日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





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 あーあ、始まっちゃったよ。……という口から出る感想とは裏腹に、戦慄するような感覚にとらわれています。武者震いかも知れません。

 当ブログのいう「変質」がいま、正に始まろうとしています。

 それも最悪の形で。

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 「変質」というのはチベット問題が勃発し、中国当局が事件を巧みに隠蔽・処理して事態収拾を進めている時点で、

「可能性は低いながらも、そのフォーメーションを崩すとすれば、これ」

 として、「流出」とともに挙げたものです。「流出」というのは要するに中共政権による流血の弾圧を余すところなく捉えた映像が海外で公開される、というもの。1989年の天安門事件のようなシーンが流れれば国際世論も本腰を入れるだろうと考えたのです(それで中国が態度を改めるかどうかは、別として)。

 「変質」とは、事件の当事者がチベット人から漢族へと転じるものです。中国の総人口の9割以上を占める圧倒的多数派の漢族が治安部隊と対峙し、ひいては激突となれば、圧倒的多数派が弾圧される側に回るだけに、この官民衝突はネットなどを媒介として全国各地に飛び火する可能性があります。

 中国社会における最も深刻な対立軸の
「官vs民」が著しく刺激されるからです。しかも現状は物価高でインフレ懸念が強まる一方で株価は続落続落、そして何よりも超格差社会。

 さらに「官vs民」の具体的表現である党幹部による汚職や特権ビジネスの蔓延、小役人の横暴などをごく日常的に目にしていますから、過去の都市暴動の数々がそうであったように、些細なことを発端に火の手が上がる可能性があります。

 私はその「些細なこと」について、当局の張った「結界」による宣伝活動で漢族によるチベット人排斥運動のようなものが始まり、それを収拾すべく出動してきた治安部隊と漢族が衝突して……といったシナリオを漠然と考えていたのですが、現実は予想の遥か斜め上。

 漢人どもはチベット人相手ではなく、何とフランスと米国に対して宣戦布告してしまいました。中国国内に多数出店しているフランス系スーパー・カルフールと米国系であるケンタッキーに対するボイコット運動です。同じ米国系でもマクドナルドやコカコーラでないのは、両社が北京五輪のスポンサーだからなのでしょうか。

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 早くも写真のような状況となっております。……ええ、2005年春の反日騒動のような「愛国無罪」モードに入りそうな気配です。

 「義和団」アゲインというべきかも知れません。中国国内の論調からすると現在の米仏両国に加え、ドイツが目標にされる可能性も高いからです。メルケル首相がダライ・ラマ十四世との再会見を望んでいるとか、ドイツのメディアが中国にとって不利益となるデマを流したとか、そういったことでネット世論の鉾先がドイツにも向きつつあります。

 前回も再三強調したように、
原因は中共政権の小細工にあります。

 聖火リレーが行く先々で手荒い「歓迎」を受けて、中国は自業自得ながら開催国としての面子を丸潰れにされました。国民に対し報道管制で隠蔽しきれるレベルではない、という判断がたぶん下されたのでしょう。中国当局は逆に「妨害される聖火リレー」報道を自らに都合良く垂れ流し、当然ながらその余勢でフランスや米国の悪口を繰り返しました。

 パリがダライ・ラマ十四世を名誉市民にしようとする動きがあることもタイムラグなく報じられました。さらにCNNが中国に対し不遜な報道を行ったのにしっかり謝罪していない、ということで漢人どもは怒髪衝天。

 30代以下の世代は江沢民の愛国主義教育を受けていますから、もともと
「中国が西欧列強にイジメられている!」というフラグが簡単に立ちやすい属性の持ち主です。フラグが立てば怒髪衝天で「愛国無罪」。悪者も「ダライ集団」という漠然とした手の届かない存在ではなく、カルフールやケンタッキーなら手軽に叩けます。

 という訳で「やっちまえ」なのです。写真のような騒動というか無許可デモのようなものが、すでに各地で発生、拡大しつつある模様。中国国内メディアと香港紙で確認した分だけで北京、西安、青島、武漢、昆明……いやはや。

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 昨日(4月18日)までの報道を含む中国のネット上の論調をみると、「愛国無罪」つまり
ボイコット派が圧倒的に有利。理性的に冷静にと火消し役を務めた連中は、

「こいつらはいつも肝心なところでヘタる役立たずだ」

 と売国奴扱いにされ、たちまち大破炎上してしまいました。
「不買運動も理性的な選択肢のひとつだ」という論評まで出ています。

 こうやって市民が勢いづいてしまうと、これまで毒々しく海外の政府やメディアに悪罵を放ち続けてきた中国当局も、牽引役だった手前、手綱の締め加減に苦慮せざるを得ません。

 急に掌を返して事態収拾に全力、となれば自らが敵視されかねないのです。

 かといって放置しておけば反日騒動の再来。しかも愛国分子ども(自称)にとって攻撃すべき目標が全国各地にあります。そして米仏ともに、日本とは違って簡単に譲歩したり平謝りしたりはしないお国柄。放置しておけば事態はこじれる一方となるでしょう。

