91年、 広島地裁の田川雄三裁判長 (74) は、
「 明日の判決は、 最後まで自分で読み上げたい 」 と語りました。
喉頭がんを患い、 結審後に入院。
明日の判決言い渡しが 終われば、 また病院に戻ります。
初公判から被告と相対してきた 自分が言い渡すことが、
被告に判決を 納得させることにつながると 信じたのです。
飲食店経営者ら 一家3人を殺害した 禹 (う) 起宗被告に、
田川裁判長は 判決理由から朗読を始めました。
最後に 「被告人を死刑に処する」 と 主文を告げた後、 語りかけました。
「 控訴できますから、 弁護人とよく相談しなさい 」
名古屋市内で 姉妹が拉致され、
ドラム缶の中で 生きたまま焼き殺された事件。
名古屋高裁の川原誠裁判長 (68) は、
「 『事実認定は高裁が最終審』 という 責任を持たなくてはならない 」
と肝に銘じてきました。
犯人グループは6人。
川原裁判長は 主犯格の野村哲也, 準主犯格の川村幸也両被告に、
一審と同じ 死刑判決を言い渡しました。
04年秋、 最高裁の滝井繁男判事 (72) は、
持田孝被告の上告を棄却する 判決文に署名しながら、
背筋が伸びる思いがしました。
「 もう後戻りできない。
これで本当に 死刑が確定する 」
婦女暴行事件の被害者が 警察に届けたことを恨み、
出所後に 被害者を刺殺した事件。
一審は無期懲役、 二審は死刑でした。
「 死刑以外の選択肢はないのか 」と 考え始めると、
いくら時間があっても 足りません。
「 被告はこれ以上、 上訴できない。
われわれには 最終審としての苦しさがあった 」
病が癒えて 退官した田川氏は 明かしました。
「 あの時、 控訴の手続きを説明したのは、
高裁の判断を仰いでほしいと 本気で思ったからです。
審理を尽くしたという 自信はあった。
それでも、 自分たちの判断だけで
被告の命が 絶たれてしまうというのは、 あまりに重圧が大きかった 」
〔 読売新聞より 〕
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