本日(16日)、県議会第2回定例会が大雪被害対策などを盛り込んだ補正予算などを可決し閉会となりました。私は「憲法改正の早期実現を求める意見書」について、反対討論を行いました。自民党席からものすごいヤジが飛びましたが、ひるまずに堂々と討論を行いました。以下はその全文です。なお、伊藤祐司県議が朝鮮人追悼碑の設置許可取り消しを求める請願に反対の討論を行いました。
日本共産党県議団の酒井宏明です。通告してあります発議案について反対討論を行います。
まず「憲法改正の早期実現を求める意見書」案についてです。その冒頭で「日本国憲法は施行以来、一度も改正が行われていない」とのべていますが、それはとりもなおさず、国民主権、基本的人権の尊重、恒久平和の追求という憲法の基本理念を、国民が草の根の運動によって守り抜いてきた結果です。侵略戦争の反省の上にできた平和憲法を現実政治に根付かせようという国民の不断の努力があったからではないでしょうか。我が国が戦後70年近くにわたり、国権の発動たる戦争をおこなわず、自国民の命も他国民の命も奪うことがなかったことは、まさに世界に誇るべき日本国憲法の力であります。
意見書は、「我が国を取り巻く東アジア情勢は予断を許さない事態に直面している」と危機感をあおっています。しかし、そのような状況を招いた張本人は誰でしょうか。それは現政権ではありませんか。アメリカを「失望」させた首相の靖国神社参拝の強行、国民の知る権利や表現の自由を脅かす秘密保護法や、戦争の司令塔である日本版NSC(国家安全保障会議)法の強行採決。従軍慰安婦に関し日本軍の強制と関与を認めた「河野談話」見直しの動き、さらに憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認など…こうした「戦争する国」づくりへむけた安倍自公政権の暴走こそ、アジアと世界の人々の怒りと不安をよびおこしているのです。
明文改憲への策動とともに、安倍内閣が集団的自衛権の行使容認へ、今国会中にも閣議決定を狙っていることは重大です。これまで歴代内閣がとってきた憲法解釈を、一内閣の閣議だけで変えることは、国会や国民を無視した憲法破壊のクーデターそのものであり、憲法を亡き者にする、まさに立憲主義の否定にほかなりません。
集団的自衛権はいかなる意味でも、自衛とは無関係な、大国による無法な侵略戦争、ベトナム戦争やアフガン戦争、イラク戦争など軍事介入の口実に使われてきました。その狙いは「海外での武力行使をしてはならない」という歯止めをなくし、米軍とともに日本の自衛隊が戦闘地域に行って戦争行動を行うことにあります。「限定的容認」などまやかしにすぎません。
意見書では、「憲法制定当時には想定もできなかった事態への対応が求められている」として、「大規模災害、家族、環境等の諸問題」をあげていますが、これらはいずれも生存権規定をはじめ現憲法のもとで十分対応できるものであり、憲法改定の口実にすらなりえません。
さらに意見書は、96条を含む憲法改正が必要だとしています。この改正手続き規定は、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義とともに憲法の要をなす規定であり、この条項は「改正できない」というのが、憲法学説上の多数説であります。
先週出された群馬弁護士会の会長声明や自由法曹団群馬支部の声明でも指摘しているように、そもそも、憲法が改正の発議要件を両院の総議員の3分の2以上と規定して要件のハードルを法律改正より高くしているのは、「侵すことのできない永久の権利」である基本的人権を保障し、人類普遍の原理である国民主権を定めた最高法規だからです。法律と同じように改正できるとすれば、その時々の政権が安易に改正できるようになり、憲法によって国家権力にしばりをかけて国民の自由や権利を守ろうとした立憲主義の理念が根底から覆されることになってしまいます。意見書は基本的に立憲主義の理解を欠いているといわざるをえません。
このような意見書を採択することは、安倍政権がすすめる「戦争する国づくり」に加担するものであります。そのことをどれだけの県民が望んでいるでしょうか。自民党議員諸氏にうかがいたい。あなたがたの子どもや孫が戦場に行って人を殺し殺されるかもしれない。そういう国にしてしまっていいのか。米国の戦争のために日本の若者に血を流させることを許していいのでしょうか。
紛争を徹底した対話によって平和的に解決する道を切り開く、話し合いで戦争を回避して国民の命と財産を守ることが政治家の仕事ではないでしょうか。戦争の準備のために憲法を変えるより、平和のために政治家が必死で働くのが先決ではないでしょうか。
群馬県議会の見識が問われるだけでなく、日本と群馬の未来に重大な禍根を残すことになる意見書を断じて認めるわけにはいきません。
よって、本意見書案の採択に反対し、撤回を求めます。
次に、「公共事業予算の増額を求める意見書」案についてです。
中央自動車道笹子トンネル崩落事故をはじめ、1960年代に建設された首都高速や新幹線、道路橋や学校など公共施設の老朽化が進行し、その対策が喫緊の課題になっていることは、意見書のいう通りです。
しかし、安倍政権がすすめているアベノミクスは、「国土強靭化」「国際競争力の強化」と称して、防災・老朽化対策を口実に、高速道路や新幹線、空港、港湾など新規の大型開発事業への投資を経済政策の主役に押し上げようというものです。そこには、社会インフラの老朽化の危険から国民のいのち・安全を守るという目的もなく、環境保全や自然再生の視点、住民参加の仕組みもありません。
国の新規の建設事業費は、2013年度以降、ダム建設や整備新幹線、高速道路などに約40兆円、リニア新幹線建設費を含めると、あわせて約50兆円もの規模になります。これは、バブル崩壊後の低迷した経済を立て直すとして実施した1990年代のやり方と全く同じであり、巨額の公共投資で膨大な借金、負の遺産を抱えるだけではないでしょうか。むだで危険な八ツ場ダムの本体工事はこの際、きっぱりと中止し、防災、減災への対応、老朽化したインフラの補修維持管理こそ優先すべきであります。
また、「景気対策」をいうならば、経済波及効果の大きい社会保障や教育、中小業者支援、地域密着型の公共事業に回すべきです。
人口減少や危機的な財政状況、大規模災害の頻発、社会資本の老朽化が進行する時代に、あらたな大型開発のために公共事業予算を増額すべきではありません。よって本意見書の採択に反対いたします。
最後に、私は、大学で憲法を学んで生き方が変わるほど、第9条に感動しました。憲法も県民の命も守り、生かしたい。乱開発から群馬の貴重な自然を守りたい、その決意をあらたに、反対討論を終わります。
群馬県議会 インターネット議会中継より、動画をご覧いただけます。
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