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素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)
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悪夢再び?ネット署名活動、一斉にスタート。
シリーズ中国観察
/
2008-04-23 18:48:07
(
シリーズ:攘夷運動2008【4】
へ)
あーあ。だから言わんこっちゃない。絶妙のタイミングで、怪しげな動きが始まりましたよ。
今回の中国国内における
「攘夷」活動
、まずは聖火リレーで屈辱的な記憶を中国人に焼き付けたフランス相手に、スーパー・カルフールをはじめとするフランス製品ボイコット運動やら抗議デモが先週末から今週月曜日(21日)にかけて発生しました。例によって、ネット上の盛り上がりから現実世界に広がったムーブメントです。
ただし、
ネット世論をたきつけたのは他ならぬ中共政権。
「ダライ集団」とそれを支援する各国政府や西側メディアに激しい非難を繰り返していたことによるものです。当局としてはそうすることで「ダライ集団」との「人民戦争」に勝利すべく国民の気持ちをひとつにし、同時に東トルキスタンや法輪功といった他の危険分子を押さえ込もうと目論んだのでしょう。
チベット弾圧への非難を原動力とした聖火リレーへの抗議活動、そしてそれを好意的に報じる西側メディアの動きには、
「自由と繁栄の弧」
ではありませんが当局は一種の「中国包囲網」めいたものを感じたことでしょう。それゆえ「ダライ集団」や米国やフランス、またBBCやCNNなどに中共政権は悪罵を放ち続け、ネガティブキャンペーンといった呈の集中豪雨的な報道を中国国内で行いました。
●チベット独立の動きを許すな。
●ダライ集団とそれを支持する連中はこういう不逞な輩。
●反中国分子どもから聖火を守れ。
●北京五輪を邪魔させるな。
といった内容のものですが、どうやらやり過ぎてしまったようで。中国国民の「愛国心」に火がつき、それが
排外的ナショナリズム
といった「攘夷」運動という形で表面化してしまいました。
――――
馬鹿なことをしたものです。当ブログが再三指摘しているように、漢人には民族的病弊があります。重複を恐れずにいうと、
●もんのすごーく高いプライド(世界の中心を自任する中華思想)
●もんのすごーく強いトラウマ(中華という自信過剰ゆえに世界の潮流に背を向け、列強から散々喰い物にされたという自業自得)
というビョーキ、ではなく医学で扱うべき真性の病気が一民族・一人格の中に同居しています。病的なプライドとトラウマの持ち主ですから「馬鹿にされている」「軽くみられている」ということに極めて敏感。それゆえ些細なことで
「辱華事件」
などと事あるごとに騒ぎ立てたりします。
要するに「愛国心」(われこそは中華民族!)という意識がもともと病的に高いのです。それだけでも厄介なのに、ここ十年ばかりの歪んだ形の経済成長で変に勘違いして増長しているうえ、江沢民が中共政権に対する「民」の怒りの鉾先をそらすため、反日風味満点の愛国主義教育を始めてしまいました。
反日風味は措くとしても、十数年にわたってそれをやったために、いまや30代以下の世代は「愛国」なり「中華のプライド」といったものにいよいよ神経過敏になっています。北京五輪を
「中華民族復興の祭典」
と位置づける意識もその一例。
そういう漢人どもの最もナイーブなところを、過剰報道によって中国当局は著しく,必要以上に刺激してしまったのです。結果は上述した通り。
――――
全国各地で行われたフランスに対する抗議活動にびっくりした中国当局は、薬が効き過ぎたことを知って慌てて抑えにかかりました。
●愛国には激情よりも理性が必要。
●自らの本分を尽くすことこそ最高の愛国活動だ。
といった、今度はこれまでとは掌を返したかのような集中豪雨型キャンペーにに打って出ました。いわゆる
「火消しモード」
です。
ところがこの「火消しモード」は隙だらけなため不徹底で十分に機能する訳がない、というのはすでに当ブログで指摘した通りです。
●【反仏デモ】実効ある?当局の「火消しモード」は穴だらけ。(2008/04/21)
●「名誉市民」でヒートアップ必至!カルフール炎上目前か?・上(2008/04/22)
「穴だらけ」な理由は2つあります。まずは
「ダライ集団」への非難はやめられない
ということ。「ダライ集団」を叩く以上、それを支援する外国政府や西側メディアも指弾しなければなりません。当然ながら従来通りの「敵視報道」が続けられます。
さらに、これは今回の「攘夷」の特徴のひとつですが、国民をヒートアップさせる
「燃料」が常に海外から投下される
