日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 「緊急」と銘打ってありますが別に突発したものではなく、単に当ブログでの告知が遅れただけなんですけど。

 タイトル通り「友邦・台湾を国連へ!」とのデモ行進が明日(土曜日)午後、新宿で行われます。首都圏在住の方もそうでない方も、御時間に余裕があればふるってご参加下さい。

 「友邦」という意味で日の丸を持参しても、また「皇国興廃在此一戦」の縁起からZ旗を掲げての参加も歓迎とのこと。

 私は午前中から恩師との靖国デートがあるので時間的に微妙なのですが、間に合うようなら駆けつけるつもりです。



 ■9・15「友邦・台湾を国連へ!」アピール行進

 ●日 時:9月15日(土)14時 出陣式 14時半 デモ行進出発

 ●集 合:大久保公園(新宿区歌舞伎町二丁目43番)
      ※ハローワーク(職安)裏、都立大久保病院前

      【交通】JR「新宿駅」東口から徒歩7分。歌舞伎町方面へ。
          西武「新宿駅」から徒歩3分。
          都営大江戸線「東新宿駅」から徒歩4分。

 ●コース:大久保公園→職安通り→明治通り→甲州街道(新宿駅南口前)→新宿中央公園(所要時間:約1時間)

     ※プラカード、横断幕、拡声器等の持参歓迎!

 ●主 催:台湾の国連加盟を支持する日本国民の会

 ●【加盟団体】台湾出身戦没者慰霊の会、台湾研究フォーラム、維新政党新風東京都本部、維新政党新風埼玉県本部、
        日本李登輝友の会、日台交流同友会、政経調査会、國民新聞社、栃木県日台親善協会、日本青年協議会、
        高座日台交流の会、李登輝学校日本校友会、日本世論の会(9月13日現在)
         
        ※加盟団体募集中

 ●問合せ:03-5211-8838(日本李登輝友の会)
      090-4138-6397(永山英樹)
      koe@formosa.ne.jp (台湾の声編集部)




 何年か前に、この種のデモで「中国人は日本から出て行け!」とかいう主題のものに参加したことがあります。私は日本でデモに参加した経験がなかったので趣旨に賛同しつつ話の種に、と思いまして(笑)。

 ところが実際に歩いてみると、シュプレヒコールに「台湾独立」とか「チベット独立」といった内容のものが混じっていて、そのひとつひとつには賛成なんだけどこのデモと関係ないじゃん、というひどく散漫な印象を受けました。

 それから私自身は奇人変人の類いに入るのかも知れませんが、ゲーム業界でいう「ライトユーザー」の視点は常に意識しています。

 この角度から眺めたとき、街宣車を先頭に立てた200人ばかりのデモ隊が新宿を練り歩くことに違和感とある種の「何だかなー」という恥ずかしさと嫌悪を感じまして、すっかり懲りてそれ以来こういう催しは一切スルーしてきました。

 ただ今回は「友邦・台湾」が文字通り危急存亡の秋を迎えている段階ですし、「加盟団体」をみても主題が散漫になることはなさそうです。……というより、散漫になるような余裕のある時期ではすでにない、というべきでしょう。

 ――――

 台湾問題について、「中国と台湾のことに日本が巻き込まれるのは嫌」という考え方をする人もいるようですが、地理的にみても、また特亜(中共政権&南鮮北鮮)に囲まれている中で唯一価値観を共有し得る国家という点でも、日本と台湾は一蓮托生のつながりといえるかと思います。また、その縁を大切にすることが国益にもつながります。

 以前、台湾で行われた中国の「反国家分裂法」制定を糾弾する大規模デモに、日本人留学生が台湾人学生と一緒にデモ隊を組んで参加し、

「護台湾,護日本,護亜洲!」(台湾を守れ、日本を守れ、アジアを守れ!)

 という粋なシュプレヒコールを叫びました。

 ●「三二六大遊行」雑感。(2005/03/28)

 さきの日印関係強化やインド洋での五カ国合同演習(日本、米国、豪州、インド、シンガポール)などに対する中国の過剰な反応は、このシュプレヒコールが事態の本質をついていることを示しているかと思います。

 まずは、自分にできることから。

 私にとっては当ブログとコソーリ活動(香港・台湾紙での文章発表)がそれに当たりますが、時勢の圧縮熱がいよいよ高まりつつある現在、今回のような機会も大切にしていきたいと考えています。




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 ファンサイトではもう話題になっているのかも知れませんが、ここはそういうブログではないので大多数の読者の皆さんにとってはニュースかと思います。

 ジェイ・チョウ(周杰倫)のことです。

 台流の担い手のひとりであり、中国本土でも大人気。アイドルかと思ったらミュージシャンでした。曲は作れるし歌えるし、特に羨ましいのはピアノがとても上手なこと。

 で、ミュージシャンかと思えば俳優もこなすんですね。……と思っていたら今度は映画監督をやったそうです。監督兼主演で脚本の一部も担当。若いのに大したものです。個人的には父親役の黄秋生に期待。ビルから放り投げられて停車していた車の屋根にドスン、なんてシーンがないことを祈るのみです(笑)。

 私はジェイ・チョウのファンでも何でもありませんけど、当ブログは多少彼を贔屓にしています。以前から駄文にお付き合い頂いている方なら御存知でしょうけど、母方のお祖母さんと彼の絆が、そのまま日本と台湾を結ぶ糸を象徴しているかのようなエピソードがあるからです。あれは心温まる実にいい話でした。

 ●お祖母さん孝行の話。(2006/02/09)

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 ところが、そのジェイ・チョウがテレビでの発言をめぐり、中国本土の糞ブロガーたちに叩かれて炎上しかけているそうです。

「第二のレイニー・ヤン」

 と表現している報道もあります(レイニー・ヤン=楊丞琳)。

 ●楊丞琳の問題発言?例の病気でしょ。もちろん「中国人」の。(2007/04/09)

 ちなみに、このエントリーの後段にジェイ・チョウ叩きの捏造インタビュー(たぶん)も登場します。

 ジェイ・チョウには、

「大陸のファンには僕の音楽を理解できない」

 という発言もあったとかなかったとか。真偽はともかく、ネット上ではそういう発言があった、という説が流れていて、火種は元からあったようです。

 ていうか中国本土の人間が糞レベルなだけなんですけどね。どうしようもなく低能。無藥可救。

 問題はこいつら低能のくせに水は飲むし飯は食うし服も着れば靴も履くことです。まとめてパッと消えていなくなってくれないものでしょうか。そうすれば地球に優しくて二重マル。

 ワープですよワープ。畠山桃内じゃなかったデスラー総統の惑星あたりに飛んでいってほしいところです。

 ――――

 すみませんジェイ・チョウの話でした。

 今回は噂ではなく実話です。中国のテレビ(厳密にはフェニックスTV?)のトーク番組「魯豫有約」にゲストで登場した際に「問題発言」があったということでブログや掲示板でのジェイ・チョウ叩きが始まったとのこと。

 その問題発言というのが実に馬鹿らしくて。女性司会者が雑誌に掲載されている雷鋒(知らない人はググレカス)の写真を示して、

「この人知ってる?」

 とジェイ・チョウに問いかけたのが発端。中国問題専攻の学生じゃあるまいし台湾人がそんなこと知る訳ねーだろボケ。……てな訳でシェイ・チョウも知らない様子で写真をまじまじと眺めて、

「クールだね」

 と外交辞令。その後に、

「この人も、歌を歌えるの?(=歌手)」

 と、この一言が問題発言となりました。ムービーでどうぞ。

 http://ent.163.com/07/0802/09/3KSP4JQR00031H2L.html

 18分あたりからが問題のシーンです。

 ――――

 収録はギャラリーにファンが詰めかけた状況で行われましたので、「問題発言」にブーイングなど出る訳がありません。ただ女性司会者はオトナですからその場を丸く収めようと必死。ジェイ・チョウの無邪気な問いかけに、

「(雷鋒は)ええ、部隊ではきっと歌を歌っていたと思う。あなたの歌とは違うタイプのものだけど」

 とうまく収拾したものの、このジェイ・チョウの発言に糞青(自称愛国者の反日信者)系のブロガーなどが一斉に反発。

「雷鋒を知らないとは何事だ」
「歴史に対する彼の無知っぷりは空恐ろしい」
「奴はわが国の歴史を知らな過ぎる。大陸の日本に対するあの民族的怨恨が何に起因するかさえ知らない」

 ……などなど。こいつらの言う「歴史」って要するに中共史観のことでしょう?「わが国」っていうのは台湾も中国に含めているんでしょうね。言わずもがなではありますが、台湾で中共史観が通用すると無邪気に信じているこの連中の方が無知(笑)。

 ただこうした馬鹿どもに反駁する向きもあって、

「ジェイ・チョウが雷鋒を知らないのは文化的差異(台湾で生まれ育ったということ)によるものだ。どうして彼が雷鋒を知っていなければダメなんだ?そんなこと言っていたら台湾の芸能人はみんな不合格になってしまう」

 といった真っ当な声も出ています。興味のある方は関連掲示板をドゾー。

 http://comment.ent.163.com/star_ent_bbs/3KSP4JQR00031H2L.html

 ――――

 個人的感想。「雷鋒を知らない」発言に怒った連中というのは基地外。

 ……という前に、これはレイニー・ヤン(楊丞琳)に関する上記エントリーでもふれましたが、彼女や今回のジェイ・チョウに対する反発は、まずは中共史観を受け入れていないことにあるのでしょう。中国本土の価値観を共有できない者は、昔風にいえば「華」ではなく「夷」な訳です。

 それから、レイニー・ヤンは自他ともに認める「哈日族」。ジェイ・チョウにもお祖母さんとの間に日本を介したエピソードがあります。糞青系ブロガーにしたら、たぶんこれも非常に気に食わない要素ではないかと愚考する次第。

 まあ基地外の頭の中なんてものは常人に推し量れるものではありません。その基地外も三千年という歳月で磨き上げられている訳で(笑)。

 それにしてもこのトーク番組のギャラリーであるジェイ・チョウのファンたちをみていると、

「大陸のファンには僕の音楽を理解できない」

 と仮にジェイ・チョウが本当に言ったとしても、不思議ではないように思います(笑)。




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 そりゃそうでしょう、気持ちはわかるけどそれは無理。大体順序が逆だし。……てのが率直な感想です。

 いや、こういう怪しげなブログをやっていると、ときどき読者の方から御質問を頂きます。ありがたいことです。それから私の知らない色々な情報をこっそりメールで教えて下さる方もいて、いつも感謝しています。

 頂いた御質問については、時間と体力の許す限り御希望に沿えるようにしているつもりです。そのために調べものをして勉強になることもあるので、ありがたいのです。

 ただ一応申し上げておきますが、私は中国語の読み書きが少しはできるものの、中国観察については全くの素人であることをくれぐれもお忘れなく。実際には知らないことばかりなのです。

 さて本題。先日、台湾に関する御質問を頂きました。


 ●Unknown (cruncher) 2007-04-13 12:48:59

 またもエントリと直接関係のない件で心苦しいですが、台湾がWHO加盟申請をオブザーバーから正式加盟に切り替えたそうです。

 http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2007041200819

 あえて「あの事務総長」にこれを突きつけたことには何か意味がありそうに思いますが、如何せん私の乏しい知識ではどうにも分析しようがありません。

 御家人さんはどうお考えでしょうか?



 いや、私も関連知識がまるでないもので。……でも素人なりに頑張ってみます。まず引用されている時事通信電はこちら。



 ●「台湾」名義でWHO加盟申請=事務局長に書簡-陳総統(時事通信 2007/04/12/18:00)
 http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2007041200819

 【台北12日時事】台湾総統府の邱義仁秘書長(官房長官)は12日、陳水扁総統が11日に世界保健機関(WHO)の陳馮富珍(マーガレット・チャン)事務局長にあてて「台湾」名義で正式加盟を申請する書簡を送ったことを明らかにした。

 台湾は毎年、WHO年次総会でオブザーバー参加を求めているが、「1つの中国」の原則を掲げる中国の反対により10年連続で却下されている。正式な加盟申請を提出することで、国際世論を喚起する狙いがあるとみられる。オブザーバー参加も引き続き求めていく。

 中国はWHOを「主権国家だけが参加できる国連機関だ」と強調しており、「台湾」名義での加盟申請に強く反発するのは確実だ。



 ……お、いつもの「中国の反発は必至だ」ではなく「強く反発するのは確実だ」という新しい表現が登場しましたね。反発度もワンランク上といった印象を受けます。

 実際に中共政権は脊髄反射。これも「台独」活動(台湾独立運動)の一種だとし、中共と台湾の関係をいたずらに緊張させるものだと弾劾しています。先走っていえば、「一つの中国」と「台湾は中国の一部」という中共政権の理屈に対する重大な挑戦だからです。

 ●「新華網」(2007/04/13/16:42)
 http://news.xinhuanet.com/tai_gang_ao/2007-04/13/content_5973244.htm

 ――――

 今回の動き、基本的には歴史教科書を台湾史中心の内容(=中国史大幅減)に改めたり、蒋介石の銅像を撤去したり、郵便局や電話局などの名称の頭についていた「中華××××」を「台湾××××」に改めるといった
「去中国化」(中華民国カラー払拭)の数々の試みのひとつと位置づけていいでしょう。

 ただそれを国際社会でやろうとしたことで騒ぎが大きくなった次第。

 「去中国化」といえば、私の好きなプレステの「戦闘国家3」(もう3年近く遊んでいません。ブログとの二者択一ですから)で重宝していた台湾の戦闘機「經國」も性能向上型は「雄鷹」という名前に改められるようです。

 蒋介石と違って、その息子である蒋經國・元総統(1988年死去)は「私は台湾人」という当時としては衝撃的な発言を行い、また二・二八事件後ずっと施行されていた戒厳令を解除したことで知られています。日本の歌や映画やドラマもこの時期に解禁となりました。

 さらに副総統に台湾出身の李登輝氏を抜擢する(このため蒋經國死去に伴い李登輝氏が総統に昇格した)など、蒋一族による「台湾私有」を否定し、民主化の扉を開いたという意味で高く評価されていい政治家だと思いますが、それとこれとは別なのでしょう。

 ――――

 やや余談に流れますが、故・司馬遼太郎氏の『台湾紀行』の巻末に収録されている司馬氏と李登輝氏との対談で、李登輝氏は副総統として蒋經國と接した時期にふれ、

「そのとき話したことを書きつけておいたノートがあるんです。いまはまだとても発表できませんが」

 と述べています。一昨年和訳された『李登輝実録―台湾民主化への蒋経国との対話』は、そのノートを基にして書かれたもののようです。

李登輝実録―台湾民主化への蒋経国との対話

産経新聞出版

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街道をゆく (40)

朝日新聞社

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 ところで、上の時事通信の記事において、

「台湾は毎年、WHO年次総会でオブザーバー参加を求めているが、「1つの中国」の原則を掲げる中国の反対により10年連続で却下されている」

 と何気なく書かれていますから、

「中共の妨害で台湾はWHOのオブザーバーにもなれないのか」

 と思う方も多いでしょうが、厳密にはWHOではなく、WHO年次総会(WHA)のオブザーバー参加を申請しながら、中共政権が、

「一つの中国」
「国家でなければWHOにもWHAにも参加できない。台湾は中国の一部であるから国家ではない」

 という理屈をこねて多数派工作を行い、台湾の参加を拒んでいるのです。改めて強調しますが、WHOのオブザーバーではなく、その年次総会(WHA)に限られたオブザーバー資格も台湾は手にすることができないでいるのです。

 ――――

 台湾は「中華民国」として国交を結んでいる国もあり、国連に加盟してはいないものの立派な独立国家といっていいでしょう。ただ「一つの中国」というのが邪魔になります。

 例えば日中関係の原則ともいえる「日中共同声明」において、日本政府は台湾が中国の一部であることを正式に承認してはいません。ただし「一つの中国」は支持しており、そのために日中国交樹立に伴い「中華民国」たる台湾と断交した経緯があります。

 ですから台湾が「中華民国」である限り、WHO加盟申請を公に応援することはできないのです。米国もまた「一つの中国」を承認していますから、事情は同じ。中国は原則的に国交樹立時に「一つの中国」を支持することを条件にしていますから、多数派工作が可能です。

 ただし、我らがファンタジスタ・麻生外相はそういう障害の中でもなかなか粋なことをしているようです。

 ●ほーら外交部が電波モードに。やっぱ制服組でしょ。・下(2006/03/12)

 文末に注目。

 まあしかし、いまのWHOは中共による従来からの妨害工作に加え、そのトップである事務局長がマーガレット・チャン女史です。この人は香港人ですが中共の全面的な応援を受けて事務局長選挙を勝ち抜きましたから、中共の損になることをする訳がありません。そうでなくても衛生官僚として著しく不適格だった経歴があるため地元香港での評判もすこぶる悪いのです。

