日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 いずれにせよ、この『江沢民文選』をめぐる動きが政局の焦点に発展しそうな空気です。

 ……などと当ブログで以前書きましたけど、この
「『江沢民文選』に学べ」運動、予想以上のスピードと規模で展開されつつあります。

 『江沢民文選』が発売された翌日には全国各地で自発的な「学べ」運動が起こっているという記事が出て、それから一週間を経ずにしてついに党中央が「学べ」指示を発令。これによって「『江沢民文選』に学べ」運動は中共公認の活動となりました。

 そこからあっという間に事態が展開していきます。まずは党中央が率先して「学べ」の報告会なるイベントを開催。党中央政治局常務委員会という中共の最高意思決定機関のメンバー全員を揃えて胡錦涛が「学べ」演説を行っただけですけど、この顔ぶれ+最高指導者(胡錦涛)の演説というのは、イベントとしては最高レベルの格式といっていいでしょう。

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 この『江沢民文選』の持ち上げ方はちょっと異常なほどです。葬式に例えてみればわかります。中共のトップ9名が参列して胡錦涛が弔辞を読み上げる。これは故人が国家指導者級という場合の待遇です。

 そして、全人代常務委員会や人民解放軍も「学べ」運動に取り組むことを表明した、と報じられたのが一昨日。胡錦涛の演説と党中央の「学べ」に関する決定が出版されることも記事になりました。

 昨日(8月17日付)の中共系メディアの報道によれば、胡錦涛の出身母体である「共青団」(共産主義青年団)が「学べ」運動に取り組むことを表明し、中華全国総工会(労組の元締め)は「学べ」記念座談会を開催。そういえば中華全国総工会の主席でこの座談会にも出ている王兆国も共青団出身で胡錦涛とは同じ人脈ということにになりますね。さらに『人民日報』(2006/08/17)には『江沢民文選』万々歳の大論文。

 http://zqb.cyol.com/content/2006-08/17/content_1481776.htm
 http://news.xinhuanet.com/politics/2006-08/17/content_4970931.htm
 http://news.xinhuanet.com/politics/2006-08/17/content_4970964.htm

 まさに燎原の火の如き勢いです。

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 でも正直なところ、現時点ではどういう流れで何が起きているのか、私にはよくわかりません。「自発的な学習運動から始まった」といっても、元々そういうシナリオなのはお約束。その芝居の筋書きを書いたのが誰で、ここまでサクサクと台本通りに事が進んでいるのはなぜなのか。常識的にいって、胡錦涛とその周辺がシナリオライターということはないでしょう。

 つい先ごろまでは胡錦涛オリジナルの「科学的発展観」が改革の指導理論として持ち上げられていたのに、ここにきてかくも大規模な「『江沢民文選』に学べ」運動が展開されたら、「科学的発展観」がどうしても霞んでしまいます。霞む分だけ胡錦涛の影も薄くなっていくのです。『江沢民文選』を持ち上げることで自らの立場をいよいよ確固たるものにする、なんて手の込んだ芝居のできるキャラではなさそうですし。

 まあしばらく寝かせておくネタ、ということになるでしょう。全国展開されていく過程では極端な動きも出てくるでしょうから、そこから何かが垣間見えるのではないかと思います。

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 では今回はといえば、一転して台湾の話です。

 いずれにせよ、この『江沢民文選』をめぐる動きが政局の焦点に発展しそうな空気です。

 と書いたエントリー(2006/08/16)で頂いた「muruneko」さんのコメントを使わせて頂きます。

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 ●朱に交われば紅くなる (muruneko) 2006-08-16 23:10:58

 先日8/13(日)の日経に「注目すべき台湾の政治変動」と題するコラムが載りました(副題は「馬英九国民党主席」への疑問;山本 勲論説委員署名)。

 まぁ、内容は陳水扁政権の後釜として確度の高い次期国民党総統の政治姿勢の分析なのですが(つい先日、日本にゴマ摺りに来ましたよね、このヒト)、一部を以下に抜粋します。