ということです。
例えば2005年春の反日騒動においては、騒動そのものが異なる政治勢力の主導権争いを反映したものだけに、「燃料」は基本的に中国国内メディアから供給され続けました。
ところが今回は、ダライ・ラマ十四世の発言や外国政府との接触、また聖火リレーに対する抗議活動や北京五輪開会式ボイコットの動き、また西側メディアによる「偏向報道」など、「中共史観」に毒されている(あるいは中国共産党の私兵・人民解放軍の武力を背景に強制的に押しつけられ,刷り込まれている)中国国民を激昂させるネタは常に海外発のものです。
そして、そうした「燃料」の多くは
中共政権にコントロールできないものばかり。
――――
国内での活動を封じ込めつつ、もっぱら海外で抗議活動を展開して騒がせる、という考えが中国当局にあるのかどうかは知りませんが、これはどうみても空論であり暴挙です。ええ、痴人の夢。なぜかといえばネットの普及したこの時代に、海外の動きはいくら当局が管制しても最後には中国国内へとフィードバックされます。さすれば国内世論も刺激されることは必定。
すでに実例がありますね。国内での混乱を防ぐべく、海外在住の華僑や留学生に欧米で抗議活動を行わせました。これは中国当局の重大な失点です。マニュアルが事前配布されたなどという状況証拠からみて官製デモに近いものだと思われますが、中国国内メディアはこのニュースに箝口令を敷くどころか、逆にこぞって賞讃し、英雄視する形の報道で足並みを揃えました。中国国民が刺激されない訳がありません。
フランスの芸術的な「微笑み特使外交」については
前々回
及び
前回
にて紹介した通りですが、これもパリ市によるダライ・ラマ十四世と人権活動家・胡佳を名誉市民に認定するという決議でちゃぶ台がひっくり返されてしまいました。
報道によると中国当局は予見されていたこの事態に際し、中国からも特使を派遣するなどして中仏関係の悪化を防ごうとしているようです。フランスも同様ですから、政府間の関係に重大な亀裂が走ることはないでしょう。
しかし、
国民感情
となれば別です。フランスの特使がパリでの聖火リレーで「ヒロイン」「天使」と中国国内で賞讃された車椅子聖火ランナー・金晶にサルコジ大統領からの親書を手渡しました。しかしこの親書は金晶への賞讃と敬意に満ちた措辞ではあったものの、謝罪の言葉が全くなかったことは当ブログにて指摘した通りです。
そしてそのことを、親書をもらった当日に金晶自身が、
「遺憾遺憾というばかりで、謝罪の言葉がひとつもなかったのは残念」
と語ったと中国国内メディアは報じています。不徹底で穴だらけの当局による「火消しモード」は、外圧に対する感情的反発の温度差という点で中国国内メディアの足並みを崩し始めているのかも知れません。
――――
あるいは「火消しを主眼としつつも国民の愛国心維持を図る」という狙いが胡錦涛政権にあるのでしょうか。しかしこれは机上の空論ともいうべき高等戦術であり、実際にその企てが機能していないことは、金晶の「謝罪の言葉がない」報道やパリ市の「名誉市民」認定報道、そしてそれらに対するネットユーザーの反応から中国国民の反仏感情が好転していないことを示しています。
そもそも聖火リレーでは「天使」「ヒロイン」と讃えられた金晶自体が、フランス製品ボイコット運動が開始された当初、それに否定的な発言をしたことでネット世論に売国奴扱いされています。それを踏まえてのことでしょうが、
「フランス大統領から親書までもらったというのに謝罪の言葉がないなんてツケ上がるなボケ」
といった金晶批判の声もネット上で散見されました。ネット世論が先導しているかの観がある中国国民の感情は目下、非常に微妙な状態にあります。
そうしたなか、中国国内ではいま、
海外在住の華僑や留学生に国旗(五星紅旗)を贈る
とかいう運動が活発化しています。抗議活動を展開する上で海外で国旗の数が足りず困っているため応援しよう、というものです。海外での騒ぎに国内が刺激され、同調しつつあることを示す事例といってもいいでしょう。ただし、この活動にはNGが出ていませんから、中国当局は「これは許容範囲」と考えているものと思われます。
この「国旗を贈ろう」運動が国内のガス抜きになるだろう、という考えも当初はあったのかも知れませんが、本気でそう考えているなら余りに甘すぎる認識ということになるでしょう。国民感情はその程度で大人しくなるようなものではありません。
そして冒頭の、
「絶妙のタイミングで、怪しげな動きが始まりましたよ」
ということになるのです。
――――
タイトルに掲げた通り、大手ポータルのニュースサイトで
「ネット署名活動」
が一斉に開始されました。私は今日4月23日に気付いたのですが、確認した限りでは、
●CNNを五輪報道から締め出す運動(網易、捜狐、新浪網)