 ●上海に居座る黄菊&世界を不幸にするWHOトップの誕生。(2006/11/09)

 ――――

 ともあれ、台湾の陳水扁政権は、

 ●WHO正式加盟国
 ●WHAオブザーバー

 の2本立てで攻める構え。なぜ2本立てかというと、いずれも「WHAメンバーの過半数の賛成」で実現するからです。それなら従来通りWHAオブザーバーの座を狙うと同時に、WHO加盟国入りという大手門から堂々と攻めかかる策も採るべし、といったところでしょう。

 ●『自由時報』電子版(2007/04/14)
 http://www.libertytimes.com.tw/2007/new/apr/14/today-o4.htm

 上述した通り「台湾」名義での加盟申請は陳水扁政権が次々に行ってきた「去中国化」を国際社会に持ち出してきたもので、

「台湾は台湾でひとつの国家なんだ」

 ということをアピールする狙いがあるのでしょう。ただこれには根本的な無理があります。「台湾」という国家が存在していないからです。陳水扁も「中華民国総統」であって、「台湾国総統」ではありません。

 ――――

 そりゃそうでしょう、気持ちはわかるけどそれは無理。大体順序が逆だし。……てのが率直な感想です。

 ……と冒頭に書きましたが、「無理」「順序が逆」とは憲法改正によって「中華民国」という名前を捨てて、同時にその主権が及ぶ範囲を台湾の現実に合わせる(現行憲法では中国大陸全土を自国領にしている)など、いわゆる
「正名」(「中華民国」をやめてありのままの台湾にする)がまず必要だということです。

 「台湾独立派」などと便宜上呼ばれてる民進党など「緑色陣営」ですが、台湾は中共政権の統治下に置かれたことは一度もありませんから、「独立」ではなく「正名」が正解。李登輝氏がちょっと前に、

「私は台湾独立なんて主張したことは一度もないよ」

 といった趣旨の話を香港系の台湾週刊誌に語って「変節か!?」などと一時大騒ぎになりましたが、これも現状に照らせば必要なのは「正名」であって、「独立」だと厳密には理屈が通らないということを李登輝氏は強調しているのです。そもそも「独立」という言葉自体が中共政権視点でしょう。

 この「正名」をしない限りは「台湾」名義での加盟申請は空論ですし、「一つの中国」の壁をぶち壊すこともできません。……このあたり、任期切れ&総統選挙(勝算は微妙)を来年に控えて焦りを隠せない陳水扁陣営のやけっぱちな行動のようにもみえます。

 ――――

 で、結局「一つの中国」を認めているため、米国は台湾の今回の行動に不快感及び不支持を表明しました。成算もなくいたずらに騒ぐだけのアクションなんかするな、空気が険悪になるだけだろ、ということでしょう。

 ●『自由時報』電子版(2007/04/14)
 http://www.libertytimes.com.tw/2007/new/apr/14/today-p5.htm

 日本政府の公式表明はまだのようですが、香港紙『明報』電子版によると、自民党の中川昭一・政調会長が遺憾の意を示し、支持することは困難だとの談話を発表したようです。WHAオブザーバー入りなら支援できるものの、国家としての加盟を応援することはできない、といった内容です。「日中共同声明」に照らせば、そう言わざるを得ないでしょう。

 ●『明報』電子版(2007/04/15/23:10)
 http://hk.news.yahoo.com/070415/12/25ie3.html

 遺憾の意は国家としてのWHO加盟申請に対するものですが、これは要するに、

「順序が逆だろ順序が」
「まず『正名』を果たすのが筋だろう」

 ということです。現在進行している「去中国化」はこの「正名」に沿った動きといえますが、肝心の憲法改正あるいは新憲法制定となると中共政権が「反国家分裂法」を発動して武力侵攻の可能性も出てきます。

 ●性犯罪ですよこれは。(2005/03/13)
 ●「三二六大遊行」雑感。(2005/03/28)

 まあ民進党は陳水扁総統を担いでいるため与党とはいいながら、立法府での勢力図(立法委員の議席数)は国民党など「青色陣営」に負けているというねじれ現象状態ですから、目下のところは「正名」もどこまで進められるかは極めて不透明です。

 ――――

 私自身は台湾の「正名」は現実的・合理的なので大賛成ですし、「台湾」名義でのWHO加盟もWHAオブザーバー入りも頑張れ頑張れ。ただ「正名」完了前のWHO加盟国入りは困難だろうという見方です。

 一応、陳水扁政権の言い分も紹介しておきましょう。


 ●陳水扁総統が『台湾』名義でのWHO加盟を正式に申請(台湾週報 2007/04/13)
 http://www.roc-taiwan.or.jp/news/week/07/070412d.htm

 4月12日、総統府で「2007年台湾の世界保健機関(WHO)参加推進」記者会見が行なわれ、邱義仁・総統府秘書長、黄志芳・外交部長、侯勝茂・衛生署長らが出席した。

 邱秘書長は、陳水扁総統が4月11日に陳馮富珍(マーガレット・チャン)WHO事務局長へ、「台湾」の名義でWHO加盟を申請する書簡を送ったことを明らかにした。

 邱秘書長は、従来から求めているWHO年次総会(WHA)へのオブザーバー参加と、専門的会議への「有意義な参加」に加えて、今年は直接「台湾」の名義でWHO加盟を正式に申請し、3つの柱でWHO参加を推進する方針を示した。

 「台湾」名義でのWHO加盟申請を進めることについて、邱秘書長は「一、世論調査では94.9%が『台湾』名義でのWHO『加盟案』の推進を支持しており、国内世論の非常に高い要求があること。二、立法院(国会)で過半数を超える110名の国会議員の署名提案により、WHAオブザーバー参加だけでなく、WHO『加盟案』を推進するよう政府に要求していること。三、過去長年の努力にもかかわらず、中国の圧迫によって順調に進むことができなかったので、政府はこのようなチャンネルとプラットフォームをさらに増やして努力してみる必要があると認識したこと」などを強調した。



 脊髄反射の新華社電でもふれていましたが、台湾紙『中国時報』など国民党系のメディアは今回の動きに批判的です。

 是非頑張ってほしいんだけど、あまりに現実離れしているから無理ぽ、といったところかと思います。




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 前回に引き続き、元日の靖国神社における台湾人有志の署名活動(外国人登録証の国籍欄を「台湾」ではなく「中国」と強制されることへの抗議)で配られていた文章を、
メルマガ『台湾の声』誌の許可を得てここに掲載します。

 昨年(2006年)12月3日に執り行われた台湾出身戦歿者慰霊祭に関する文章2篇です。外国人登録証の問題とは直接関係ないためか、

 【資料1】台湾出身戦歿者慰霊祭に寄せて(李登輝・前台湾総統)
 【資料1】台湾出身戦歿者慰霊祭 祭文

 となっています。私が補足することは何もありません。この2篇の文章を御覧になるだけで日本と台湾の絆の深さを改めて実感し、日本人として日本に尽くしてくれた台湾人の心意気、そして日本人としての自問自答が心の中に湧き上がってくることと思います。

 ――――


●台湾出身戦歿者慰霊祭に寄せて


 昨年の第一回に引き続き、李登輝学校を卒業した皆様が中心となって「台湾出身戦歿者慰霊祭」を開催されると聞き、大変感銘を深くしております。

 かつての大東亜戦争には私も京都大学の学生のときに学徒出陣し、台湾の高雄高射砲部隊に配属され、その後、内地の千葉県習志野の防空学校に移り、終戦を陸軍見習い士官として名古屋で迎えました。

 この戦争では二百万人を超える日本人が戦死しており、その中には約三万人の台湾出身者も含まれております。私の兄の李登欽もその一人です。日本名を岩里武則といった兄は昭和二十年二月二十五日、海軍上等機関兵としてマニラで戦死しています。

 海軍に志願し、左営の海軍基地に初年兵として配属されていたとき、私も高雄高射砲部隊に配属されましたので、二人で高雄の町で会って写真を撮ったのが最後となりました。

 私も遺族の一人として、靖国神社に参拝することを念願しておりますが、お国のために亡くなった英霊を慰霊顕彰するのは、後世の者として当然のことなのです。それが日本では武士道の精神や大和魂を大切にする心につながり、また日本を「美しい国」へ導く第一歩であると確信しております。

 本日の慰霊祭には参列すること叶いませんが、台湾の地から英霊の方々に慎んで哀悼の意を表するとともに、皆様方のお志に感謝申し上げます。


 二〇〇六年十二月三日

 李登輝


 ――――


 ●台湾出身戦歿者慰霊祭 祭文


 ここ靖国神社に祀られる、先の大戦で散華された台湾出身ご英霊の御霊に対し、日本と台湾の共栄を念願する参列者一同、慎んで感謝と報恩の誠を捧げます。

 顧みますれば、祖国日本が、その安定と自存自衛のために宣戦を布告し、台湾において昭和十七年四月に、陸軍特別志願兵制度が実施されるや、千二十名の募集に対して志願者四十二万五千九百六十一名、志願倍率実に四百八十倍、翌十八年には、千八名の募集に対して六十万一千百四十七名が応募し、志願倍率は五百九十六倍にも達しました。昭和十九年からは、海軍特別志願兵制度が実施され、こちらにも志願者が殺到しました。かくも熱狂的な志願兵への応募は、世界戦史に類を見ないといわれています。

 そして、台湾からは軍人・八万四百四十三名、軍属・十二万六千七百五十名、計二十万七千百九十三名が従軍されました。昭和十七年二月には、五百名の強者が選抜され、第一次高砂義勇隊が、「高砂挺身報国隊」と名付けられて編成され、フィリピンの第二次バターン攻略に参戦し、降り注ぐ弾雨の中で、次々と道を拓き、橋を架けられました。

 その敏捷性、優れた視聴覚、軍紀厳正を保持する姿勢は、正規軍を凌ぐものでした。密林での活躍は独壇場で、衰弱した日本人戦友の食糧調達に大活躍されました。空腹のまま、調達した食糧を戦友に持ち帰ろうとして、密林に事切れた義勇隊員もおられました。南方各地より生還した多くの日本将兵が、「高砂兵のお蔭で生き延びられた」と語っています。

 また、昭和十八年五月より翌春にかけ、八千四百余名の台湾少年工が、希望に燃えて神奈川県の高座海軍工廠に入廠、戦闘機生産に従事しました。しかし戦争末期の空爆により、派遣先の防空壕で、あるいは夜勤明けの帰途で、六十名が尊い犠牲になられました。

 かくして台湾出身で戦歿された方々は、三万三百四名の多きにのぼり、二百四十六万余の御祭神と共に、ここ靖国神社に鎮まっておられます。一方、台湾においても、一九九〇年十一月、日台有志が、台中の宝覚禅寺内に「和平英魂観音亭」を建立、同時に李登輝前総統の筆になる「霊安故郷慰霊碑」を建立して、台湾出身戦歿者をお祀りしています。

 ここ靖国神社に祀られる、戦没された方々の勇戦無くして、私どもの生命はなく、戦後世代の命もまた齎されなかったことは、厳然たる事実です。今日の平和は勿論、日本と台湾の深い結びつきも、台湾出身のご英霊からの贈り物です。心から感謝の誠を捧げるとともに、そのご恩に報いる為、日本と台湾の共栄に、いっそう尽力することを、ここにお誓い申し上げます。

 平成十八年十二月三日


 ――――

 ……以上です。

 前述した通り私が補足することは何もないのですが、これらとは別に、2ちゃんねらーの有志が制作したフラッシュを基にした、

 ●【動画】高砂義勇伝

 を是非一度ご覧になることをお勧めします。その内容を紹介したメルマガ『台湾の声』誌(2006/12/13)の記事を、同誌の許可を得てここに掲載します。

 ――――


 大東亜戦争当時、日本統治下の台湾の山岳民族であった高砂族の多くが志願兵として主に東南アジアへ出征した。彼らはまさに日本人として闘ったのである。

 2004年、SARSの影響で日本人観光客が激減し、管理していた会社が倒産したことから、1992年にタイヤル族(高砂族はタイヤル族、ルカイ族他9つの原住民族の総称)の周麗梅(日本名、秋野愛子)さんによって建立された「台湾高砂義勇隊戦没者英霊記念碑」の維持管理が困難になり、産経新聞などによってこの事を知った2チャンネラーの有志が、いままでしられていなかった高砂義勇兵の事を伝えることでなんらかの力になれないかと作成されたのがここで紹介する動画です。

 ネット外でも多くの方が立ち上がり、寄せられた寄付は3200万にものぼりました。そしてその寄付などで一度は再建された慰霊碑ですが、台湾の外省人ら反日活動家の妨害などから、再度移転、縮小を余儀なくされました。

 慰霊碑の存在とは別に、高砂義勇兵の英霊に感謝すると共に、その功績を伝えるためにと同フラッシュをさがしてみましたが、元のサイトが消失しておりましたので、Mixiのコミュニティ[日台同盟推進委員会]の管理人りょうさんのご指導により、キャッシュから抽出し、1本のwmvとして再現いたしました。

 先頭、および最後に経緯を紹介する一文を入れているほかはオリジナルのままです。(ブログ「あすの日本を考える会」より)


 ――――

 重ねて申し上げますが、これらを御覧になることで日本と台湾の絆の深さを改めて実感し、日本人として日本に尽くしてくれた台湾人の心意気、そして日本人としての自問自答が心の中に湧き上がってくることと思います。

 前回と今回のエントリーは平素とは異なり、私が感じたその思いをもっと多くの日本人と共有したいという一念で書き上げました。

 当ブログの駄文にお付き合い下さっている皆さんにとって、こうしたことは周知の事実かも知れません。ただこれらを通じて私同様に改めて何事かを感得し、何事かを心に刻まれる方があれば、感激これに勝るものはありません。


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 私は今年最初のエントリーにて、配偶者と元日に靖国神社へ初詣に出かけたことを書きました。参拝、零戦、海軍コーヒー、御神酒、猿回し。……実はもうひとつ、どうしても記しておきたいことがあったのですが、単体のエントリーとして扱いたかったために、ふれないでおきました。今回がそれに当たります。内容は標題の通りです。

 実は当日、靖国神社の二の鳥居の手前で台湾人の有志の方による署名活動が行われていました。その場で配られていたビラを読んで私は大いにその活動の趣旨に賛同し、また「資料」として付された2篇の文章に、日本人のひとりとして胸を打たれました。

 李登輝・前台湾総統からのメッセージを含む「資料」の2篇は次回に譲るとして、今回は日本に住む台湾人の皆さんが日本政府の杓子定規かつ柔軟性を欠いた措置によって不条理――極端にいうなら「いわれのない差別」――に直面していることを紹介します。

 その内容については私がどうこう言うまでもなく、ビラにおいて意が尽くされています。そこでこのビラの全文を
メルマガ『台湾の声』誌の許可を得て以下に転載します(※スペースの都合上、改行箇所を一部改めています)。

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 ●「台湾」は「中国」ではない!!


 あなたはご存知ですか!?

 在日台湾人の外国人登録証の国籍欄の記載が「台湾」ではなく、「中国」と強制されていることを!!

