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素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)
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【反仏デモ】実効ある?当局の「火消しモード」は穴だらけ。
シリーズ中国観察
/
2008-04-21 11:18:57
(シリーズ:攘夷運動2008【2】へ)
一昨日,昨日と中国は反仏騒動で盛り上がっていたようです。具体的にはフランス系スーパー・カルフール前に屯集して騒ぐといったものですが、今日(4月21日)はたぶん静かな一日になることでしょう。
それはなぜかといえばこれは簡単な話。中国当局による、
「愛国は感情に任せず理性的に。自らの本分を尽くすことこそ最高の愛国活動だ」
といった類の論評記事の集中豪雨、いわゆる「火消しモード」が機能してくるから。……ではありません。
月曜日
だからです。学生も社会人も平日は忙しいですから、土日か祝祭日くらいしか騒げません。
これは2005年春の反日騒動のときもそうでした。相争っていた政治勢力同士が、
「おい、反日反日って言ってるけど、これって要するに毎週末に国内各地でデモが行われているってことだよな」
と気付き、これが反政府運動のようなものに転化してしまったらたまったもんじゃない、ということで両者とも慌てて喧嘩するのをやめて、デモなどの行為を急ぎ全力で潰しにかかりました。双方とも「中共人」で、独裁体制だからこそ特権にありつける今の自分がいる、という点では認識が一致していたからです。
もっとも一時的な手打ちにはなりましたが、妥協によって棚上げされた喧嘩は不完全燃焼。その結果、反日で胡錦涛政権を揺さぶった対外強硬派が納得できぬまま改めて策動し、政治状況が胡錦涛にとってかなり危険な段階に入りました。そこで起きたのがあの「呉儀ドタキャン事件」だろうと私は考えています。
――――
要するに平日にも反仏デモなどが頻発するようになると亡国の兆。まあ亡国は大袈裟だとしても、社会がガタガタになるとはいえるでしょう。これはテーマが反仏でも反米でも反日でもいいのですが、職場放棄や授業ボイコットが広範に実施されなければ平日の昼間にデモが起きたりはしません。暮れなずむ広場に退勤後や放課後の野郎どもが集まってきて、
「それじゃカルフール前で一汗かこうか」
「じゃあおれ、今日はトリコロール燃やす係ね」
なんてケースは、さすがにちょっと考えにくいでしょう(笑)。平日に相当規模のデモが起きているとすれば、それが純粋な学生運動でなければその都市の経済活動に大打撃を与えることになります。まあ実際は、たとえ学生限定のデモとしても平日の昼間に各大学がそれをやれば街はもうお祭り気分で半ば無秩序状態でしたけど。……1989年5月中旬、天安門事件という惨劇が半月ばかり後に発生するとは夢にも思わずに民主化運動が盛り上がっていたころの上海の話です。
だから土日でない今日は静かだろうという見当がつくのですが、「火消しモード」に入った当局の、
「自らの本分に尽くすのが最大の愛国活動」
という言い方は考えてみるとなかなか含みのあるものです。なるほど社会人なら仕事、学生なら勉強に集中しろということでしょうが、じゃあニート(たくさんいるのですこれが)の本分て何?職にあぶれた出稼ぎ農民や失業者が尽くすべきことって何?……とそれぞれ自問自答して「デモでもやろか」ということになったらシャレになりませんね。
余太話はともかく。これから金曜日までの間に当局の「火消し」が奏功するか、それとも新たな「燃料」が投下されて週末に再び燃え上がるか、という微妙な時期に入ったことは確かです。その週末には長野での聖火リレーが予定されていて、これが別口の極上燃料となる可能性もあります。相手が日本となればもう脊髄反射で中国人民の反発度が対フランスの比でないことは言うまでもありません。
