日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 8月12日から御盆休みに入るというので、その前日、仕事の合間を縫って床屋に行ってきました。

 行きつけの店はカットハウスとかそういうカッコいい体裁のところではなくて、伝統的な日本の床屋さん。カットというより「散髪」という言葉がよく似合います。

 小さな店ですけど腕は確かです。

 その店構えにしては不釣り合いにすぎる気宇壮大な店名(例えば「バーバー北海道」とか「大阪理髪店」といったような)を冠しているところも気に入っています。

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 いつもの人にカットしてもらいました。むろん雑談しながらですが、どういう流れからだったか、

「御家人さん、私は今年は15日に靖国に行きますよ」

 という話になりました。

「あ、私も行きます」

 と私。そのために休みに入る直前に散髪してもらいに来たのです。

「行くなら早い時間の方がいいですよ。まだ人も少ないですから」

 と昨年の経験に照らして言うと、

 散髪屋
「早い時間って、何時くらいですか?」

 御家人
「8時くらいです。それならまだ静かですから」

 散髪屋
「8時?……8時ですかあ。そこまで早く出るのは難しいなあ」

 などという会話を交わしました。

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 私の場合、靖国神社には地下鉄ですぐですし、完全夜型生活(参拝から帰宅して就寝)でもあるので、早い時間は得意です。去年は参拝を終えて喫茶店に入ったら8時くらいでした。

 あの時間ですと特設ステージや主催者のテントなどもまだ準備中の物腰で、参拝客も少なく、普段と同じような感じで御祭神に向き合うことができます。

「ありがとうございました。本当にありがとうございました」

 と、いつも通りに念じるのみです。

 去年は香港のテレビクルーに喧嘩を売って大感謝されるという思いがけないイベント(笑)がありましたが、参拝を終えて参道を歩き終えるまでの間に日本のテレビ局の取材も受けました。

 特に人目をひくような風体もしていないのに。……たぶんまだ参拝者が少ないせいでしょう。合計3回、カメラの前に立たされてのインタビューです。

 もっとも、私はときに「取材者」の立場になることもあるので「要領」はわかっています。ですから至極気軽に、いい加減にやりとりして済ませました。……とは、あの時間のインタビューというのは取材者にとっては予行演習でしかないことが多いからです。

 インタビュアーにとってはリハーサルのようなものですし、カメラマンにとっては立ち位置の調整(背後に靖国神社っぼい風景が入るような場所の確認)なのです。「要領」とは、そういうことです。

 本気の取材であれば、きっと私は緊張してしどろもどろになってしまうことでしょう(前例あり)。

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 以下は余談のようなものですが、そのあとひと息入れたくて、喫茶店に立ち寄りました。

 近くだと混むかも知れないので靖国通りから折れて、5分近く歩いたところにあった小さなお店です。ドトールとかスターバックスのようなものとは違う、何の変哲もない個人営業の地味な喫茶店でした。

 菅井きん(ビッグマザー)似のお婆さんと、その息子夫婦とおぼしき人がやっていました。客は私だけです。

 お婆さんが水を持ってきたときに、私が脇に置いていた日の丸の団扇を目ざとく見つけました。二の鳥居を過ぎたところで「桜チャンネル」が配っていたものです。

「お参りに?」

 と言うのでそうですと答えると、

「私もそろそろ行ってこないと。今日は混むでしょうからね」

「そうですね。いまならまだ人が少ないからいいですよ」

 と私。……ところが、それで話を切り上げて注文をとるのかと思ったら、お婆さんは隣のボックスに座り込んでしまい、

「昔話ですけどねえ」

 と勝手に話を始めてしまいました。お婆さんがまだ娘時代だった昭和18年の秋、学徒出陣に際して雨の神宮外苑で行われたあの有名な「壮行会」に見送る側として立ち会ったそうです。

 学業半ばで兵隊にとられる学生さんたちが可哀想で。……とそのとき思ったそうです。いまでも不憫に思う、と話してくれました。

 そのあとひとしきり話をしてお婆さんはようやく注文を聞いてくれたのですが、私は柄にもなく、立原えりかという作家の小篇「ピアノのおけいこ」をふと思い出していました。

 それだけの出来事でオチも何もありません。その喫茶店にもそれ以来足を運ぶ機会がないのですが、靖国神社へ行くたびに、そのときのことを思い出します。

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 よく晴れた空の下、まだ朝の気配を残す静かな参道を、蝉時雨を浴びつつ歩くというのはいいものです。

 都心でありながら近くに高層ビルが少ないこともあって、靖国神社から見上げる空は意外に広くて大きくて、青空がまたよく似合う場所でもあります。

 今年も好天であれかし、と願っています。



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