NHK テレビ NHK スペェシャルよりの抜粋
発症する25年も前から病気が始まることがわかってきた
アルツハイマー病、まだ、紹介していないアミロイドβ、気
になりますよね。最初に変化が起こることから、アルツハイ
マー病を引き起こす大元だと考えられています。そんなに
早い段階から叩けば、タウの増加を抑え、海馬の萎縮を抑える
夢のようなことが、可能になるかもしれません。いったい
どんな方法があるか見ていきましょう。
ワシントン大学教授デイビット・ホルツマン教授はアミロイドβ
の蓄積とある意外なものの関係を調べています。
研究には健康な人たち145人が協力しました。体に、センサー
をつけて寝始めました。 そう、意外なものとは睡眠です。
ベッドに横になっているとき、熟睡している時間を調べました。
ベッドの横になっているときにあまり動かなければ、睡眠の質
がよい。頻繁に体を動かしていると睡眠の質が悪いと、判断
されます。目覚めた後、脳を包む、髄液を採取して、アミ
ロイドβの量を調べます。アミロイドβは,起きている間、
脳の神経細胞が活発に活動するときに作られます。そして、
寝ている間、その多くが髄液と一緒に脳の外へ排出されることが
わかってきました。睡眠の質が高い人ほど、アミロイドβが
きちんと排出されていました。
日々の睡眠を少し改善することで、長い年月で見れば、アミロイドβ
の増加をくいとめる大きな効果が期待できるのです。
ホルツマン教授
”研究結果は、適切で十分な睡眠をとることは、単に、健康のため
だけではなくアルツハイマー病の予防につながるかもしれないと
いうことを示しています。今後、研究が進めば、どれぐらいの
睡眠をとれば、アミロイドβの排出が効果的になるのか、具体的に
わかってくると思います。”
よく眠れといわれても、難しいという人に対するアミロイドβを
取り除く薬ができないかと思いますね。実はその薬はあるんです。
アミロイドβを大きな副作用なく、取り除くことに成功した薬が
あります。
その一つがスイスの製薬会社が開発した薬ガンテネルマグです。
大手製薬会社ルーカス・アンタレリさん
”患者の脳画像でアミロイドβをためている場所を示しています。
投与後6ヶ月、脳内のアミロイドβが減少したことがはっきりし
ました。
投与された薬は、脳に、到達すると、アミロイドβと結合します。
すると、脳の中の免疫細胞が、薬と結合したアミロイドβを食べる
ようになります。こうしてアミロイドβを取り除くことは成功した
のですが、なぜだか、いまだに世に出ていません。うまくいかなか
ったわけをDIAN研究があきらかにしました。
アミロイドβは発症まで25年も掛けて増加していくものの、発症
後は逆に減少していく事を突き止めたのです。このときアミロイドβ
はすでに、病気を進行させていく役目をすでに終えている可能性が
あります。これまで薬の試験の対象は発症後の人たちでした。
発症後の人たちに効果を期待してもなかなか効果が出ないわけです
けれども、ならば、もっと早い段階で、投与すれば、いいのでは
ないかDIAN研究のチームは製薬会社と組んで、昨年新たな研究を
始めました。臨床試験で、家族性アルツハイマー病の人たちに協力
を頼みました。
後10年ほどで発症の恐れのあるブライアンホイットニーさんも
協力を申し出ました。研究には、まだ発症していない210人が
参加する予定です。彼らの発症を防ぐことができれば、一般の人々
のアルツハイマー病の発症を予防することも可能になります。
究極の早期治療のこの取り組みが実現するのです。最初の結果が
出るのは2年後です。
ワシントン大学DIAN 研究チーム
ランダル・ベイトマン教授
”家族性アルツハイマー病のひとたちの協力のおかげで、一般の
アルツハイマー病の患者にも治療法をもたらそうとしています。
適切な薬をよいタイミングで投与できれば、アルツハイマー病
を確実に治療できる可能性は高いと思います。”
国立長寿医療研究センターで、頭を働かせながら、予防プログラム
に参加した鈴木正美さんの結果はどうだったのでしょうか?
開始してから1年、その結果を確かめるときがやってきました。
果たして、海馬の萎縮を食い止めることができたのか、記憶力を向上
させられることができたのでしょうか?
