日本共産党 群馬県議会議員 酒井ひろあき

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「『安保法制』が地方自治を破壊する」池上洋通氏が記念講演(15.11.21 高崎市)

2015年12月05日 | ぐんま住民と自治研究所・会報
ちょっと日にちが経ってしまいましたが、ぐんま住民と自治研究所総会で行われた池上洋通氏(全国自治体問題研究所理事)の講演「『安保法制』が地方自治を破壊する」の要旨を紹介します。

<はじめに――「自分で考える勇気」>
こんにちは。ユネスコの「学習権宣言」(1985年)というのがあります。この宣言の中に、平和な世の中、誰もが等しく生きる社会をつくりたかったら学ばなければならない、それだけではなく「学習は我々を受身の生き方から社会を変革する主体者に変えるものである」と。これが世界中で合意されている教育の基本理念です。
マルクスは「思想が大衆を捉えるやいなや物質的な力になる」という文章を残しています。人々が学んで、生きる方向を発見すると、具体的な運動の力となって現れる。思想とは、単に社会を眺めているのではなく、根本的に社会を見たときに真理が見える。社会をただ受け止めるのではなく、変えようと考えたときに本当に社会の姿が見えるとのべています。
哲学者のカントが残した言葉でもっとも好きな言葉の1つは、「自分で考える勇気」という言葉です。誰かの意見に従って生きるのではなく、自分で考える勇気。カントは晩年、弾圧の中にいました。激しい思想闘争の中で著作をいくつも残しました。1795年に出版された「永遠平和のために」。近代哲学者の中で、常備軍を全て廃止すべしと唱えたのはこの著作が初めてです。日本の憲法9条の軍隊をなくすという思想は、あるとき誰かが頭の先で考えたのではありません。

<なぜ憲法は地方自治を重視したのか>
1889年に大日本帝国憲法が制定(90年施行)されました。15年戦争などを経て、1946年日本国憲法が制定(47年施行)されました。大日本帝国憲法は56年間、日本国憲法は69年間威力を保っています。日本国憲法の期間のほうがずっと長い。私たちは日本国憲法によってこの国の主権者そのもの。あらゆることに責任を持たなければならない。70年間も主権者でいたものが国のあり方や社会のあり方に責任を持たなければ、国民主権なんていう理論は意味がない。
憲法は、国家の目的として、「恒久平和の実現」を明確に掲げました。今世界中の民主主義国家を名乗る国の憲法で基本的人権の条項の前に平和を掲げている憲法は日本国憲法だけです。だから平和の課題はまさに決定的な課題であり、ここで譲ってしまえば主権者の意味がない。もう一つ、世界で初めて章をたてて地方自治を規定したのが今の憲法です。なぜ日本国憲法はそれほど地方自治を重視したのか。これが今、歴史的に問われています。

<侵略戦争、抑圧の歴史を受け継ぐ>
安倍首相は「次の世代に慰安婦問題などを残さないようにしたい」と。被害を受けた側が「残さないようにしたい」と言うならばわかります。加害者が「もう忘れたい」なんて、根本的におかしい。慰安婦の問題に代表される、近代日本史における対外的支配や侵略、抑圧の歴史についての問題です。アジア太平洋地域に与えた戦争の被害。朝鮮半島で20万人以上、中国では1000万人以上死者が出ている。フィリピンで111万人、ベトナムで200万人が死んだ。石炭、タングステン、コメ、トウモロコシ、ジュートを奪った。南方戦線に送られていった兵士たちの食料がなくなり、ベトナム人の食べ物を奪った。ベトナム人の死者の大半は餓死です。日本兵が食べ物を奪ったから。ベトナムの公立博物館で白骨が積まれた部屋があります。戦争で死んでいった餓死者のことを記憶から消さないための展示物です。そういうものを「次の世代に残したくない」なんていう議論がどんなに非科学的で傲慢なものか。私たちはむしろ積極的にこれを知識として受け継がなければいけません。そうしなければ本当の意味での平和はつくれません。こうしたものへの深い反省のないところにつくられた体制など、誰も信用しません。