 【1】全ての在日台湾人は、外国人登録において、法務省の強制により、国籍欄の記載を、本来あるべき「台湾」から「中国」へ変更させられています。このことはあなたが好ましく思わない国の国籍を強制されるというのに等しいのです。

 台湾はたとえ1秒たりとも、中華人民共和国の支配を受けたことはありません。「台湾」は「台湾」です。

 【2】日本政府が1972年(昭和47年)、中華人民共和国と締結した日中共同声明において、日本は中華人民共和国の主張する「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部である」という立場を「十分理解し尊重」すると述べているだけで、決して台湾に対して中華人民共和国の主権が及んでいることを認めていません。サンフランシスコ講和条約で台湾を放棄した日本政府に、台湾の地位を決める権限などありえないからです。

 日本政府が認めていないにもかかわらず、一省庁である法務省が恣意的に、

「台湾人の国籍は『中国』」

 とする横暴が罷り通ることは決して許されるべきことではありません。

 【3】世界に目を向ければ、米・カナダ・独・仏など欧米諸国は「TAIWAN」と記載しています。英国は「TAIWAN-ROC」と明記し、「CHIAN-ROC」と明確に区別しています。その他、シンガポール、韓国、ニュージーランドなどアジア・太平洋諸国も同様です。

 これが世界の常識です。

 【4】台湾は既に自由・民主・人権・法治の民主主義国家であり、一方中国は共産主義独裁国家です。日本と台湾は共通の価値観を有する民主主義国家であり、歴史的にも、地政学上も、運命共同体であることは疑う余地はありません。

 日本政府は中国に対し媚中外交を続け、6兆円ものODAを供与しましたが、わが国の善意など通用する国ではないことは、靖国問題、ガス田盗掘、原潜領海侵犯、反日戦争記念館などの例を見ても明らかです。

 今こそ、日本政府は誤った1つの中国政策を直ちに改め、民主主義国家・台湾を承認すべきです。そのことが、かつて同じ時代を歩み、世界に類を見ない親日国家である台湾の人々にこたえる道なのです。

 私たちは日本政府に対し、外国の干渉を排除して、在日台湾人の国籍欄を「中国」ではなく「台湾」に改めることを強く要望します。


 台湾出身戦歿者慰霊の会

 東京都台東区台東1-23-10-301
 03-6913-8117


 ――――

 ……以上です。

「今こそ、日本政府は誤った1つの中国政策を直ちに改め、民主主義国家・台湾を承認すべき」

 という主張には無理を感じます。まず台湾自身が「中華民国」を廃し、本来あるべき「正常な国家」へ向けたアクションを起こさなければならないからです。でも、外国人登録証の国籍に関する問題を改めよ、という台湾人有志の主張には全く賛同するところです。

 私は前々回書いたように、

「私にとって、台湾と台湾人はもう無条件で限りなく、理非もなく大好き」

 なのですが、それを別としても、台湾人の外国人登録証の国籍欄を「中国」とする日本政府(法務省)の方針には不条理を感じます。

 例えば『警察白書』における「在日外国人犯罪件数(国籍別)」において現在17年連続トップ(最多件数)という犯罪輸出国「中国」とは中国本土のことで、「香港」「マカオ」「台湾」とは区別されています。「中国人を見たら110番」が出現する背景を数字によって裏打ちするものですね。中国語でいえばさしずめ「男盗女娼」(男は泥棒女は娼婦)です。

 ――――

 日本人の対中嫌悪感が7割を超えるのも、生活レベルでの危機感、つまり在日中国人の犯罪や不法滞在、またマナーの悪さによるところが少なくないでしょう。

 アルバイトの募集や住宅賃貸で「中国人お断り」という現象が起こるのも不思議ではありません。その是非はともかく、「17連覇中」ですから雇用者や家主が警戒心を抱くのは自然なことです。

 『警察白書』が区別しているように、これは本来、台湾人とは何の関わりもない話です。……ところが、外国人登録証の国籍欄が「中国」になってしまうという現実はどうしたことでしょう?「中国人」であるために割を食うケースが出てくる訳で、上述した「いわれなき差別」に遭う台湾人も少なくないでしょう。

 日本はこの点において省庁を問わず、「中国」と「台湾」を明確に区別している諸外国の例にならうべきです。

 このような不条理がまかり通っていることに、私は日本人のひとりとして恥ずかしく、また「中国」と一緒くたにされることで「いわれなき差別」にさらされている台湾人に申し訳なく思います。

 ……ところで今回の署名活動、正確にいえば元日だけでなく、12月31日から1月3日にかけて行われたもののようです。以下に『台湾の声』誌の記事(2007/01/05)を転載します。

 ――――


 ●靖国神社においての署名ご協力に感謝


 私たちは、昨年12月3日の第二回台湾出身戦歿者慰霊祭と時を同じくし、靖国神社境内において、在日台湾人の外国人登録証の国籍欄を「中国」から「台湾」へ改めるべく署名活動を行って参りました。

 「台湾の声」読者の皆様、台湾関係の方々、一般の参拝者より、多くの署名を頂くことができました。

 また、年末年始の四日間(12/31~01/03)には、何人かの有志の方々が署名活動支援に駆けつけて下さいました。

 そして、「英霊に応える会」から署名の場所をお借りすることができました。

 この場をお借りしまして、関係各位の皆様に厚く御礼申し上げます。

 さて、年末年始の署名活動に関してですが、「台湾は台湾です!」との呼び掛けに対し、「そうだ!そうだ!」との応答を何度も耳にしました。日本人の中にもこの問題に関し、高い関心を持っているという感触を得ることができたのです。

 また、若い日台のカップル、台湾人同士のカップルも見受けられました。これを「日台命運共同体」と言わずして、何と言えばいいのでしょうか?

 私たちは今後ともこの問題に取り組み、訴えていきたいと思います。

 読者の皆様も、常日頃から「台湾は台湾だ!」、「台湾は中国ではない!」「台湾人の国籍は、かの共産主義恐怖独裁国家・中国ではございません!」「台湾は自由民主主義国家です!」、「台湾人の国籍は本来あるべき台湾に戻しましょう!」と繰り返し訴えて参りましょう。

 私たちは毎週(日)午前9時から午後2時半まで署名活動を行っています。参加ご希望の方は、靖國神社第二鳥居前に参集下さい。

 きっと日台の魂の結合を体験することができるでしょう。


 台湾出身戦没者慰霊の会一同


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 ……こういう状況にはむしろ日本人自身が問題意識を持って、解決に向かって取り組む必要があると思います。それによって日本と台湾の絆が一段と強化され、台湾人の親日感もより高まることになるでしょう。

 では、いま自分にできることは何だろうか?……などと大袈裟に考える必要はありません。とりあえず、署名に応じ、活動する有志の方々に声援を送るという形で、行動による意思表示を行えばいいと思います。


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 よくもまあ、ぬけぬけと。

 よほどの鉄面皮でないとこの仕事は務まりません。いや、中共政権の外交部報道官のことです。今回俎上に乗せられたのは脂身たっぷりのブタ……じゃなくてキモオタ風デブの劉建超・報道官。もちろんメガネはフレームに何の洒落っ気もないスタンダードな銀縁です。

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 前々回の文末でふれたように、共同通信が1月4日、

「日米が台湾有事に備え2月にも具体的な対応策を協議へ」

 との報道を行いました。ところが私はその共同電の日本語記事を捕まえ損ねました。ようやく拾い上げたのは中国語版です。

 ●日米が台湾海峡「有事」の対応計画を検討へ(共同通信 2006/01/04/06:59)
 http://china.kyodo.co.jp/modules/fsStory/index.php?sel_lang=schinese&storyid=37347

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 いやー楽しませてもらいました。共同電中文版というのも勉強になっていいですね(正しい中国事情の理解には余り役立ちませんけど)。この記事文中に出てくる、

「但這勢必將招致中國的強烈反對。」

 という一節は他でもない、あの
「中国の強い反発は必至だ」じゃないですか(笑)。なるほど中国語ではこう書く訳ですか。みなさんこれ重要。テストに出ますからしっかり覚えて下さいねー。個人的にはこの一句、「イナバウアー」に匹敵するインパクトでした。

 ちなみに原文(日本語)はどうなっているのかわかりませんが、この中文版では、

「中国の台頭に対し米国が根強い警戒心を抱いていることがみてとれる」

 で終わっています。共同通信は私の記憶に間違いがなければ日本の通信社の筈だったと思いますが、中文版の記事だと中共系メディアに十分化けられますね。ただこの記事だと「中国の強い反発は必至だ」でバレてしまいますけど(笑)。

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 で、このニュースが流れた1月4日は外交部報道官定例記者会見のある木曜日。ということで、当然ながらこの共同電についての質問が記者から出されました(それが共同通信の記者だったらなお面白いのですが)。そして、お約束の通り「強い反発」です。以下は翻訳の精度を期すため『人民網日本語版』から引用したものです。

 ――日米両政府が台湾海峡の有事における共同対処計画についてすでに基本的に一致し、米軍と自衛隊による具体的な検討を2月に行うことで合意したと、日本で報じられた。コメントは。

 われわれは関連報道に留意しており、重大な関心を表明する。周知の通り、台湾は中国領土の不可分な一部であり、台湾に関わる日米間のいかなる言動においても、「1つの中国」原則と、関係する承諾が守られるべきだ。現在、中米関係と中日関係は共に改善・発展している。われわれは関係方面が、2国間関係の発展の面で、積極的で有益な事を多く行うことを希望する。

 ●日米は台湾関係の言動で「1つの中国」を厳守すべき(人民網日本語版 2006/01/05/10:18)
 http://j.peopledaily.com.cn/2007/01/05/jp20070105_66619.html

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 いやーツッコミどころ満載ですね。

「周知の通り、台湾は中国領土の不可分な一部であり」

 ひょっとして寝言?そんなこと誰も知りませんし国際的にも認知されていませんよ。

 まずは根拠を挙げてもらいましょうか。日本政府はサンフランシスコ講和条約で台湾などの領有権を放棄していますが、台湾を中華人民共和国の領土だとはいままで一度も正式に承認したことがありません。その根拠?「日中共同声明」を御覧あれ。「日中平和友好条約」「日中共同宣言」は台湾問題について「日中共同声明」に拠るとしていますから。

 ●日中共同声明。・上(2006/03/10)
 ●日中共同声明。・下(2006/03/10)

「台湾に関わる日米間のいかなる言動においても、『1つの中国』原則と、関係する承諾が守られるべきだ」

 いやいや「1つの中国」は日本も認めていますよ。ただ台湾を中国の一部と承認していませんから、台湾は台湾。しかもちゃんと「1つの中国」の原則通り「中華民国」という名前が日本政府から出ることはありません。関係する承諾はちゃんと守られているじゃないですか。はいはい杞憂杞憂。

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 それから「台湾は中国の一部」と日本が承認していない以上、これが「日中共同声明」「日中平和友好条約」「日中共同宣言」のいずれもが禁じている内政干渉に当たらないことは言うまでもありません。

 逆に小泉純一郎・首相(当時)の靖国神社参拝に対して中国政府がグダグダ言うことは明確な内政干渉なのですが、日本政府が大人しくしていて駁論しないからって、調子に乗っていると痛い目に遭いますよ。

「われわれは関連報道に留意しており、重大な関心を表明する」

 どうぞ御勝手に。

「われわれは関係方面が、2国間関係の発展の面で、積極的で有益な事を多く行うことを希望する」

 私も中国政府が日中関係の発展に不利益となるような振る舞い(それと在日中国人犯罪)を減らすよう強く希望します。あとどうせ翻訳するならもう少しこなれた日本語でお願いします。ちなみに原文はこちら。

 ●外交部報道官定例記者会見(新華網 2007/01/04/21:12)
 http://news.xinhuanet.com/world/2007-01/04/content_5566771_1.htm

 ――――

 ペテン師だと思うのは、「1つの中国」と「台湾の帰属」という全く異なる問題を巧みにとりまぜてワンセテンスで語ってしまうことで、さらにご丁寧に「周知の通り」と枕詞を加えることで、あたかも「台湾は中国領土の不可分な一部」が定説であるような印象を与えようとしていることです。いつものことですけどね。

 この記者会見では、

「周知の通り、台湾は中国領土の不可分な一部であり」

 という物言いに根拠を求める記者はいません。いたとしてもネットに掲載される時点ではカットされているでしょうし、恐らくその質問に対し報道官は、

「中国は台湾に対し、議論の余地のない主権を有している。中国側には十分な歴史的・法的根拠がある」

 としか回答してくれないでしょう。その「歴史的・法的根拠」を示してほしいのですが、中国側にはその材料がありませんから空疎かつ高飛車に言葉を濁すことしかできないのです。例の南京虫事件に関する、

「山の如く動かしようのない確たる証拠がある」(鐵證如山)

 という言い回しと同じです。

 だからいつも言っているじゃないですか。こういう価値観を共有することのできない、次元の違う(北朝鮮同様)、対話の成立しない相手には「なんちゃって対話」を続けると同時に適宜に圧力を用いつつ、日本は日本のやるべきことを瀟洒に、また事務的にサクサクと処理していくべきなのです。

 ――――

 しかし日米政府の公式発表があったのならともかく、一通信社の消息筋報道でこれだけ反応してくれるんですから外交部報道官もサービス精神が旺盛ですね。どうせならもっとヒートアップしてほしいところです。

 それをお望みならちょうどいい時機ですからとっておきの策があります。台湾新幹線のオープンセレモニーに招待されている小泉・前首相が式典に出席することです。

 ついでに石原慎太郎・東京都知事にも参加してもらって、二人の間に李登輝・前総統が座る。いい絵になるじゃありませんか。

 二人は李登輝氏や陳水扁・総統と握手したり和やかに歓談したりする一方で、物欲しそうな顔をして近づいてくる国民党主席の馬英九を無視。……またとない極上燃料だと思うのですが、いかがでしょうか?

 とりあえず、

「但這勢必將招致中國的強烈反對。」

 ……というオチをここに置いておきますね。




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 交流協会という組織があります。台湾に対する日本の窓口で台北に事務所を構えており、いわば実質的な駐台湾日本大使館のようなものです。

 中共政権にとってみれば目障りな機関ということになるでしょう。交流協会が外務省内の媚中派を通じて台湾情報を中共政権に提供しているなら話は別ですが、実際にはなかなか気骨のある日本の駐台拠点のようです。

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 ●台北の天皇誕生日祝賀会、李登輝・前総統が初出席(読売新聞 2006/12/19/20:39)
 http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20061219i313.htm

 【台北=石井利尚】台湾の李登輝・前総統(83)は19日、日本の対台湾窓口機関、交流協会台北事務所が台北市内のホテルで開いた天皇誕生日の祝賀レセプションに出席した。

 日本と台湾は外交関係がないが、同事務所は、中国の反対を押し切って2003年から祝賀会を開催し、台湾政財界関係者を招いてきたが、中国が「独立派の総代表」と非難する李氏の出席は初めて。

 ――――

 そうなんです。天皇誕生日の祝賀レセプションは2003年12月12日に初めて開催され、当時中国は猛反発しました。ちょうど私が中国の反日掲示板に出入りするようになって間もない時期の出来事で、この件につきブーブー騒いでいた糞青(自称愛国者の反日信者)どもを道理を以て封じ込めた記憶があります。

 このレセプションを毅然として初開催したときの交流協会台北事務所代表、つまり実質的な駐台日本大使だったのが内田勝久氏(前台北事務所代表)です。台湾の中央通信社の報道(2004/10/03)によると、内田氏は代表在任中の2004年10月に台北で開かれた「台日論壇」において中共政権の台頭による脅威を指摘し、

「これまで国際的には(台湾問題について)内政不干渉の原則がとられてきたが、いまや状況は変わっている。つまり、もし台湾問題が他国の利害に影響を及ぼすのであれば、これは立派な国際問題である」

 と言い切っています。ところが不思議なことに、このフォーラムについては悪意を込めて報じた中共系メディアが、この発言をなぜかスルーしています。

 ――――

 上の報道にあるように、李登輝氏はこれまではこのレセプションには参加していませんでした。ただ2003年のレセプション初開催時には、いやその開催当日には中央大学の学園祭の一環として企画されたインターネットを通じての日本に向けた講演会を行っています。

 当時レセプション開催に猛反発した中共政権は、この「レセプション当日に李登輝は台独活動」という件も含めて批判しています。

 その李登輝氏が今年初めてレセプションに出席したことは中共(特に軍部)にとって怒り心頭でしょうが、いまこのエントリーを書いている段階では中共系メディアによる関連記事は見当たりません。

 それよりも、中共にとってはさきの台北・高雄の市長選で国民党(台北)と民進党(高雄)が痛み分けたことが無念でしょう。つい最近までは陳水扁・総統の汚職疑惑で市民も多数参加する大型批判イベントが相次ぎ、台湾独立派の民進党が失速して一気に中共好みの政局になりそうな観があリました。

 ところがその勢いで臨んで国民党の両取り確実かと思われた台北・高雄市長選のフタを開けてみたら、民進党が踏ん張って根拠地の南部(高雄)を辛うじて確保。このため国民党主席で有力な次期総統候補である馬英九・前台北市長への求心力が落ちるという、中共にとって意外な展開になってしまいました。高尾市長選は僅差だったので再集計申請が出されてはいますが、現時点においては紛れもない「敗北」です。

 結局は有権者の多数派である「中共と一緒になるのは真っ平御免だけど独立を強行して戦争になっても困る」という台湾人意識の強い「本土派」層、つまり潜在的独立派ともいうべき現状維持を望む市民のバランス感覚が作用したのだと私は思います。

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 ●唐家セン:台独に反対し封じ込めるのは中華の子にとって目下の要務だ(新華網 2006/12/19/15:25)
 http://news.xinhuanet.com/tai_gang_ao/2006-12/19/content_5507425.htm

 ●北京の専門家:来年は台湾当局による法的台独の加速を警戒せよ(新華網 2006/12/19/16:46)
 http://news.xinhuanet.com/tai_gang_ao/2006-12/19/content_5507802.htm

 ……他にも似たような記事が中共系メディアから最近出てきていますが、これらは中共にとって台北・高雄市長選が「意外な結果」だったことへの条件反射のようなものといえるでしょう。

