暖冬で過ごし易いです。
過ごし易いですが、パンデミックが起こってますので
外出が憚られるのが辛いところです(-"-;)
さてさて、肺炎菌でなく、毒のお話
本日ご紹介させて頂くのは、ちょっと毛色の違う内容です
河豚の中毒が発生していることへの注意喚起です。
日本では、年間に約30件の河豚の中毒が発生し
患者数は約50人で数名が死亡しています。
特に中毒は、釣り人や素人による家庭料理が原因になる事が多いです。
河豚毒(テトロドトキシン)による中毒症状は
早い時は食後30分程で発症することもありますが
通常は1時間から6時間前後で発症すると言われています。
テトロドトキシンは、6時間以上煮沸してようやく破壊され始めるほど
耐熱性(熱に対する抵抗性)に優れています。
さらに酵素や各種塩類による分解もほぼなく、日光の影響も受けません。
現時点では、テトロドトキシンに対する特効薬も解毒剤もないため、
摂取すれば必ず中毒になります。
無味無臭、無色のテトロドトキシンは、人体に入ると神経伝達を阻害
遮断するため、身体のあらゆる部分に麻痺を引き起こします。
最終的には脳から発信される呼吸の指示が阻害され
呼吸困難を引きおこし死亡事故につながるのです。
万が一中毒になってしまったらあとは対処療法しかありません。
摂取量にもよりますがふぐ毒は症状の進行が早いため
食後できるだけ迅速な応急処置が鍵となってきます。
中毒に気がついたら、一刻も早く摂取したものを吐き出させ
医療機関へ連絡することです。
また死亡の原因は呼吸困難にあるので、人工呼吸などの人為的な方法で
呼吸を確保することが最も効果のある延命処置になります。
食後7時間以内に上記のような対処療法を行うと、その時間が後の経過に
大きく影響するという報告もあります。
おかしいなと思ったら、酔っ払っているのかと放っておくのではなく
中毒の可能性を疑い、早めの対応を心がけるようにしましょう。
症状は主に4段階に分けられます。
第1段階・口唇部および舌端に軽い痺れが現れ
指先に痺れが起こり、歩行はおぼつかなくなります。
頭痛や腹痛を伴うことがあります。
第2段階・不完全運動麻痺が起こり、嘔吐後まもなく運動不能になり
知覚麻痺、言語障害も顕著になります。
呼吸困難を感じるようになり、血圧降下が起こります。
第3段階・全身の完全麻痺が現れ、骨格筋は弛緩し
発生はできるが言葉になりません。血圧が著しく低下し、呼吸困難になります。
第4段階・意識消失がみられ呼吸が停止します。
呼吸停止後心臓はしばらく拍動を続けるが、やがて停止し死亡します。
さて、
ふぐは種類によって毒のあるところが違います。
以下のとおり
種類(標準和名) | 可食部位 |
---|---|
クサフグ コモンフグ(注釈1) |
筋肉 筋肉 |
ヒガンフグ(注釈1) | 筋肉 |
ショウサイフグ | 筋肉 精巣 |
マフグ | 筋肉 精巣 |
メフグ | 筋肉 精巣 |
アカメフグ | 筋肉 精巣 |
トラフグ | 筋肉 皮 精巣 |
カラス | 筋肉 皮 精巣 |
シマフグ | 筋肉 皮 精巣 |
ゴマフグ | 筋肉 精巣 |
カナフグ | 筋肉 皮 精巣 |
シロサバフグ | 筋肉 皮 精巣 |
クロサバフグ | 筋肉 皮 精巣 |
ヨリトフグ | 筋肉 皮 精巣 |
サンサイフグ | 筋肉 |
イシガキフグ | 筋肉 皮 精巣 |
ハリセンボン | 筋肉 皮 精巣 |
ヒトヅラハリセンボン | 筋肉 皮 精巣 |
ネズミフグ | 筋肉 皮 精巣 |
ハコフグ | 筋肉 精巣 |
ナシフグ (注釈2) | 筋肉 精巣 |
注釈1:岩手県越喜来湾及び釜石湾並びに宮城県雄勝湾で漁獲されたコモンフグ及びヒガンフグは食用にすることができません。 | |
注釈2:ナシフグは有明海、橘湾、香川県及び岡山県の瀬戸内海域で漁獲されたものの筋肉並び、有明海及び橘湾で漁獲され、長崎県が定める要領に基づき処理されたものの精巣に限ります。 |
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/itiba/suisanbutu/fugu1.htmlから抜粋
ふぐの毒に関する不思議な性質のひとつとして、テトロドトキシンを取り込む
ふぐ自身がなぜその毒に耐えうるのかという点です。
ふぐの種類によって差はありますが、テトロドトキシンに対する抵抗性が
他の魚より強いと言えます。
例えば、仲間同士の噛み合いにより、多少の毒を摂取しても死には至らないそうです。
理由のひとつとして、神経伝達の経路で、ふぐの細胞と
テトロドトキシンは結合しにくいためと考えられています。
驚くべき事実ですが、孵化したての赤ちゃんふぐは、体内に毒をもちません。
ふぐの毒は生まれつきではなく、餌から摂取し体内に蓄積される
後天的なものだと考えられています。
また、夢のふぐ無毒化への研究段階で、ふぐに毒は必要なものだった
という摩訶不思議な結果が発表されました。
無毒のふぐを養殖できればと、長崎の大学で研究が繰り返されてきました。
理論通り、餌に気をつければ無毒なふぐは養殖できるようです。
しかしおもしろい実験結果として、無毒なふぐはストレスを受けやすく
病気になりやすいことが分かりました。
無毒なふぐと有毒なふぐを一緒に飼育すると、無毒なふぐが有毒のふぐに噛み付きます。
それはストレスもありますが、無毒のふぐが有毒のふぐに噛み付くことで
積極的に毒性を体内に取り込もうとしているという見解もあります。
またふぐの毒はフェロモンの代替になっているため
無毒のふぐは有毒のふぐに引き寄せられるそうです。
体内に毒のないふぐは異常行動を起こすこともあり
不思議な行動は飼育の手間を増やしコストがかかることが難点です。
天然で配合が混ざってしまったものは、漁業や販売でフグを扱う熟練の方でも
どこが可食部か判別することが困難な時もございます。
河豚を召し上がるときは販売ルートが確かな
そして免許を取った料理人のもとで、美味しく食べてくださいませ!
皆さまのお体どうぞご自愛ください。