monologue
夜明けに向けて
 

鎖国  


松平伊豆の守信綱は少し羞恥を覚えた。
自分は一応幕府内では知恵伊豆と称えられて智者のふりをしているが実際はハジマーシュが「Would you like to come over hear」とエゲレス語で要請したから出現したらしい天空のスクリーン上のどでかい蛇のような恐ろしい姿をした怪獣ポセイドーンのいうことがわかっていない。その海龍王ポセイドーンは「Hear I am、これでもわたしは存在していないのか」と割れるような声で問うが応えるべき幕府の責任者として意味がわからないので応えることができない。異国の言葉なら会話ができるらしい。幕府の上層部にありのままに報告すると龍などいるわけがないであろうとただ笑うだけだった。
しかし一揆側の参謀南蛮絵師山田右衛門作は旗に「LOVVAD・SEIAOSẨCTISSIM・ SACRAMENTO 」とポルトガル語らしき異国の言葉を描いているし四郎も「わたくしは「Jesus de Nazaré, Rei dos Judeus」と異国の言葉でなにか話したが自分には意味不明だった。それが「ユダヤ人の王ナザレのイエス」と宣言したのだということを教えてくれたのは側近だった。「LOVVAD・SEIAOSẨCTISSIM・ SACRAMENTO 」の意味が(最も貴き贄を讃え崇める)と教えてくれたのは仲良くなった領民のひとりだった。
18歳のわが子甲斐守輝綱やその友の若者たちも先進的知識を持って見かけも海外の華やかな匂いに憧れて一揆側の肩をもつので知恵伊豆もなんとかしないとこのまま幕府も沈んでしまいそうな不安に駆られた。言葉も学び異国の文化を取り入れて海外の事情を知らねば世界から置き去りにされる、と思案した。
ところが幕府の中枢部では南蛮打ち払いから鎖国へと突き進む計画が進んでいった。それは知恵伊豆とはまったく逆の日本を遅れさせてしまう計画だった。
fumio

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haji  


ハジマーシュとは変わった名だが宇宙神霊アーリオーンのファンの間では有名で現在のSNS上ではその名前の由来が「明日を創む主」であることは衆知の常識になっている。
かれは船が難破して南蛮船に助けられて渡ったオランダ時代に妖術修業に打ち込んで欧州魔術選手権に日本代表として出場したことがあるのだ。
伝説の怪獣の部で出たのだが毎年優勝候補に挙がるユニコーンには及ばなかった。欧州の審査員たちの間ではなんといってもユニコーンの知名度は高かったのだ。
ハジマーシュはその牙城に唐獅子に少し手を加えて挑んだ。天空のスクリーン上でユニコーンと唐獅子の死闘がなんと三日間休むことなく繰り広げられたのである。天空のスクリーン上の巨大な蛇と馬のハイブリット版のような姿をした怪獣ユニコーンがヒヒーンと叫ぶと虎とライオンの合いの子のような姿の唐獅子がガーグアオーと返す。
怪獣たちの死闘は三日三晩続いたが唐獅子が有利になった時審査員たちの体力がもたなからということで打ち切られたのである。
勝負はまだついていないが一応そこで採点が行われたのだった。ユニコーン80点唐獅子70点。
ハジマーシュはその採点結果にくやしい思いを抱いて日本への帰国を決意したのであった。凱旋ということはできず、天草の地に上陸してやがて仕組まれていたように四郎の父で一揆のプロデューサー益田甚兵衛と出会うことになったのである。大変な変転の人生だった。
fumio

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