の評価分析レポート』。
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2005-01/09/content_2434578.htm

 これは北京市の都市部だけを対象にしたもののようです。対象はもちろん北京市戸籍の保有者に限られ、郊外の農村戸籍保有者や民工(北京に戸籍を持たない出稼ぎ労働者)などは含まれていません。

 それでも世帯ごとの1人当たり平均可処分所得を最高値と最低値で比べてみると、2000年の「3.1:1」から2003年には「4.7:1」に拡大しているそうです。

 浙江省のレポートが指摘した格差拡大は「農村vs都市」でしたが、北京市のこの数字が示すのは都市部における所得格差が大きくなってきているということですね。このレポートを報じた地元紙『新京報』も、記事のタイトルに「貧富の差が拡大」という文字を入れています。都市戸籍を有する市民の間だけでさえこれですから、民工を加えれば格差はより一層広がることでしょう。

 ちなみに他の数字にもいくつかふれてみますと、2003年時点での北京市民は平均寿命79.6歳、1人当たり住居面積は18.7平方米(2000年は16.8平方米)。消費や情報化の水準を示す指数は2000年に比べて顕著に伸びている一方、1人当たり住居面積の向上はまだまだ、とのこと。……他にもいろいろ出ていますので要参考です。

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 続いて広東省、これはちょっと毛色の変わったレポートなんですが……とここまで書いて申し訳ありませんが、ハーフタイムを下さい(急な仕事が入りました。本当にすみません)。

 最後に一言。

 ●中国活動家上陸の情報 「絶対阻止」海保など警戒 尖閣諸島
 http://www.sankei.co.jp/news/050110/sha038.htm

 昨日(10日)の朝に上のような報道があったのですが、事実なんでしょうか?そっち系統の反日サイトを回ってみましたが、それらしい気配は感じられません。日本側の裏をかくための隠密行動でしょうか?

 日中関係の現状に照らせば、胡錦涛政権がここでゴーサインを出すとは考えにくいように思います。あるいは前回同様、連中が先走って出港しようとした直前に公安か武警が殺到して、全員を拘束したのでしょうか?それならそれで関連論壇に情報が流れても良さそうなものですが。

 あ、以下にもう一言だけ。

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 【追記】当ブログの「珍獣見物」(2005/01/04)で紹介した「珍獣」こと林治波・『人民日報』評論部副主任。彼について私は、

「あたかも糞青(自称愛国者の反日教信者)のイデオローグといった観があります。」

 と書きましたが、「愛国者同盟網」の後身たる「青年先鋒網」に行ってみたら彼の書いたコラムが祭り上げられていて驚きました。いやはや、本当に糞青どもの理論的支柱だったとは(笑)。

 ●青年先鋒網「中日関係」
 http://bbs.54man.org/list.asp?boardid=235&page=1

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 広東省の方は夜に仕上げます(予定……)。御了承下さい。



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 李登輝氏の来日に際しては今までそれなりに有効だった日本への恫喝が全く機能せず、結局は何の手出しもできぬまま(それが当然のことなのですが)、指をくわえて眺めるしかなかった中共。最後に李登輝氏への悪口を書き立てて、日本に向けて負け惜しみと勝利宣言(某巨大掲示板でチョソがよくやる、あれです)を放ってピリオドを打ちました。

 中共は日本に対する外交カードが欲しいことでしょうね。ええ、ノドから手が出るほどに。靖国問題はカードというよりいまやアキレス腱。「参拝するな」と首脳会談で口にしてしまいましたが、小泉首相が今年また参拝すれば今度は胡錦涛と温家宝の首が締まる(笑)。

 で、そういう状況と関連するのかどうかは知りませんが、最近まとまってある種のニュースが出てきた観があります。これまた歴史問題で他にネタは無いんかい!てところですが、気になるままに紹介しておきます。

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 (1)民間による対日戦争賠償

 慰安婦とか強制連行とかでやっている、あれです。新華社系の半月刊誌『環球』が最近その特集をやりまして、その中の関係者インタビューで「中国で起訴するという手も考えている」という話が出てきました。例えば強制連行なら働かされた会社(の在中現地法人?)などを相手どって訴えを起こす、と。

 ただこれには目下のところ法的根拠がないことは関係者自ら認めています。民間の賠償権を認める法案を立法機関である全人代に出しはしたものの、音沙汰なしということです。

 中国政府が民間の対日賠償権を承認するかどうかはわかりませんが、もし認めた場合、日本政府は「すでに国交樹立時に解決済みの問題」とスルーすれば済むことですが、中国に進出している一部企業には災難が降り掛かるかも知れません。

 ●関連記事
 http://news.xinhuanet.com/world/2004-12/15/content_2338030.htm
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2004-12/16/content_2343368.htm
 http://news.xinhuanet.com/legal/2004-12/22/content_2365206.htm
 http://news.xinhuanet.com/globe/2004-12/28/content_2388912.htm
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2004-12/29/content_2389632.htm
 http://news.xinhuanet.com/globe/2004-12/29/content_2391388.htm
 http://news.xinhuanet.com/globe/2004-12/29/content_2391393.htm
 http://news.xinhuanet.com/world/2004-12/31/content_2402406.htm

(中国で訴訟を起こす件は最後の記事に出てきます。ただ上の記事を全部読めば、この問題に関する中国側からみた流れを把握できるかと思います)

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 (2)「大同大虐殺」の新資料、実際の被害者は15.5万人

 これは今日(1月10日)「新華網」で報じられたものですが、山西省大同のいわゆる「万人坑」で6万人の中国人が殺された、という今までの「事実」をひっくり返す新資料が発見されたというものです。それによると実際の死者数は15.5万人、だそうです。一気に倍増ですね。すごい「新資料」です(笑)。

 ●関連記事
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-01/10/content_2439704.htm

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 (3)「南京大虐殺」を綴った中国人の日記、公開へ

 また凝りもせず南京なんたら事件ですか。地元紙『南京晨報』が伝えた、と香港紙『明報』が報じています。

 私は李登輝氏をアジアにおける戦後最大の哲人政治家として尊敬してやみませんが、台湾総統時代、闇に葬られて半ばタブー化していた「二・二八事件」に光を当てたように、南京なんたら事件の資料もしっかり公開してほしかったですね。それだけが残念です。

 歴史は政治的透明度の高い政府と社会においてはじめて独立した存在として屹立することができます。それが日本にとって不利なものであろうと、ちゃんとした証拠ならそれでよいのです。謝罪なり何なりは全て済ませている訳ですし、中国&南北朝鮮みたいな基地外は別として、それ以外の国はここ半世紀の日本の歩みに信用を置いてくれるでしょうし。

 ●関連記事
 http://hk.news.yahoo.com/050110/12/18dgx.html

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 (4)日本人弁護士の活動

 何やら重慶空襲やいわゆる慰安婦問題で日本人弁護士が証拠集めに頑張っているようです。ああ重慶空襲はもう「重慶大空襲」に昇格しております(笑)。「その被害の大きさ、残酷さとも他に例を見ない」という書き方をしているバカな記事もあったのですが、いまちょっと見当たりません。

 ●関連記事
 http://news.xinhuanet.com/world/2005-01/02/content_2407274.htm
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-01/02/content_2407134.htm

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 以上、ひとつひとつの動きは「よくあること」なのですが、この年末年始にまとまって出てきたのでちょっと気になっています。捏造歴史を「事実」とされるのは長い目でみれば中国人にも良いことがない訳ですから、いや中国人などどうでもいいのですが、日本もこういう問題では国を挙げて反論していくべきではないでしょうか。

