「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

「ブタがいた教室」 (2)

2008年10月23日 21時13分25秒 | 映画
 
(前の記事からの続き)

 皆で育てたPちゃんは、 ペットであり、 友だちです。

 最初は 「臭い」 と言っていた子供も、 Pちゃんの糞尿の始末はもちろん、

 嵐の日には誰ともなく 豚小屋に集まってきて、 Pちゃんを風雨から守りました。

 一緒にサッカーをしたり 楽しい想い出を重ね、

 トラブルも皆で 乗り越えてきたのです。

 “情が移る” というのは 全く自然な感情で、

 家族同然になったPちゃんを、 まさか 食べることなんてできるのか?

 卒業を控えて子供たちは、 初めの約束通り Pちゃんを食べるのか、

 大論争が引き起こされます。

 初めは 「食べない」 が多かったものの、

 意見は 真っ二つに分かれていきます。

 後輩のクラスに Pちゃんの世話を引き継いでもらう という案も有力になり、

 子供たちは自ら働きかけ その準備もします。

 でも 引き継ぐ名乗りを上げたのは 3年生で、

 今や すっかり大きくなったPちゃんを

 小さい子たちが世話するのは 危険が伴います。


 この映画では、 子供たちに渡された台本は  「白紙」 だったそうです。

 彼らは 自分自身の頭と心で考え、 Pちゃんをどうするか、

 自分の言葉で 本気の議論を交わしていくのです。

 「かわいいPちゃんを食べるなんて 信じられない」

 「他のブタならいいのかよ」

 「Pちゃんとは 想い出が一杯できた。 これからも 生きていってほしい」

 「ブタは食べられるために 生まれてきたんだ」

 「食べるのは 殺すってことよ」

 「殺すんじゃなくて、 命を引き継ぐっていうことだよ」

 「Pちゃんに 最後まで生きてもらうのが 私たちの責任でしょ」

 「3年生が ちゃんと世話できるように 教えていく」

 「自分たちに解決できないから 問題を先のばしにするのは、 責任じゃない」

 「もし 最後に食べてしまうとしたら、 自分たちで最後にするのが 責任だと思う」

 どれもこれも 正しい意見であり、 聞き流せることは ひとつもありません。

 子供たちは 全員が涙を流しながら、 時には 取っ組み合いのけんかもし、

 必死で 思いを述べていきます。

 白熱の議論のシーンは 必見に値します。

 妻夫木聡も演技というより、素でやっているようにも 見えました。

 果たして クラスが出した答は……?

 正しいひとつの答はなく、 これだけ懸命に、 皆で真剣に 取り組んだ体験は、

 それこそが子供たちの 一生の宝になるでしょう。

 何にも替えがたい、 この上なく貴重な  「命の授業」 だと思います。
 


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