<安保法制の本質――すべて違憲立法>
「特定公共施設利用法」。安保法制議論で結構議論になりました。有事の際に、あの学校を駐屯地にするとか、全部施設を特定してどんどん抑えるのを許す法律です。戦争をしようと思うと今の法体系では、住民をどこかに避難させないとそこを戦場にできない。戦争をやるために住民をどかす、それを「国民保護」という。誰がやるか。自治体職員です。拒否はできません。しかしここは日本国民がいる、外国籍の人も住んでいます。「住民」です。それを今度の安保法制に合わせて改定しました。特定公共施設、なんでも入ります。公園、学校、庁舎、港湾、道路。だから道路交通法も改定しました。高速道路を滑走路にすることができます。国の政策ではあるかもしれないけど、まさに地方自治体の課題です。しかも根本的に憲法違反の行為です。
安保法制。1つは平和安全法制整備法、もう1つは新規制定の国際平和支援法。2本の法律に100時間もかけたと言っていますが、実は整備法というのは10本の法律です。全部で11本の法律を審議した。周辺事態安全確保法の「周辺」が邪魔だったから、重要影響事態安全確保法と変えた。世界中のどこでも日本人が危ないとなったらでかける。世界のどの国どの地域でも日本の大資本が進出をしています。
もし現地で有事が起きたらどうなるか。日本の企業がたたかれたらどうなるか。だから日米同盟という名で、支える体制をつくる。それが理由です。ところが、日米安保条約は「極東の平和と安全」と地域限定になっています。ですから安保法制は日米安保条約にも違反しています。

<武器輸出の解禁>
防衛省の2011年度主要調達品目。新野外通信システム329億円、師団通信システム一式67億円、10式戦車13両123億円、以下ミサイルでもなんでもあります。装備品の契約では、三菱重工業がトップ、二番目は川崎重工業、三番目は三菱電機、二十番目のクラレは戦闘服です。各国の軍事支出で日本は第5位。憲法9条はなんのためにあるのでしょうか。
2011年世界の兵器産業の企業ランキング。1位がロッキードマーティン、2位ボーイング、日本は23位に三菱重工業がいます。38位に川崎重工業、57位に三菱電機、58位にNEC、98位に富士通がいる。アメリカやイギリスなどと比べて少ないのは、日本は武器輸出を禁止してきたからです。これを突破したい。そこで武器輸出の解禁をこの間次々に具体化していきました。そのエリアの1つがTPPです。

<税金を吸い上げる原発システム>
東京電力の福島第一原発が5020億円、第二が1兆2300億円、柏崎刈羽は2兆5700億円の建設費。柏崎刈羽は7基、世界最大です。原子炉建屋の工事と関連土木工事もやっていますが、圧倒的に原子炉にお金がかかります。財源は全額、私たちの払っている電気料金。つまり原発システムとは、私たちが払っている電気料金をほんのひとにぎりの大企業・大資本に吸い上げるシステムです。
2011年に福島原発事故が起きて、いっせいに原発が止まった。そうしたらどうするか。救わなければなりません。政治献金を受けていますから。原発輸出をどうしてもとなりました。しかし輸出する際に日本の原発も動かさなくてはなりません。「我が国では福島の事故があったので1基も動いていませんが、おたくの国でどうですか」とセールスできますか。これが原発再稼働の本質です。再稼働しなければ原発輸出の道が開けないからです。
ベトナムに原発を売ろうというが、ベトナムにそんなお金はありません。日本のODAを使うのです。全部日本国民の税金。事故が起きたら全額日本が負担する協定です。こんなこと許せるわけがありません。
統制社会への道を許さない

