80ばあちゃんの戯言

聞いてほしくて

塾の先生(1)

2010-07-19 01:31:24 | 思い出
 ある年の暮れ、お隣の奥さんがちょっとお願いがあると言われて

家に来られたのであるが、彼女のお友達が緊急入院されてしまっ

たので、6年生の女の子さんの勉強を見てあげて欲しいのだと

言う事で、人手も借りたいような年末の大忙しの時に、お断り

したいと思ったが、ご病人さんがとてもお子さんの勉強を心配して

居られるので、少しでも安心させてあげたいのでと重ねて頼まれて

やむなく引き受ける羽目になったのであったが、お子さんに逢って

みると、おとなしいが、とても頭がよくしっかりしておられて、

その上とても可愛いお嬢さんであった。

入院はたった一週間や二週間ぐらいの事だと言うのに、どうし

てそんなに心配されるのかなあ。これだけしっかりしておられる

お子さんなら自習だけでも大丈夫だろうにと思ったほどであったが、

お母さんのご心配は年末に配られる成績表にあったらしい。

何でも、その前の学期に同じクラスで試験が同点だったお子さんが

相手は成績表で5を取り、そのお子さんは4だったそうであった。

私はなんとなくやりきれない思いに駆られながら、それでも、お引

き受けした以上は一生懸命勉強を見てあげようと思っていた。

算数、国語、理科、社会だけだったが、何とかお嬢さんはいい成績

が取れたらしかった。

私が見ていなくても大丈夫だったろうにと思ってしまったが、退院

後も教育相談は時々あるようになった。

 でも、ご相談があると言われてこられても、何時もその奥様が

決められた事がそのまま決定につながり、どんなアドバイスをした

ところで、彼女は頑として聞いては、くれなかったのである。

 何のために私の貴重な時間を使って下さるのかなあと恨めしかった

ものだ。

 中学に入ったらピアノをやめさせたいと思うと言うご相談があった

時にも、私は反対した。

そのお嬢さんのピアノはとてもお上手であったし、お嬢さんもお好きだと

聞いていたので、もっと続けさせてあげたかったので、私が保育科時代に

父や母が入院して精神的にも苦しかった時代にピアノの練習がどんなに

私を精神的に慰めてくれたかとおなお話をして、キットいつかお役に立て

ますよと言ったがそんなことをすれば成績が落ちてしまうから、いい高校

には入れないと言うお話で終わった。
 
外国には”All work and no play makes Jack a dull boy 。”

「がり勉ばかりじゃ 鈍くなる。”と言う諺がありますよとい言ってみたが、

何の効果もなかった。



 

私がとても心配したのは、下に坊ちゃんがおられたことで、同じように

がんじがらめにされたらどんな男の子が育つかと言う事だった。

ご主人様は本当に温厚そうというのだろうか奥様には頭があがらないと言う

もっぱらの噂があった。