「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

「僕がいない場所」 (1)

2007年10月25日 23時59分44秒 | 映画
 
 ポーランドの女性監督、ドロタ・ケンジェルザヴスカの 作品です。

 社会主義から民主主義に 移ったポーランドで 近年、

子供に対する虐待が 社会問題になっているそうです。

 男に夢中になる 母親から、愛情を得られず 放置された少年・クンデル。

 実話を元にした 話で、柳楽優弥に カンヌ最年少男優賞を得させた

「誰も知らない」 の、いわばポーランド版 と言えます。

 しかし 本作のほうが 母親の愛情はより薄く、

クンデルの気骨は よりしたたかのように見えます。

 養護施設に入っている クンデルは、そこに 自分の居場所がなく、

脱出して 母親の元へ走ります。

 すると、母親は男と ベッドを共にしていました。

 母親は 男に依存し、誰かに愛されていなければ 寂しくていられないと言います。

 しかし、それより遥かに 愛情を求めているのは、他ならぬ 我が子のほうなのです。

 許してくれと 泣きつく母親を クンデルは振り切って、

一人で生きていく 決心をします。

 川べりの廃船に 住み着き、空き缶や鉄くずを 拾って売り、現金を手に入れます。

 大人の施しは受けず、時には 商店からパンと缶詰を盗み、口にほうばる。

 まさしく 人間が 「生きる」 ということの 原点を、

見せつけられるような 気がしました。

 天然の光と陰を 映し出した映像に、「ピアノ・レッスン」 の

マイケル・ナイマン奏でる、切々とした ピアノの旋律がかぶさります。

 自然に、淡々と、生命の営み というものを感じさせます。

(続く)
 


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