<総動員体制づくり>
1938年に国家総動員法ができました。ここで物資の統制、業務の統制、兵器はもちろん、医薬品や医療機械・器具、その他衛生用物資、家畜、馬、通信用物資、土木建築用物資、燃料および電力、全部が動員の対象。食料はもちろん、医師や看護師もいつでも招集できた。まさに総動員だった。明治憲法では軍隊も持ってもいいし、宣戦布告もできました。しかし必ず議会を開いて法律をつくってやれと。それを国家総動員法は全部天皇に委任してしまった。これがあの侵略戦争に道をひらきました。
だから今度の安保法制の問題で憲法学者の90%を超える人たちが立ち上がった。近代日本における痛恨の歴史があるから、研究者はものすごく危機意識を持っています。「なぜあのとき止められなかったのか」と。
国家総動員法の下で地方自治がどうなったか。1940年9月11日、内町会等整備要領というのが内務省から出されました。これから先、内町内会は行政の補助機関にするというものです。全国同じ基準で。そして国家総動員法の実施のための機関に据えたのです。衣服から何からあらゆるものに統制をかけました。パーマネントは贅沢、絹は着てはいけない。思想的な統制のために密告を奨励しました。1943年に至っては内町内会を今度は直接的な行政機関にしてしまいました。文字通りの総動員体制がここで完成しました。
2012年の自民党改憲草案。緊急事態という、昔でいう戒厳令の章を新たにもうけ、戦争などが起きたときにそういう体制を宣言するというもの。国会に変わり内閣が法律と同一の効力を有する政令をつくることができる。これはまったくの総動員体制です。これまでの有事立法の中の武力攻撃事態対処法は、こうした非常事態についての規定があります。
東日本大震災が起きた直後に、民主党政権であったにも関わらず、戒厳令的状況をつくってはどうかという議論をやっています。しかしさすがにこれは憲法違反だとなって取りやめました。その根拠は武力攻撃事態対処法という法律でした。しかし今の憲法であれば、憲法違反だと言って私たちはたたかうことができます。憲法を変えてしまえば、地方自治体の権限を停止することができてしまいます。

<沖縄問題はリトマス試験紙>
目指すべき社会と地方自治についてです。日本国憲法は地方政府を8章に掲げ、中央政府を国会、内閣、司法に規定して対等な関係に描いてみせました。しかも市町村最優先、都道府県優先という原則は、歴代内閣が認めている行政運営の原則です。
今沖縄で起きているあの姿が日本国憲法の統治機構の当たり前の姿なのです。沖縄県は仲井真前知事の決定は誤りだったと開発の許可を取り消した。許認可権を翁長知事が改めて使い直し、開発はできないという決定をした。そうしたら内閣が県を行政不服審査法で訴えた。国民、私人しか使えない法律を使って。審査するのは国交省、すぐに国の言い分を認めた。今度は沖縄県が国を訴える準備をしています。
沖縄に対する態度をどうとるかによって地方自治の本旨が問われるときが来ています。日本中の知事が「政府のやり方はおかしい」となぜ声をあげないのか。市町村レベルの首長たちも黙っていたらだめです。黙っていたら地方自治体を統制する流れを認めることになります。沖縄は今、日本の民主主義、特に地方自治をめぐるリトマス試験紙になりつつあります。
沖縄にどういう態度をとるかが一つの分かれ目。もう1つは原発をめぐる問題です。今被災地はどうなっているのか。現場に連帯の態度をしっかり表明して、継続した活動をつくっていくことが求められています。
これから群馬の研究所でも、基礎的自治体である市町村に研究所をつくってください。そうして群馬県中に広げていく。今この取り組みが日本中に広がっています。ともに歩んでいきましょう。




小渕経産相辞任と折田氏の町政投げだし/原沢けさじ・中之条町議会議長 (ぐんま住民と自治No.120)

2014年11月19日 | ぐんま住民と自治研究所・会報
ぐんま住民と自治研究所の会報(2014.11.14 No.120)より、日本共産党・原沢今朝司さん(前中之条町議会議長)の投稿記事です。

原沢さんは、2014年11月17日に、町議を辞職し、町長選(11月25日告示、30日投開票)に出馬することになりました。
記事の中の肩書は、当時のものです。


小渕経産相辞任と折田氏の町政投げだし/原沢けさじ・中之条町議会議長 (ぐんま住民と自治No.120)