 愛国分子どもの気分としては、歴史問題だの安保理常任理事国入りといったレベルの話ではないのです。パリで再三再四,聖火が消された(中国側が自分で消したのですけど)。おれたち中国の、北京五輪の聖火が消されたのだという強烈かつ屈辱的な映像が脳裏に焼きついています。それもつい先日の出来事。そりゃ「愛国無罪」フラグだって立ちまくりでしょうとも。

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 とはいえ、愛国分子どもの頭にあるイメージはは中国当局の編集によって都合良く極彩色に描かれた地獄絵図。脳内妄想であって主要国の認識とは真っ向から対立するものです。

 しかも米軍機による中国大使館誤爆事件とは違って今回は襲われる側の米仏にも米仏なりの正義があり、それに則して
「チベット弾圧をやめろ」と非を鳴らしています。さらにいえば、米仏の掲げる価値観こそが主要国における共通認識。中国当局にとって、大使館への投石などが行われるのは避けたいところでしょう。

 ヒートアップした愛国分子どもを、どこかで押さえにかからなければなりません。とはいえネット上の論調をみる限り、現時点では「愛国無罪」の空気が圧倒的優勢。中国当局にとって蟻地獄のような局面が目前に迫っています。愛国分子どもは早くも屯集して騒ぎ始めているのですから、対処が遅れれば強権発動に迫られる可能性は大。

 ところが、中国の総人口の9割以上を占める圧倒的多数派の漢族が治安部隊と対峙し、ひいては激突となれば、圧倒的多数派が弾圧される側に回るだけに、この官民衝突はネットなどを媒介として全国各地に飛び火する可能性があります。中国社会における最も深刻な対立軸の「官vs民」が著しく刺激されるからです。しかも現状は物価高でインフレ懸念が強まる一方で以下同文。

 現地にいないので単純な比較はできませんが、日本から眺めている分には、2005年春よりも中国社会は深刻な危険水域にあります。むしろ、民主化運動~天安門事件を招来する背景となった1988年夏以降の社会状況に似た剣呑さを感じます。経済状況がさらに怪しくなれば(怪しくなる気配なのですが)私は、

「ああ、あのときと同じだ」

 と思うことになるでしょう。

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 ……御覧の通りです。
事態はすでに「チベット問題」でなくなりつつあることがおわかり頂けるかと思います。「変質」です。「変質」がいま正に始まろうとしています。どういう形で決着するかは、胡錦涛政権の腕次第。



 歴史劇がいま、正に進行しています。私たちはそれをリアルタイムに眺めているのです。




 ……という表現をちょっと前のエントリーにて私は使いました。中共が牙を剥き返り血を浴びつつ「敵」を容赦なく弾圧する、という天安門事件以来の事態を現代中国史に特筆すべきもの、と捉えてのことです。

 中国在住でテレビを観たり現地紙を読んだり、あるいは私のように記事漁りという奇特な趣味を持つ方であれば実感したことでしょうが、「ダライ集団」を徹底的に敵視する報道と、中国政府がこれまでいかにチベットを優遇してきたかという宣伝が、ありとあらゆるメディアを通して中国国内で集中豪雨的に連日続けられました。そのことに辟易しつつ表現しようのない異様さ,違和感を覚えた方も多いかと思います。

 一方で国際社会においては居直り逆ギレする。そういう事態そのものが、天安門事件以来,絶えてなかったものなのです。歴史劇といっていいかと思います。

 ところが、数日前あたりから「歴史劇」が別の作品に差し替えられました。続編とか外伝ではなく、全くの別物。いま私たちがリアルタイムに眺めている中国の状況は、
下手をすると五輪開催が吹っ飛び、最悪の場合、中共政権そのものの致命傷となりかねない性質のものです。

 中国を支配している「中共人」たちは、特権を享受できる現在の独裁統治体制を維持するという目的のためにはどんなこともやってのけます。それが中共一党独裁体制の行動原理。相手が漢族でも決して手を抜かないことは、天安門事件が証明している通りです。

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 政争が招いた反日騒動のときは相争う両者が予想外の事態拡大に慌てて手打ちをし、足並みを揃えて政治的圧力をかけることで幸いにも収拾することができました。今回はどうでしょう。

 「愛国無罪」に対するメディアの足並みがやや不揃いなのは当時と似ていなくもありませんが、これは各メディアの政治的保護者の主張を反映したものではなく、自分で描いた地獄絵図をみて頭に血が上ってしまった一部メディア、具体的には電波系基地外国際紙である『環球時報』や『国際先駆導報』あたりが積極的に騒いでいるうちに事態がチベット問題から変質し始めているというべきでしょう。