 そんな折りも折りに台湾の「日本大使館」が今年も天皇誕生日祝賀レセプションを開催し、今度は李登輝氏までが出席。……という事態に中共側がどう対応するかが見物です。

 ちなみにレセプション前日の12月18日、親中系ニュースサイト「星島環球網」が台独色の濃い台湾紙『自由時報』による池田維・交流協会台北事務所代表への取材記事を転載しています。

 ●日本駐台代表:「七二年体制」に変化なし、でも日台関係は依然として重要(星島環球網 2006/12/18)
 http://www.singtaonet.com/hk_taiwan/t20061218_421688.html

 ――――

 「七二年体制」とは「日中共同声明」に明記された台湾の扱いということです。簡単にいうと、

「中国は台湾が中国の不可分の領土であることを主張する。日本はそれを理解し尊重するものの、台湾を中国の一部とは正式に認めていない」

 というものです。池田代表はこれを踏まえつつ、

 ●日中関係と日台関係はゼロサムゲームの関係にはない。
 ●日本にとって台湾との関係は依然として重要。
 ●台湾人へのノービザ認可は日台関係の深まりを示すもの。

 と指摘する一方で、中共の対外強硬派を激怒させ、昨年春の反日騒動の有力な遠因のひとつである日米安保2プラス2で台湾海峡が日米安保の対象区域に組み入れられ、その安定が共同戦略目標のひとつとなったことを肯定。返す刀で中共政権の軍事費が不透明であることへの懸念を示しています(笑)。

 最後には開業先送り状態の台湾新幹線のオープンセレモニーに小泉純一郎・前首相が招待されていることについて、

「(セレモニーを)いつやるかわからないのだから、誰が出席するかも現時点ではわからない」

 と煙に巻いています。緩急自在ですね。

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 さて、哲人的風貌を帯びながら渾身これ政治家ともいうべき李登輝氏が天皇誕生日祝賀レセプションに初めて出席したことは、陳水扁総統周辺の汚職疑惑などで分裂や仲間割れを繰り返しながらも、市長選で何とか高雄を守り切った台湾独立派に活を入れ、その再編への着手を暗示するものだと思います。

 対日関係強化をアピールすることは中共への強いメッセージにもなりますが、同時に台湾人に「日台関係」という絆を再認識させることで「台湾人意識」を引き立て、政治的には台湾独立派ひいては台湾本土派の大同団結といった政界再編をにらんだ動きのようにみえます。

 もちろん日本へのラブコールでもあります。個人的な好みは別として、政治家としての李登輝氏が親日派というスタンスを常に維持し、「尖閣諸島は日本の領土」とまで明言しているのは、それが台湾の国益につながる、という考えに基づくからでしょう。

 いわば「戦略的親日」といったところで、中共政権が対日外交及び国内統治の必要上「戦略的反日」という姿勢を続けていたのと同じです。……とは冷たい言い方かも知れませんが、東アジアの安定、中共の脅威といった現状に照らせば、国益最優先の外交戦略として台湾が親日路線を選択することには何の不思議もありません。

 翻っていうなら、東アジアの安定という見地に立てば日本と台湾は一蓮托生ともいうべき運命共同体です。しかも普通選挙制を有し歴史観における大きな対立がないという点では、日本にとって話が通じる、価値観を共有し得る東アジアで唯一の国です。日本もまた「戦略的親台」路線を強化すべきでしょう。

 ――――

 今回の天皇誕生日祝賀レセプションについて、私は別の確度からも興味を持って眺めています。中共の反応や如何に、ということです。

 初開催に猛反発した2003年はまだ江沢民時代。ところが2004年9月に胡錦涛政権が発足してからは、このイベントに対し中国側は大きく反発していません。

 胡錦涛政権がその試用期間中、「ことさらに反日を言い立てない」という江沢民時代に比べれば現実的で柔軟な対日路線に転じたからです。前述した内田交流協会台北事務所代表による踏み込んだ発言がスルーされたのも、同じ理由によるものだと私は考えています。

 胡錦涛はその試用期間でダメ出しをされて対日外交の路線転換を余儀なくされることになり、その過程で2005年には反日騒動や呉儀ドタキャン事件なども起きましたが、その後は軍主流派と組むことによって中共上層部における指導力を強化。そして今年10月の安倍晋三・首相の訪中で日中関係が表面的には蜜月時代に入ったことが強調されています。誰が強調しているかといえば、もちろん中共当局及び中共系メディア、そして日本のマスコミです(笑)。

 そういう流れにある以上、天皇誕生日祝賀レセプション自体は「むやみに事を荒立てない」という目下の対日路線を反映してスルーされるかも知れません。ところが今回はそこに中共にとっての鬼門筋である「李登輝」カードが重なって出てきました。果たして黙っていられるか、どうか。中共内部における政治的駆け引きを含め、注目すべきところではないかと思います。

 ――――

 最後にこのレセプションについて。毎回政財界の有力者を招待して開かれているようですが、詳しい顔ぶれはよくわかりません。

 例えば60年余り前には「高砂族」と呼ばれて志願して日本兵と共に戦い、靖国神社にいる戦友たちに会いに来るような人たち。……政財界には無縁かも知れませんが、そういう人たちにも出席してもらって、ささやかながらも日本として感謝の気持ちを表すことができていればいいな、と思います。

 ……何だか標題と余り関係のない内容になってしまいましたが、李登輝さんには体調も政局も整えた上で、来年の桜の季節に是非訪日してもらいたいと願っています。ちょっと古いですけど「ウェルコネ」であります。




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 いやー当たり前のことを書くようですが、ブログというのは色々な読み方をされたり色づけをされたりすることから免れません。ですから別に困る訳ではないのですが、当ブログを嫌中ブログとか反中共ブログに分類されるのはやっぱりイタいてす。それから私を反中共の闘士のようにみられるのも迷惑です(笑)。

 むろん私の筆致に問題があるのでしょうからイタくても甘受しますけど、プロフィール欄を御覧頂ければわかるように、

「趣味はもちろんチナヲチ。あと『中共の嫌がることを真心を込めて念入りにやってあげること』」

 と書いてある筈です。「チナヲチ」と「中共いじり」は私の中では別種なものでして、「中共いじり」は個人的な娯楽としてこのブログとは無関係にやっていることです。

 このブログも娯楽なのですが、あえて偉そうにテーマづけするとすれば、

 ●日本人の対中認識がより正確なものとなっていく過程を眺めること
 ●日中関係が上下関係のない対等な二国間関係となっていくプロセスを眺めていくこと
 ●中共というひとつの政権がどういう道を歩んでいくのか、その「歴史劇」のプロセスを眺めていくこと
 ●台湾が「国家」として成立していくプロセスを眺めていくこと
 ●香港が中共の植民地として墜ちていくことを生暖かく見守ること
 ●日本人が日本人であることに立ち返るプロセスを眺めること

 ……と、いま思いつくままに並べてみると、ざっとこんなところでしょうか。もちろんそのいずれにも野次馬であり書き手である私のある種の傾きが反映されることになります。

 で、森喜朗・元首相訪台の一件も、中共が嫌がるニュースだから取り上げた訳ではなくて、日中関係に一石を投じる動きとして興味深く思ったので俎上に乗っけたものです。

 ――――

 前回お伝えしたように森・元首相が11月21日から23日まで台湾を訪問し、陳水扁・総統との会見、断交後首相経験者としては初の受勲、そして著書のサイン会などのスケジュールをこなして帰国しました。やはり会見予定の組まれていた李登輝・前総統は高熱で緊急入院していたため面会はかなわなかったのではないかと思います。

 さてこの動き、実は連係プレーなのではないかと私は前回書きました。安倍晋三・首相、麻生太郎・外相、中川昭一・自民党政調会長あたりが主役で、さらにいえば久間章生・防衛庁長官、中川秀直・自民党幹事長、塩崎恭久・官房長官あたりが合いの手のような役回りで絡んだいくつかの芝居のなかのひとつです。

 安倍首相が10月に訪中したことで日中間を蜜月ムードが支配しているかのようなマスコミが多いようですけど、基本的なところは何も変わっていないように私にはみえます。

 「おや?」と思ったのは安倍首相が村山談話のみならず河野談話(慰安婦問題)まで踏襲したことと、日中首脳会談後のプレス向け声明で中国側が、日本が戦後60年ずっと平和の道を歩んできたことを評価すると言及したことでした。

 ――――

 参院選が終わるまでは安倍首相も暖気運転せざるを得ないのではないかと私は思うのですが、対中外交に関する限り、そういう中でも安倍内閣は活発に動いているといった印象を受けます。

 暖気運転中ですから本格的にはまだ動いていませんし荒っぽいアクションに出ることもないのですが、新たな段階に入ったようにみえる日中関係の中で、やれることはちゃんとやっているなというのが私の見方です。

 標題に「探索射撃」と書きましたけど、要はそれです。中共政権側のデッドラインを探るかのように「核保有論議」「集団的自衛権」などの話題で中国側の出方をうかがい、安倍首相自身もデンマーク首相との会談でEU(欧州連合)の対中武器禁輸措置の解除に反対だと明言しています。

 ●安倍首相、対中武器禁輸解除に反対=日デンマーク首脳会談(時事通信 2006/11/21/19:01)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061121-00000110-jij-pol

 安倍晋三首相は21日午後、首相官邸でデンマークのラスムセン首相と会談した。安倍首相は、欧州連合(EU)の対中武器禁輸解除問題について「中国の長年にわたる軍備増強とその不透明性は注視する必要がある。解除に日本は反対だ」と表明。
(後略)

 中共をチクチク突ついている訳です。その延長線上として「さて台湾問題はどうだろう」ということで行われたのが森・元首相の訪台ではないかと。

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 で、注目されていた中共政権の反発ですが、森・元首相が台湾を離れるとともに一斉に動き出した観があります。

 私は当初、訪台初日の21日が火曜日であることから外交部報道官定例記者会見(毎週火曜・木曜)で話題にあがるかと思っていたのですが、時間的に森氏が台湾についたばかりということ、そして3日間の日程で何が飛び出してくるかわからないということから、のっけから大っぴらに騒ぐことは控えたようです。

 ただ前回紹介したように、中共系メディアは速報といったタイミングで論評抜きの報道を中国国内にも流しました。中共にとって愉快なニュースではありませんから、それをわざわざ流したということは「あとで反発する」ということです。

 国民に見せつけるように中共政権が反発するとすれば、木曜(23日)の外交部報道官定例記者会見となります。ただその前に、中国国民には内緒ながら、外交ルートで日本への抗議を行っていたんですね。

 ●森元首相の訪台に抗議=「不満」伝える-中国外務省(時事通信 2006/11/23/07:00)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061122-00000189-jij-int

 【北京22日時事】森喜朗元首相が21日に台湾を訪問し、台北で陳水扁総統、李登輝前総統らと会談したことに関し、中国外務省が北京の日本大使館などに外交ルートを通じて「不満」を表明するなど、抗議していたことが22日分かった。日中関係筋が明らかにした。

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 中国外交部の誰が日本大使館の誰を呼びつけて抗議したのかも明らかでないとすれば10月末の尖閣問題同様、緊張感に欠ける抗議ですねえ。ちなみに以下は台湾で流れた報道。

 ●外務省:森喜朗・元首相の訪台に中國側が抗議(AFP 2006/11/23/00:50)
 http://tw.news.yahoo.com/article/url/d/a/061122/19/6yq9.html

 こちらでは、

「森喜朗氏の訪台は国会議員としての私的なものに過ぎない」
「政府の立場としては、森喜朗氏の訪台は日本政府とは無関係と考えている」

 要するに「政府を代表する立場の人間じゃないんだから問題ねーだろ」ということで、中国側の抗議をサラリと受け流している印象です。

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 さてお待ちかねの木曜日、23日の外交部報道官定例会見です。担当は今回も姜瑜・報道官。肝心の質疑応答は会見の最後に行われました。

 記者
「日本の森喜朗・元首相が21日から23日まで訪台し、陳水扁らと会見したほか、台湾当局から勲章を授与された。これに対する中国側の意見を聞きたい」

 姜瑜
「台湾問題は中国の核心的利益と中日関係の政治的基盤に関わるものだ。中国側の深刻な懸念に構わず、森喜朗・元首相が訪台し陳水扁と会見し受勲することを許可したことについて、我々は強烈な不満と遺憾を表明する。日本政府が台湾問題についての承諾を遵守し、有効な措置を講じて日台関係を適切に処理し、特に『台独』勢力といかなる政治的往来も行わないよう我々は要求する」

 ……とのことです。この問題を中国側が決して軽視していないことは、箇条書きされたこの日の会見要旨の筆頭にこの問題を並べたことからもうかがえます。

 http://news.xinhuanet.com/world/2006-11/23/content_5367803.htm
 http://news.xinhuanet.com/world/2006-11/23/content_5367803_1.htm

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 ただし、微妙な物言いなんですよね、これ。森氏が前回訪台した際(2003年12月)の外交部声明では、日中間の原則的ルールともいえる「日中間で取り交わされた3つの政治的文書」(「日中共同声明」「日中平和友好条約」「日中共同宣言」)を持ち出してきて、森氏の行動に対し、

「『中日共同声明』など中日間で取り交わした3つの政治的文書の基本原則を遵守するよう日本側に要求する」

 という、小泉前首相の靖国神社参拝に対する声明にも出て来なかった強い表現が使われていました。

 私は森氏がラガーマンであることは知っていましたが、団体球技で例えに引けるだけの知識を持っているのはサッカーと野球ぐらいですから、前回はあえて「センターバックの攻撃参加」とサッカーを持ち出してみたのですが、無理をしてみるなら、「華麗なステップで相手守備陣を次々と抜き去ってトライ」てなところなんでしょうか。

 その例えでいうなら、今回の外交部声明は前回に比べて「立ちはだかる守備陣の壁が薄い」ということになります。実質的な内容はあまり大差ないのですが、「『中日共同声明』など中日間で取り交わした3つの政治的文書」云々といった「怒っているんだぞ」を強調するお約束の言辞が登場しなかったことから、それがうかがえます。

 それが江沢民時代(~2004年9月)と胡錦涛がようやく政治の主導権を握った現在との差なのかどうかはわかりません。気になる軍部の動向ですが、人民解放軍機関紙『解放軍報』電子版は外交部会見当日の昨日(23日)はこれを速報せず、きょう24日付の紙面で初めて報じています。それほど神経質になっているようにはみえません。

 軍部はともかく、中共政権としては前回ほど必死になれない事情があるのでしょうか。

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 私自身は台湾人がその本土意識を軸に、台湾を中共のくびきから解放して「中国」とは無縁の国家として成立し、国際社会からもそれを認められることは必要だと考えていますし、それが日本の国益にもつながるとみています。

 そもそも東アジアにおいて、民主主義を標榜し、日本と価値観を共有できる唯一の国家です。親日かどうかではなく、同じ民主主義でも韓国のような基地外国家ではありません。価値観を共有できることが貴重なのです。

 その意味で、この時期に森・元首相が訪台して独立派や本土派の政治家と交流を深めたことは喜ばしいことですし、安倍政権の意思表示としても上々だったのではないかと思います。

 さすがに台湾新幹線の開業セレモニーに小泉純一郎・前首相が出席するとは考えにくいですけど。……でも仮に出席したとして、連戦や馬英九ら親中派らと公に会見する一方、陳水扁氏や李登輝氏とは極秘会談する、というスケジュールで臨んだら「台独勢力」との接触に神経質な中共の舌鋒がどう変化するか、みてみたい気もします。

 もちろん、個人的には小泉・前首相が開業セレモニーに出席して、李登輝氏や陳水扁氏また台湾本土派の政治家と会見する一方、親中派には一顧だにしないところを是非みたいです。

 日台関係については昨年春の日米2プラス2で「台湾海峡の有事」を日米安保の範囲に含めた時点で日本の基本的スタンスが明らかになっています。森氏の前回の訪台も前首相時代でしたから、小泉・前首相が行ったとしても、

「強烈な不満と遺憾を表明する」
「『中日共同声明』など中日間で取り交わした3つの政治的文書の基本原則を遵守するよう日本側に要求する」

 というのが中共の反応でしょう。それ以上のことをすれば、中共自身にその報いが返ってくることになります。

 李登輝氏の訪日は当分無理なようですから、その代わりといっては何ですが、小泉・前首相に是非訪台してもらい日本と台湾の結びつきをより強固なものにすると同時に、独立派・本土派への側面援護の役割を果たしてほしいところなんですけどねえ。




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 いや、別に「電撃」ではないんでしょうけど、私にとっては寝耳に水だったので。

 森喜朗・元首相が今日(11月21日)から台湾を訪問するそうです。まずは関連報道をどうぞ。

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 ●台湾総統、森元首相に勲章授与へ…国交断絶後初めて(読売新聞 2006/11/20/20:59)
 http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20061120ia22.htm

 台湾の外交部は20日、森喜朗・元首相が21日から3日間の予定で台北を訪問する際、陳水扁総統が「特種大綬景星勲章」を授与すると発表した。

 同勲章は、海外の首相などを対象にしたもので、外交部によると、1972年の日本と台湾の国交断絶後、日本の首相経験者に授与されるのは初めてという。
(後略)

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 共同や朝日や毎日ではないので「中国の反発は必至だ」という一節はありません(笑)。ただ中共政権は森・元首相による前回の訪台(2003年12月、李登輝・前総統と会見)でも大騒ぎしていたのに、今回は李登輝氏に会うだけでなく、さらに何と勲章までもらってしまうそうです。

「日本と台湾の国交断絶後、日本の首相経験者に授与されるのは初めて」

 ですからね。可燃度はより高くなってもおかしくありませんよ。

 やるねえ。(木村和司調)

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 実はまだあります。上の記事よりちょっと早く香港の『明報』電子版がこのニュースを報じています(時間は日本時間)。

 ●『明報』電子版(2006/11/20/20:18)
 http://hk.news.yahoo.com/061120/3/1wref.html

 ロイター電の引き写しですけど、早いうえに『読売新聞』電子版よりいい仕事をしています。森・元首相は今回も李登輝氏と対面するほか、さらに陳水扁・総統との会見もスケジュールに含まれているとか。

 魅せてくれます。(ジョン・カビラ調)

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 これは連係プレーなんでしょうか?……だとすれば面白いですねえ。

 2トップのひとりでエースストライカーの安倍晋三・首相が中国首脳会談を連発して「靖国神社」「歴史教科書」が出て来ない蜜月ムードを演出。かと思えばもうひとりのFWであるファンタジスタ・麻生太郎・外相が「核保有論議」で中国DF陣をかく乱し、サイドからは中川昭一政調会長もオーバーラップ。

 そうこうしているうちにポッカリと空いたスペースを目指して、今度はセンターバックの森・元首相が攻撃参加。台湾政局の混乱で当分来日できそうにない李登輝氏を訪ね、現職総統の陳水扁氏とも会見、さらに首相経験者としては「断交後初」の勲章をもらっちゃうそうです。

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 この一件、中国側の反発は……と思ったらもうどんどん報道されているじゃないですか。中共系通信社・中国新聞社が配信したようです。

 ●日本の森喜朗・元首相が訪台へ、陳水扁・李登輝との会見も(新浪網 2006/11/20/17:32)
 http://news.sina.com.cn/c/2006-11-20/170411567782.shtml

 ●森・元首相が3日間の訪台へ、陳水扁・李登輝との会見も(CCTV.com 2006/11/20/17:32)
 http://news.cctv.com/world/20061120/103700.shtml

 ●森喜朗・元首相が訪台、叙勲も(鳳凰網 2006/11/20/17:50)
 http://news.phoenixtv.com/taiwan/200611/1120_18_35908.shtml

 ●森喜朗・元首相が訪台、叙勲も(大公報電子版 2006/11/20/17:51)
 http://www.takungpao.com:82/gate/gb/www.takungpao.com/news/06/11/20/TM-653492.htm

 『読売新聞』や『明報』の電子版よりも早いですね(笑)。むろんこのタイミングですから、

 ●訪台する
 ●李登輝・陳水扁と会う
 ●勲章をもらう

 の3点を織り込んだ論評抜きの報道です。

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 さて森・元首相の訪台を国内で告知した中共政権、どういう態度に出るか見物です。

 中国国内メディアに速報させた以上、強い反発になると思われます。何たって台湾問題ですから、軍部が騒ぎますよ軍部が。

 しかもですよ。よりよって軍総参謀長補佐の章沁生・中将が党中央党校の新聞『学習時報』に、

「台湾を『一つの中国』の枠内にしっかりと収めるため(中共政権による台湾併呑のため)、軍備増強に絶えず邁進しなければならない」

 という趣旨の文章を発表し、それが19日に全国ニュースとして報じられた矢先です。タイトルは「章沁生:わが軍は台湾を「一つの中国」の枠内に押さえ込むに足る軍備を擁しなければならない」。

 ●「新華網」(2006/11/19/12:32)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2006-11/19/content_5348972.htm

 しかもこの章沁生・中将はこの11月下旬に訪日する予定だと先日報じられたばかり。顔にベタリと泥を塗られてあらあらメンツ丸つぶれー(笑)。

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 仮に胡錦涛・国家主席がその現実路線に照らして騒ぐまいとしても、こと台湾問題となれば話は別です。この件に関しては軍非主流派の電波系対外強硬派だけでなく、胡錦涛を擁護する軍主流派だって穏やかではいられないでしょう。原則問題であるだけに、胡錦涛自身も強い反発を示してみせようとするかも知れません。

 日本もなかなかイジワルですねー。「第17回党大会」という世代交代や大型人事の行われる5年に1度の政治的大イベントを来年に控えたこの時期に、中共内部が乱れかねません。現在の対日外交路線にも内部から異を唱えられる可能性があります。……なんやかんやで、中共の延命のため荒療治に着手しなければならない胡錦涛はこれでまた時間を浪費することになるかも知れません。

 可燃度という点からいえば、国民感情は別として、中共政権にとって台湾問題は日本の首相による靖国神社参拝より火の手が上がりやすいのです。台湾問題の方が格式がずっと上ですから。

 目安としては中共がしばしば言及する
「日中間で取り交わされた3つの政治的文書」というものがあります。「日中共同声明」「日中平和友好条約」及び「日中共同宣言」のことです。

 いわば日中関係の原点であり二国間における原則的ルールのようなもの、といっていいでしょう。これが今日午後(21日)に開かれるであろう外交部報道官定例会見でも持ち出される可能性が濃厚だと私は考えています。

 「台湾問題は靖国問題より可燃度が高い」と前述しましたが、例えば小泉純一郎・前首相が首相在任中に靖国神社を参拝するたびに中国外交部が発表してきた抗議声明。その中に、「日中間で取り交わされた3つの政治的文書」云々という文言は1度も登場しませんでした。

 靖国参拝が「二国間における原則的ルール」に抵触していると断じ切れなかったのでしょう。本来なら逆に「内政干渉」ということで中共が「3つの政治的文書」のいずれにも明確に違反している、と日本側が断罪すべきところなのです。

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 ところが、靖国参拝への抗議声明でも使われることのなかったこの「日中間で取り交わされた3つの政治的文書」が、前回の森・元首相による訪台においては持ち出されているのです。外交部の非難声明において、

「『中日共同声明』など中日間で取り交わした3つの政治的文書の基本原則を遵守するよう日本側に要求する」

 となっています。要するに小泉首相(当時)の靖国神社参拝よりも森・前首相(当時)による訪台の方が中共にとっては建前上ゆゆしき事態、ということなのです。

 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2003-12/25/content_1248416.htm

 2004年12月末に李登輝・前総統が訪日する直前には、外交部声明ではなく国営通信社・新華社の署名論文ながら、

「日本政府が李登輝の日本での活動を認めたことは、
「中日共同声明」など中日間で取り交わした3つの政治的文書の基本原則に背いたものであり、中国の平和的統一という大業に対する挑戦だ」

 ……と、さらに激しい表現が使われています。

 http://news.xinhuanet.com/world/2004-12/24/content_2375635.htm

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 それが今度は森・元首相、訪台して李登輝・前総統に会うだけじゃなくて、陳水扁・総統とも会見したうえ「特種大綬景星勲章」なる重々しい勲章を授与されるという極上燃料。これやっぱり連係してますよね。

 麻生外相と中川政調会長が安倍首相とは逆の動きをして作り出したスペースに虚を衝くタイミングで森・元首相というセンターバックの攻め上がりです。ワクテカの展開ですよこれは。

 だってもし中共側が強く反発しなかったら、いよいよスーパーサブの点取り屋たる小泉・前首相が満を持してピッチに入ります。台湾新幹線の開業セレモニーに出席するかも知れませんよ。すでに台湾側からの招待状を受け取っている訳ですし。

 という訳で中共の反発ぶりと政権内部における足並みの乱れに期待大。森・元首相には前線に上がってくる以上しっかり決めてもらいましょう。コメントでさり気なく煽ることもお忘れなく(笑)。この間の闘莉王みたいにPK外しちゃダメですよ。




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 この数日、尖閣問題が一段落したらどうも気が抜けたようで……ではなく、その尖閣問題などの件について香港の複数の掲示板に出入りしたり最近向こうに設置した中文ブログを書くなど愚にもつかぬ活動をしていました。仕事とは無関係な、自分の好きなジャンルで中国語を書くこと(下手糞ですけど)も私にとっては娯楽のひとつです。

 掲示板では馬鹿な香港型糞青のために今回の保釣運動の総括をしてやったり、帰属問題で斬り結んだり……別に大したことはしていないんですけど、やり取りをしている中で、日本のネットにおけるソフトの蓄積を改めて実感しました。チャンバラの最中に、

「あっここであの資料を投入しないと」
「あの条約の詳細、どうなっていたたかな」

 となったとき、検索するとすぐ出てきてくれるのです。一種の問題意識を持ったホームページとか「まとめサイト」のようなものが日本にはたくさんありますからね。情報管制の敷かれている中国本土はもちろん、香港もこの点では大きく遅れをとっています。

 以前中国のACG(アニメ・コミック・ゲーム)絡みで、

「表現の自由も大事だけど、広範なアマチュア層という人材供給源たるプロ予備軍がないと強力な業界が形成されないから、むしろ結社の自由の方が大事」

 という趣旨のことを書きましたが、ネットでも日本のアマチュアは頑張っているなあと痛感しました。

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 あとどうでもいいことですけど、ちょっと前に当ブログに斬り込んできた香港人の「張学良」君と香港のアキバ系掲示板でばったり再会。掲示板についている簡易メッセンジャー機能でやりとりして旧交を温めました。こういうこともあるんですねえ。

「今度は中国語で交流しよう。お前は俺のブログのエントリーもちゃんと理解できていなかったみたいだし」

 と書いたら彼は自信家らしく、

「それより日本語の方がいい。すぐに上達するから話せるようになる」

 と言うので、

「お前の日本語の作文力が俺の中国語の水準に達するのはすごく難しいぞ。これは自慢じゃなくて外国語を勉強した経験から言っているんだ。中国語に比べると日本語は文法が複雑だしな」

 などと言い聞かせていたら、急に姿勢を改めるような気配で、

「あなたは一体何歳?もう40歳になった?」

 と「張学良」君から切り返されて(素朴な疑問なんでしょうけど)ちょっと慌ててしまいました。彼はまだ高校生。私は40歳にはまだなっていませんが、彼の年齢の倍くらいは確実にあります。もちろん彼が早熟なのではなく、私が年甲斐もないということなのでしょう。

 ――――

 それはともかく、今回は台湾の話です。先日「h333」さんからご質問を頂いたのですが、ちょうど恰好のエントリーがあったのでそちらに回ってもらいました(「h333」さん、横着で申し訳ありませんでした)。それを読んで頂いたらしくコメントをつけてくれたのですが、

「とどのつまり教育がネックなんですよね」

 というくだりが非常に印象的でした。それで思い出した話がありまして。

 ――――

 面相というか「記者顔」というものがあるのでしょうか。私が1年ばかり台湾で暮らしていたころ、タクシーに乗ると「お前は日本の記者か」と運転手によく尋ねられました。

 タクシーは頻繁に利用していたので打率にすると低くなるでしょうが、十数回はありました。香港でも似たような経験があるので、私は「記者めいた面つき」ということになるのかも知れません。まあ台湾では編集部長兼編集長といった仕事をしていたので全く外れている訳ではありませんけど、新聞などで報道に携わっている訳ではないので、

「いや違う。記者じゃない」

 とこちらは一応否定します。でも相手はそれに構わず、

「いやいや、わかってる。記者だろ?」

 と勝手に決めつけてくるのです。決めつけるや運転手の独演会が始まります。

 台湾の運転手は政治の話題が好きで、独立派の政談を多く聞かされましたが、中には統一派の人もいて、車を下りるとき釣り銭を受け取った私の手をぐっと握って、

「台湾には李登輝みたいな奴ばかりじゃない。統一を望んでいる人間も多くいるということを是非書いてくれ」

 と真顔で言われたりしたこともありました。こちらはその気迫にひるみつつ、

「わ、わかった」

 と言うしかありません(笑)。いや笑い事ではなく、あれは私の台湾生活における強烈な体験のひとつでした。

 ――――

 そういう「お前記者だろ?いやいやわかってるって」と決めつけられて聞かされた話の中でもうひとつ印象に残っているものがあります。独立派かどうかはともかく台湾人意識の強い運転手でした。

「おれは休日には子供と一緒に、日帰りのバスツアーに参加するんだ」

「バスツアー?」

「お前記者なのに知らないのか?台北のターミナルから出ているんだ。もっと民情を勉強しろ」

 などと説教されつつ話を聞いていくと、要するに東京の「はとバス」のようなもので、台北周辺の観光名所や史跡をまる1日かけて案内してくれるそうです。

「あんた地元じゃないか。何でわざわざそんなのに参加するんだ?」

 と当然の疑問をぶつけると、

「いや地元なんだけど、おれたちの世代は台湾のことをよく知らないんだよ」

 という奇妙な回答から教育の話となります。

 ――――

 要するに一党独裁・戒厳令施行下で国民党型の教育を受けて育った世代は中国本土のことばかり教えられて、自分たちが住んでいる台湾の地理や歴史はほぼスルーされており、いきおい「台湾のことを知らない台湾人」になってしまったとのこと。運転手はその穴を埋めるべく、休みになると子供と一緒に台北の「はとバス」に乗っているのだそうです。

「俺みたいな奴は結構多いよ。あんたも一度乗ってみるといいよ」

 と言っていました。それがどれほど一般的なケースなのかはちょっとわかりませんが、ある意味象徴的なエピソードだと思い、印象的な記憶として残っています。現在では歴史・地理とも台湾メインのカリキュラムに改められているので、

「だから俺より子供の方が台湾の地理に詳しいんだよ」

 などと頭をかいていましたが、台湾も「台湾人の国」になるためには独立とか正名だけでなく、まだ他にも超えなければならないハードルが色々あるんだなあと思ったものです。

 ……ただそれだけの話でオチも何もないのですが、かたや対岸の中共政権下では江沢民時代に反日風味満載の「愛国主義教育」なるものを受けた「亡国の世代」が量産されて、コチコチの中共史観で煮込まれたせいなのかどこか硬直的な印象の連中が増えています。

 香港もその亜種である「国情教育」が必須科目になっていて先行きが不安です。ちなみに上記「張学良」君は高校生ですから当然ながら天安門事件(1989年)の記憶はないのですが、毎年6月4日に開かれるキャンドル集会には必ず参加している、というので褒めてやりました。

 ――――

 ところで独立派である与党・民進党の頽勢が伝えられる台湾ですが、もし馬英九・党主席が次の総統選挙で勝利して国民党政権が復活したら、教育も旧態に復することになるのでしょうか。

 国民党内部にも本土派がたくさんいますからそこまで大きく舵を切る必要はないでしょうし、国民の圧倒的多数が「台湾人」であり、基本的に現状維持派=潜在的独立派が大勢を占めている状況に変わりはありませんから舵を切ろうにも切れないでしょう。

 他の政策についても同じ理由から現状を大きく変えるようなことはできないでしょうし、あえてそれをやれば民意にそむく形となって、国民党は議会選挙(立法委員選挙)で大きく議席を失って非国民党勢力が台頭し、「馬英九総統」のフリーハンドはいよいよ狭まる。……と私は楽観的にみているのですが、さてどうでしょう。

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 とりあえず台湾といえば、新幹線開業セレモニーに小泉前首相が招待されています。

 そういう公式な招請には応じるのは難しいとしても、その時期に私的に台湾観光を行って、李登輝氏はじめ台湾本土派の要人と会見したり民主主義の根付いている台湾をほめあげるなどして、日本との関係をアピールすることで「台湾」を側面援護をしてほしいところです。

 森・元首相が前首相時代にそれをやった前例がありますし、李登輝氏は当分台湾を留守にできないでしょうから、安倍首相・麻生外相という連携のとれた前がかりな攻撃的布陣のもと、ベンチに退いた小泉氏のパフォーマンスに期待したいところです。

 ……あ、日本の教育もしっかりお願いします。こちらも超えなければならないハードル、特に愚劣なくせにしぶといものが色々ありますからね。




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 いずれにせよ、この『江沢民文選』をめぐる動きが政局の焦点に発展しそうな空気です。

