monologue
夜明けに向けて
 



 昔、ウシュクダラという歌があった。
幼い頃、ラジオから流れるその歌を「変な歌やなぁ、」と思いながら聴いていた。
原曲はトルコ民謡で1952年のブロードウェイミュージカルで発表され、1953年に吹き込まれて世界的ヒットとなったという。
 アメリカでキャットウーマンとして有名だったアーサー・キットが歌っていたのだが内容はさっぱりわからず、江利チエミのカバーでやっと意味がわかった。
Uskudar'a gideriken aldida bir ya?murと歌い出し、
日本語のセリフを交えて歌っていた。
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「みなさん、トルコ帽をご存知でしょう。
ウシュクダラはそのトルコのはずれにある古い小さな城下町です。」

「昔、この町の女たちはみんな利口で美人ぞろいでしたから男たちは女の秘書になって小さくなっていました。
ある雨の日、噂を聞いてはるばるこの町を訪れた男たちの一行がありました。」

ウシュクダラはるばる訪ねてみたら世にも不思議な噂の通り
町を歩いて驚いた、これでは男がかわいそう。
町中の女を自慢の腕で恋のとりこにしてみせようと粋ななりして出かけてみたが
とりこになったのは男だったとさ。とりこになったのは男だったとさ。
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 以上のような説話調の歌だった。
ウシュクダラはトルコに実在する町の名前だが
歌の中では架空の話しの舞台のように扱われていた。
現代ではこの話はどこの国でも会社でも架空ではない実話になってきた。
時代は進む。
 アーサー・キットは「証々寺の狸囃子」の英語カバーも歌って
面白い歌手だった。
何を思ってあの歌を選んで歌ったのかと不思議になるが
魂に響くなにかがあったのだろう。
そんな面ばかりではなく人種差別政策に反旗を翻し1968年、ホワイトハウスでの昼食会でかの女はジョンソン大統領夫人の前でベトナム戦争反対声明をしてアメリカから追われるように、ヨーロッパで10年間過ごしたのだ。
そんな権威や体制に迎合しない骨のある立派な歌手だった。
 わたしは女性枢軸へ進みゆくニュースを聞くたびに
ウシュクダラを口ずさみアーサー・キットの心意気を思い出す。
fumio


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