何やら中国にも「流行語大賞」のようなものがあるようですね。「2004中国主流新聞十大流行語」なるものが12日、発表されました。総合部門が文字通りの流行語Top10で、他に経済や国内時事問題、国際ニュースなど分類ごとのランキングも出ています。
詳細はこちら。
http://news.xinhuanet.com/newmedia/2005-01/12/content_2451357.htm
で、総合部門Top10の中に、「執政能力」「アテネ五輪」「津波」などと並んで、「失地農民補助」がランクインしていることに注目したいです。
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「失地農民」とは文字通り、国家あるいは地元政府の政策(ダム建設など)、有り体にいえば主として中央から末端組織に至る党幹部たちの汚職絡みの思惑によって、土地から引き剥がされた農村の人々のこと。詳細は当ブログ「悪魔の錬金術」(2004/12/19)にて述べましたが、土地を失った農民は移転先で窮乏し、流民同然の生活に堕ちてしまいます。
この問題は都市部でも再開発の名の下に強行されたケースがいくつもあるので、土地から引き剥がされたのは農民だけではありません。正確に言うなら「地上げ」というところでしょうか。
何はともあれこの話題、暴動や流血事件も起きるなどして去年はまことに「旬」だった訳です。ただ指導部もさすがにマズいと思ったのか、そしてまた経済政策が減速基調であることから、12月あたりになって乱立した開発区の整理や開発区設立に伴う許認可権の回収、また使われていない造成地の再耕地化、さらに土地収用に関する補償などについて善後策が出され、最近は年末ということもあって下火になった観があります。
ちなみに、これら「善後策」は胡錦涛政権が中央による統制力を強化するために行った(地方政府からの権限回収)という側面もあると思われます。
いずれにせよ、この問題は今年は昨年ほど深刻化することが少ないのではないかと思われます。規制が強化されたことだけでなく、そもそも昨年は「引き締めが本格化する前にやっちまえ」という駆け込み型のケースも多かったでしょう。
では不安要因限定(笑)で、中国の今年の「旬」は何か。
……と問われても私には即答できやしないのですが、あえていうなら都市部における「失業問題=貧困層の拡大」だと思います。それに火をつける要素として「物価上昇」にも注目です。あるいは日中間の問題が中国の内政に影響を与える(例えば靖国参拝)可能性も小さくはないのですが、そっちへ話が行ってしまうと今回の主題に入れませんので(笑)。
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肝腎の失業率ですが、労働保障部がうまい具合に今日(13日)発表してくれました。都市部で4.2%(2004年末時点)ということです。
http://news.xinhuanet.com/zhengfu/2005-01/13/content_2455720.htm
ただここにはカラクリがあります。この指標、「城鎮登記失業率」というのですが、「都市部で失業者登録を行った人」の割合を示すものなのです。失業者登録については現地にいる方が詳しいと思いますので間違いがあればフォローして頂きたいのですが、
(1)失業する。
(2)役所へ行き失業者登録の申請を出す。
(3)申請が認可されて「国家公認の失業者」となる。
というもので、申請をしていない人が多いうえ、申請は出せば必ず認可されるというものでもないようです。例えば業績悪化で工場の稼動が停止するなりして自宅待機扱いとなった国有企業の従業員、これは従業員の身分のまま給与が支給されないケースがありますが、こういうケースでは失業者登録申請は通らないのではないかと思います。
そういうカラクリを使っても4.2%あるということは、たぶん都市部だけで実質2ケタに乗っていても不思議ではないでしょう。
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上海や広州などと並び発展著しい北京市の例をみてみましょう。
http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-01/10/content_2441185.htm
同市で今年職を必要とする人の数は77.9万人。その内訳は都市住民(47.9万人)、農村からの転業者(10万人)、新規上京者(20万人)となっていますが、これに対して北京市における就職機会は49.3万人分しかなく、実に28.6万人があぶれてしまうのです。これは単純計算で、「この仕事をやりたいのに口がない」というミスマッチ、それにいわゆる「3K」を市民が敬遠する(そこを農村からの出稼ぎ労働者「民工」が補う)こともあり、
「就職口を増やす努力は続ける。お前らも好き嫌いを言っている場合じゃないだろ。あと自分を磨け」
という趣旨の当局側による発言も記事の最後の方に出てきます。
就職希望者はもちろん新卒者だけではなく、リストラなどによる失業者も含まれています。失業関連の記事にあたっていると「『4050』人員」という言葉がしきりに出てくるのですが、これはリストラされた40-50歳代の失業者を指すもので、頻発されるだけに状況も深刻なのでしょう。当局は「『4050』人員」の再就職を最優先課題のひとつに数えていますが、日本同様、この年代の就職口はなかなか見つからないようです。
(「下」に続く)
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