「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

よい自分、 悪い自分、 そして本来の自分 (2)

2010年05月19日 19時20分58秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
(前の記事からの続き)

 心子は 父親に厳しく育てられ、

 何でも 完璧にやりこなす価値観を 植えつけられました。

 幼かった心子は 父親を愛しており、

 父に認められるため、 完全な 「よい子の自分」 を 作り出したのでしょう。

 一心不乱に勉強し、 習い事をし (ただし後者は、 心子の心的事実でした)、

 何でも独りでする 子になりました。

 (心子は元来 勉強好きで、 勉強していれば 時間が経つのを 忘れる子でした。)

 そして、 心臓発作を抱えていた父親と、 共に逝くことを 約束していました。

 (これも 心子の心的事実です。)

 父親は 心子が10歳のとき 急逝しますが、 心子は約束を 果たせませんでした。

 父との誓いを破った、 そのことが、 その後の心子を呪縛し、

 彼女の根源的な 罪悪感, 自己否定になります。

 心子は 父親に逆らい、 「悪い子の自分」 を形成する

 機会を失ってしまったのだと 思います。

 父親が生きていれば、 思春期を迎えて 自我が育つにつれ、

 父の不完全さも 見えてきて、 自然な反抗期を 迎えるでしょう。

 しかし 心子の中では、 父親は完全無欠なままの イメージで残り、

 父親を否定するプロセスを 辿れなかったのでしょう。

 心子の主治医の先生も、 治療において、

 死者が相手なのは 非常に難しいと言っていました。

 心子は 父親に対して、 「よい子の自分」 と 「悪い子の自分」 を通過し、

 統合することができませんでした。

(次の記事に続く)
 


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