「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

「無意識の彷徨」 (4)

2007年04月09日 11時16分05秒 | 車椅子社長/無意識の彷徨/コンビンサー
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/46599520.html からの続き)

  
○警察署・心理課

  心理課のプレート。
  友辺がドアにもたれて待っている。
  徹夜した様子で、襟とネクタイを緩め、
  不精髭が覗く。
  やって来るなつみ。
なつみ「あ、友辺さん、おはよう」
友辺「(なつみに視線だけ向けて)もう来る
 かと思って(口許で笑う)」
なつみ「徹夜? 朝からひげづらで」
友辺「(髭をさすりながら)シブい?」
なつみ「(苦笑)ブルース=ウィルスならね
 (バッグからキーを出しドアの鍵を開け
 る)」
友辺「(ドアから体を起こして)男が見つか
 ったよ。本人は無傷だ。服に付着してた血
 痕は被害者の返り血かもしれない」
なつみ「その人が加害者だったの? 本人は
 何て?(ドアを開け中に入る)」
  部屋の中にはなつみの机、面接用のテー
  ブルと椅子。
  本棚に並んだ心理関係の本。
友辺「(苦い顔をして)それが……(なつみ
 の後から部屋に入る)」
なつみ「うん?(机の上を簡単に整理しなが
 ら)」
友辺「……覚えてないんだ」
なつみ「え?」
 

○回想/同・取調室の中

田所「記憶喪失ぅ?(愚弄するように)」
  身を固くして椅子に座っている裕司。
  机を挟んで大きな態度で座っている田所。
  友辺は立って見ている。
田所「『ここはどこ? 私は誰』ってかぁ
 ?」
裕司「………(萎縮して)」
田所「(すごんで怒鳴る)ふざけるんじゃな
 い! お前みたいな芝居を打つ奴はよくい
 るんだ! 記憶喪失なんざ作り物のドラマ
 ん中だけの話だ! 20年間刑事やってて、
 本物にお目にかかったことはないんだよ
 !」
裕司「(頭を抱えて)……でも……何も分か
 らないんです……!」
  友辺、裕司の学生手帳を裕司の前の机に
  ポンと投げる。
友辺「(暗唱して)……西脇裕司、21才…
 …」
裕司「………(こわごわ手帳を手に取って見
 る)」
友辺「東院大学経済学部3年。住所は足立区
 北千住……」
  裕司、ぎこちない手つきで手帳のページ
  をめくり、自分の顔写真に見入る。
友辺「………」
 

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/46766123.html  
 


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