「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

「無意識の彷徨」(1)

2007年04月05日 13時38分07秒 | 車椅子社長/無意識の彷徨/コンビンサー
 
 昔、某シナリオコンクールに応募した シナリオを連載します。
 臨床心理士を主人公にした話です。


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登場人物

 麻生 なつみ(29才・臨床心理士)
 友辺 孝浩(34才・刑事・なつみの恋人)
 西脇 裕司(21才・学生)
 田所 克夫(49才・刑事)

 西脇 則子(34才・裕司の母・故人)
 岡本 和信(56才・裕司の伯父)
 岡本 俊子(52才・裕司の伯母)

   *   *   *

○河川敷上の路/夜

  帰宅途中のなつみ。
  辺りに人けはない。
  前方に鉄道の高架橋。
  その下の暗がりから、よろよろと走って
  くる人影が現れる。
  男(裕司)は茫然と我を失ったようであ
  る。
なつみ「?………(訝る)」
  裕司が近づいてくると、Tシャツが真っ
  赤な血に染まっているのが見える。
なつみ「!?……(驚)」
  一瞬ひるむなつみ。
  裕司、なつみの目の前まで来る。
なつみ「(裕司を止めるように)……どうし
 たんですか……!?」
  そのとき高架橋を電車が轟音を立てて通
  過する。
  電車の車窓の明かりに照らしだされた裕
  司の顔が、一瞬なつみの目に飛び込んで
  くる。
  裕司の額には小さな古い傷痕がある。
  電車の音と光に驚いて反応する裕司。
裕司「わあ……!!(思わずなつみを突き飛ば
 す)」
なつみ「あ……!(道端に倒れる)」
  裕司、頭を抱えるようにしてよろよろと
  走り去る。
なつみ「待って……!(立ち上がろうとす
 る)あ、痛……!!(足首に痛みが走り再び
 うずくまる)」
  なつみは突き飛ばされたときに軽く足を
  痛めたようだ。
  裕司の姿が闇に消えていく。
なつみ「………」
  

○警察署・捜査一課

  デスクで新聞を読んでいる友辺の携帯電
  話が鳴る。
  携帯電話を取る友辺。
友辺「はい、友辺です……ああ、なつみ(顔
 がほころぶ)」
  隣の席の田所がじろりと視線を送る。


○路上

  足をさすりながら携帯電話で話している
  なつみ。
なつみ「友辺さん、今ね、不審な男の人とぶ
 つかったの……服が血で汚れてて……よろ
 よろと走り去っていってしまったんだけど
 ……」
友辺『なつみ、怪我は? 今どこだ?』
なつみ「大丈夫……河川敷の線路の下だけど
 ……」


○警察署・捜査一課

友辺「迎えに行こうか?」
なつみ『あたしは心配ない……それよりその
 人の様子がおかしくて……』
  田所の電話が鳴り、受話器を取る田所。
田所「捜査一課……」
友辺「(なつみに)どんな男だった?」
なつみ『うん……何か茫然としたような感じ
 で……』
友辺「負傷してたのか?」
  田所、受話器を切り、いきなり友辺の腕
  を掴んで立ち上がらせる。
田所「行くぞ、事件だ!」
友辺「(驚いて)田所さん……!?」
田所「のんびり女と話してる場合じゃない!
 (友辺の携帯のスイッチを切ってしまう)」
友辺「あ……!?」
  田所に無理やり連れられていく友辺。


○路上

なつみ「(いきなり切れて)?……」
  溜め息をついて電話を切るなつみ。
  
(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/46579724.html
 


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