「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

育った環境の 影響は大きい

2009年11月18日 20時25分54秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 中核症状のひとつである、 情動のコントロールが できないということも、

 養育環境の問題と 結びついています。

 幼い子は、 空腹や痛み、 寂しさや恐さを感じたとき、

 泣いたりぐずったりして 親に助けを求めます。

 親は状況に応じて 慰めたり、 我慢するように言ったりして、 対処してくれます。

 子供は次第に、 自分の感情を コントロールする術を 学んでいきます。

 ところが 子供の欲求に対して、 無視したり罰したり、

 叱りつけたりばかりすると、 子供は感情を コントロールできないばかりか、

 情動が起きると たちまち燃え上がるという パターンを身に付けてしまいます。

 逆に、 親が子供を 過剰に満たしすぎるのも、

 忍耐力や ストレスに対応する力を 付けられなくなります。

 近年の研究では、 境界性パーソナリティ障害の人は、

 母親よりも父親に 拒絶されたと感じている人が 多いという結果が出ました。

 境界性パーソナリティ障害の増加は、

 父親の権威が 低下したことと関係があると 考える人もいます。

 それは 枠組みの低下をもたらすのです。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 心子の母親は、 心子を放っておいても 大丈夫な子だと思い、

 手をかけなかったと 心子は話していました。

(しかし 母親の話では、

 産後の足の障害のために 心子を抱けなかったことを 悔いて、

 障害が治ってからは、 それまでのことを取り返すように、

 何かと世話をしたといいます。)

 逆に父親は 心子を厳格に育てました。
 

 昨今、 子供に 適切な愛情を与えられない 親が増えていることは、

 BPDの増加と 無関係ではないでしょう。

 現代は、 父親や母親の 役割をはじめ、世の中の伝統的な 価値観の枠が揺らぎ、

 確固とした人格の形成が しにくくなっています。

 境界性パーソナリティ障害は、

 ボーダーレス時代の 象徴的な心の障害だと 言えるでしょう。

 彼らは 社会の枠組みの 境界線上におり、

 一触即発の雲行きで 彷徨しているのです。
 


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