 ……などと当ブログで以前書きましたけど、この
「『江沢民文選』に学べ」運動、予想以上のスピードと規模で展開されつつあります。

 『江沢民文選』が発売された翌日には全国各地で自発的な「学べ」運動が起こっているという記事が出て、それから一週間を経ずにしてついに党中央が「学べ」指示を発令。これによって「『江沢民文選』に学べ」運動は中共公認の活動となりました。

 そこからあっという間に事態が展開していきます。まずは党中央が率先して「学べ」の報告会なるイベントを開催。党中央政治局常務委員会という中共の最高意思決定機関のメンバー全員を揃えて胡錦涛が「学べ」演説を行っただけですけど、この顔ぶれ+最高指導者(胡錦涛)の演説というのは、イベントとしては最高レベルの格式といっていいでしょう。

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 この『江沢民文選』の持ち上げ方はちょっと異常なほどです。葬式に例えてみればわかります。中共のトップ9名が参列して胡錦涛が弔辞を読み上げる。これは故人が国家指導者級という場合の待遇です。

 そして、全人代常務委員会や人民解放軍も「学べ」運動に取り組むことを表明した、と報じられたのが一昨日。胡錦涛の演説と党中央の「学べ」に関する決定が出版されることも記事になりました。

 昨日(8月17日付)の中共系メディアの報道によれば、胡錦涛の出身母体である「共青団」(共産主義青年団)が「学べ」運動に取り組むことを表明し、中華全国総工会(労組の元締め)は「学べ」記念座談会を開催。そういえば中華全国総工会の主席でこの座談会にも出ている王兆国も共青団出身で胡錦涛とは同じ人脈ということにになりますね。さらに『人民日報』(2006/08/17)には『江沢民文選』万々歳の大論文。

 http://zqb.cyol.com/content/2006-08/17/content_1481776.htm
 http://news.xinhuanet.com/politics/2006-08/17/content_4970931.htm
 http://news.xinhuanet.com/politics/2006-08/17/content_4970964.htm

 まさに燎原の火の如き勢いです。

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 でも正直なところ、現時点ではどういう流れで何が起きているのか、私にはよくわかりません。「自発的な学習運動から始まった」といっても、元々そういうシナリオなのはお約束。その芝居の筋書きを書いたのが誰で、ここまでサクサクと台本通りに事が進んでいるのはなぜなのか。常識的にいって、胡錦涛とその周辺がシナリオライターということはないでしょう。

 つい先ごろまでは胡錦涛オリジナルの「科学的発展観」が改革の指導理論として持ち上げられていたのに、ここにきてかくも大規模な「『江沢民文選』に学べ」運動が展開されたら、「科学的発展観」がどうしても霞んでしまいます。霞む分だけ胡錦涛の影も薄くなっていくのです。『江沢民文選』を持ち上げることで自らの立場をいよいよ確固たるものにする、なんて手の込んだ芝居のできるキャラではなさそうですし。

 まあしばらく寝かせておくネタ、ということになるでしょう。全国展開されていく過程では極端な動きも出てくるでしょうから、そこから何かが垣間見えるのではないかと思います。

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 では今回はといえば、一転して台湾の話です。

 いずれにせよ、この『江沢民文選』をめぐる動きが政局の焦点に発展しそうな空気です。

 と書いたエントリー(2006/08/16)で頂いた「muruneko」さんのコメントを使わせて頂きます。

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 ●朱に交われば紅くなる (muruneko) 2006-08-16 23:10:58

 先日8/13(日)の日経に「注目すべき台湾の政治変動」と題するコラムが載りました(副題は「馬英九国民党主席」への疑問;山本 勲論説委員署名)。

 まぁ、内容は陳水扁政権の後釜として確度の高い次期国民党総統の政治姿勢の分析なのですが(つい先日、日本にゴマ摺りに来ましたよね、このヒト)、一部を以下に抜粋します。

 # 記事から左巻き発言の部分のみを抜き出してますから、余り強い先入観持たないで下さいね、読者の方々。

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 「日本は台湾や韓国を侵略した事実は無い」との日本側メディアの反論に対して、馬氏は「台湾では日本が植民地支配を始めた(一八九五年)最初の半年間で十万人以上の死傷者を出した」と、再び驚くべき発言をした。台湾の歴史教科書は植民地書記の抵抗事件で一万四千人の犠牲者が出たと記しているが、十万人以上とは初耳だ。
どうやら馬氏にとっては日本の侵略戦争は一八九四年の日清戦争から始まり、台湾や朝鮮の統治もその一環という事のようで、この点では中国の歴史観と相通じるものが有る。
 -----------------------------------------

 で、このヒト U.S. に留学しており(確か NYCU の法科?ええと Wiki には以下のように書いて有ります)、論文は御承知の通り「尖閣諸島」。

 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A6%AC%E8%8B%B1%E4%B9%9D

 そう、朱に交われば紅くなる、それを地で行ってるのじゃないの、このヒト?というのが当方の主張です(そんなの、誰でも知ってるじゃん、と言われそうですが)。

 台北市市長としての政治力量は良く知りませんが、U.S.留学中に刷り込まれたのであろう大中華の夢に恋焦がれるばかりに、「併呑」を積極的に受容する事は無くとも、徐々に(経済分野から)消極的・暗黙的に認知するのでは?と思います。

 # 随分と大きな地殻変動になりそうですが。

 我等の愛すべき南鮮大統領・盧武鉉氏が北鮮に飼いならされ、半島丸ごと支那属国になるのも秒読みのこの時勢、数年先に日本として二正面作戦をする羽目に陥るのは少々荷が重い(戦争するって行ってませんよ)。

 御家人さんはどう読みます?台湾の今後を。


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 どう読みます?と斬り込まれても私は素人ですから答に窮してしまいます。とりあえず個人的には、私は台湾と台湾人に格別の思いと愛着があります。

 格別の思いと愛着がありますけど、国家主権に関わる領土問題は別です。

 台湾人が漁船で尖閣諸島方面に向かったそうですが、予想通り我らが海上保安庁の精鋭に前途を阻まれスゴスゴと退却しましたね。台湾当局からもブレーキがかかっていたようですが、台湾人が何と言おうと尖閣諸島は日本固有の領土であり、この点について私は相手が台湾人でも容赦しません。

 連中は海保の巡視船に対して投石したという報道があります。海保にも容赦してほしくありません。

 その神業のような操艦技術を以てすれば、台湾人の漁船が日本の領海に入ってきたところでオットーリリエンタールじゃなくておっと軽くこすっちゃったなー的接触事故で漁船を海の藻屑にしてしまうことも可能でしょう。乗り組んでいた台湾人は拾い上げてタイーホ送検起訴実刑判決でおk。

 ――――

 ……てそういう話ではありませんでした。「台湾の今後」というのは茫漠たるテーマなのですが、その茫漠たるところに重心を置いていうなら、私は台湾の未来は明るい、と考えています。うろ覚えなんですが、

「大河がやがて海へと流れ込むような自然さで台湾はひとつの国家になるだろう」

 という趣旨のことを『台湾紀行』かどこかで故・司馬遼太郎氏が書いていました。私も同意見です。現状維持が続けば続くほど中共政権の選択肢は狭まり、最後には統一するなら軍事侵攻以外に手がない、ということになるでしょう。

 なぜなら、このままの状態が続けば続くほど、台湾人の間に
「おれたちは大陸の連中とは違う」という意識がいよいよ強まっていくからです。中国本土の人間と接触する機会が増えるほどそういう異質感は強まるかと思います。

 台湾というと本省人と外省人の対立がよく挙げられます。私が以前台湾で仕事をしていたとき、部下にそっと聞いてみたらやはり外省人への悪感情のようなものがあるようです。

 ただ現在のティーンズや大学生といった世代なら外省人といっても3代目ないし4代目でしょう。土着するというか、台湾で生まれ育ち、教育を受けている訳ですから、ごく自然に台湾を故郷と思う気持ち、自分を台湾人と思う気持ちが身についていくのではないでしょうか。

 確か江沢民が以前、台湾統一へのタイムテーブルを描いていたかと思いますが、上のような理由からそうやって時間を限りたくなる焦燥感は理解できます。

 ――――

 むろん、実例があります。香港ですね。香港人の多くは中共政権で政治的動乱が発生するたびに香港へと密入境してきた世代と、その子供と孫やひ孫で構成されています。大陸生まれで脱出してきた第一世代、例えば私の岳父などもそうですが、この人たちは中国本土に望郷感があり、夏休みに田舎にある親の実家へ泊まりにいくような気安さで、香港と大陸の実家の間を往復しています。

 ところが私の配偶者のような第二世代は香港で生まれ育っていますから、自分は香港人だという意識がごく当たり前に自分の中で定着している。しかもこの世代は英国統治時代に成人して社会人になり、学生のころに天安門事件(1989年)を見ていますから、中共に抜き難い不信感があります。

 加えて中国本土に比べ経済的には段違いに豊かな香港で生まれ育っていますから、大陸の人間に対する一種見下したような感情が一般的にあります。親の実家に行くこともずっと少なく、田舎だし臭いし不潔だから嫌だ、などと言って結婚式や葬式のときしか足を運ばなかったりします。

 これが第三世代になると、社会に出る前に香港が中共政権に返還されているので、香港人意識や大陸の人間を見下す感覚は根強く残りつつも、国情教育(愛国主義教育)を一定期間受けているので政治的にちょっとだけ怪しくなります(中共への不信感がやや薄くなる)。中学に入ったあたりから必須科目となっているので、北京語も多少使えます。とはいえ第二世代とともに2003年の50万人デモを経験したりしていますから、普通選挙制が必要なことを素直に受け入れることができます。

 そして第四世代、これはもう小学生から北京語の授業も国情教育もありますから、どう育っていくのか戦々兢々です。とりあえず中国は世界に誇るべき歴史を持った国家でやましいことは何もしておらず、政治的には多党制で共産党が善政を敷いているといったことを教わります。天安門事件は教科書にも出ていませんし大躍進や文化大革命はさりげなくスルー。

 ただ言論・報道面で現在のような自由度が維持されている限りは大陸の糞青(自称愛国者の反日教徒)みたいなのが量産される、ということにはならない……と思うのですが、実際には大半のマスコミが返還後は親中色を強めていますし、記者にも世代交代がありますから、さてどうでしょう。

 ――――

 それに比べると、台湾の置かれている条件はずっと恵まれています。中共政権の統治下になく、変な教育を受けることもない。外省人もごく少数派で、おまけに「二・二八事件」や戒厳令統治をした過去があります。

 そして現状維持派の多くは事実上潜在的独立派ともいうべきもので、要するに民進党のあくの強さが嫌だとか戦争になったら困るなどといった理由でアンケートでは現状維持を選んでいるにすぎません。「国民党支持=中共政権との統一希望派」ではないところが重要です。

 その国民党にしても、政権を奪えば奪ったで制約される面も出てきます。仮に大きく舵を切れば、潜在的独立派である現状維持層から愛想をつかされ、選挙(議会選挙=立法委員)で負けるでしょう。馬英九が次期総統に就任することで中国本土の人間との接触が深くなればなるほど、香港の第二世代のような異質感ひいては見下すような感覚が台湾人に浸透していくように思います。

 日本からみてもそうですが、一党独裁で党が政府を支配し、軍隊は党の私兵で法治主義が行われていない中共政権というのは全く異質な世界で、価値観を共有しようがありません。ですから付き合いが深まるほど、台湾人意識が強化される方向に動くということです。

 ……以上は「台湾の今後」というテーマの茫漠さに安んじての私見です。経済面での対中依存が過度になっていることが気になりますが、水は高いところから低いところへと流れるものです。要するに、これは中国が台湾企業にとって魅力的な投資環境を維持できるかどうかにもよるでしょう。

 そして幸いなことに台湾は普通選挙制の国ですから、最後はやはり民意です。となると、国民党政権になってもフリーハンドはそう大きくないように思います。

 ――――

 日本としては台湾との絆をいよいよ強める方策を講じ、日米台の紐帯を太いものにしていくよう努めればいいでしょう。一種の謀略宣伝として
「中国と台湾はこんなに違う。違うんだ」という意識を日本人に徹底させればなおよろしいかと。

「中国=反日デモ、台湾=癒されるゥ」
「中国とは価値観が全然違うけど、台湾となら話が通じる」

 という図式が根付くような方向に持っていければいいのです。何といっても極東で唯一日本と価値観を共有できる国家が台湾なのですから。

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 ……てこれじゃ回答になっていないでしょうね。でも素人の悲しさで精一杯考えてもこの程度の粗餐しか御出しできません。

 「muruneko」さん、せっかく斬り込んで頂いたのにフニャフニャで斬りごたえがなくて申し訳ありません。

 m(__)m



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「上」の続き)


 具体的にいきましょう。その「日中共同声明」は外務省のホームページで全文を読むことができます。

  http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/china/nc_seimei.html

 その中から今回関係する部分を以下に抜き出してみました。

 (一)日本国と中華人民共和国との間のこれまでの不正常な状態は、この共同声明が発出される日に終了する。

 (二)日本国政府は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する。

 (三)中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。

 ……(一)の手前には前書きがあり、(三)の後ろに(九)まで続くのですが、これらは割愛。問題は(二)と(三)ですね。

 まず(二)ですが、いわゆる
「一つの中国」支持を日本が承認しているという趣旨です。「中国といえば中華人民共和国だけ」ということで、台湾の「中華民国」はこの声明においては消滅しています。「承認する」と明記してあるので、日本はこの点において言い逃れはできません。

 厄介なのが(三)でして、ここは声明文作成において日中間で大きく揉めた場所でもあるそうです。この項目においてはまず中国側が、

「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。」

 と一方的に宣言しています。それに対して日本側は、

「日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。」

 という実に微妙な文言になっています。中共政権が「台湾はうちの領土だ」と一方的に宣言したことに対し、日本はその立場を十分に理解し、尊重するそうです。(二)のように
「承認する」という逃げも隠れもできない文言ではありません。

 「理解する」「尊重する」
というのは主観的な言葉とでもいいますか、たとえ中国側が、

「理解されていないぞ」
「尊重されていないじゃないか」

 と異を唱えても、

「いや、日本側としては十分に理解しているし、尊重しているよ」

 と澄ました顔でバッサリと斬り捨てることができるのです(ちなみにポツダム宣言第八項は「カイロ宣言の条項は履行され、また、日本国の主権は本州、北海道、九州及び四国並びにわれらが決定する諸小島に局限される」というもので今回の件には直接関係していないので省きます)。

 中国側は当時、この(三)についても「日本側はこの中華人民共和国政府の立場を承認する」としたかったらしいのですが、ここで日本側の一官僚が強硬に反対して粘りに粘り、ついにこの曖昧な表現で落着したそうです。その粘りは周恩来をして「法匪」と言わしめるほどだったとのこと。

 私はその「法匪」とまで呼ばれた方の名前をつい失念してしまいましたが、その方の執念の粘りがあったればこそ、30余年を経た現在、日本は台湾問題に対して柔軟なスタンスを取り得るのだということを忘れてはならないと思います。

 ――――

 要するに台湾について、それが中共政権の領土であるという中共側の言い分を
「理解しているし尊重しているけど、正式に承認してはいないから」と言うことができるのです。現に陳水扁のアクションに対する外務省報道官談話が正にその論法ですし、今回の安倍官房長官によるリアクションでも同じ使われ方をしています。

 台湾は中共政権の領土だと日本政府は承認していない。「化外の地」な訳です。だから台湾への関与も中共政権に対する内政干渉にあたらない。さらにいえば麻生外相のように台湾を「国家」と呼んでもいいことになります。

 ただ台湾が「台湾国」という名称ならともかく、現実には未だに中華民国を名乗っているため「台湾という国家」と言ってもそれは虚構の世界ということでちょっと具合が悪くなります。

 極端な話、……机上の仮定ではありますが、もし台湾が「台湾国」と名乗りを改めて主権の及ぶ範囲を現実に則した形で憲法改正を行えば、日本は「台湾国」との国交正常化が可能です。ただ現在は「中華民国」である以上、「日中共同声明」で「中国といえば中華人民共和国だけ」ということを正式に承認している日本は、台湾と国と国という付き合いを結べないだけです。

 もっとも現実には中共は武力侵攻による台湾併呑という選択肢を捨てていませんし、台湾も中華民国のままです。加えて米国との関係もありますから、そうスパッと切り替わることは難しいでしょう。ただ「日中共同声明」は上述したような余地を残したものであり、現に最近日本政府はその曖昧な部分を巧みに用いていることは覚えておいていいでしょう。