 それから、スルーすべき問題は「そのことはすでに解決済みだ」と、毅然とスルーして欲しいです。

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 以下は余談ですが、私自身の経験として中国で歴史問題を持ち出されたのは1度だけです。留学中で六四(天安門事件)の直後、まだ反日キャンペーンがなかったころですが、内陸部を回って長江下りの船でのことでした。いちばんいい船室だったのでサロンのような、ソファなどがあって船客がくつろぐ部屋がありました。そこでのんびりしていると、40代くらいの服務員のオバサンが私のところへ来て、

「あなたは日本人か」

 と先に聞くこともせず(私が日本人であるのを先方は知っていたので)、いきなり、

「重慶空襲を知っているか。あの空襲で××が死んだ」
(××は家族だったか親戚だったか覚えていません)

 と言うのです。私はこういう質問には懇切に対応する方なので、

「あなたは服務員だ。そして私は乗客である」

 と互いの立場をはっきりさせた上で、

「話があるならあなたの勤務時間外に聞こうじゃないか」

 と言いました。憎たらしい日本人だと思ったでしょうが、それがルールというものでしょう。この話はそれまでになりました。

 あと香港で1回、友人の友人(どちらも香港人)が私が日本人だと知って、

「俺のひい爺さんは日本軍に捕まって殺された」

 と言うのです。彼は別に深刻な話題として出した訳ではなさそうでしたが、それでも私は懇切に対応してあげます。

「日本軍が殺したという証拠はあるか」
「お前の曾祖父が日本軍にとっての利敵行為をやっていないという証拠はあるか」
「根拠をもとに物を言う。それが科学的態度というものだろう。……ところで戦時国際法は知っているか」

 と言って相手の口を封じました。もっとも華人圏に住み古す日本人の多くがそうであるように、私もまたローカルには割と好かれる方でしたし、上のことは下手糞な広東語でたどたどしく言うことしかできなかったので、文字ほどに深刻な色は帯びていません。

 ですからすぐ自然に別な話題になって、何事もありませんでした。もし相手が大陸の中国人で、私が北京語を使ったのならまた違っていたでしょうが、それならそれで、私はやはり懇切に対応してあげたことでしょう。

 見てみたいところは多々ある大陸(中国)ですが、15年前ならともかく、現在の社会状況下では行く気にもなりません。赤くなった香港にも魅力を感じません。それより台湾に行きたいです。出張の口実をひねり出して、友人たちの顔を見に行ければいいのですが。



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「只動嘴不動手,是中国五千年来的優良傳統。」(口ばっかなのは中国五千年の良き伝統だなw)

 と、取りあえず私が反日サイトの掲示板でよく使う言い回しを中共にプレゼントしておきます。

「えっ?もうおしまい?」

 てな感じです。「李登輝氏訪日」シリーズは中共のリアクションを見届けた上で結ぼうと思っていたのですが、

「『中日共同声明』など中日間で取り交わした3つの政治的文書の基本原則に背いた」
「戦争メーカー」
「中日関係にダメージ」(日本にダメージ、ではなく日中関係なんですね)
「必ずや自業自得という結果を招くだろう」

 などなど、来日前はずいぶん過激な言辞を弄していたからよほど凄いものがと思っていたら、もうお終いですか。何て言うか、中共って早すぎ(笑)。

 李登輝氏帰国後に中国外交部が出したコメントがまた淡白で。

 ――――

中国:李登輝氏訪日への対日報復見合わせ 外務省局長示唆(毎日新聞)
2005年1月6日 19時43分

 【北京・上村幸治】中国外務省の孔泉報道局長は6日、日本訪問を終えた台湾の李登輝前総統について「台湾独立を急ぐ人物は、あらゆる正義感を持つ人に唾棄(だき)されるだろう」と批判した。しかし、李氏の日本での行動には言及しなかった。
 また査証(ビザ)を出した日本政府への報復措置にも触れず、報復を見送ることを示唆した。李氏が日本で注意深く政治活動を避けたため、追及するとっかかりを得られなかった模様だ。
 李氏の訪日問題は中国外務省が激しく反発し騒ぎを大きくした。しかし報道局長はこの日の会見で「一部のメディアが関心を持っているらしい」と人ごとのように述べ、記者団の失笑を買った。中国外務省としては、これ以上問題を引きずりたくない模様だ。(後略)
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20050107k0000m030056000c.html

 ――――

 ちなみに孔泉報道局長、原文では「一部のメディア」ではなく、いけしゃあしゃあと「一部の日本のメディア」なんて言っています(※1)。これでは記者も、

「人ごとのように述べ」
「記者団の失笑を買った」
「これ以上問題を引きずりたくない模様だ」

 と書きたくもなるでしょう(笑)。孔泉はあたかも中国版コミカル・アリ(フセイン政権崩壊時の情報相)のようなものですね。

 ――――

 で、これでおしまいのようです。

「『中日共同声明』など中日間で取り交わした3つの政治的文書の基本原則に背いた」
「戦争メーカー」
「中日関係にダメージ」
「必ずや自業自得という結果を招くだろう」

 という激しい言葉にふさわしい報復を楽しみに待っていたのですが、これでおしまい。「只動嘴不動手,是中国五千年来的優良傳統」なのです。

 まあ騒げば騒ぐほど、中共がいかに法治(日本によるビザ発給)や思想の自由(台湾独立論者)を理解していないかを全世界に宣伝するようなものですからね。騒ごうにもこれ以上の理屈が出てこないし。

 そもそも日本政府も支持する「一つの中国」なんですから、その政権党である中共が、「一つの中国」の国民である李登輝氏を出国させなければ何の騒ぎにもならないのでは?(笑)。

 ――――

 さて、報復措置の件はどうなるのでしょう?

 予定されていた自民、公明両党議員団の訪中を中国側が延期にしたのは、たとえ中国側にそのつもりがあったとしても、口が裂けたって報復だなんて言えないでしょう。あの激語とまるでつり合わぬショボい「報復」では、カッコ悪すぎだからです。

 あとは愛知万博に胡錦涛や温家宝は寄越さず、副首相クラスだけが来るということのようですが、だから何?

 ●国家指導者が会談拒否=愛知万博には副首相派遣検討-李前総統訪日が影響・中国(時事通信)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050107-00000703-jij-int

 相変わらずの自己肥大症ですね。胡錦涛や温家宝がいようがいまいが、地球は回るのです。

 ●駐日中国大使館:公明・神崎代表に早期の訪中打診(毎日新聞)
 http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/seitou/news/20050106k0000m010135000c.html

 一方でこんなことをしているようですね。一本釣りによる切り崩しは中共の常套手段です。まあ子供騙しみたいなものですから、その手は桑名の焼蛤……じゃなくてその手に乗ってはい神崎。

 ――――

 中共にとって李登輝氏の訪日を通じて学習したことは、いまの日本にはあの程度の恫喝では全く効果がない、ということでしょうか。脅しが効かないともう次の手はありませんから、訪日中の李登輝氏の様子を悪意を込めてピエロのように描写した一連の記事(※2)を国民に見せて、対外的には孔泉が澄ましたポーズで幕引き、と。

 そのつもりなら、少しぐらい意地悪してもいいでしょう。やっぱり日本人記者には今後3カ月くらい「ところで李登輝氏の訪日に対する報復措置は……」と、記者会見のたびに質問し続けてほしいところですね。

 ――――

 ところで以下のことは抑制されていると言うべきか動揺の反映と捉えるべきか。例えば新華社系の週刊誌『国際先駆導報』は、

「中日関係は氷点にまで落ち込んだ」
「大局を破壊することで最終的に不利になるのは日本だ」

 という内容の論評記事(※3)を出す一方で、「中日両国の世論は互いに改善していく必要がある」とか何とか言って、専門家に色々語らせています(※4)。日本だけでなく中国の世論にも改善すべきところがあるというのです。例えば、

 (1)日本人=日本鬼子のような固定観念を捨てるべし。
 (2)日本による対中経済援助が中国によい変化をもたらしていることを認め、適度に宣伝する必要がある。
 (3)盲目的な「中華自大症」を煽らないようにする。偉大な民族は開放的で包容力のあるものだ。
 (4)教育や宣伝活動における「抗日」「反日」の比重を適度に調整する。

 これ、反日サイトの掲示板に書いたら絶対に売国奴扱いされる内容です(笑)。それにしても、やっぱり「反日教育」「反日キャンペーン」は実在したんですねえ。

 このほか「新華網」では、

「日本の『人に優しい社会づくり』には大いに見習うべきものがある」

 という標題(大雑把な翻訳)の文章がトップの中に並んでいたりします。

 ――――

 国内を騒がせないよう報道内容に配慮しつつ、恫喝が通じなくなった日本への対応をどう修正すべきか党中央は策を練っている最中、というところでしょうか。まだダライラマ訪日が控えていますし、あるいは李登輝氏の再来日(桜の季節に奥の細道探訪)も実現するかも知れませんからね。

 でも親切で言っておくと、前にもふれたように、「右翼左翼」で日本の現状を捉えようとしている間は、進歩はないですよ。外交戦で日本に先手を取られる一方か、顰蹙を買う挙に出て日本の対中世論を硬化させるばかりという結果になるでしょう。

 ちったあ空気読めよ胡錦涛、ということです。……王毅、お前もだ。

 あと温家宝、炭坑事故の遺族に会ったときに取材陣がいるからって無理矢理ウソ泣きするのはやめるように(笑)。


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 【※1】http://news.xinhuanet.com/zhengfu/2005-01/07/content_2427134.htm
 【※2】http://news.xinhuanet.com/world/2005-01/04/content_2416051.htm
     http://world.people.com.cn/GB/1029/42354/3097237.html
     http://news.xinhuanet.com/taiwan/2005-01/05/content_2418298.htm
 【※3】http://news.xinhuanet.com/world/2005-01/04/content_2413999.htm
 【※4】http://news.xinhuanet.com/herald/2005-01/04/content_2413317.htm



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 先日、青海省で大規模な交通事故がありました。中国では死者10名以上の事故を「特大事故」と呼ぶようですが、この事故では現時点での死亡者数は55名。まことに桁外れな交通事故です。

 チベットのラサから四川省に戻る人を満載したトラックが横転してかくなったようなのですが、なぜそれで死者55名かといえば、そのトラック(の荷台)に104人が乗っていたからです。

 別の事故写真で同型車を見ることが出来ますが、トラックというよりダンプカーですね。

 http://news.sohu.com/20041101/n222784901.shtml
 http://ent.jschina.com.cn/gb/jschina/news/jiangsu/njnews/userobject1ai485302.html

 あ、今回の事故の現場写真もありました。どうも横転だけではなく、崖下に転落したような様子です。

 http://news.xinhuanet.com/photo/2005-01/04/content_2415473.htm

 しかしこれで104人も載せられるものなんでしょうか。まあ46人乗りの通学バスに63人の児童を詰め込んだ校長先生もいることですから(※1)、想像できないこともないんですけど、しかし無茶が過ぎるというか……いや現地の人にとっては無茶の内には入らないんでしょうけど。

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 人口が多いだけではありません。そういう安全観念の希薄さもあって中国では人がよく死にます。政策的に減らしているのではないかと思うほどです。前にも紹介しましたが、炭坑事故ひとつとっても昨年1-11月における事故件数は3413件、死者は合計5286人です(※2)。

 で、国家安全生産監督管理局が7日明らかにしたところによると、2004年における生産活動中の死者は合計13万6000名余、1日平均で373人が労災で亡くなっていることになります(安全生産監督管理局の発表ですから、一般の交通事故は含まれないと思います。たぶん)。
 http://www.chinanews.com.cn/news/2005/2005-01-08/26/526041.shtml

 1日の平均死者数が373名ですよ。

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 この記事によると、関係部門は昨年の特徴として以下の4点を挙げています。

 ●事故件数が相変わらず多い。
 ●特大事故、特別重大事故(こんなのもあったんですね)の増加に歯止めがかからない。
 ●一部の業界や領域での事故件数が上昇している。火災、爆発、交通事故など。
 ●一部の地域で特大事故が多発している。発生件数が比較的多いのは貴州、山西、四川、湖南、河南、山東、陜西、河北、広西、重慶、湖北など。

 内陸部での事故が多いのは、これらの地区が石炭など大型事故の起きやすい、いわば川上産業の担い手だからでしょうか。

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 労災による1日平均死者数が373名。これに純粋な交通事故や殺人事件、天災なども加えれば、1日平均500名に届くのではないかと思います。

 毛沢東の人海戦術はいまなお健在、と思わせるのは、一昨年の珠海集団買春事件で瞬く間に200人だか300人の売春婦を集めたこと(笑)……ではなくて、人命軽視という点です。

 平松茂雄氏の『中国人民解放軍』(書名は記憶モード)で読んだのですが、朝鮮戦争や中越戦争において、中国軍は敵の地雷原にぶつかると、どんどん歩兵を突入させたそうです。当然地雷に触れて死ぬ兵士が続出するものの、それはお構いなし。それを何度も繰り返して地雷を排除し、突撃路が確保されたところで本格的な突撃に移るんだそうです。

 第二次大戦の北アフリカ戦線、あれはエル・アラメインでの陣地戦でしたか、ロンメル率いるドイツ軍は数十万個だかの地雷を埋めに埋めて敵襲に備えたのですが、対する英国軍はその地雷原に断続的に猛砲撃を加えることで地雷を次々と誘爆させ、あらかた片付けたところで攻勢に出た……という話とあまりに対照的です。

 余談に流れましたが、効率無視で規模拡大最優先という未だに根強いGDP信仰が「大躍進」以来の伝統だとすれば、労災による1日の平均死者数373名という途方もない数字は、やはり毛沢東と「人海戦術」の名残りなのかなと思ってしまうのです。


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 【※1】http://news.xinhuanet.com/newscenter/2004-10/12/content_2079430.htm
 【※2】http://news.xinhuanet.com/newscenter/2004-12/14/content_2333249.htm



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 標題はもちろん自分を諷したものです。チナヲチという趣味から10年以上遠ざかっていたので、現在の報道が描き出す中国というものに私はまだ十分に適応できていないようです。

 1992年のトウ小平による南方視察とそこで出た改革大号令(南巡講話)、そしてそれを受けて1988年以来の経済引き締め路線が一蹴され、経済改革一色となった1993年の全人代……その後のことはもうわかりません。いきなり2004年に放り出されても別の国のように思えて、戸惑うことが多くて。

 例えばですよ、銃を使った犯罪とか、携帯電話を利用した詐欺とか、ネットで知り合って実際に顔を合わせた際に起こる強盗事件や性犯罪とか、ロリコン変態教師とか……何だか悪い例ばかりのようですが(笑)。

 何よりも特筆すべきは、暴動・デモ・スト・座り込みといった示威活動が全国的に頻発していることでしょう。これについては発生するごとに当ブログで速報なり詳報なりを伝えて大半のものをカバーしていると思います。一時期は暴動専用ブログになった観もありました(笑)。

 民衆が立ち上がった原因についてはその都度検証らしきことをやってきたつもりですが、そのうちのいくつかについてはどうも納得がいかず、首をひねるものもありました。「物価上昇でこのままでは暮らしていけない」といった理由を掲げたものがそれです。例えば安徽省のお爺さんお婆さんデモ、内蒙古自治区包頭市のデモ、それから未確認ながら四川省でも2県でその種のデモが発生し、市民が鉄道線路を封鎖するといった事件がありました。

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 私は東京から眺めていますので、現地の生活感覚などわかりようがありません。物価上昇ってそんなにすごいものかな、というのが率直な感想です。例えば昨年第3四半期(2004年7-9月)における都市部の消費者物価指数は前年同期比で4.1%です(※1)。

 たったの4.1%じゃないか、と思うのは私が六四世代(1989年の民主化運動や天安門事件を担った大学生たちと同世代)だからでしょう。1988年夏に18%を超えるスーバーインフレが発生して社会が著しく混乱し、経済政策が改革深化から引き締めへと転換。これによって主導権も趙紫陽総書記から李鵬首相へと移り、この混乱や路線変更が翌年の大学生による民主化運動の伏線のひとつとなりました。

 とはいえ、物価上昇率が18%超にまで達した当時でさえ、買い争いはあったものの、市民や農民の間でデモなどの示威行動に出たケースは皆無といっていいでしょう。……そういう先入観なり体験なりがあるために、4.1%で市民がデモに立ち上がるという点が十分に納得できませんでした。もちろん、当局発表を鵜呑みにできない、つまり実勢は国家統計局の発表を大きく上回っていると考えることもできますが、それにも限度があるでしょう。

 しかし振り返って思えば、私がいまひとつ納得できなかった点こそが、この10年間で最も変貌した部分だったのですね。他でもありません。所得格差、貧富の差が著しく拡大したということです。

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 数字については前回のコメント欄で「1読者」さんが色々と分析して下さっています。そこで言及されている「大紀元」というのは恐らくこの記事かと思われます。

 ●中国の貧富の差、もはや天地の開きに
 http://dajiyuan.com/gb/5/1/7/n773129.htm

 その元ネタを探して出てきたのが、大手ポータルtom.comが『中国青年報』から転載した記事です。

 ●豪邸品評会は社会的弱者の不公正感を激化させる
 http://news.tom.com/1002/20041207-1621865.html

 関係のある部分をかいつまんで訳しますと、

「中国で100万ドル(米ドル、以下同)の金融資産を擁する富裕者は23.6万人。これら富裕層の総資産はすでに9690億ドルに達している。然るに中国の2003年度GDPはわずか1兆4000億ドルにすぎない。」

「資産による分類を行った場合にもう一方の極に位置するのが貧困人口だ。2003年の貧困人口は2900万人で、前年より80万人増加している。しかもこの層は年収が637元(人民元、以下同)以下であり、その収入は1日当たりだと2元にも満たない。」

「ある専門家の試算によると、中国を収入で5段階に分けた場合、最も貧困な家庭の収入の総和が全国総収入に占める割合は4.27%。その上の階層だと9.12%、中間ランクのシェアは14.35%、その上が21.13%となり、最も富裕な階層による比重は50.13%にも達する。」

 簡単にいえば、中国の家庭を収入の多寡で5段階にランク分けすると、中国全体の富の半分が一番金持ちの階層に集中しているということです。これほどの偏りは、もちろん10年前にはなかったものです。「中時電子報」(2004/03/01)が引用した『New York Times』の記事はこう表現しています。

「最近の調査によれば、中国大陸の貧富の格差の大きさはすでに米国や日本、韓国そしてインドを超えており、1940年代の国民党政権当時のレベルに近付いている。つまり貧富の差についていえば、大陸はすでに『解放前』に戻ったということだ」

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 最近僥倖ともいうべき出来事がありまして、「棲息地その2」に北京在住の方が広く深くまた鋭くもあるレポートを寄せてくれるようになりました。その方が挙げてくれた月収のひとつの目安というのが、

 ●一般労働者:700元
 ●食堂に住み込みで働く「打工妹」:300-500元

 というもので、私もこれは妥当な数字だろうと思います。日本にいる私がどうこう言えやしないのですが、報道から察することはできます。

 ●以前扱った国有企業買収&リストラに絡んだストライキ(※2)で、「工員の月収は600-800元」となっていた。
 ●『光明日報』が今夏に発表したネットユーザー調査(※3)で、月収500元を「低所得者」と表現。
 ●『重慶晨報』のルポに「華東地区では、民工の最初の1カ月の給料は375元だ」という民工のコメントが出てくる(※4)。
 ●『経済参考報』の記事に「2ムー(約13.4アール)の畑があったって1年で精々2000元にしかならない。それが広東に出稼ぎに行けば1カ月半でそれだけ稼げる」という湖北省京山県の民工のコメントが出てくる(※5)。月収にして1300元ちょっと、広東だから相場がいいのか、この民工が技能を有していて待遇がいいのかは不明。

 一方のホワイトカラーはどうかといえば、『経済参考報』が先ごろ2004年の最終学歴別平均月収を紹介していました(日付失念、許されたし)。

 ●大専(2613元) 、大学(3569元)、修士(5288元)、博士(5932元)、MBA(7709元)。

 これだけ格差があると、ライフスタイルから何からが全く異なるものになるでしょう。一億総中流のつもりでいる日本人にはちょっと想像しにくいのですが、全く接点のない、2つの生活世界が存在するということになります。

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 同じ都市でも収入でくっきりと分かれた2つの世界があり、一方で都市と農村の間にも甚だしい格差があります。農民が出稼ぎに沿海部へと出て来るのですから当然でしょう。国家発展改革委員会(発改委)が1月5日に試算したところ、2004年の農民1人当たり純収入は前年比6%を超えるとのことです(※6)。

「2004年は国家が農業政策に対し各面でこれまでにない強力なサポートを行った1年であり、1997年以来、農民の収入が最も多く、伸び幅も最大の1年だった」

 と発改委は自画自賛していますが、この伸びは主として出稼ぎ労働によってもたらされたものです。四川、貴州、湖南、湖北、安徽などの各省が「労務輸出」をしているようなものです。

「世界銀行の試算によれば、国家総収入を都市と農村でみた場合、中国は1978-1984年の時期に、農村部収入の比重が40%足らずから55%にまで上昇したが、1985年以降、この比率は再び1978年の水準に戻った」(※7)

 という指摘もあります。

 ――――

 ……と、ここまで考えるに至って、愚鈍な私もようやく納得するのです。以下は某巨大掲示板の東亜板「暴動本スレ」でも前に書いたことなんですが、眠いので再利用させて下さい。

 ●4.1%の物価上昇(実勢はややその上を行くかも知れませんが)は上海や北京なら許容範囲でも、四川や安徽、陜西、貴州、青海といった富裕層の薄い内陸各省なら「こりゃたまらん」となるかも知れない。

 ●同じ上海なら上海で、4.1%の物価上昇はホワイトカラーや金持ちには痛くも痒くもないものの、貧困層には大きなダメージとなり、「もう限界」とデモを行うような追い詰められた状況となる。

 中国は経済を緩やかに減速させる(軟着陸=ソフトランディング)ことを目指しています。それが出来るかどうかはともかく、手綱が絞られる以上、就業機会がそれによって増えるとは考えにくい。むしろ失業者が増えて、貧困層が拡大する可能性の方が高いのではないでしょうか。

 そんな訳で、去年は党幹部の汚職や横暴、民族衝突、労働争議などによるものが多かった示威活動(暴動・デモ・スト・座り込み)ですが、今年は都市部で物価上昇を反映した騒乱も増えるかも知れません。

 消費者物価指数が前年比4%増でデモが起きるのですから、当局もそれは神経質になるでしょう。胡錦涛政権による言論統制や民間組織の先走り封殺、その原因には「指導力を強化して構造改革」だけでなく、こういった要素もあるのかも知れませんね。


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 【※1】http://www.people.com.cn/GB/jingji/1037/2936988.html

 【※2】当ブログ「あれからどうなったのか……」(2004/12/23)。

 【※3】当ブログ「ネット世論=江沢民チルドレン」(2004/08/11)。

 【※4】http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-01/04/content_2413178.htm

 【※5】http://jjckb.xinhuanet.com/www/Article/20041122121014-1.shtml

 【※6】http://news.xinhuanet.com/fortune/2005-01/05/content_2419858.htm

 【※7】http://www.whb.com.cn/bsjhcdjy/t20041220_330199.htm



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 今回は以前ここで紹介した事件などの続報などをまとめてお送りします。

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●(1)深セン税関総合ビル立ち退き騒動

 香港紙『明報』(2004/01/06)の報道によると、4日(※1)に引き続いて5日も抗議行動が行われたとのこと。ただ警察は前回警官(公安)が役に立たなかったためか、今回は防暴警察(機動隊)を投入。ビル内に残って抵抗していた数百名を実力排除し、ビル周辺を封鎖しました。立ち退かされたテナント側の従業員たちは、ビル後ろの草地に集まって機動隊とにらみ合い。何度か小競り合いが起きて逮捕者も出たようです。ただ深セン市政府の労働部門がこの件に介入した模様で、事態を悪化させぬよう、とりあえず従業員たちの給与(未払い分)と保証金(就職時に会社に預けるもの?)が政府から支払われることになりました。ただ5日の時点ではこれらはまだ支給されておらず、多くの従業員が「カネをもらうまでは動かない」と、ビル付近に野宿して抗議活動を継続しているようです。

 たぶん従業員の多くが他郷からの出稼ぎ者でしょうから、給与をもらわなければ動かないというのは意地でもあり実情でもあるでしょう。以前同じ深センの印刷工場で従業員が休暇を求めてハンストしたときも同市労働部門の介入により一件落着となっていますが(※2)、これをゴネ得と表現すべきかどうかは難しいところです。

 中国で抗議活動などをしてゴネるには相当な決断が必要になります。結果的に問題が解決されてはいるのですが、本来こうした抗議活動は不法集会・不法デモと違法認定されてしまうものです。労働争議を発端にこういう行動が広がっていけば、必ずどこかで流血の惨事となることでしょう。

 『明報』の記事
 http://hk.news.yahoo.com/050105/12/188e7.html

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●(2)毛沢東思想で現代中国を斬る!=懲役3年

 これは河南省・鄭州市で起きた事件でしたね(※3)。毛沢東の命日である9月9日、地元の定年退職者2名がビラをまいたのですが、その内容が標題通り「毛沢東思想で現代中国を斬る!」というもの。毛沢東の著作に基づいて、中共の「第二代」及び「第三代」の「核心」(つまりトウ小平と江沢民)を批判したものなのです。

 ええ、もちろん2人はその場で逮捕です。鄭州市金水区法院は今月21日に第一審がスタート。検察側は当初「煽動転覆罪」で起訴したものの、判決は「誹謗罪」で、両人には懲役3年が言い渡されました。

 この裁判が注目されたのは、毛沢東思想はいまの中国においてもマルクス・レーニン主義などと並ぶ憲法に明記された指導思想ですからです。その理論、観点に基づいて現代の中国社会に出現した諸問題に批評を加えるのは、本来問題にならない筈です。

 で、続報は反政府系ニュースサイト「大紀元」が1月5日報じています。
 http://www.epochtimes.com/gb/5/1/5/n771241.htm(簡体字版。文字化けあり)
 http://www.epochtimes.com/b5/5/1/5/n771241.htm(繁体字版。推奨)

 続報というほどの内容でもないのですが、昨年12月21日の第1回公判の日は大雪で、それにも関わらず多くの人が朝から集まって2人を声援、また裁判を傍聴しようとしたのですが、当局はそれを許さず、「非公開裁判」の形で進行、わずか3日後の24日、「誹謗罪で懲役3年」という判決が下ったとのことです。両人はこれを不服として直ちに控訴を申し立てたとのこと。

 ところでこの事件を伝えた際、私は末尾に、

「まだ中国政治に『改革派』『保守派』という色分けがあった時代に、バリバリの社会主義理論家たちの拠り所に『求是』という雑誌がありました。現存するかどうかはわかりませんが、ビラをまいた2人はこの種の雑誌を愛読するような、うるさ型の親爺だったに違いありません(笑)」

 と書いたのですが、実際はそうでなく、2人とも鄭州における労働運動の指導者だったようです。反政府系ともいえる活動家ですね。だいたい「大紀元」ではこのニュース、出処を「中国工党河南党部電」としているのですが、そもそもこの「中国工党」なるものは政府非公認の政党、つまり地下組織でしょう。「うるさ型の親爺」なんて言ってごめんなさい。

 ――――

 ところで昔は左派(バリバリの社会主義理論家)の拠り所であった『求是』という雑誌は健在でした。とはいえ「改革・開放は社会主義的といえるのか?」という「姓社・姓資」論争には十数年前にピリオドが打たれ、改革・開放を前提とする世の中になっているため、改革・開放自体を否定する論調はもうありません。最近の文章ですと、

 ●党は法律を超えてはならない
 http://the-sun.com.hk/channels/news/20050104/20050104025035_0001.html

 「党(中共)は憲法と法律の範囲内で活動すべきで、憲法や法律を凌駕してはならない」とマトモなことを言っていますが、これも政治的に何らかの含みのあるものなのでしょう。誰あるいはどの派閥のことを指しているのやら。


 ●新聞や雑誌が社会を不穏な空気をまき散らしてはならない
 http://the-sun.com.hk/channels/news/20050107/20050107024503_0001.html

 これは保守派の面目躍如といった内容です。「国際的な敵対勢力が絶えず我々に攻撃や圧力を繰り出してくる現在の状況にあって、我々は自ら足並みを乱すような事があってはならない。いまは(新聞・雑誌への)管理を強化し、大局の必要とする方向へ(世論を)しっかりと導くようにすべきだ」と論じています。

 しかしこれは胡耀邦や趙紫陽が総書記を務めていた時代であればいかにも「保守」なんですけど、言論統制の強化が各分野で図られている現在の胡錦涛政権では、保守的な物言いという訳でもないですね。かつて正統な社会主義を唱えた雑誌が、時代の移り変わりとともにその役目を終えた観がある、ともいえますし、胡錦涛政権が胡耀邦・趙紫陽の時代に比べれば開明色など嘘っぱちで、いかに暗い面を持っているか、ということの証かも知れません。


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 【※1】当ブログ「またまた立ち退きめぐる騒動――深センの税関ビル」(2005/01/05)。
 【※2】当ブログ「「月月火水木金金」に工員がハンストで抗議」(2004/12/30)。
 【※3】当ブログ「毛沢東思想で現代中国を斬る!=懲役3年」(2004/12/27)。



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 きのう(4日)香港あるいは大陸から皇崗を抜けて出入境した方は……いる訳ないですよね。

 深セン市皇崗は大陸側の出入境窓口のひとつなんですが、昨日そこで再開発に伴う騒動が発生しまして。デモや暴動とはちょっと違うような気もしますので、立ち退き断固反対の示威活動としておきましょう。今日(5日)の香港紙『明報』と『蘋果日報』では、参加者は1000名にのぼったとあります。同じく今日の『太陽報』では300名余り。まあ賑やかな方がいいですから1000名規模としておきますか(笑)。

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 事件の発端は、この出入境窓口が設けられた税関総合ビルを含む一帯を緑地公園にするという計画が持ち上がったこと。各紙の報道を総合しますと、このビルは1991年から1992年にかけて建設された6階建ての建物で、下は出入境窓口、上の階にはサウナ、床屋、レストランや売店などテナントに15軒が入っており、このうち2フロア(5-6階)を占めるレジャーセンター(健康ランド)「宏昌娯楽島」は従業員1000名を抱える大型企業で、今回の抗議行動でも主力を務めたようです。

 何はともあれ、再開発事業を進めるべく、テナントに対しては2004年いっぱい、つまり先月末までに立ち退くようにと当局からお達しが出ていた訳です。

 ところが、立ち退きに伴う費用が正気とは思えぬほど低い。どうして低いのか、また役人の着服があったのかは一切不明ですが、補償額に関する約半年にわたる協議は決裂。立ち退き期限も過ぎたということで、1月4日午後2時ごろ、当局が公安(警官)その他を伴ってビルに入り、電気・水道などいわゆるライフラインをシャットアウト。この時点で1-4階にはすでに工事業者が入って取り壊しが進められていたのですが、「宏昌娯楽島」の社員たちは通常通り出勤していたとのこと。

「何しやがる」

 とテナントの経営者やそこで働く人たちは憤慨して小競り合いが発生したものの、相手は完全武装ということで追い立てられ、追い立てられるまま屋上にのぼり、抗議行動が始まったというものです。これが「宏昌娯楽島」従業員を主力とする約1000名。まず用意していた抗議スローガンを大書した垂れ幕(最初からヤル気だったんですね)を何本も屋上から下ろすとともに、スローガンを唱和しつつ、地上に向かってレンガやらゴミやらを投げ下ろし始めました。

 ――――

 こうなると警察(公安)の出番です。その面々が現場に到着したのは午後3時ごろ。警官隊など数百人が現場を包囲しましたが、瓦礫やら何やらが天から降ってくるという思いがけぬ状況に躊躇し、躊躇しているうちに瓦礫の直撃を受けた警察車両2台が損壊。

 何しろ出入境窓口ですから、現場には香港に抜けようとする一般の車両が入ってきます。それら一般車が巻き添えを喰わぬよう警察は道路を封鎖、迂回路を通らせるようにしたのですが、このため大渋滞が発生。この間、突撃取材を狙って屋上にのぼった記者が、当局者と間違えられてテナント側にタコ殴りにされたり、香港に戻るトラックに瓦礫が命中したり、ハプニングが続出したようです。

 その後、午後4時40分に百人近い警官隊が屋上にあがって鎮圧に当たろうとしたのですが、相手は1000人ということで衆寡敵せずに敗退。いつものことですが公安弱すぎです。

 当局側は仕方なくビルを取り巻く一方で、ハンドマイクによる説得工作。午後5時半ごろ一部の従業員が軟化してビルを離れ、午後7時ごろにはテナント経営者と現場を収拾することで一応の話し合いがつき、ようやく今回の抗議行動に幕が下ろされた次第。ただし従業員たちは意気軒高で、「抗議行動を続ける」との強硬姿勢は崩していません。

 ――――

 さて、今回の騒動も立ち退き補償額が合意に達しなかったことに起因している訳ですが、具体的にはどういう内容だったのか。『蘋果日報』の報道によると、例えば抗議勢力の主力となった「宏昌娯楽島」ですが、経営者である湖南人の申さんは、数人の出資者とともにこの事業を立ち上げ、ビル側と12年の賃貸契約を締結。これまでに3600万元の資金を投入して経営してきたのですが、当局側は「(ビルを)壊すといったら壊すのだ」という一点張りで、補償額は1平方メートル当たりたったの50元。『太陽報』では500元となっていますが、50元にせよ500元にせよ、経営者にとっては大損であることは変わらず、閉店するため解雇することになる従業員たちに給料を支給することもままならぬ有り様です。

 その従業員たちに当局が出すという補償額は1人当たり120元、これはいくら何でもひどすぎますね。労働者を舐め切っているとしか思えません。経営者たちも損失を被ったことで、各テナントで未払いになるとみられる給与総額は合計数百万元になるそうです。一部の経営者も含めて、いきなり路頭に迷うことになったも同然です。しかもちょうど旧正月前の時期。転職シーズンは旧正月明けから始まるので、途方に暮れるしかありません。ある意味、この人たちも土地から引き剥がされた農民同様、その日暮らしの流民に等しい境涯に放り出されることになります。


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 ●『明報』
 http://hk.news.yahoo.com/050104/12/186x5.html

 ●『太陽報』
 http://the-sun.com.hk/channels/news/20050105/20050105022025_0001.html

 ※『蘋果日報』は有料記事ゆえURLを出せません。御了承下さい。



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 えー正月早々、香港紙『明報』(2005/01/03)が興味深い記事を掲載しました。日本流にいえば御節料理に食あたりしたかお屠蘇に悪酔いしたか、とにかくイカレた基地外が飛び出してきた、というところです。まあ動物園で珍獣を見物するつもりで読んでやって下さい。

 ――――

胡錦涛国家主席、建言受け入れ対日強硬路線へシフト
靖国参拝で小泉首相を面詰 早くも効果が

 【明報・陳永階北京特派員】中国共産党中央の機関紙『人民日報』の林治波・評論部副主任はこのほど、中共の新指導者(訳者注・胡錦涛国家主席)が同副主任の建言を受けて、日本の首脳と会見する際のこれまでのような遠慮・婉曲したやり方を改め、第二次大戦のA級戦犯を祭る靖国神社を参拝しないよう真正面から求めるようになったと明らかにした。胡錦涛国家主席は昨年11月に小泉純一郎首相と会談した際、小泉首相の靖国参拝を面と向かって非難している。林副主任はまた、中国首脳がこうして日本の指導者の誤ったやり方を直接指摘することで、目下猖獗をきわめる右翼勢力に打撃を与えることができると語った。

 中国外交部の記録によると、胡錦涛国家主席は昨年11月21日にチリで開かれたAPECで小泉首相と会談、その際に「日本の指導者の靖国神社参拝が両国の政治関係の障害になっている」「日本の指導者は靖国参拝問題を考えるとき、被害国の人民の感情、そして中日友好の大局に考えをめぐらせなければならない」とはっきりと指摘したことになっている。

●小泉首相、年初は参拝せずと言明

 中国指導者の強烈な態度表明を受けて、小泉首相は一昨日(1月1日)記者に靖国参拝について問われた際、年初には参拝しないと表明。資料によると、小泉氏は首相になって以来3年余りの間に、2001年8月13日、2002年4月21日、2003年1月14日そして2004年1月1日と、合計4回靖国神社を参拝している。

 今年41歳になる林副主任は、中国人民大学歴史学部を卒業後、軍事科学院に勤務するなど、中国における日本問題専門家の中でもバリバリの「鷹派」を代表する一人。対日強硬路線を主張し、中国国内の一部の学者が提唱した「対日新思考」とは真っ向から対立している。一昨日北京で開かれたある講演会の席上でも現在の日中関係について言及、「対日新思考」を改めて強烈に批判している。

 林副主任は、日本は日清戦争以来絶えず中国に対して侵略戦争をしかけ、第二次大戦に中国が被った損害は軍人及び民間人を合わせて死傷者3500万人、資産の損失は6000億米ドルにのぼるが、日本はこの戦争に対して現在に至るまで罪を認めていないと指摘。そんな中で一部の学者が歴史を顧みず、原則を捨てて、いわゆる「対日新思考」なるものを打ち出したが、これは実質的に中国の原則的立場を放棄するよう求めるもので、日本の右翼に対して寛容で譲歩するに等しいと批判した。同副主任はまた、こういった論調が党中央における意思決定層に採用されれば、必ずや「党と国を滅ぼす」ことになる、とした。

●学者の建言「面詰あるのみ」

 林副主任によると、孫文以来、中国の歴代指導者は日本に対して非常に寛容な態度で接してきたが、それによって日本側から得られたのは、恩を仇で返すような、またの果てしない欲望に裏打ちされた仕打ちだけだった。どうして日本の指導者はいつも中国の警告を聞き入れず、靖国神社を参拝し続けるのか。同副主任は日本人と接触を重ねるごとにそのことを探ったところ、中国の指導者はこれまで日本首脳に「参拝するな」と言ったことがなく、日本側は面と向かって言わないのだからその意思(靖国参拝に反対)がないに等しい、と考えていることがわかった。

 このため林副主任は、帰国後すぐに内部参考文書を書き上げ、中央の指導者が中国の従来の考え方を踏襲することなく、相手のメンツには構わず面と向かって問題点を指摘し、その害を取り除く必要がある、と建言したという。同副主任が語るところによれば、その後ほどなく行われた胡錦涛・小泉会談において、胡錦涛国家主席は小泉首相に靖国神社への参拝やめるよう面詰、小泉首相を唖然とさせ、日中両国の世論も中国の指導者が直接このような要求を小泉首相にぶつけたことを意外としながらも、中国の対日外交が「強腰」に転じたことを理解したのだという。

http://hk.news.yahoo.com/050102/12/184fk.html

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 いかがでしょうか。こういう人物が市井の片隅で床屋の政談をやっている(私のように)ならともかく、中共を代表する新聞『人民日報』で署名論評を書く部署の副主任だというのだから驚きです。まあしかし、新聞が民度を表すともいいますから、これはこれで妥当なのかも知れません。保守派で鳴らす中国人民大歴史学部卒ですか。なるほど絵に描いたようなキャラですね(笑)。

「中国の歴代指導者は日本に対して非常に寛容な態度で接してきたが、それによって日本側から得られたのは、恩を仇で返すような、またの果てしない欲望に裏打ちされた仕打ちだけだった」

 とは、あたかも糞青(自称愛国者の反日教信者)のイデオローグといった観があります。

 さて全体的な印象として、この記事は林副主任の怨念のようなものがあちこちから匂い立っているかのようです。ただしこの怨念は日本に対してのものではありませんね。『人民日報』評論部あるいは社内、ひいては日本問題専門家の世界に何やら深刻な派閥争い、あるいは路線闘争があることを思わせます。

 馬立誠は香港に飛ばしたものの、まだ対抗勢力には強力な論客がいるようです。江沢民の引退以来、反日度がレベルダウンして現実外交に転じた胡錦涛政権下にあって、ずっと肩身の狭かった対中強硬派がここで一気に鬱憤を晴らした、そんな印象も受けます。

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 一方でこの記事、イカれた年寄りから昔の手柄話を繰り返し聞かされているような感じでもありますね。「右翼勢力」という言葉を使うあたりからして、日本の政情と世論の変化、つまり日本の現実についていけていないことが明白です。

 記憶が曖昧なのもイカれた年寄り同様です。「死傷者3500万・資産の損失6000億米ドル」はこの種の病人にみられる典型的な症状(脳内妄想)としても、中国の指導者が靖国問題を直接日本の首相にぶつけたのは江沢民が小泉首相に対してすでにやっており(※1)、胡錦涛が初めてではありません。

 自分の建白書が胡錦涛政権を対日路線を転換させた、という自己肥大に立ち至っているあたり、林治波氏は恐らく不遇に対する不満からでしょうが、相当ストレスがたまっている印象を受けます(※2)。……で、対中ODA廃止論に動揺して「日本の経済援助でこういう素晴らしいプロジェクトが」なんて記事を出したり(※3)、李登輝氏の訪日を指をくわえて眺めていたり、糞青どもの「何ちゃってデモ」で日の丸と小泉画像の焼却に待ったがかかったことなども対日強硬策の一貫なんでしょうか?いやいやなかなか、強腰なことで。手厳しいですなあ(笑)。

 小泉首相が年初に参拝しないことを明言したことがニュースとなって「新華網」のトップ一覧を飾るというのも「強硬」の反映でしょうか?私は目が悪いせいか、中共がビクついて神経過敏になっているようにしか見えないのですが。

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 しかし、『明報』も堕ちたものです。香港マスコミの対日報道は反日に傾斜していますからこういう話題が記事になっても不思議ではないのですが、記憶違いに注釈を加えてやるとか、フォローするくらいの親切が記者にあってもいいでしょう。しかも文体が何とも機関紙臭い。一歩譲ったとしても香港の親中紙『香港文淮報』や『大公報』並みではないですか。同紙が中共の犬になったことは先刻承知なんですけど、このレベルでは読者を『蘋果日報』(Apple Daily)にごっそり持っていかれても仕方ないですね。

 まあ、新聞が民度を反映するということに照らせば、『蘋果日報』のような新聞が香港で最も売れているというのも問題ですけど。

 ともかく、右翼勢力なんて言っているうちは、中国は日本を正しく認識することはできません。このままでは外交戦で日本に先手を取られる一方か、顰蹙を買う挙に出て日本の対中世論を硬化させるばかりでしょう。時代が変わったんですから、早いとこ新しいモノサシを用意しなければなりませんよ。


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【※1】2002年の10月、メキシコで開かれたAPECに際して行われた小泉・江沢民会談。もっと古い例があるかも知れませんが調べが至らず相済みません。

【※2】その策を採ったかどうかは別として、林治波の書いた建白書が本当に胡錦涛に読まれたのなら、中共中央内部の風通しは決して悪くはないですね。

【※3】http://news.xinhuanet.com/newscenter/2004-12/28/content_2388685.htm



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 元日の東京は上天気でした。

 午後に配偶者と近場の神社に参拝。あ、近場といっても歩いて行くには骨の折れる距離ですから、さすがに地下鉄を使います。いかに御府内とはいえ貧乏御家人の屋敷がそんないいところにある訳がありません。しかも家賃取られますし風水悪いですし。公方様……。

 愚痴はともかく、小泉首相、今年は元日参拝ではなかったのですね。ちょっと残念。どうせなら1年に何回も参拝して「靖国インフレ」にしちゃえば中共も諦めるでしょうに。諦めなければ尚更いいんです。参拝する毎に胡錦涛政権の弱腰に批判と反感が高まっていきますから。もちろん、そのときは私もちゃんと「反日」を煽ってあげますよ(笑)。

 昨年もそうでしたが、靖国神社は20代くらいの若い人(カップルとか)が意外に多いんですね。行列して待つこと約40分。私たちの前は家族連れだったのですが、私より少し若いであろうパパが、小学生くらいの男の子に、

「この神社はね、お願いするところじゃないからね」

 と言って、噛んで含めるように色々と説明していました。ちょっと驚きました。

 参拝のあとは、零戦を眺めつつ海軍コーヒーというお約束のコースです。

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 そういえば、今年も猿回しをやっていました。

 いまは芸だけじゃなくて、芸の合間合間に掛け合い漫才のようにボケとツッコミが入るんですよね。それもちゃんとこなすのですから、猿も大したものです。

 外国人にはちょっと聞き取りにくい部分もあったでしょうが、配偶者は手を叩いて喜んでいました。……あ、申し遅れましたが配偶者は華人なんです。ただし大陸ではありません。

「靖国神社?お正月もお花見のときも屋台がたくさん出るから好き。A級戦犯?何それ?大陸は馬鹿じゃないの?」

 と、いつもこんな調子です。変な教育を受けていないのでピュアなのです(笑)。それで、こうして遠慮なく連れて来ることが出来ます。

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 猿といえば以前私は「棲息地その1」で問題発言をしたことがありまして。