 外圧に対する反応が過敏かどうか、という濃淡の違いを反映している可能性はあります。例えば軍部の若手制服組といった生きのいい対外強硬派が編集内容に口出しできるメディアは、必要以上に騒いでいるかも知れません。ただこれは外圧に対する反発レベルの差に過ぎず、政争ではありません。「ダライ集団」叩きから「列強」への悪罵に至るまで当局のスタンスに大きなブレがないことから、党中央は基本的に一枚岩であることが想像されます。

 愛国分子どもの勢いがまるで違う、ということも指摘しておくべきでしょう。海外の華僑がそれぞれの住む土地で大規模な抗議活動を行うといった状況です。これは一方で、中共政権の手の届かない場所で致命的な何事かが発生しかねないという可能性も意味しています。

 例えば、仮に米国における華僑の抗議行動が警官隊と衝突して華僑に死者が出た、といったことで中国国内の空気が一変しかねません。中国国内の愛国分子に対する武装警察の一発の銃声(威嚇でない実弾射撃)に匹敵するインパクトです。中国国内だけの事態であれば中共政権の行動原理に照らして、

「どーせ中共独裁優先の流れでしょ。武力弾圧で自国民を何人殺したって、独裁を維持できる武力がある限り国際社会からの反発や制裁にも居直るだろうし、居直ることのできる条件もあるし。もちろん、そういう最悪の事態にならないように当局は努力はするだろうけどね」

 ということになるのですが、海外の華僑までが「愛国」の列に加わっていることが今後の展開を読みにくいものにしています。

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 ところで、標題の件。善光寺が聖火リレーの出発点となることを拒否した一件は中国国内でも速報されています。その記事に付随する掲示板には、「小日本」だの「抵制日貨」(日貨排斥)だのという威勢のいい書き込みが早くも相次いでいます。26日の聖火リレー当日の状況次第では、騒ぎがエスカレートすることでしょう。

 とりあえず、
「反日注意報」を出しておきます。

 中国在住の方々から反感を買うことを承知の上で申し上げましょう。ヲチという乾いた視点から事態を眺めて私が思ったのは、

「さっさと反日にも飛び火しろ糞トンチキが」

 ということです。どうせ火の手が上がるなら、米仏そして独も加わろうかというこのタイミングで反日を始めてもらった方がいいのです。五目寿司状態なら単独でやられるより傷も軽いでしょうし国際協調での対応もききます。米仏独の騒ぎがやや終息してきたところで今度は反日、という最悪のパターンは避けなければなりません。



 もっとも日本でパリやロンドンの騒動の3分の1程度の騒ぎがあればシナの怒りは一気に爆発、日本のマスコミも隠せないでしょうが、在留日本人の事を考えるとシナのテンションが上昇するのを面白がる訳にもいきません。




 というコメントを前回、「90」さんから頂きました。私も全く同じ思いです。いざ騒動となればヲチを行う一方で、2005年春のときのように、自分で集められるだけの情報をこのブログに出して、また各方面からのコメントを募ることで、少しでも現地の方々のお役に立てるよう動くつもりです。

 ただし、ヲチ自体は別です。それが変動要因でない限り、在留邦人の有無や生死は一切無視して現状の把握・分析に努め、次の展開についての見通しを立てることに徹します。

 天気予報と同じなのです。天気図を描いて概況を適確に把握して、明日の天気がどうなるかを予測する。晴れるかも知れないし、雨になるかも知れない。

 仮に「雨」だとしましょう。「明日は雨」という結論へと達する過程で、傘を持っていない人が濡れて風邪をひくかもしれない、タクシー乗り場に行列ができるだろう、なんてことは当然ながら一切考えません。ただし、「雨」という予測に到達すれば、「お出かけの際は傘を持って」という一言を忘れることはないでしょう。

 要するに、私は愛国分子による現在の勢いがあと数日持続するなら、「反日」に飛び火する可能性が高い(不可避)とみています。そこで、

「反日をどうせやるなら早くやれ」

 となります。米仏独と一緒くたの五目寿司状態であれば、エネルギーが分散されるだけ、日本と日本人の被害も局限可能。この点からみれば「善光寺」だけではインパクト不足。速やかなさらなる「燃料」投下が望まれるところです。

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 基本的には長野での聖火リレーまで予断を許さない状況が続くことと思われますが、最大のカギはすでに動き始めた新事態に中共政権がどう対処するかです。今後数日間でネット上の掲示板を含むメディアにおいて、「ボイコット」派を押さえ込めそうな巻き返しの気配がどれだけ出てくるかにまず注目したいと思います。

 余談になりますが、今回の聖火リレーをめぐる数々のトラブルは「自由と繁栄の弧」を地で行くようなものですね。一種の「中国包囲網」ですから、中共政権がナショナリズムを強調して国民の意思統一を図ろうとしたのも無理のないところかも知れません。ただし薬が効き過ぎて「義和団」めいてきてしまっていますけど、そこはやはり民度ということなのでしょうか。


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