日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 いやー昨日は世間的には土曜日だったんですね。この2週間ばかりは仕事で付き合っている日本側の会社の大半が夏休みを確保するための過密スケジュール。いわゆる「プチ年末進行」で曜日なんか念頭にありませんでした。まさか週末+御盆休みだったとは。

 夜半の記事漁りに入ったら香港の経済記事がやけに少ないんです。中共系メディアの記事も普段より少ないので、あれ?とカレンダーを繰ったら土曜日だとわかった次第。木曜か金曜ぐらいのつもりで重いエントリーを書いてしまい申し訳ありませんでした。

 ――――

 その前回の余談のようになりますが、『江沢民文選』が中共系の主要メディアにどう扱われているかは一種のバロメーターになるでしょう。「新華網」(国営通信社の電子版)では今日(8月13日)に至っても11日付の「各地で学習の動き」という例の不穏なニュースと各巻の内容紹介記事(10-12日付)を目立つ位置に並べています。

 これは無視できないシグナルといえます。特に「各地で学習の動き」記事は、前回ふれた「江八点」13周年記念活動のように、党中央の思惑を超えて末端レベルでの『江沢民文選』学習活動がトレンドとなり、それに党中央までが引きずられるようになるかどうか、ということに何より注目したいところです。

 江沢民については、私は「江沢民派の領袖」というより「上海閥の筆頭格」とみています。現役時代は上海時代の下僚などを引き上げて確かに江沢民派ともいえる政治勢力を形成しましたが、引退後の現在は上海という利権の都に集った連中の一応の代表格という存在ではないかと。

 江沢民個人については甲斐性なしだと思っています。2004年9月、自身の引退により党中央軍事委主席を胡錦涛に譲った際に、自分の息のかかった文官をそのメンバーに一人も送り込めなかったことがそれを示しています。当然ながら院政など敷ける訳はないのです。

 ――――

 ただ、上海閥をはじめとする各地方勢力が胡錦涛の「科学的発展観」に面従腹背する形で経済面での疾走ペースを緩めようとしません。上半期の成長率は10%を超えました。

「適度に減速しつつソフトランディング。今年の成長率目標は8%前後」

 という温家宝・首相が3月の全人代(全国人民代表大会=立法機関)で描いてみせたシナリオを反故にしてしまい、中央によるマクロコントロールがあまり機能しないまま、経済過熱による混乱が懸念される状況になっています。

 中国はその歪んだ発展モデルにより、成長率が高くなればなるほど貧富の格差や地域間格差が拡大する構造になっています。そして現実に格差が拡大している。

 しかも今秋は当局も認める「空前の就職難」で大学新卒者でさえ3割ないし4割が卒業即失業(またはニート)となる模様です。現時点でさえ成人男女の約3割が親に養われている状況です。経済を減速させたら雇用創出をどう手当てするんだ、と各地方当局は怒鳴りたいところでしょう。

 一方で「科学的発展観」に基づいた地方の党幹部に対する新たな査定基準(省エネ度や環境保護度、格差是正度)が現実には徹底していない。徹底していないまま地方党幹部の任期満了による異動が始まっています。

 新査定が定着していないので取りあえず従来の成長率優先(江沢民路線)でやっておけばよかろう、という気分、これが全国すべてとはいいませんが、多くの地方の末端レベルに至るまで行き渡っている。それも2桁成長の一因かと思います。

 ――――

 そして世代交代や大型人事が行われる来年の党大会、その前哨戦である「六中全会」(第16期中央委員会第6次全体会議)が秋に迫っていますから、放っておいても党内では主導権争い、当ブログでいう「擁胡同盟」(胡錦涛擁護同盟)と「反胡連合」(反胡錦涛諸派連合)の暗闘ないし表立った綱引きが行われるところです。

 しかも今回は胡錦涛サイドが「靖国参拝」と「経済過熱」という進退に窮する問題を抱えている真最中。それだけに、ここで発売された『江沢民文選』は本来の実力以上のインパクトを発揮して、政情に一種の化学変化のような事態をもたらす可能性があります。「既得権益者の聖典」ということになるでしょう。

 そして昨春の反日騒動のように、この出版を機に「『江沢民文選』学習運動」のような仮面をかぶった倒閣運動の波が生まれるのか、胡錦涛サイドはそれを抑えることができるのか。「靖国」「経済」といった波乱含みの要因がすでにあるなか、またひとつ、あるいは最も直接的ともいえる可燃度を有した「燃料」が投じられた格好です。

 ――――

 それだけに関連報道からは目が離せないのです。……って何だかまた重い話になってしまいました。申し訳ありません。m(__)m



コメント ( 14 ) | Trackback ( 0 )