 # 記事から左巻き発言の部分のみを抜き出してますから、余り強い先入観持たないで下さいね、読者の方々。

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 「日本は台湾や韓国を侵略した事実は無い」との日本側メディアの反論に対して、馬氏は「台湾では日本が植民地支配を始めた(一八九五年)最初の半年間で十万人以上の死傷者を出した」と、再び驚くべき発言をした。台湾の歴史教科書は植民地書記の抵抗事件で一万四千人の犠牲者が出たと記しているが、十万人以上とは初耳だ。
どうやら馬氏にとっては日本の侵略戦争は一八九四年の日清戦争から始まり、台湾や朝鮮の統治もその一環という事のようで、この点では中国の歴史観と相通じるものが有る。
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 で、このヒト U.S. に留学しており(確か NYCU の法科?ええと Wiki には以下のように書いて有ります)、論文は御承知の通り「尖閣諸島」。

 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A6%AC%E8%8B%B1%E4%B9%9D

 そう、朱に交われば紅くなる、それを地で行ってるのじゃないの、このヒト?というのが当方の主張です(そんなの、誰でも知ってるじゃん、と言われそうですが)。

 台北市市長としての政治力量は良く知りませんが、U.S.留学中に刷り込まれたのであろう大中華の夢に恋焦がれるばかりに、「併呑」を積極的に受容する事は無くとも、徐々に(経済分野から)消極的・暗黙的に認知するのでは?と思います。

 # 随分と大きな地殻変動になりそうですが。

 我等の愛すべき南鮮大統領・盧武鉉氏が北鮮に飼いならされ、半島丸ごと支那属国になるのも秒読みのこの時勢、数年先に日本として二正面作戦をする羽目に陥るのは少々荷が重い(戦争するって行ってませんよ)。

 御家人さんはどう読みます?台湾の今後を。


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 どう読みます?と斬り込まれても私は素人ですから答に窮してしまいます。とりあえず個人的には、私は台湾と台湾人に格別の思いと愛着があります。

 格別の思いと愛着がありますけど、国家主権に関わる領土問題は別です。

 台湾人が漁船で尖閣諸島方面に向かったそうですが、予想通り我らが海上保安庁の精鋭に前途を阻まれスゴスゴと退却しましたね。台湾当局からもブレーキがかかっていたようですが、台湾人が何と言おうと尖閣諸島は日本固有の領土であり、この点について私は相手が台湾人でも容赦しません。

 連中は海保の巡視船に対して投石したという報道があります。海保にも容赦してほしくありません。

 その神業のような操艦技術を以てすれば、台湾人の漁船が日本の領海に入ってきたところでオットーリリエンタールじゃなくておっと軽くこすっちゃったなー的接触事故で漁船を海の藻屑にしてしまうことも可能でしょう。乗り組んでいた台湾人は拾い上げてタイーホ送検起訴実刑判決でおk。

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 ……てそういう話ではありませんでした。「台湾の今後」というのは茫漠たるテーマなのですが、その茫漠たるところに重心を置いていうなら、私は台湾の未来は明るい、と考えています。うろ覚えなんですが、

「大河がやがて海へと流れ込むような自然さで台湾はひとつの国家になるだろう」

 という趣旨のことを『台湾紀行』かどこかで故・司馬遼太郎氏が書いていました。私も同意見です。現状維持が続けば続くほど中共政権の選択肢は狭まり、最後には統一するなら軍事侵攻以外に手がない、ということになるでしょう。

 なぜなら、このままの状態が続けば続くほど、台湾人の間に
「おれたちは大陸の連中とは違う」という意識がいよいよ強まっていくからです。中国本土の人間と接触する機会が増えるほどそういう異質感は強まるかと思います。

 台湾というと本省人と外省人の対立がよく挙げられます。私が以前台湾で仕事をしていたとき、部下にそっと聞いてみたらやはり外省人への悪感情のようなものがあるようです。

 ただ現在のティーンズや大学生といった世代なら外省人といっても3代目ないし4代目でしょう。土着するというか、台湾で生まれ育ち、教育を受けている訳ですから、ごく自然に台湾を故郷と思う気持ち、自分を台湾人と思う気持ちが身についていくのではないでしょうか。

 確か江沢民が以前、台湾統一へのタイムテーブルを描いていたかと思いますが、上のような理由からそうやって時間を限りたくなる焦燥感は理解できます。

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 むろん、実例があります。香港ですね。香港人の多くは中共政権で政治的動乱が発生するたびに香港へと密入境してきた世代と、その子供と孫やひ孫で構成されています。大陸生まれで脱出してきた第一世代、例えば私の岳父などもそうですが、この人たちは中国本土に望郷感があり、夏休みに田舎にある親の実家へ泊まりにいくような気安さで、香港と大陸の実家の間を往復しています。