 ――――

 さて、今回の麻生発言に対する中国側の「無理を承知の抗議」です。もう一度該当部分を引用しますと、

 日本政府は「中日共同声明」の中で、台湾が中華人民共和国の不可分の一部であるという中国政府の立場を理解し、尊重すると表明しており、また中華人民共和国政府が中国唯一の合法政府であると認めている。これは日本政府が台湾問題について行った、厳粛な約束だ。

 となっています。中国が自分に都合良く「アレンジした」というのは、
(二)と(三)の順序を入れ代え、しかも本来独立した2項目に分かれている条文を一節の文章に改めていることです。

 曖昧な表現である(三)を前に置き、その後に「認めている」(承認)という確たる言葉を含んだ(二)を持ってくる。しかもそれが一節の文章になっているとなれば、「認めている」という単語がどこまでかかっているのか、軽く読み流す場合は誤解しかねません。
あたかも日本側が「台湾が中華人民共和国の不可分の一部である」ということまで「承認」しているかの如き印象を読み手に与えやすくなっているのです。

 実に周到かつ悪辣なやり口としかいいようがありませんが、中共はこれを繰り返すことで政権を成立させ、半世紀以上その統治者たる地位を守ってきたようなものです。中国国内でもこの種の手口で党幹部による横領やら土地の不正転売のような汚職がまかり通り、それが官民衝突に発展したりしています。

 ●庶民も国家も食い物にする連中。(2005/07/29)

 また以前書いたように、新聞報道などでも権力闘争が白熱してくると、単語ひとつがつくかつかないかで重要な変化のシグナルとなる場合もあります。

 ●13年前の観察日記から。(2005/11/15)

 もちろん、「だから大目にみてやれ」ではありません。「だから気をつけろ。絶対に油断するな」ということです。

 ――――

 最後に前述した外務省報道官談話、

「台湾との関係についてのわが国の立場は日中共同声明にあるとおりであり、何ら変更はない。」

 に対する中国側の反応を紹介しておきましょう。

 ――

 ●「日本は反対明確に」 台湾国家統一委廃止で中国大使館(asahi.com 2006/03/02)
 http://www.asahi.com/international/update/0302/013.html

 台湾の陳水扁(チェン・ショイピエン)総統が国家統一委員会や統一綱領の事実上の廃止を決めたことについて、在日中国大使館の熊波(ユウ・ハ)・参事官は2日、「台湾独立への歩みを加速するものだ」と批判し、日本に対して「台湾指導者の危険な行動に反対する姿勢を明確にしてほしい」と要望した。在京の報道機関に対する背景説明の中で述べた。
(後略)

 ――

 「要望した」とありますが、中共は御自慢の「日中共同声明」を振りかざしても結局は日本政府に哀願しかできなかったのです。そして今回は改竄を伴った姑息な抗議。……やれやれです(笑)。

 日本国と台湾国が国交を樹立し、堂々と国と国の付き合いを結ぶ。そんな日が早く現実のものになればいいな、と思います。



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 どうも、妙です。中共上層部における潮の流れが変わったのかも知れません。

 潮目は……まだはっきりしませんけど、前回紹介した李肇星外相会見あたりからその気配はありました。東シナ海ガス田協議で日本側が中国側の新提案を一蹴したあたり、あの辺がたぶん分水嶺だったのではないかといまは考えています。

 具体的には、報道の内容が昨日(3月9日)から変化しました。反日色が濃くなっています。これは中国国内では午後遅くになってから報じられた麻生外相の「台湾という国家」発言とは無関係です。もちろん、今後この発言が火に油を注ぐことになるとは思いますけど(笑)。……反日色が強まったことについては、姉妹サイトの「楽しい中国ニュース」でここ数日を振り返って頂ければわかると思います。

 それからもう一点、外交部がまた従来の運動律から外れた妙な動きをするようになりました。ええ、目下のところは対日問題限定ですけど。簡単にいってしまえば、

 ●電波発言の裏にチラつくは制服組の影?(2006/01/10)
 ●続・電波発言。(2006/01/12)
 ●中国脅威論に軍部が開き直った!?(2006/01/13)

 ……という時期とイメージが重なります。軍主流派の気配が急にまた濃くなってきた、プンプン臭う、そういう印象なのです。

 軍主流派と胡錦涛の関係についてはこれまで何度か書いてきましたが、私見については下記のエントリーを御参照頂ければ幸いです。

 ●邪推満開で振り返る胡錦涛この半年。(2006/02/04)

 ――――

 こういう「潮目かな?」という事態にぶつかったとき、私の場合はなるべく寝ることにしています。数日間放置して様子をみる、流れを見極める必要がある、ということです。

 このあたりが「中国観察」ではなくその真似事である「チナヲチ」に興じている素人の悲しさで、プロなら消息筋をあたるなどして中南海(日本でいえば永田町)の空気をつかむことに努めるところでしょうが、こちらにはそんな伝手がないので寝るしか手がありません。……例えば、

 ●東シナ海ガス田問題で中国側の新提案が尖閣諸島を狙ってきたあたりに軍部の強い意向が働いているのでは?
 ●それを日本側に一蹴されたことで軍部がカナーリ頭にきているのでは?
 ●折しも、軍部の勘所である台湾問題は陳水扁・総統による「終統」宣言によって今まさに炎上中。
 ●しかも常々台湾有事への介入姿勢を示している日米両国が陳水扁のアクションに支持表明。
 ●そのため普段以上に神経質になっているところに、何と麻生発言が飛び出して鳩尾に見事にヒット(笑)。
 ●さっそく外交部に強く抗議させたものの、安倍官房長官にサラリと受け流されてしまう始末。
 ●こうした一連の経緯で危機感を強めた制服組が急速に硬化しつつあるのではないか?
 ●それを胡錦涛がクールダウンさせようと努めている動きが、なくもない。

 などという楽しい勘繰りをしたいところですが……て、もうしちゃいましたけど(笑)、以上は全て夢物語。もう少し放置して寝かせてみないと材料が揃いません。

 ついでに完全夜型生活を余儀なくされている私も寝てしまいたいのですが、今日は後に仕事が控えていて徹宵モード。それまでの待ち時間でいま書けることを書いておきます。順序が逆になりますが、最も新しいネタである麻生外相発言についてです。

 ――――

 とりあえず関連記事をもとに経緯を追ってみます。

 ――

 ●麻生外相、「台湾は国家」と発言=参院予算委(時事通信/Yahoo! 2006/03/09)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060309-00000049-jij-pol

 麻生太郎外相は9日午前の参院予算委員会で、台湾について「民主主義がかなり成熟しているし、経済面でも自由主義経済が浸透し、法治国家だ。いろんな意味で日本と価値観を共有している国だ」と述べ、台湾を国家と明言した。
(中略)
 また、外相は、中国を唯一の合法政府と認めた1972年の日中共同声明にも言及し、「その範囲の中で、(日本と台湾の)両国関係は維持されるべきだ。『両国』と言うとまた問題になるかもしれないが、日台関係はきちんとした対応をされてしかるべきだ」と述べた。
(後略)

 ――

 ●台湾は「法治国家」→「地域」と修正…麻生外相(読売新聞 2006/03/09)
 http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20060309i311.htm

 麻生外相が9日の参院予算委員会で、政府が中国の一地域と位置づけている台湾を「国」や「国家」と呼び、直後に「地域」と言い換える場面があった。
(中略)
 外相は予算委で自民党の岡田直樹氏の質問に答え、台湾について、「民主主義がかなり成熟し、自由主義経済を信奉し、法治国家でもある。いろんな意味で、日本とも価値観を共有している国だ」と述べた。その後、「日本政府は、(日中共同声明で)中華人民共和国が中国唯一の合法政府と承認している。何となく我々は台湾を『国』と言ってしまうが、『地域』が正確だ」と修正した。
(後略)

 ――

 これに対し、中共は打てば響くとばかりの脊髄反射(笑)。

 ●中国、麻生外相発言に「強烈な抗議」(Nikkei Net 2006/03/09)
 http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20060309AT2M0901M09032006.html

 よりオフィシャルな形として、「人民網日本語版」の該当部分を引用します。

 ――

 ●中国、日本外相の「台湾は1つの国」発言に強く抗議(人民網日本語版 2006/03/10)
 http://j.peopledaily.com.cn/2006/03/10/jp20060310_58105.html

 (前略)
台湾問題は歴史問題と同様、中日関係の重要な基礎だ。日本は中日間の3つの政治文書(共同声明、平和友好条約、共同宣言)のすべてで、台湾問題について約束している。日本政府は「中日共同声明」の中で、台湾が中華人民共和国の不可分の一部であるという中国政府の立場を理解し、尊重すると表明しており、また中華人民共和国政府が中国唯一の合法政府であると認めている。これは日本政府が台湾問題について行った、厳粛な約束だ。われわれは日本が台湾問題について約束したことを順守するよう望む。日本の外交当局の最高責任者が、「中日共同声明」に反する言論を公然と発表としたことに、われわれは驚愕しており、中国の内政に対するこのような粗暴な干渉行為に、強く抗議する。

 ――

 それをサラリと受け流すのが安倍官房長官。

 ●台湾は「法治国家」→「地域」と修正…麻生外相(読売新聞 2006/03/09)
 http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20060309i311.htm

 (前略)
安倍官房長官は9日の記者会見で、「法律の支配という価値を表現する際に、『法治国家』という表現を使ったということではないか。台湾についての我が国の立場は日中共同声明にある通りで、何ら変わりない」と述べ、外相発言を問題視しない姿勢を示した。

 ――――

 一連のやり取りの中で「日中共同声明」(中日聯合聲明)というものが頻繁に登場します。まず麻生外相が、

「日中共同声明の範囲の中で、日台関係はきちんとした対応をされてしかるべきだ」

 という趣旨の話をします。すると中国側も同じ「日中共同声明」を持ち出して、

「麻生発言はこれに反する、内政干渉だ」

 と日本側に抗議。これに対し安倍官房長官が、

「我が国の立場は日中共同声明にある通りで、何ら変わりない」

 と、これまた「日中共同声明」で対応しているのです。

 御記憶の方も多いかと思いますが、実はこの「日中共同声明」、2月27日の陳水扁による「終統」宣言(国家統一委員会と国家統一綱領の運用終了)に対しても、外務省報道官談話という形で出された日本政府の公式発表で使われています。いわく、

「台湾との関係についてのわが国の立場は日中共同声明にあるとおりであり、何ら変更はない。」

 ●台湾からの一撃に軍部猛反発 / いやいや日本もなかなか。(2006/03/04)

 私は法律とか条約といったことにはまるで無知でチンプンカンプンなのですが、素人目にみて、今回は中国側が少し無理をしているように思えます。無理を承知の抗議だけに条文を意図的にアレンジし、メディアを通じてそれが報じられることで日本人を煙に巻こうとしています。日本側が悪い、外相また妄言、というイメージを印象づけようという訳です。


「下」に続く)



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 台湾の新情勢に対して「中共の反発は必至だ」が「中共上層部の混乱は必至だ」になるかも知れないということです。「なるかも知れない」とはわれながら弱気ですが(笑)、この新情勢、実は米中間で示し合わせての出来レースの可能性も否定できないからです。

 ……と前回の冒頭で書きました。その後の動静を見守っていたのですが、つい様子見に徹し過ぎてしまったようです。気がつけば中共政権における「政治の季節」に入ってしまっていました。毎年3月に開かれる重要会議、「全人代」(全国人民代表大会)と「全国政協」(全国政治協商会議)のことです。全国政協は3月3日にすでに開幕しており、5日には全人代も開幕する予定です。

 全人代などについては別の機会に譲るとして、とりあえず台湾の新情勢についての続報を。

 ――

 ●統一委を事実上廃止 陳総統、基本方針変更(共同通信 2006/02/27/22:06)
 http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=YNS&PG=STORY&NGID=intl&NWID=2006022701003313

 台湾の陳水扁総統は27日、国家安全会議を招集、中台統一を前提とした対中関係の諮問機関、国家統一委員会と、同委が採択した国家統一綱領について「運用を終える」と述べ、事実上の廃止を決定した。
(後略)

 ――

 ということで、台湾政府は2月27日、「最終的には統一を目指す」という建前を投げ捨てました。「国家統一委員会」と「国家統一綱領」というこの建前、すでに形骸化していて実際には機能していませんでしたが、これを捨てることによって「中共政権との統一」以外の道、つまり「独立」(中共とは別の国家という現状を正式に宣言すること)という選択肢が生まれたことになります。これは同時に、「台湾の未来は、台湾の住民が決める」という強い意思表示ともいえるでしょう。

 ところで、この行動は突如行われたものではありません。陳水扁は旧正月の元日にあたる1月29日の年頭談話でこの構想をぶち上げており、この時点で公に予告されていたものです。それから1カ月して動いた訳ですから、中共政権にせよ台湾の後見人たる米国にせよ、心の準備は一応できていたことになります。

 特に台湾と米国の間では、この件をめぐるやりとりが「予告」以来、水面下で断続的に行われていたようです。香港紙『明報』によると、2つの「建前」を捨てるという行為をどう表現するかで辞書を片手にした突っ込んだ話し合いが続き、「中止」か「停止」か「凍結」か……などと様々な候補が上げられたなかで、最後に「終止」(運用終了)という言葉が選択されたのは発表直前の2月25日だったとのこと。

 ●表現めぐる米台の事前協議、4日前に結論(明報 2006/03/01)
 http://hk.news.yahoo.com/060228/12/1lmi2.html

 ――――

 こうした動きがあった訳ですから、こと台湾問題には極めて神経質となる中共政権に対して、米国から事前に非公式ルートで「あの件は実際にやるから、心の準備よろしく」といった通告があっても不思議ではないでしょう。「中共の反発は必至だ」という通りに中共政権は強い反発姿勢をみせたのですが、これもある程度予定された行動だったのかも知れません。たとえ中共側にとって予想外だったとしても、体面がありますから脊髄反射は当然のことです。

 体面とは台湾及び国際社会に対して示しをつけるということであり、恐らくより重要なのは、国内に向けて「台湾問題では絶対に譲歩しない。独立は断固として許さない」という強硬姿勢をとってみせるということです。

 ……ただし当ブログで常々指摘している通り、中共政権といっても一枚岩ではなく、形式上の最高指導者である胡錦涛・総書記の基盤も磐石ではありません。最高指導者ではあるけれども、最高実力者に相応の統制力を具備していない。そこで「中共上層部の混乱は必至だ」ということになる訳です。

 全人代・全国政協というのは「安定・団結」をアピールするための政治的イベントでもあります。内実はどうあれ「何もかもみな上手くいっている」という幻想を演出し、2003年にはそのために中国肺炎(SARS)が当時北京で流行していたという事実まで隠蔽されました。

 そういうイベントの矢先に起きたのが陳水扁のアクションです。時機を選んで全人代・全国政協開幕直前というタイミングを狙ったものだとすれば、これはなかなかの政略。というより、陳水扁にそのタイミングでやらせた米国が不敵な笑みを浮かべているようで興味深いものがあります。胡錦涛の4月訪米に向けて、予定されている首脳会談でのハードルをちょっと高くしてみた、という印象です。

 で、「中共上層部の混乱は必至だ」という話になりますが、混乱といえるのかどうかはともかく、中共において台湾問題に最も敏感な軍部の反応が突出しています。……とは、中国国内メディアの中で、人民解放軍機関紙『解放軍報』による関連記事が他に比べると際立って多いということです。

 もう面倒くさいので以下に並べてしまいましょう。2月27日の陳水扁による「建前放棄」の前日に異を唱えた記事を含め、2月27日から3月3日における『解放軍報』に出た関連記事は次の通りです。

 ――――

 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-02/26/content_417977.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-02/28/content_420151.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-02/28/content_420174.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-02/28/content_420196.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-02/28/content_420205.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-02/28/content_420206.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-02/28/content_420218.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-02/28/content_420619.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-02/28/content_420625.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-02/28/content_420632.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-02/28/content_420633.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-02/28/content_420634.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-02/28/content_420644.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-02/28/content_420647.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-02/28/content_420654.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-03/01/content_421071.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-03/02/content_422145.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-03/01/content_421164.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-03/01/content_421166.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-03/01/content_421179.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-03/01/content_421346.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-03/01/content_421347.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-03/02/content_422125.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-03/02/content_422126.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-03/02/content_422144.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-03/02/content_422285.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-03/02/content_422583.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-03/02/content_422584.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-03/02/content_422650.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-03/02/content_422652.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-03/02/content_422669.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-03/03/content_423446.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-03/03/content_423447.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-03/03/content_422793.htm