――――
ところで、本当に当局は「火消しモード」に入ったのかどうか。
「愛国は感情に任せず理性的に。自らの本分を尽くすことこそ最高の愛国活動だ」
という類の論評は確かに『人民日報』や新華社をはじめネットでは各大手ポータルのニュースサイトのトップに土曜日(19日)から並ぶようになりましたから、当局としては「火消しモード」なんでしょうけど、実効がどれほどあるかは甚だ疑わしいところです。
まずは説得力がありません。CNNやBBCをはじめ欧米メディアに対して散々悪態をついてきた当の中国政府が、突如掌を返して「理性的に」って説き始めれば最初の反応はおそらく
「お前が言うか!」。
「自らの本分を尽くすことこそ」云々とはこれまた白々しい物言いです。
反日騒動と違って、今回は中国当局が先頭に立ってあちこちに放火して回りつつ煽りに煽ってきましたから、
「国家や社会の安定を脅かすような行動は許されない」
といったような、暗示であれデモをやれば容赦しないぞ、という態度まで当局自身が踏み込んでいません。多少は後ろめたさを感じているのでしょうか(笑)。
――――
「火消しモード」といいつつも、の別の実例は、海外で行われている華僑などによるデモの報じ方です。『人民日報』の電子版である「人民網」などでは見事だ立派だと英雄視。何でもCNNの建物を華僑5000人が包囲したとか、ベルリンで存在感を示したとか、ロンドンで頑張ったとか、パリでは留学生のひとりがフランス語の演説で近くにいたフランス人たちをも魅了した、といったテイストの記事ばかり。
国内向けには「自重しろ」と呼びかけつつも、海外にいる同胞たちの活躍ぶりを余すところなく報じるというのは燃料投下に等しい作業。この袋の底が抜けているような状態を続けていれば、
「デモはともかく、署名活動くらいならソフトでいいんじゃね?」
「そうだな。海外にいる連中にも負けていられないし」
「頂!」(同意)
「狂頂!」(禿げ同)
といった空気にネット上の掲示板が染まっていきかねません。「火消しモード」なのかも知れませんが、そういう甘さが今回の当局にはあります。「火消し」記事を前面に出す一方で、CNNなど西側メディアの「偏向報道」を批判する記事も相変わらずどんどん出ています。上述したように、その「偏向報道」の抗議に立ち上がった欧米在住の華僑や留学生を手放しで賞讃してもいます。
さらに、土曜日までに出たボイコット賛成記事やボイコット自重を呼びかけた著名人を弾劾する記事、これらがいまでも「新華網」のトップページや各記事に囲みでついている「ピックアップ記事」の中に並んでいたりします。本来なら削除するなり目立つ場所から外したりすべきところです。
中国当局にとっては自分がやったことの後始末をしているつもりかも知れませんが、同時に新たな火種をまいているというのはどういうことでしょう。どうも不徹底。特に海外の華僑や留学生たちによるデモ報道と国内向けの「自重せよ」「理性的に」といった論評の温度差は、いざというときに導火線となる恐れがあります。
――――
ちょっとわからないのは、反仏活動としてカルフールいじめが行われている一方、CNNに怒っている中国国民は何か具体的な行動をしているのか、報道では確認できないところです。ケンタッキーが標的、というニュースは一時流れましたけど、土日に出てきた名前はカルフールとフランス大使館ばかり。米国向けには何か活動が展開されているのかどうか、御存知の方は是非ご一報下さい。m(__)m
叩かれているフランスの方は上手に立ち回っています。パリでの聖火リレーについて在北京のフランス大使が記者団を前に
「遺憾だ」
と明言しましたが、これは車椅子の聖火ランナーからトーチを奪おうとしたような暴力的な行為についてのもの。そして、怒りを募らせる中国国民に対し謝罪する気配すら示しませんでした。
「命がけで聖火を守った」と中国ではヒロイン扱いされているその車椅子の聖火ランナー・金晶についても、「胸が痛む」「遺憾だ」「機会があれば訪ねたい」とは言いつつも、やはり謝罪の言葉は一切なし。