 ところが私の配偶者のような第二世代は香港で生まれ育っていますから、自分は香港人だという意識がごく当たり前に自分の中で定着している。しかもこの世代は英国統治時代に成人して社会人になり、学生のころに天安門事件(1989年)を見ていますから、中共に抜き難い不信感があります。

 加えて中国本土に比べ経済的には段違いに豊かな香港で生まれ育っていますから、大陸の人間に対する一種見下したような感情が一般的にあります。親の実家に行くこともずっと少なく、田舎だし臭いし不潔だから嫌だ、などと言って結婚式や葬式のときしか足を運ばなかったりします。

 これが第三世代になると、社会に出る前に香港が中共政権に返還されているので、香港人意識や大陸の人間を見下す感覚は根強く残りつつも、国情教育(愛国主義教育)を一定期間受けているので政治的にちょっとだけ怪しくなります(中共への不信感がやや薄くなる)。中学に入ったあたりから必須科目となっているので、北京語も多少使えます。とはいえ第二世代とともに2003年の50万人デモを経験したりしていますから、普通選挙制が必要なことを素直に受け入れることができます。

 そして第四世代、これはもう小学生から北京語の授業も国情教育もありますから、どう育っていくのか戦々兢々です。とりあえず中国は世界に誇るべき歴史を持った国家でやましいことは何もしておらず、政治的には多党制で共産党が善政を敷いているといったことを教わります。天安門事件は教科書にも出ていませんし大躍進や文化大革命はさりげなくスルー。

 ただ言論・報道面で現在のような自由度が維持されている限りは大陸の糞青(自称愛国者の反日教徒)みたいなのが量産される、ということにはならない……と思うのですが、実際には大半のマスコミが返還後は親中色を強めていますし、記者にも世代交代がありますから、さてどうでしょう。

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 それに比べると、台湾の置かれている条件はずっと恵まれています。中共政権の統治下になく、変な教育を受けることもない。外省人もごく少数派で、おまけに「二・二八事件」や戒厳令統治をした過去があります。

 そして現状維持派の多くは事実上潜在的独立派ともいうべきもので、要するに民進党のあくの強さが嫌だとか戦争になったら困るなどといった理由でアンケートでは現状維持を選んでいるにすぎません。「国民党支持=中共政権との統一希望派」ではないところが重要です。

 その国民党にしても、政権を奪えば奪ったで制約される面も出てきます。仮に大きく舵を切れば、潜在的独立派である現状維持層から愛想をつかされ、選挙(議会選挙=立法委員)で負けるでしょう。馬英九が次期総統に就任することで中国本土の人間との接触が深くなればなるほど、香港の第二世代のような異質感ひいては見下すような感覚が台湾人に浸透していくように思います。

 日本からみてもそうですが、一党独裁で党が政府を支配し、軍隊は党の私兵で法治主義が行われていない中共政権というのは全く異質な世界で、価値観を共有しようがありません。ですから付き合いが深まるほど、台湾人意識が強化される方向に動くということです。

 ……以上は「台湾の今後」というテーマの茫漠さに安んじての私見です。経済面での対中依存が過度になっていることが気になりますが、水は高いところから低いところへと流れるものです。要するに、これは中国が台湾企業にとって魅力的な投資環境を維持できるかどうかにもよるでしょう。

 そして幸いなことに台湾は普通選挙制の国ですから、最後はやはり民意です。となると、国民党政権になってもフリーハンドはそう大きくないように思います。

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 日本としては台湾との絆をいよいよ強める方策を講じ、日米台の紐帯を太いものにしていくよう努めればいいでしょう。一種の謀略宣伝として
「中国と台湾はこんなに違う。違うんだ」という意識を日本人に徹底させればなおよろしいかと。

「中国=反日デモ、台湾=癒されるゥ」
「中国とは価値観が全然違うけど、台湾となら話が通じる」

 という図式が根付くような方向に持っていければいいのです。何といっても極東で唯一日本と価値観を共有できる国家が台湾なのですから。

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 ……てこれじゃ回答になっていないでしょうね。でも素人の悲しさで精一杯考えてもこの程度の粗餐しか御出しできません。

 「muruneko」さん、せっかく斬り込んで頂いたのにフニャフニャで斬りごたえがなくて申し訳ありません。

 m(__)m



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