「仮に命に値段があるとして、平均的日本人一人と平均的支那人一人が等価であるとは思えません。
 生産力から何から違いすぎるから。
 これって差別?
 経済効果を考えれば、日光猿軍団の猿5匹>支那人一人でもおかしくない。 」


 そのあと、さすがにそれはないだろうと思ったので前言を撤回しました。


「5匹は支那人への過大評価ですね。『日光猿軍団の猿2匹>支那人ひとり』こんなところでしょう。」


 ……きょう昨年の元旦に続いて猿回しの精妙な芸を見まして、上の思いをいよいよ強くした次第です。

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 ずっとそのまま馬鹿でいろ。安い賃金で死ぬまで働け。せめて猿並みに働け。

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 それが国際社会に担わされた責務であることを、中国は早く気付かなければなりません。実際、「世界の工場」とかいって自己肥大してますけど、有り体は外資という阿片にどっぷりはまって、もはや経済植民地同然じゃないですか。

 中央の高級幹部は一族郎党を要職に就かせるなり阿片絡みの特権ビジネスをさせるなりして、地方は地方で党幹部は阿片欲しさに農村の耕地を叩き売って、都市では地上げをやって。もちろんそのたびに自分の懐も潤います。

 追い出された人たちは満足な補償を受けられませんから、その日暮らしの生活に堕ちて流民同然。そうなるのがわかっているから、さすがに農民一揆だって起きます。地上げでの流血事件も発生します。

 「官」がそれにどう対処するかといえば、百姓一揆には軍隊投入。都市の地上げでは政府がチンピラを雇って力づくで住民を立ち退かせる。そんな陳腐な時代劇に使われそうな噺が、現実に起きているのです。「世界の工場」もあと何年もつか……外資はそろそろ次の候補地の見当をつけておいた方が、いいかも知れませんよ。

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 そういう無理を重ねて作り上げた繁栄を、ごく一部の人が享受しています。

 本来なならここで知識人と大学生の出番なんですが、教授は副業に精を出していて忙しいし、学生は学生でストリートダンスの全国大会なんか開いて盛り上がっているし。

 大体いまは学費の一部が自己負担になっているので、頭が良くても貧乏なら入学できません。それでも子供に教育を受けさせようと、営利誘拐に走る父親や、自殺して保険金を残そうとする母親が出てくる。実話ですよ。

 自殺未遂に終わった母親が、娘に泣いて詫びるのです。こんな情けない親でゴメンね、と。1919年の五四運動当時の北京大学生がこれを見たら、あるいは魯迅がこれを見たら、果たして何と言うでしょうか。

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 ま、所詮は自分と無関係なよその国の話ですから、こう書いてはいても、あまり身を入れちゃいません。何たって余暇の娯楽としてやっていることですから。それに、隣国が愚民政策で馬鹿を大量生産してくれる方が、日本としては有り難いじゃないですか。

 チナヲチとは、まあ気象予報官のようなものでしょうか。天気図を出して概況を説明して、明日の天気を予測する。

 違うのは、私の場合、概況の説明が出鱈目で、予報もまるで当たらないということです。こればかりはどうしようもありません。恥じ入るのみです。

 いや、「歴史を鑑に前向きに」いくべきですね(笑)。昨年よりは少しはマシになるよう、励みます。

 改めて、本年も宜しくお願い申し上げます。



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 新年明けましておめでとうございます。
 今年も宜しくお願いします。

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 ……ってこんな時間に何をやっているんだ、と言われそうですが、夜型生活を強いられる私にとってはそろそろ夕方といった時間。日課として午前1時からやっている記事集め(この時間からだと前日のニュースをまとめて漁れるため)が完了するのはもう少し後なのですが、今日は仕事がない分かなり早く終わりました。

 何だか年明け早々に面白いニュースが飛び込んできましたね。

 ●中国“日本越境”12鉱区…東シナ海ガス田開発
 http://www.yomiuri.co.jp/main/news/20050101it01.htm

 それはともかく、先ほど集め終えた記事の中に先日お伝えした「愛国者同盟網」による「何ちゃってデモ」(※1)の追加情報があったので、それを簡単に補足してから寝ます。

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 今回のデモの注目点として、糞青が日本国旗を燃やそうとしたら現場警備の公安(警官)に即座に没収されていたことを私は挙げました。いままでは何枚燃やそうが問題なかった「日の丸焼き」がNGになったのは、重大な変化だと思ったのです。

 ところが、NGは日の丸だけじゃなくて、小泉首相の写真も対象だったようです。

 まずは当日の現場写真集をどうぞ。 
 http://bbs.54man.org/dispbbs.asp?boardID=2180&ID=160545&page=1

 この写真の中に、小泉首相の画像(和服姿とか顔だけとか犬のアイコラとか)を用いたプラカード、というより紙か布地が出てくるのですが、あれはどうしたのだろうと私は思っていました。李登輝氏のコスプレ写真に火をつけるぐらいだから、一緒に焼かれた(ただし寒くて火が燃え広がらず、参加者は踏んづけたり破ったりした)のだと考えていたのですが、どうも違うようです。

 ●事件を伝えた台湾・中時電子網の記事
 http://tw.news.yahoo.com/041231/19/1bz77.html

 これを読むと、最後の段落が、

「抗議者たちはもともと日本の国旗と小泉純一郎首相の写真も燃やそうとしたようだが、現場で秩序維持にあたっていた公安に制止されたため、先の台湾の選挙で台聯の宣伝に使われた武士姿の李登輝氏の写真を燃やし、抗議活動の締めとした」

 となっています。

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 ただ、香港紙『明報』(2004/12/31)の報道だと、

「李登輝氏や小泉純一郎氏の写真を焼き、ビリビリに破いた」(※2)

 とされています。日の丸焼きはNGと考えて間違いなさそうですが、小泉首相の方はどうなったのか……とりあえず連中の現場写真集には焼かれたり破られたりする小泉首相の写真は出てきません。

 『明報』の記事は動詞と目的語がそれぞれ2つあるので、李登輝氏の写真に何をしたのか、小泉首相の写真に何をしたのか、という区別がつかない書かれ方です。小泉首相の写真は何枚もあったようなので、その中に破かれたものはあるかも知れません。ただ証拠写真がないので断定はできません。

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 だからどうした、というお叱りを受けそうですが、チナヲチのオタにとってはこういう細かいところを探し出してきて、色々考えるのが楽しいのです。

 実際、反日デモで日の丸とともに小泉首相の画像まで「焼却NG」となっていたとすれば、それが政府の意思である以上、やはり対日路線での何事かを示すものでしょう(以前は日の丸も小泉画像も焼却OK)。

 それにしても、こう規制ばっかりでは折角寒い中を集まった糞青たちにしても、不完全燃焼だったのでしょうね。

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 以上です。寝ます。起きたら近場で初詣でです。もし今年も首相が来ていたら面白いのですが。

 前回書いたように、李登輝氏が12月31日に銀閣寺で台湾独立を目指していることを明言したことは、言うまでもなく政治的な爆弾発言です。でも日本のマスコミはスルーの方向でいくようですが、中国も聞かなかったことにするつもりでしょうか。あれを見逃すとは考えにくいのですが……。

 まあ中国が隠そうとしても、中国語の記事を中国国内の大手掲示板にどんどん貼って回る人たちが必ずいると思いますけど(笑)。

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 【※1】当ブログ「糞青どもの反日デモに重大な変化が!?」(2004/12/31)

 【※2】http://hk.news.yahoo.com/041230/12/182ac.html



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