(前の記事からの続き)
○東央大病院・ カンファレンスルーム
美和子、 直哉、 若林、 川添が 幸枝のドナ
ーカードを前に 座っている。
直哉 「(逡巡しながら) ……… 幸枝は、もし
自分が死んだら、 使える臓器は全部 役に
立ててほしいって ……… でも私は最後まで
このままの体で いてほしいっていう気持ちが
………」
川添 「(直哉の肩に手を置いて) 当然です…
…」
美和子 「奥様のご遺志を 尊重することが、
何よりのご供養に なるのではないでしょう
か?」
直哉 「……… 幸枝は、 呼んでも叩いても ぴく
りともしない ……… このままただ 死んでい
くのを 見てるだけなのかと思うと ………
それだったら、 幸枝の体の一部だけでも 生か
してやったほうが ………」
美和子 「いつまでも 機械で動かしつづけるの
は、かえって奥様の尊厳を 損なうことにな
るかも ……」
直哉 「………」
若林 「透析生活に耐えながら 首を長くして
移植を待っている人もいます」
美和子 「奥様が その人達を 助けることができ
るならば」
直哉 「………」
川添 「木下さん、 断っていただいていいんで
すよ」
直哉 「(急にこみ上げるものを 抑えきれず)
幸枝は …… ! 幸枝の父親は、 腎不全で
亡くなったんです、 10年間も 透析で苦しんで
…… ! 幸枝はそれを何よりも ……… !
(息が詰まる)」
川添 「木下さん …… !?」
美和子 「(驚きを隠せない) ……… !」
直哉 「(涙を流しながら) …… あいつの気持
ち、 生かしてやってください ……… !
よろしくお願いします ……… ! (頭を下げ
る)」
若林 「(感動して 直哉の手を取り) 木下さん、
ありがとうございます …… ! ご好意、
決して無駄には致しません」
美和子 「……… (胸に迫るものを感じる)」
(次の記事に続く)
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