 ――――

 中共政権自体が強い反発を示しているのですが、その中でも軍部、特に機関紙を掌握している軍主流派がことさらに騒ぎ立てているという観があります。ただ軍主流派は胡錦涛擁護の立場を崩していないようにみえますし、前掲の膨大な記事もその多くが国営通信社・新華社配信記事を転載したものですから、党上層部内で異を唱えているという訳ではありません。

 とはいえこれだけ突出した姿勢をみせられると、胡錦涛擁護のスタンスを保ったまま、軍主流派の発言力が今後一層強まるのではないかという気にさせられます。「擁護」といいつつ、ありていは軍主流派が胡錦涛の鼻面を引きずり回している……という形跡は昨年末から出ていましたが、その傾向が今後より明確になるのではないか、ということです。

 3日に開幕した全国政協では、そのトップである賈慶林・主席の活動報告に「台湾独立を断固許さず」といった内容が盛り込まれました。これは陳水扁による「建前放棄」に対応して急遽加筆・強調されたものだと思います。5日開幕の全人代、その冒頭で発表される温家宝・首相による「政府活動報告」も本来の主題となるべき「十一五」に加え、台湾問題に強い姿勢を滲ませる内容に改められているでしょう。

 その「政府活動報告」に続いて開かれる全人代の分科会あたりに見所があるかも知れません。軍主流派が騒ぐほどですから、同じ軍部の非主流派、例えば劉亜洲中将や朱成虎少将といった電波型対外強硬派も大人しくしてはいられないでしょう。また台湾と直接関係なくても、この問題に名を借りて胡錦涛をイジメようという政治勢力もいることでしょう。そうしたアンチ胡錦涛諸派連合の蠢動を感じることができればいいな、と私は楽しみにしています。

 ――――

 最後にこれは余談にになるのかどうか。今回の一件に対する日本政府の対応は実に興味深いものでした。外務省の報道官談話という形で発表されているものです。

 ――

 ●台湾「国家統一委員会の運用停止及び国家統一綱領の適用停止」について(外務報道官談話 2006/02/28)
 http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/danwa/18/dga_0228.html

 1.台湾との関係についてのわが国の立場は日中共同声明にあるとおりであり、何ら変更はない。

 2.台湾を巡る問題については、軍事的・政治的対立を望まず、当事者間の直接の対話により平和的に解決されることを強く希望する。この観点から、いずれかの側によるいかなる一方的な現状変更の試みも支持できない。この点にかんがみ、台湾側が「現状を変更する意思はない」と表明したことに留意している。

 3.わが国として、この地域の平和と安定の観点から、両岸間の緊張がさらに高まることのないよう、当事者双方とも現状の変更を試みることなく、対話を早期に再開することこそが必要であると信じる。

 ――

 これはかなり「台湾に優しい」内容ではないでしょうか。「独立に向けた動きに反対」というフレーズも「一つの中国を支持する」という文言も出てきません。……いや、

「わが国の立場は日中共同声明にあるとおりであり、何ら変更はない」

 というその「日中共同声明」に日本は「一つの中国(中共政権)を支持する」と明記されていますから、改めて言い出す必要はないのかも知れません。ただその一方で、この「日中共同声明」において、台湾が中共政権の領土であることを日本は正式に承認していないのです。その意味で
「わが国の立場は日中共同声明にあるとおり」とし、この政治文書を持ち出してきたことにはある種の凄みが潜んでいるようにも思えます。

 この台湾を中共政権の領土の一部と正式に承認していない「日中共同声明」を下敷きにしているため、

「台湾を巡る問題については、軍事的・政治的対立を望まず、当事者間の直接の対話により平和的に解決されることを強く希望する」

 というフレーズが続きます。
「台湾を巡る問題」という輪郭をぼかした表現は、日本政府がこの件を中国の内政問題と認めていないことを暗示しています。台湾が中共政権の一部であることを認めていない、という原則があるため、中国側の掲げる「統一」を支持する言葉は出てきません。当然のことながら、同じ理由によって「独立」も出てこないという訳です。

 それから、
「台湾側が『現状を変更する意思はない』と表明したことに留意している」という一節、これは中共政権にしてみれば物足りないどころか文句を言いたくなるでしょう。この部分で、日本政府が今回の台湾のアクションを受け入れていることを示しているからです。当然のことながら、この「報道官談話」には陳水扁による「建前放棄」を非難する文言は全くありません。

 ファンタジスタ・麻生外相の意向を汲んだものなのかどうかはわかりませんが、傍観者の風を装い、それでいて台湾の措置を「不適切」とせず逆に受け入れているこの「報道官談話」は、実際には日本が決して傍観者でないことを中共政権と台湾政府の両方に示唆したものとして注目していいのではないかと思います。

 ――――

 ええ、そうです。あとは
「李登輝氏5月10日来日」というカードをいつ切ることになるか、ということです。

 李登輝氏は私人であり、しかも台湾国民がノービザで訪日できることを考えれば、本来なら政府がプレスリリースを出す必要は全くありません。でもそこはそれ、李登輝氏を「トラブルメーカー」などと悪党視している中共政権に「配慮」するという意味で、安倍官房長官から凛とした公式発表が行われて然るべきかと思うのです(笑)。



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 正確にいえば、台湾の新情勢に対して「中共の反発は必至だ」がまずあって、そのあと「中共上層部の混乱は必至だ」になるかも知れないということです。「なるかも知れない」とは我ながら弱気ですが(笑)、この新情勢、実は米中間で示し合わせての出来レースの可能性も否定できないからです。

 ともあれその「新情勢」なるものにふれておきましょう。日本でも比較的大きく取り上げられているニュースですから、皆さん御存知でしょう。

 ――――

 ●統一委を事実上廃止 陳総統、基本方針変更(共同通信 2006/02/27/22:06)
 http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=YNS&PG=STORY&NGID=intl&NWID=2006022701003313

 【台北27日共同】台湾の陳水扁総統は27日、国家安全会議を招集、中台統一を前提とした対中関係の諮問機関、国家統一委員会と、同委が採択した国家統一綱領について「運用を終える」と述べ、事実上の廃止を決定した。陳総統は2000年5月の就任演説で「5つのノー」として統一委などを廃止しないと公約しており、約5年9カ月ぶりの対中基本方針の変更。中国は「独立への動き」と非難しており、中台関係の一段の悪化は必至だ。
(後略)

 ――

 ●台湾総統、「一つの中国」目標指針の廃止を発表(読売新聞 2006/02/27/20:21)
 http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20060227i112.htm

 (前略)
同綱領は、1991年、李登輝・国民党政権が策定したもので、中台を対等な政治実体として、「交流」や「敵対状態終結」など、統一に向けた段階的道筋を明記している。独立志向が強い陳政権が2000年に発足してからは、実質的に機能停止状態にあった。(後略)

 ――

 ●陳総統、中台統一委と綱領を事実上廃止(Sankei Web 2007/02/27/22:21)
 http://www.sankei.co.jp/news/060227/kok096.htm

 (前略)
廃止決定は、陳政権との対話を拒否したまま台湾の最大野党、国民党との連携を強めてきた中国側に揺さぶりをかけるのが狙い。内政面では、昨年12月の統一地方選で与党、民主進歩党(民進党)が大敗したのを受け、政権死守に向けて対中強硬姿勢を鮮明にし、「統一志向」の国民党との路線対決に出た形だ。
 陳総統は一方で、「台湾海峡(中台関係)の現状を変える考えはない」と強調し、独立宣言などは考えていないことを示唆。中国に対し「関係改善に向けた政府間対話」を呼び掛けた。
(中略)
 また、台湾の実情に合わせた憲法改正を推進するが「主権問題は扱わない」と述べ、「中華民国」の名称変更などは行わない考えも示唆した。
(後略)

 ――――

 台湾の総統である陳水扁は「独立」(台独)を本義とする民進党。ところがその民進党が与党であるにもかかわらず議会では最大勢力ではなく、一応「統一」を掲げている中共お気に入りの国民党やそれに近い諸派など野党の方が議席を持っています。いわゆる「ねじれ現象」です。当然のことながら、国民党などは今回の動きに大反発しています。

 中共お決まりの派手な恫喝に代表される強硬姿勢、まあ武力侵攻による台湾併呑という選択肢を放棄していませんから口だけとは言い切れませんが、そうした大袈裟なパフォーマンスに加えて、この「ねじれ現象」が騒ぎを大きくしているように思います。

 陳水扁のとった措置自体はチンケなものです。前掲報道でふれられているように、対中関係の諮問機関である「国家統一委員会」と同委が採択した「国家統一綱領」について、「運用を終える」としたもので、元々言っていた「廃止する」から一歩譲った形です。まあ事実上の廃止ではありますけど。

 しかもこの国家統一委は国民党政権時代に李登輝・前総統が中共との統一対話先延ばしのために設立した性質のもので、民進党政権になってからは文字通り開店休業状態。『産経新聞』(2006/02/28)によるとその年間予算は約3600円、1カ月当たり約300円ですから文庫本も買えません(笑)。

 ただ形骸化しているとはいえ、政権に「中国との統一を最終的目標とする」という建前を持たせていたという政治的な意味はあります。今回それを捨ててしまったことで、「統一」以外の選択肢も可能、ということになった意義は小さくありません。選択肢が増えたというのは、台湾人の将来は台湾人によって決定されるのだ、という意思表示でもあります。

 ――――

 さて、台湾側のこの動きに対して中国側は「人民網」(『人民日報』電子版)と国営通信社・新華社が論評抜きで速報。

 ●「人民網」(2006/02/27/16:59)
 http://tw.people.com.cn/GB/14810/4147198.html

 ●新華網(2006/02/27/17:40)
 http://news.xinhuanet.com/tai_gang_ao/2006-02/27/content_4235147.htm

 『解放軍報』はそれを即転載し、上陸作戦に関する演習に海軍が力を入れている、とか戦略ミサイル部隊の専門要員の若返りや実力の向上が進んでいるといった署名論評をさり気なく滑り込ませています。「恫喝度」を高めているつもりなのでしょう。

 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-02/26/content_417893.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-02/26/content_417974.htm

 注目の論評は前日(2月26日)に台湾事務弁公室が出した「そんなことしたらただじゃおかねえぞ」的恫喝声明を再掲載するなどして急場をしのぎました。

 http://news.xinhuanet.com/tai_gang_ao/2006-02/26/content_4229511.htm

 前日に出した声明を改めて持ち出したことで、中共にとって陳水扁による措置が想定の範囲内であったことがわかります。

 ――――

 で、今日(2月28日)になって中共から改めて声明が発表されています。陳水扁がとった措置を、

「台湾独立に向けて一歩踏み出したもの」

 と決めつけ、恫喝声明同様、
「中台間の現状を一方的に変化させるものだ」という趣旨の文言を交えて激しく非難しています。ただそれだけだと「武力侵攻か?」などという憶測を呼びかねないので、

「両岸(中台)の平和的統一は中華民族の偉大なる復興を促進し、台湾同胞を含めた内外の中華子女の共同責任であり、我々が一貫して堅持している奮闘目標である」

 と付け加え、経済・文化交流の拡大によって結びつきを強めよう、というフォローを入れています。ただし最後は、

「だが、我々は『台独』には断固反対し、『台独』分裂勢力が如何なる名目、如何なる方式によって台湾を祖国から分割せしめることを絶対に許さない」

 という一文で締めています。

 http://news.xinhuanet.com/tai_gang_ao/2006-02/28/content_4237886.htm

 台湾が中共政権に実効支配された時期は1分1秒すらないというのに「独立断固反対」とは不思議なことを言うものです。ちなみに日本政府は1972年の「日中共同声明」が示す通り、台湾が中国の領土の一部であるということを正式に承認していません。

 ――――

 論評といえば外交部まで声明を出しているのが面白いですね。28日の定例会見で劉建超・報道官が記者の質問に答えたもので、

「陳水扁が『国統会』の運用と『国統綱領』の適用停止を強行したのは、台湾海峡の平和への挑発、両岸関係の緊張化、『法理的台独』を企図するものである。陳水扁による逆行したこの措置は両岸の同胞および国際社会からの強い非難を浴びている」

 というのですが、台湾が内政問題なら外交部が回答する範疇じゃないでしょう。以前にも台湾に関する問題で「それは台湾事務弁公室に聞いてくれ」とスルーしていたというのに。……するとここで米国が登場するのです。

「我々は、米国が一つの中国政策を堅持し、台湾『独立』を支持しないと米国政府報道官が改めてコメントしたことに注目している。一方で、我々は米国が陳水扁の『台独』分裂活動の深刻さと危険性をよく認識し、『台独』分裂勢力に対して如何なる誤ったシグナルを与えることなく、我々とともに共同して中米関係と台湾海峡の平和・安定という大局を維持・擁護することを米国に促すものである」

 ……なんてことを言っています。昨年秋にブッシュ米大統領がダライラマ14世と会見したことに反発し、12月の香港における民主化問題で、支持を訴えるべく訪米した民主派の香港議員に政府要人が会見したことには「内政干渉だ」などと言っていたその口が、やはり内政問題である筈の台湾に関しては米国の関与(協力)を求めている。中国お得意の「雙重標準」(ダブルスタンダード)の典型ですね。

 http://news.xinhuanet.com/world/2006-02/28/content_4239272.htm

 もしかすると、本当は米国だけじゃなくて、台湾との縁が深い日本にも協力を要請したいのかも知れません。それをやらないのは、靖国参拝問題や歴史認識の問題で日本に対し散々内政干渉を繰り返してきた中共としては言い出しにくいのと、日本に公然と頭を下げてお願いするというのは中華たる面子が許さないといったところでしょうか(笑)。

 ――――

 今回の問題について、中共はとりあえず反発姿勢を示しつつも、しばらくは模様眺めに徹するのではないかと思います。前述した台湾政治の「ねじれ現象」で、陳水扁の措置に台湾内での反発が強いであろうことを見越して、状況を眺めつつ時機が至れば国民党との関係強化や経済面での協力強化というようなアメを持ち出して来るのではないでしょうか。

 陳水扁が今回の措置を打ち出せたのは、米国の了承があったからというのも中共は織り込み済みでしょう。あるいは事前に米国からの通告があったかも知れません。これについては4月に訪米予定の胡錦涛・総書記が米中首脳会談を通じて何らかのアクションを起こすでしょう。冒頭で「出来レースの可能性も」としたのはそのためです。

 ただ、議会選挙などで国民党が大勝したりしていることを以て「台湾の世論は統一に傾いている」という判断をしているなら中共は痛い目に遭うことになるでしょう。浮動票ともいうべき現状維持派の多くが、実は潜在的独立派(トラブルなく独立できるなら独立派に一票)かも知れないということです。

 一方で、中台関係は時間が経つにつれて、人員往来などが深まるにつれて、「統一」よりも台湾人意識を強化させることになる、という見方を中共が持っているかどうか。

 ……これは香港のケースで実証済みですが、民度や政治制度が余りにかけ離れているため、観光やビジネスなどで中国本土住民との接触が密接になればなるほど、「こいつらはおれたち台湾人とは違う。別物だ」という意識が育ち、強化されることになります。日本の対中感情悪化の大きな原因のひとつも中国本土住民と生活レベルで接触するようになったからでしょう。

 要するに、現状維持の期間が長引くほど、中共にとっては選択肢が狭まり、軍事侵攻による併呑というオプションが台頭してくることになります。

 ――――

 ともあれ今回の件によって、中共上層部に混乱が生じる可能性は否定できません。いかに想定の範囲内とはいえ、「中台関係の現状を一方的に変化させる」「台独への第一歩」という点については我慢できない向きも多いことでしょう。その筆頭は言うまでもなく制服組です。

 胡錦涛と手を組んでいるとみられる軍主流派は劉亜洲中将、朱成虎少将といった電波型対外強硬派に比べれば現実に柔軟に対応できるとはいえ、所詮は軍人です。陳水扁からの一撃に対して胡錦涛に何らかの反撃を迫るとか、訪米に関して色々注文をつけるといった可能性は否定できません。

 軍人でなくても、アンチ胡錦涛諸派連合の中にはこの機を利用して胡錦涛イジメに乗り出す政治勢力もあるでしょう。前回にもふれましたが、例えばこの20年余りの改革・開放政策での既得権益層が、胡錦涛にとっての「抵抗勢力」なのです。時期もうまいことに一年の計を定める全人代(全国人民代表大会=立法機関)の直前。ここはひとつ前座ともいえるイベントに期待したいところです。

 ――――

 最後になりましたが、「中台間の現状を一方的に変化させるものだ」という物言いはそのままそっくり中共に返してやりましょう。昨年の全人代で
「反国家分裂法」を制定したことで中台間の現状を一方的に変化させ、国際社会でも非難を浴びたことを、連中は都合よくすっかり忘れているようですね。

 ●性犯罪ですよこれは。(2005/03/13)
 ●「三二六大遊行」雑感。(2005/03/28)




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