前回は急に仕事が入ったため、尻切れトンボになってしまい申し訳ありませんでした。
ひと仕事終えて、じゃあ寝ようかい(私は仕事の必要上、昼夜逆転生活を強いられています)とした矢先。香港の友人からの電話です。やや興奮した語気で、
「今日の東方が趙紫陽死去をトップで伝えている。見たか?」
と、噛み付くようにまくし立てました。そういう話題が好きな奴なのです。私も好きですけど……この間も香港政府が馬英九・台北市長にビザを出さなかったことで電話してきましたし。まあ、今回はわざわざ電話して来るだけの価値のあるニュースではありますけどね。それで香港のヤフーその他で関連記事を一応拾ってから就寝しました。
香港メディアは過去にもトウ小平を何回も殺していますし、趙紫陽も数回は「名誉回復で復活」を遂げています。だからこの種のニュースにはちょっと鈍いくらいがいいのです。記者ならともかく、こちらは素人ですし。でも、もし事実なら周恩来と命日が同じになるんですね。
まあ趙紫陽氏の件は必要があれば稿を改めて書くつもりです。
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さて今回も住民へのアンケート調査結果から現代中国の某かを読み取ろうというのが主題です(大袈裟ですね)。前回の浙江省、北京市に続いて、今度は広東省。
浙江省では農村と都市の格差の拡大、北京市の調査では都市部における貧富の差の拡大が明らかになった訳ですが、広東省はちょっと違って、多くの住民が「中流意識」を持つようになっているという話です。中流、しかも「中の上」を自認する人が増えている、と。
では、具体的な数字を交えつつみていきましょう。
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まず「中流」、正確には「中等収入者」と呼ばれるのですが、この言葉は2002年の第16回党大会の報告の中に「中等収入者の比重を炊く害しよう」という形で登場します。ただ明確な定義づけがないため、広東省統計局があれこれ考えて「モデル」を出したようです。それによると、
●生活水準は「富裕」と「小康」(ややゆとりがある)の中間レベル。
●1人当たり平均可処分所得が1.2万-3.0万元。
●1人当たり平均住居面積が31.7-39.6平方米。
●定職に就いている。
……というようなものになりました。実にわかりやすいですね。で、現在広東省にはこのレベルに相当する人が都市住民全体のうち35%に達しているとのこと。中国の目指す「全面的小康社会の実現」には、この比率が全国で60%に達しなければならないようです。実現するまでに中共が潰れてしまうような気もします。
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ちなみに、「1人当たり平均可処分所得が1.2万-3.0万元」、「1人当たり平均住居面積が31.7-39.6平方米」とありますが、広東省ではこれを3段階に分けています。
●「中の下」(1.2万-1.8万元、31.7-37.4平方米)
●「中の中」(1.8万-2.4万元、37.4-39.6平方米)
●「中の上」(2.4万-3.0万元、39.6平方米以上)
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さて、上のように「中等収入者」の基準を定めた上で現在の広東省都市住民にあてはめ、その実像を浮き彫りにしていくことになりますが、現在都市住民の35%を占める「中等収入者」の職業は、国有経済部門内の機関・事業部門(具体的なイメージが浮かばぬまま訳しておきます)、科学研究機構、一部の収益のよい国有企業、が主流となっています。広東省における各職業の就業者数に占める上記「中の下」「中の中」「中の上」の比重は、
国有経済部門(53.8%、56.8%、64.0%)
都市集団所有制事業体(9.2%、7.4%、7.0%)
個人事業経営者(2.7%、6.3%、5.5%)
その他の職業(19.6%、20.5%、13.1%)
離職・退職者(9.75%、11.7%、7.4%)、
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これとは別に、中山大学広東発展研究院と中山大学政治・公共事務管理学院社会学部が「広東社会変遷基本調査」を7日に発表しています。調査対象者は18歳以上で広東省の都市戸籍を保有、かつ現住所に在住1年以上、合計2000人余りとなっています。調査は2000年7月-10月と2004年7月-10月に実施され、4年間で広東省都市住民による様々な問題に対する意識の変化をみようという意図のものです。
この調査によると、半数以上の都市住民が自分の生活レベルを「中の上」と考えています。これはあくまでも意識調査ですから、広東省統計局の分類した上記「中の下」「中の中」「中の上」という基準とは無関係ですが、この「中の上」意識の比率はは高まる傾向にあるそうです。
意識の上で自分を「中の上」と捉えているのですから、これを選択した人々は、たぶん社会に対しては現状肯定派が多いのではないでしょうか。調査主催者側はこのほか「広東経済の発展に対する自信、それに自分の生活状況に対する満足感がみてとれる」としています。
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この「中の上」意識保有者の特徴を列挙してみましょう。
まずは余暇の娯楽。これについては豊富な選択肢を持っているものの、多くは自宅でのんびりとDVDやVCDで映画を観たりCDで音楽を聴いて過ごすことが多いようです。インターネットは常識。夜に街に遊びに出たり、スポーツに勤しむ人は少ないようです。
「家庭と仕事のどちらが大切?」という設問には大半が「家庭」と回答しています。
広東省といえば商売人という印象を持つ人も多いでしょうが、この4年間で貯蓄意識が大きく伸びたのに対し、投資意欲は大幅ダウン。国債や株への投資熱はすっかり冷め、いまは宝くじや保険へお金を使う傾向が次第に高まってきています。特に株式投資の減衰ぶりは著しく、2000年調査では11%いた株式投資者が、2004年にはわずか3%になってしまっています。それよりも銀行や保険、という訳です。
さらに社会に対する意識をみてみましょう。回答者の61%は「政府の制定した政策は大多数の国民の利益を代表している」とし、「政府は突発事件に対する処理能力が高い」も59%に達しています。
しかし、政府による情報公開などの透明度、また事務効率の高さや無私公平、廉潔であるかどうかに「YES」と回答したのはわずか33%。消費者協会が消費者の利益を擁護しているかという設問に頷いた人も33%だけでした。
●関連資料
http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-01/06/content_2422430.htm
http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-01/08/content_2431015.htm
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ざっとこんなところです。他にも色々と言及されているのですが、それについては上記URLを参照して下さい。
ともかくも半数以上が自分を「中の上」レベルと回答したことをはじめ、いずれも経済先進地らしい自信に満ちあふれた反応です。もちろん、以前紹介した東莞暴動(※1)のように実際には所得格差や出稼ぎ労働者との軋轢も存在するのですが、都市戸籍保有者に対象を限ると上のような明るい印象の調査結果になります。それでも政府に対しては一言あるようですが。
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【※1】当ブログ「速報:広東省東莞市で暴動発生!」(2004/12/26)及び「広東東莞暴動(2):当局公認バージョン」(2004/12/28)。
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