日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 行ってきました。驚いて、途方に暮れて、やれやれと思って、とにかく疲れました。

 持ち前の現場運の良さが災いしたようです。小泉首相をナマで見ることができました。でも、だから何?という感想です。私は参拝に行ったのであって、小泉首相見物をしに行ったのではありませんから。

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 去年と同じ時間に行ったのに、雰囲気が一変していました。曇天は残念でしたが、それより何より九段下の駅から吐き出されて靖国神社に向かう人の数が多いのです。上空にはあちこちにヘリの姿が。

 小泉首相の参拝が確実視されていたせいか警備も物々しく、去年は人影もまばらだった参道は蝉時雨だけが相変わらずで、参拝客は前年比2倍か3倍といった盛況ぶりです。盛況はいいことですが、私はその人出を避けるためにわざわざ早い時間に出てきたのです。天気に恵まれなかったこともあり、残念ながら清清しさと静謐さを楽しむことができませんでした。

 去年遭遇した香港のテレビクルーにまた会えるかな、とかすかに期待していたのですが、人数が多くてそれどころではありません。プレスはもうすっかり本番モード。参拝客が多いため、今回は打って変わって最後の鳥居をくぐったところで行列する破目になりました。いやあれは並ぶというより人間が屯集しているという感じです。

 脇には各局のテレビカメラや紙媒体のカメラマンがズラリと勢揃い。そして私たちの行列はある程度進んだところで止まってしまいました。すると神社側の人が出てきて、

「前の方の人は座って下さい」

 と連呼し始めたのてす。それで小泉首相が昇殿参拝することがわかりました。ふと空を見上げると私の視界内だけでヘリが6機も飛んでいます。他にも視界外に何機かの姿があり接触事故が起こるのではとこちらが案じてしまいます。まあ接触して墜落するなら御近所に朝鮮総連という恰好の目標がありますけど(笑)。

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 私は普段出かけるときはコンパクトなデジカメをバッグに放り込んでおくのですが、あいにく今は人に貸していて手元にはありません。写真は素人ですけど、取材者になるときのため一眼レフのデジカメ及び関連機材一式は持っています。

 今年の靖国も去年同様の静謐な好ましい雰囲気があるだろうと思って、それを記念に撮影しておきたかったのですが、大仰なカメラを持ち歩いていて「プレス登録して下さい」などと言われると面倒なので今日は持っていきませんでした。

 ところが、それが杞憂であることがすぐにわかりました。まずは悪天候に加え参拝客や報道陣がたくさんいて、私が写真に残しておきたかった清清しい雰囲気がまるでなかったこと。そしてモーニング姿の小泉首相が渡り廊下から本殿に入っていくと、みんながデジカメや携帯を振りかざして一斉にパシパシパシッと連写の嵐。

 誰もが爪先立ちで背伸びして携帯電話を高くかざして撮ろうするものですから、将棋倒しになりかけたこと数回。一億総プレス時代であることをはからずも実感させられました。ちなみに私は携帯を持っていません。どうせ仕事の催促とか原稿の締め切りがどうのとか日本側でトラブル発生とか……いいニュースを全く運んでこないので、せめて外出している間は気楽でいたいのです(笑)。

 参拝を終えた小泉首相が帰っていくところでまたパシパシパシッです。お前ら参拝に来たんじゃねーのかよ、と言いたくなりました。小泉首相が姿をみせたときには万歳万歳の声や「いいぞーっ」という掛け声、それに期せずして拍手喝采が湧き起こりました。

 が、私は何もかも期待外れだったせいか拍手も万歳もする気がしなくて、ただ、

「これでよし」

 と思いました。

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 当ブログで何度か書いていますが、小泉首相は日中関係の構造改革を意図的に進めてきたのではないか、というのが私の考えです。麻生外相の言を借りるなら「上下関係のない対等な二国間関係」。……価値観や歴史観の違いがあっても現実的かつ実務的な付き合いの成立する関係です。

 それを構築するために、小泉首相は5年連続で頑に靖国神社を参拝してきたのではないかと。何かといえば歴史問題を持ち出し自らの歴史観や価値観を押し付けてくる中共や韓国に対し、靖国参拝という象徴的な行動を以て、身を張って、

「譲れないものは譲れない」
「内政干渉は断じて許さない」

 という新しい日本の姿勢を示してきたように思うのです。中韓から「問題発言」とクレームがついて閣僚が引責辞任させられる、という馬鹿げたこともなくなりました。

 次期首相がこの構造改革路線を継承していけば、いずれ毅然とした態度で、

「それは内政干渉だ」

 と明言することができるようになると思います。相手も「この手はもう使えない」と認識するようになるでしょう。たとえそう認識できなくても現実に通用しなくなるのです。

 その土台を小泉首相が5年間かけて築き上げ、最後に「八・一五靖国参拝」という最も象徴的なパフォーマンスをみせて、バトンを後継者に渡す。小泉首相は、日中関係で為すべきことをちゃんとやり遂げたと私は感じました。だから「これでよし」なのです。