また、「チベットは中国の一部」という中国側の見解に同意を示しつつも、それ以上踏み込んでいませんから、人権弾圧に批判的なスタンスを改めた形跡は確認できません。さらにパリ市が聖火リレー当日、チベット独立を支持するかの如き垂れ幕を市庁舎に掲げたことについては、
「あれは市が勝手にやっていることで国としては全く関知していないし、市のああいうことに国が介入できないように憲法がなっている」
と堂々と言ってのける始末(笑)。
「フランスは北京五輪をボイコットしたりしない」
とも語ったものの、
「サルコジ大統領は開幕式に出席する」
とは最後まで言いませんでした。ちなみにダライ・ラマ十四世の悪口も出ていません。
要するに、カルフールが標的にされたことには動揺し手当をしているかも知れませんが、フランスの対中外交は従来の路線と何も変わってはいないのです。ネット上でこのあたりを叩いて反仏運動の「燃料」にする論客が出てくれば、今度の週末にもカルフール前に武装警察が人の壁を作ることになるでしょうけど。
――――
ついでに欧米で行われたデモなどについての反応ですが、香港の親中紙『大公報』電子版(2008/04/20)が、
「主要メディアの論調には未だに変化がみられない」
と切歯扼腕していましたから、
「全く困った連中だ。やれやれ」扱い
をされたのでしょう。
また香港紙『明報』(2008/04/21)によると、CNNの報道に抗議し中国への偏見を捨てよと要求した在米中国人のデモについて、AP通信は「偏見」とわざわざカッコ付きで表現。つまり「奴らにとっての偏見」(米国のモノサシで測れば偏見ではない)というニュアンスで、やはり
「こいつらの価値観ときたら全く。やれやれ」
といったところなのではないかと(笑)。
要するに中国国内では英雄視された漢人どもの示威活動は、米国でもヨーロッパでも実を結ばなかったことになります。……というのは至極当然な話で、中国国内でのみ武力を背景に通用しているまことにローカルかつ言語道断な「中共史観」を、事もあろうに欧米にも押しつけようとしたのですから何をか言わんやであります。
なぜ聖火リレーがあれほどの抗議活動に遭ったかという基本点からして認識が全く異なっているのですから、連中のやったデモは……好意を込めていうならば、
「史上まれにみる大胆かつ極めて野心的な試み」
とでもいうことになるでしょう(笑)。中国が国際社会においては、まだ前髪を落としていない
「元服前」国家
であることが改めて浮き彫りにされた格好です。
半人前の国にオリンピックを任せちゃいけません。しかも中国は本質的に大躍進や文化大革命のころから全く変わっていないのです。利権に目がくらんだのか認識が甘かったのか、
「2008年までには元服を済ませて、一人前の国になっているだろう」
との判断を無理に通したIOCは全員切腹。……ではなくて士籍剥奪のうえ斬首。
――――
そのうちダライ・ラマ十四世がパリの名誉市民になったというニュースも届くのでしょうか。実現すればまたとない点火装置になることは必定。
中国としては胡錦涛来日を控えて日中関係の悪化は望んでいないでしょうが、露払いに訪日した楊潔チ外相が散々な目に遭ったことに加え、善光寺が聖火リレーの出発点となることを辞退し、例の「青服」による警備をも拒否したことで中国側はもう水面下でピリピリしている状態です。
そこへさらに追い撃ちとばかりに、中共政権を神経過敏にさせている
消火リレーのプロ
たる「国境なき記者団」も長野狙いで来日するようですから、日本からもオクタン価の高い燃料が提供されそうです。
ともあれ、昨日(20日)レベルのデモが平日にも展開されるようになると……というのがひとつの目安。本当はその段階に至っても中国に残っているようでは危ないのですが。
(シリーズ:攘夷運動2008【4】へ)
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