●北京五輪支持・聖火リレーを守れ運動(捜狐、新浪網、人民網、環球網)
の2つの動きがあります。そりゃそうです。不徹底な「火消しモード」と「煽り」が同居する情報環境のなか、国旗を海外の同胞に贈るだけでは中国国民は到底満足できないでしょう。「人民網」は党中央機関紙『人民日報』のウェブサイトですから、あるいは当局からもゴーサインが出ているのかも知れません。ちなみに「北京五輪支持・聖火リレーを守れ署名活動」には「反分裂」(チベット独立反対)の意思表示も含まれている模様。
しかし、もし当局承知の上であれば、これは非常に危険な選択を行ったことになります。 例えば「網易」の「反CNN署名活動」のページには、
「愛国熱情一触即発」
という大見出しが躍っています。「捜狐」の「北京五輪支持・聖火リレーを守れ署名活動」には、
「尊厳が踏みにじられたとき、中国人はもはや沈黙してはいられない」
との文字が。剣呑というほかありません。
http://qm.news.163.com/
http://news.sohu.com/s2008/beijingolympic/
http://news.sohu.com/s2008/dizhicnn/
http://hi.news.sina.com.cn/news/anticnn/index.php?dpc=1
http://hi.news.sina.com.cn/news/fanfenlie/index.php?dpc=1
http://2008.people.com.cn/GB/22192/120377/index.html
http://bbs.huanqiu.com/read.php?tid=12600
きっと他にもあることでしょう。
――――
「ネット署名活動」ならバーチャル世界のことだから。……と多寡をくくれるかも知れませんが、
反日騒動が示したように、これが何らかの出来事をきっかけに「街頭署名活動」という現実世界での活動へと発展する可能性は高い
のです。
そして
「街頭署名」が始まってしまうと、物の弾みでプチ暴動やデモにへと容易に「進化」する
危険があることもこれまた反日騒動が証明した通りで、改めて強調する必要はないでしょう。
そうでなくてもすでに国民感情はヒートアップしており、「理性的な愛国を」で大人しくなるようなレベルではありません。
「理性的な愛国を」が機能しないために「ネット署名」が一斉に開始されたのかも知れませんが、カルフールかどうかはともかくフランスが再び標的にされる可能性がありますし、「反CNN」そして政府高官がダライ・ラマ十四世と会見した上で中国批判を行ったという流れから、米国系のケンタッキーやウォルマートが狙われるということも考えられます。
そして
「反日」
ということになります。どこのサイトだったか、「北京五輪支持・聖火リレーを守れ署名活動」のページで、
「聖火リレーにはあと2つ、越えねばならない難所がある」
という意味のことが書かれていました。豪州と日本ですね。もし長野の聖火リレーが何らかの形で「荒れた」と認識されれば、すでに過熱気味な中国国民の感情が「反日」という新たな、しかも最大のターゲットを得て一気に爆発しかねません。
署名活動を展開している上記URLのどこに飛んでも真っ赤な激情の炎がメラメラしているといった観があります。ビジュアルだけで何やら漢人どもの怨念が渦巻いているような印象。
国内向けには「自重しろ」と呼びかけつつも、海外にいる同胞たちの活躍ぶりを余すところなく報じるというのは燃料投下に等しい作業。この袋の底が抜けているような状態を続けていれば、
「デモはともかく、署名活動くらいならソフトでいいんじゃね?」
「そうだな。海外にいる連中にも負けていられないし」
「頂!」(同意)
「狂頂!」(禿げ同)
といった空気にネット上の掲示板が染まっていきかねません。「火消しモード」なのかも知れませんが、そういう甘さが今回の当局にはあります。
●【反仏デモ】実効ある?当局の「火消しモード」は穴だらけ。(2008/04/21)
……と、以前書いた通りの展開にとうとうなってしまいました。しかも日本での聖火リレーを目前に控えたこのタイミングは絶妙というか最悪というか。胡錦涛訪日の準備に忙しい中国外交部あたりはこの新事態に憤慨しているかも知れませんが、結局、対日外交よりも国民感情を優先させなければ危ないという認識に国家指導部が立ち至ったのではないかと思います。
これで仮に長野が荒れて、そのリアクションが中国国内で派手に爆発すればもうこれは天命というしかないでしょう。
以て瞑すべし。
(
シリーズ:攘夷運動2008【6】
へ)
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