日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 靖国神社を題材にしたドキュメンタリー映画を中国人監督が制作した、という話は中国国内メディアが昨年には報じていたので興味を持っていたのですが、題名が「靖国 YASUKUNI」であることは迂闊にも最近になって知りました。

 長い時間をかけ、あちこち取材して作り上げた結構真面目な内容のようです。機会があれば観てみたいものだと思っていたところ、日本で予定されていた映画館が相次いで上映中止を決めたそうで。実に残念です。

 所詮は中共政権が許容する範囲内の作品……といえなくもありませんが、「大国崛起・日本編」(百年維新)のような、「反日」「小日本」などお約束の臭みを伴わないテレビドキュメンタリーが中国国内で好評を博したりしていたので、電波ゆんゆんなものではあるまいと想像していました。

 「大国崛起・日本編」は中国人民にとって毒にも薬にもならない内容に乏しい作品でしたが、少なくともあのレベル以上で、とはいえ中国国内で御禁制の品となったNHKの「激流中国」には及ばない程度だろうと。要するに中共政権のドグマ(中共史観)から踏み出す新解釈は期待できなくても、参考までに一度観てみるのもよかろう、といったところです。

 ただし、この映画の制作にあたって文化庁の所轄法人から助成金が出ていたというのは不見識というべきでしょう。「南京」同様に、日中関係において「靖国」は歴史問題ではなく政治用語。特に「靖国」は外交カードにも使われる性質のものです。しかも事あるごとにそれで騒ぎ立てようとする中国は、日本とは価値観を到底共有しようのない一党独裁国家。

 詳しいことはわかりませんが、表現の自由など保障されていないその一党独裁国家の映画監督が、政治属性の強い「靖国」をテーマに撮る作品に、……つまり中共政権のプロバガンダに利用されかねないモノに対して、あろうことか日本政府系の組織がカネを出す。その感覚が私には理解できません。もし国民の税金が使われているのだとすればもちろん怒髪衝天。

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 映画の内容についても詳細は知らないのですが、韓国で上映されて評判がよく、香港国際映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞を獲得したとか。でも香港なんざ、いまや中共政権の植民地ですから。配給会社のアルゴ・ピクチャーズは「国際的な評価も高い作品」としていますが、それって「特亜」向きって意味?

 ……報道によると、



 「靖国」は中国人の李纓(リ・イン)監督が、10年間にわたり、終戦記念日の靖国神社の様子などを取材した映画。軍服姿で参列する人々や、小泉純一郎前首相の参拝、合祀(ごうし)に反対する台湾や韓国の遺族が抗議する姿を、靖国神社のご神体とされる日本刀を作る刀匠の映像を交えながら紹介していく。

 ●映画「靖国」上映中止=東京、大阪の5館が自粛(時事ドットコム 2008/03/31/21:26)




 ……とのことですから、やはり香ばしい映画なのかも知れません。wikiにあたってみるとやはり香しそうな上に何やらトラブルも発生している様子。配給会社の制作したポスターも「ニッポン人に物申す」とかいう挑発的な、いかにも頭が悪そうな出来映えのものでした。

 それでも百聞は一見に如かず。日本政府が出資した基金から制作費の一部が出ていることを踏まえて、内容をしかと見確かめたいという気持ちが私にはありました。

 ところが上映中止になってしまったんですね。街宣右翼の脅しに屈した、といったニュアンスの報道がありましたが、それが事実なら連中は相変わらず低能だなあ、という感想しか残りません。幼稚なことをしたものです。

 ただし上映を予定していた映画館というのは、果たして日本全国をこぞってどのくらいあったのか。目下のところ上映中止を発表したのはたったの6館だけ。でもそれで「当面上映されないことになった」と記事にあります。

 つまりそのわずか6館が全てということなのでしょうか。そうであれば何という「国際的な評価も高い」新作!……テラワロスw。

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 ところでその6館のうち、街宣右翼とおぼしき政治団体から脅迫めいたものを受けたと認めているのは1館だけで、あとはノーコメント。要するに上映中止の真相は不明なのですが、するってーと新聞などが騒ぎ出して、騒ぎ出したと思ったら、



 ●嫌がらせや何らかの圧力により、結果的に作品発表の機会が失われたことは大変残念。表現の自由や制作者の活動に、何らかの制約が加わらないか危惧している。(渡海紀三朗文部科学相)

 ●嫌がらせや圧力で表現の自由が左右されることが不適切であることは言うまでもない。(町村信孝官房長官)

 ●もし、嫌がらせなどが原因で上映が中止になるというのであれば、誠に遺憾なことだ。(福田康夫首相)




 と政府首脳から相次いでコメントをとってまた記事にします。……これって費用対効果が抜群の宣伝方法ですね。上映館数が思いっきりショボいくせに全国紙で見出し付きで露出、というのは、鳴かず飛ばずに近かったしょこたんが自分で書いたブログが大ウケして華々しく復活したことを想起させます。

 ただし、しょこたんは特に意図したものでなかったのに対し、「靖国」がもし故意であれば実に入念な仕込みです。配給会社、なかなかいい仕事をしているといえますね。……って、そのくらいのことができるなら会社を潰したりしてませんか(笑)。