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 小泉首相が去ってから、ようやく人込みが動き始めました。どうやら半数はナマコイズミ目当てだったようで、私はほどなく賽銭箱の前に立つことができました。

 「トラ・トラ・トラ」という映画で真珠湾奇襲に出撃せんとする第一波攻撃隊の搭乗員たちが、空母の艦内に設けられた神社の前でキビキビと二拝二拍一拝を済ませていくシーンがあります。

 普段の私が参拝するときはそれに似ていて、短いその一刹那に思いを込めて「ありがとうございました。本当にありがとうございました」と念じています(それが正しい作法なのかどうかはわかりませんけど)。

 ただ今回は「田舎のじいちゃん」さんの御依頼を受けているので二拍の後の間を長くしました。お引き受けした務めは果たせたつもりです。……あ、僭越ながら「90」さんの分も祈念してきました。

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 で、ともあれ帰途ということになるのですが、これは小泉効果なのかどうか、今年は右翼団体の関係者とおぼしき人数が去年とは段違いに増えていました。

 中には「英霊たちの犠牲の上に現在があることに思いをめぐらせよう」という趣旨のプラカードを掲げて歩いている人もいましたが、率直に言ってあれは低能だと思いました。それとも一種の自慰行為なんでしょうか。

「英霊たちの犠牲の上に現在があることに思いをめぐらせよう」

 という趣旨は正論で全くその通りだと私も思いますけど、マーケティングというものを考えていませんね。わざわざ8月15日に足を運んで来る人たちなら先刻承知の理屈を大書したプラカード、それを靖国神社で高々と掲げることにどんな意味があるのでしょう。

 簡単にいえば、ライトユーザー(一般市民)を取り込むという発想が全く欠落しています。テレビに露出させるのが目的なら、変な服を着て頭五分刈りの段階でダメ出しでしょう。異質感満点で濃すぎるため逆効果です。

 バカ高い年間購読料で薄っぺらい機関誌を上場企業に売りつけるという独特の商法がいまも健在なのかどうかは知りませんが、多少の資金があるなら篠原涼子とか伊東美咲とかエビちゃんとか、男なら速水もこみちか伊藤英明あたりに15分限定でプラカードをかざしてもらうとか(笑)。

 テレビクルーにとってはいい絵になるところなんですけどねえ。……まあタレント事務所の方がそんな仕事を承けたりはしないでしょうけど。

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 帰宅して「新華網」(国営通信社の電子版)をのぞいたら中国外交部が早くも抗議声明を出していました。「07:13」は北京時間ですが、小泉首相が参拝を終えてから30分と経たぬうちのリアクションは予定稿が準備されていたからでしょう。

 ●「新華網」(2006/08/15/07:13)
 http://news.xinhuanet.com/world/2006-08/15/content_4961332.htm

 この声明、
「強烈抗議小泉又一次参拝靖国神社」というタイトルになっているのですが、「強烈抗議」というほどには気合が入っていません。まず小泉首相の靖国神社参拝を非難しているのですが、法的根拠がないものですから、

「人民の感情を傷つけた」
「A級戦犯」(中共政権とは全く無関係)
「国際的正義に対する挑発で、人類の良知を踏みにじる行為」

 とフニャフニャした理由付けになっています。ちなみに、中国はこの声明を出したことで内政干渉行為ということになり、「日中共同声明」第6条及び「日中平和友好条約」第1条第1項に明確に違反したことになります。

 中国側にはそういう根拠がないものですから「日中間で取り交わされた3つの政治文書」に違反するとかその精神にもとると言うこともできないのです。

「小泉首相は歴史問題において絶えず中国人民の感情を傷つけ、国際社会での信用を失っただけでなく、日本人民の信頼も失い、日本の国家的イメージと利益を損ねた」

 と、「日本人民」を持ち出したところに以前とは違って日本国内の共闘勢力の退潮が著しく、有効な共同戦線を張れない焦りがのぞいています。同時にこの物言いで悪者は小泉首相限定となります(タイトルからしてそうですね)。下手な声明を出して日本側の世論が硬化し、日中関係に影響が及ぶことを恐れたのでしょう。

 そして最後の段落で「お互い手を携えてやっていこう」という違和感たっぷりの前向きスタンスで声明が終わっています。

 これで「強烈抗議」ですか(笑)。これまたヤル気に欠けた初動ですねえ。あとは定例記者会見でのパフォーマンスに期待したいところですが、孔泉の抜けた外交部報道官は大根揃いですからねえ。

 それよりいまは「内憂」で手一杯のところでしょう。外患で遊んでいる余裕があるとは思えませんが。……まあ余裕がないから上のような気の抜けた「強烈抗議」声明なんでしょうけどね。



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