monologue
夜明けに向けて
 



知恵伊豆こと松平伊豆の守信綱は天草四郎時貞ジェロニモ・フランシスコが矢文で「近代、長門守殿内検地詰存外の上、あまつさえ高免の仰付けられ、四五年の間、牛馬書子令文状、他を恨み身を恨み、落涙袖を漫ひたし、納所(なっしよ)~つかまつると雖も、早勘定切果て―」と書いて領主松倉長門守の作物の出来高に似合わない重税の非道さ過酷さを訴えていたので、仕事とはいえそんな非道な領主の側に立って後世に大量殺戮者として名が残るのはうれしくなかったが一揆側の山田右衛門作と口裏を合わせた。とにかく一揆の平定のために自分は派遣されたのだから四郎が登場してすべては治まったのでそれはそれでよかった。それでも四郎が登場したおかげで一揆が治まったとはとても幕府の上司には言えなかった。
あとは記録係にでたらめでもなんでも書き残させればそれが後世には本当なのだから「島原の乱で三万七千の農民が死んで。三万四千は戦死し、生き残つた三千名の女と子供が、落城の翌日から三日間にわたつて斬首されたように幕府の記録には書き残させたのだった。そして気が進まないが職務上、踏み絵でキリスト教徒を見つけて処罰しようとしたが南蛮絵師山田右衛門作の描く基督画があまりにも眞に迫り過ぎて踏まなくては殺すと脅してもキリスト教徒でないとわかりきっている領民たちもだれも絵を踏めないので伊豆守は困った。仕事とはいえとても領民たちを殺すような非道なことはできない。結局、踏み絵も効果がなかったがそれでも踏めないものは殺したように記録させたのだった。
それで伊豆守は息子の甲斐守輝綱の日記に、二月二十八日の総攻撃ですべての反乱軍を退治したように記させ「剰至童女之輩喜死蒙斬罪是非平生人心之所致所以浸々彼宗門也」と記させた。
fumio


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




「創む明日」ハジマーシュと呼ばれるオランダ帰りの妖術アーティスト芸術家森宗意軒は笛太鼓琵琶で盛り上げ踊り歌い演出する。なにやら天に向かって合図すると、
その時突然嵐が起こり物凄い雷鳴が轟き稲光が迸ると争い戦っていた幕府軍も一揆衆も人々がはじけ飛びみんな気を失った。ウオーンウオーンと咆哮しながら失禁する。咽喉がつぶれて声がかれてしまう。
ハジマーシュは微笑みそして舞台上に吊り下げたすべての鳴り物をならしながらシロー・ザ・メシヤ モア・ザン・スーパースターとエゲレス語で歌い、大小の中華銅鑼を次々に鳴らしながら舞い踊る。山田山田右衛門作も欧州語は得意なのでエゲレス語でモア・ザン・スーパースターと歌う。舞台も下も一緒になって星のメシヤを讃美するコーラスが波のように拡がる。四郎少年は顔に似ずよく響く低い声で天草島原の民そして幕府のもの、すべて愛おしみ合おうと唱えた。
その声に目覚めた人々は自分が泣いているのか笑っているのかわからずかれた掠れ声で好きなもの同士慈しみ合い抱き合っていた。
fumio

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )