「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

アノミー化する社会と 父親機能の不在

2009年11月23日 20時45分32秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 社会全体の規範が緩み、 行動や考え方が 自由になるほど、

 このタイプの人は、 逆に空虚感を抱き、 支えを見いだしにくくなります。

 それには 父親機能の弱体化が 関係しています。

 権威や不動の価値 というものが失われ、

 社会がアノミー化 (無規範・無規則状態) します。

 それは、 元々 脆弱性を抱えた人を、

 境界性パーソナリティ障害へと助長しやすくなります。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 心子の父親は、 心子を厳格に育てました。

 心子にとって、 父親の規範は 絶対的だったのかもしれません。

 大人になってからも、 心子は正義やモラルを 非常に重要視しました。

 それを守るため 自分が不利になったり、 犠牲になることを 少しも気にしないほど。

 義に反する人間には、 徹底的に 怒りをあらわにしたものです。

 例えば、 心子と一緒に

 「犯罪被害者支援の会」 設立のシンポジウムに 出席したときのこと。

 会場には 犯罪被害者も参加しており、 報道陣も詰めかけていました。

 主催者は被害者保護のため、

 マスコミが会場で 被害者に取材しないよう、 予めアナウンスしました。

 ところが 心子はある記者に、 インタビューを申し込まれたのです。

(どうして心子が 犯罪被害者と思われたのか、

 それも奇妙というか、 さもありなんと言うか。)

 記者は、 会場でなく建物の外で、

 カメラは足元だけを 映すと言いましたが、 心子は激怒したわけです。

 記者に名刺を強要し、 所属と上司の名前などを 問い詰め、

 こっぴどく 記者をつるし上げました。

 僕は見ていて、 記者の方が 気の毒になるくらいでした。

 心子は主催者にも この出来事を報告し、

 ルールを徹底させるよう 申し出た次第です。

(他に こんなエピソードもありました。

http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/44740089.html )

 そういう規範や枠組みは、 心子は人一倍 しっかりしていましたが、

 ひとたび自分が崩れると、 そんなものはすっかり どこかへ行ってしまいます。

 自分を支える価値観は、 いとも簡単に 失われてしまうのです。
 


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