日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





(「上」からの続き)

 では新卒者はどうか、といえばこちらも厳しいのです。昨年実績によると、9月末時点での大学新卒者(中国は9月から新学期が始まります)で就職できたのは204万人、新卒者全体(280万人)でみると73%で、大学新卒といえども10人のうち3人までが就職浪人になっていることになります。
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2004-12/11/content_2320263.htm

 今年については新卒者数がさらに増えて338万人(前年比58万人増)、しかし前述したように経済政策は「軟着陸」(ソフトランディング)を目指した減速基調ですから、就業機会が劇的に増えるということはまず考えられません。周済・教育部長も「今年の就業圧力は例年にない強さだ」と、厳しい表情。全員の就職はもちろん、昨年実績の就職率73%を実現できるかどうかも難しい、といったところでしょう。

 こういった件に関しては、以前コメント欄で「きんぎんすなご」さんが指摘されていた記事が言及しています。

 ●中国:若者の失業者続々、社会問題に 親の「すねかじり」家でゴロゴロ「求職貴族」
 http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/asia/china/news/20050111ddm007030060000c.html

「新失業群の学歴は中卒や高卒が中心で、就職の経験はない。受験勉強重視の教育制度の中で育ち、職業訓練を受けていない。80年代に始まった一人っ子政策初期の世代で、親や祖父母に溺愛(できあい)されて育った『小皇帝』。親の経済力に頼る『すねかじり』で、家でゴロゴロしている『求職貴族』でもある。」

 と記事にはありますが、日本と違って、中国の親の世代にはかじれるほどスネに肉はついていません。ごく一部の富裕層、準富裕層を除けば、「貴族」なんて優雅なものではなく、いたずらに貧困層を拡大していることになります。

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 こうした状況を受けて、上で厳しい表情をしていた周教育部長は、試験的に一部新卒者を「下放」させようという措置の導入さえ考えているようです。
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2004-12/11/content_2322103.htm

 「下放」とは文化大革命時に政策として実施されたもので、「労働者の苦労を体験することが必要」などという理屈で都市部の知識人や学生が農村や僻地に送られました。文革の終息とともに出身地に戻ることのできた人もいれば、はからずも下放先に根を下ろさざるを得なくなった人もいます。

 今回は「都会は就職難だから、僻地へ行け。キツい仕事でも我慢しろ」というもので、強制ではなく奨励ではあります。奨励措置として、応募した学生には奨学金も出るようです。中国農大、北京交通大などではすでに実施されており、人材が必要とされている内陸地区の末端部門への就職を奨励しているとのこと。

 一人っ子で蝶よ花よと可愛がられて育った世代が、どれほどこれに応じるかは甚だ疑問ではあります。が、ここまでやらないといけないほど状況は深刻ということなのでしょう。

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 失業者は増えこそすれ、減少することはないでしょう。それは取りも直さず、貧困層の拡大、貧富の差の拡大に直結するものです。あとは当ブログ「浦島太郎」(2005/01/08)でも書いたことですが、ちょっと見にはパーセンテージで1-2ポイントといった小幅な動きでも、物価上昇は貧困層の台所を直撃し、大きなダメージを与えることになります。

 昨年後半は食品価格の上昇や水道・電気料金の引き上げが大きく響いたようですが、食品については豊作を記録したものの、農業生産材の価格が高止まりになっている現状から、大きく改善されることはないように思います。一方の水や電気、これは全国的・慢性的に不足を来たしているものですから、下がることはありません。

 実際、北京市ではバス・地下鉄運賃、医療費、中学・高校の学費、それに液化ガス、暖房、水道などの料金を今年中に引き上げる予定だと発表しています。
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2005-01/12/content_2448947.htm

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 昨年の小幅な物価上昇が低所得層に痛みを与えたことは『経済参考報』(2004/10/25)が詳しく報じています。
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2004-10/25/content_2136201.htm

 この記事は、

「生活に欠かせない物の値段が上がるのは、給料が高くてたくさん稼いでいる人には何てことないでしょ。でも私たちみたいに、1カ月の生活費が400元ばかりで他に収入の当てもない家なんかは、食べる物だけでもう精一杯。他の物を買うゆとりなんて全然ありゃしないんだから」

「物価を上げるなら上げるで、私ら収入の低い家のことも少しは考えてほしいね」

 という庶民の声を拾っています。一方、

「9月(2004年)の消費者物価指数は5.2%の上昇だったが、食料品やエネルギー価格といった物価上昇の主因を除けば、1%ぐらいしか上がってはいない。」

 というのが国家統計局の言い分で、豊作だった穀物が市場に入れば物価も落ち着くとの見方を示していますが、これが実際どう推移していくかは要注目です。

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 ともかく土地の強制収用問題が一段落した観のある現在、「失業者増=貧困層の拡大」は、都市部に不穏な空気を充満させる今年最大の要因となるでしょう。貧富の差が拡大しているという不公平感、そして昨年の一連のデモや暴動の中で失業問題を核に据えたものがなかったことから、この問題に対する不満は発散されることなく蓄積される一方、と言うこともできます。

 ちなみに、当ブログ「貧富の差拡大を裏付け――浙江・北京レポート」(2005/01/11)で北京市での貧富の差の拡大(同市の都市戸籍保有者に限定)について、

「世帯ごとの1人当たり平均可処分所得を最高値と最低値で比べてみると、2000年の『3.1:1』から2003年には『4.7:1』に拡大しているそうです。」

 という北京市統計局のレポートを紹介しましたが(※1)、そのときに自分で拾っておきながらうっかり見過ごした記事がありました(膨大な量なので……すみません)。
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2004-12/24/content_2375712.htm

 この記事には昨年11月末時点での速報値が出ており、2000年の「3.1:1」から2003年には「4.7:1」にまで拡大した所得差(世帯ごとの1人当たり平均可処分所得)は、いまや「5.8:1」に至っているということです。

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 十分な補償を受けられなかったため、「地上げ」で流民同然の境涯となったまま都市に居つくしかない農民や都市住民。これに加えて失業者の我慢が限界に達したとき、あらえっさっさーが始まります。

 今年は都市部の暴動に期待していいのではないでしょうか(笑)。


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 【※1】http://news.xinhuanet.com/fortune/2005-01/09/content_2434578.htm



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