 そもそもちょっと話題になったくらいで「靖国」が数字を取れるとも思えません。ただ、
もしこれが中国映画ではなく邦画だったとすれば、新聞が騒いで政府首脳が「表現の自由」だのといった大仰な物言いをしたかどうかは気になるところです。

 ともあれ上映中止というのは惜しいことです。私はやはり観てみたいですし。……となればこれはもう中国大使館の出番。孔子学院を持っている大学に片っ端から圧力をかけて「靖国 YASUKUNI」の上映会を開催させるのです。

 それをマスコミに報道させて、政府首脳から改めて「表現の自由」云々のコメントをとって騒がせて、……という段取りを踏めば予定していた映画館でもたぶん上映できることになるでしょう。興行成績だけはどうにもならないでしょうが(笑)。

 でもこれによって孔子学院の真の立ち位置というか化けの皮もはがれますので日本人にとってもおトク。まあ、ここまでの騒ぎも中国大使館がマスコミに「厳命」した可能性がありますけどね。あるいは北京経由の遠隔操作?

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 ところで、われらがフフン♪こと福田首相の「靖国 YASUKINI」についてのコメントは上で紹介した通りですが、この談話には続きがあります。



 ●福田首相:映画「靖国」上映中止、「誠に遺憾」(毎日jp 2008/04/02/21:56)

 福田康夫首相は2日夜、靖国神社を舞台としたドキュメンタリー映画「靖国 YASUKUNI」の上映中止が相次いだことに「もし、嫌がらせなどが原因で上映が中止になるというのであれば、誠に遺憾なことだ」と記者団に述べた。

 チベット暴動の鎮圧で強硬姿勢を貫く中国政府への批判が国際的に高まっていることには「人権にかかわるようなことがあるならば、懸念を表明せざるを得ない」と述べた。ただ、北京五輪開会式への対応は「中国が努力している最中に、参加するとかしないとか言うべきではない」と述べ、中国政府の対応を見守る姿勢を強調した。【塙和也】




 この後半部には腹が立ちました。

「人権にかかわるようなことがあるならば」

 というその「ならば」って何ですか?さらに、人権にかかわることがあったとしても、

「懸念を表明せざるを得ない」

 ……ってその程度のリアクションでお茶を濁すのか、と。毒餃子事件にせよチベット問題にせよ、この消極的な姿勢、どうみても日本国民の間に広がる怒りの代弁者たるべき首相にふさわしいものとは思えません。

「中国が努力している最中」

 という言葉も見逃せません。ラサの僧侶をどんどん逮捕したり寺院にまとめて軟禁したり、デモを行ったチベット人を射殺するといった残虐きわまる行為が中国の行っている「努力」ということになるではありませんか。欧米諸国の対応も予想通り、決して気合いが入っているようにはみえないのですが、それに比べてもこの温度差はどうでしょう。

 それからこういう報道も。たぶん同じ場でのコメントだと思います。



 ●首相、チベット問題に懸念表明・五輪ボイコットは否定(NIKKEI NET 2008/04/02/21:13)

 福田康夫首相は2日夜、チベット自治区ラサで起きた大規模騒乱への中国の対応について「中国にとっては内政問題だが、人権にかかわるなら懸念を表明せざるを得ない」と指摘した。ただ、北京五輪へのボイコットに関しては「だれもそういうことは期待していないでしょう」と否定的な見方を示した。首相官邸で記者団の質問に答えた。




 おやおや
「内政問題」ときましたか。「内政」なのに国際社会が騒いでいるのはなぜなのでしょう?北京五輪のボイコットについて「だれもそういうことは期待していないでしょう」と含みを残すことなく鮮やかに断定してみせたのもお見事の一言に尽きます。

 どうもフフン♪は「人権」についての感覚が欠落しているように思えてなりません。それゆえに民意への配慮が薄くなりますし、国民の安全を守るという政府としての基本的な務めも疎かになります。毒餃子事件をはじめとする中国食品の安全問題から在日中国人犯罪に至るまで、なぜこうも逆行する施策ばかり打ち出すのか。こういう感覚も私には理解できません。


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【追記】アルゴ・ピクチャーズによると、「靖国 YASUKUNI」の上映を予定していたのは全国で18カ所の映画館。このうち5館が公開中止を決定し、残り13館は現時点では上映する方針とのことです。

 ●映画「靖国」、来月大阪で上映…初の一般公開(YOMIURI ONLINE 2008/04/03/12:14)

 それはそれとして、どうでもいいようなニュースを振りまいているメディアもいるようで。

 ●海外最大の日本映画祭が開幕=「靖国」も上映-独フランクフルト(時事ドットコム 2008/04/03/10:59)
 http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_date2&k=2008040300186

 ●「靖国」ドイツで上映へ 日本映画祭が開幕(asahi.com 2008/04/03/12:05)
 http://www.asahi.com/international/update/0403/JJT200804030002.html

 「靖国」がよっぽど大事なんでしょうねー。(2008/04/04/03:58)




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