15の単語のうち、何個覚えられるか検査します。記憶力のほかに、
認知機能検査、脳の萎縮を調べる映像検査など1時間以上掛けて行
われました。
鈴木さんの海馬の萎縮はまったく認められませんでした。そして、
落ちていた記憶力も(年相応の目安が5点。一年前は1点)運動
の予防プログラム参加後は6点にまで回復していました。
参加者全体の結果です。まず記憶力。運動に参加しなかった人
たちはほぼ横ばい、運動プログラムに参加した人たちは記憶力の
向上に成功していました。次に海馬の変化です。本来は萎縮して
いくはずの海馬が、運動プログラムに参加した人のグループでは
何と改善していたのです。アルツハイマー病予備軍の海馬の萎縮
を改善し、記憶力をアップさせ、世界に先駆けて日本の研究が
行われていたのです。
島田裕教授
”自信を持って言えますが、今回運動によってMCIの方々、
少し脳の機能が落ちかけていても記憶を中心とした認知機能
を改善することはできます。やった方がいいですよ。”
脳を萎縮させ、人生の記憶まで失う難敵アルツハイマー病、長い
年月を掛けて進行など、病の全貌があきらかになったことで、今、
漸く、克服への希望が見え始めました、研究者たちのたゆまぬ
挑戦でアルツハイマー病を食い止めることのできる時代を切り開
こうとしています。
(完)
発症する25年も前から病気が始まることがわかってきた
アルツハイマー病、まだ、紹介していないアミロイドβ、気
になりますよね。最初に変化が起こることから、アルツハイ
マー病を引き起こす大元だと考えられています。そんなに
早い段階から叩けば、タウの増加を抑え、海馬の萎縮を抑える
夢のようなことが、可能になるかもしれません。いったい
どんな方法があるか見ていきましょう。
ワシントン大学教授デイビット・ホルツマン教授はアミロイドβ
の蓄積とある意外なものの関係を調べています。
研究には健康な人たち145人が協力しました。体に、センサー
をつけて寝始めました。 そう、意外なものとは睡眠です。
ベッドに横になっているとき、熟睡している時間を調べました。
ベッドの横になっているときにあまり動かなければ、睡眠の質
がよい。頻繁に体を動かしていると睡眠の質が悪いと、判断
されます。目覚めた後、脳を包む、髄液を採取して、アミ
ロイドβの量を調べます。アミロイドβは,起きている間、
脳の神経細胞が活発に活動するときに作られます。そして、
寝ている間、その多くが髄液と一緒に脳の外へ排出されることが
わかってきました。睡眠の質が高い人ほど、アミロイドβが
きちんと排出されていました。
日々の睡眠を少し改善することで、長い年月で見れば、アミロイドβ
の増加をくいとめる大きな効果が期待できるのです。
ホルツマン教授
”研究結果は、適切で十分な睡眠をとることは、単に、健康のため
だけではなくアルツハイマー病の予防につながるかもしれないと
いうことを示しています。今後、研究が進めば、どれぐらいの
睡眠をとれば、アミロイドβの排出が効果的になるのか、具体的に
わかってくると思います。”
よく眠れといわれても、難しいという人に対するアミロイドβを
取り除く薬ができないかと思いますね。実はその薬はあるんです。
アミロイドβを大きな副作用なく、取り除くことに成功した薬が
あります。
その一つがスイスの製薬会社が開発した薬ガンテネルマグです。
大手製薬会社ルーカス・アンタレリさん
”患者の脳画像でアミロイドβをためている場所を示しています。
投与後6ヶ月、脳内のアミロイドβが減少したことがはっきりし
ました。
投与された薬は、脳に、到達すると、アミロイドβと結合します。
すると、脳の中の免疫細胞が、薬と結合したアミロイドβを食べる
ようになります。こうしてアミロイドβを取り除くことは成功した
のですが、なぜだか、いまだに世に出ていません。うまくいかなか
ったわけをDIAN研究があきらかにしました。
アミロイドβは発症まで25年も掛けて増加していくものの、発症
後は逆に減少していく事を突き止めたのです。このときアミロイドβ
はすでに、病気を進行させていく役目をすでに終えている可能性が
あります。これまで薬の試験の対象は発症後の人たちでした。
発症後の人たちに効果を期待してもなかなか効果が出ないわけです
けれども、ならば、もっと早い段階で、投与すれば、いいのでは
ないかDIAN研究のチームは製薬会社と組んで、昨年新たな研究を
始めました。臨床試験で、家族性アルツハイマー病の人たちに協力
を頼みました。
後10年ほどで発症の恐れのあるブライアンホイットニーさんも
協力を申し出ました。研究には、まだ発症していない210人が
参加する予定です。彼らの発症を防ぐことができれば、一般の人々
のアルツハイマー病の発症を予防することも可能になります。
究極の早期治療のこの取り組みが実現するのです。最初の結果が
出るのは2年後です。
ワシントン大学DIAN 研究チーム
ランダル・ベイトマン教授
”家族性アルツハイマー病のひとたちの協力のおかげで、一般の
アルツハイマー病の患者にも治療法をもたらそうとしています。
適切な薬をよいタイミングで投与できれば、アルツハイマー病
を確実に治療できる可能性は高いと思います。”
国立長寿医療研究センターで、頭を働かせながら、予防プログラム
に参加した鈴木正美さんの結果はどうだったのでしょうか?
開始してから1年、その結果を確かめるときがやってきました。
果たして、海馬の萎縮を食い止めることができたのか、記憶力を向上
させられることができたのでしょうか?
15の単語のうち、何個覚えられるか検査します。記憶力のほかに、
認知機能検査、脳の萎縮を調べる映像検査など1時間以上掛けて行
われました。
鈴木さんの海馬の萎縮はまったく認められませんでした。そして、
落ちていた記憶力も(年相応の目安が5点。一年前は1点)運動
の予防プログラム参加後は6点にまで回復していました。
参加者全体の結果です。まず記憶力。運動に参加しなかった人
たちはほぼ横ばい、運動プログラムに参加した人たちは記憶力の
向上に成功していました。次に海馬の変化です。本来は萎縮して
いくはずの海馬が、運動プログラムに参加した人のグループでは
何と改善していたのです。アルツハイマー病予備軍の海馬の萎縮
を改善し、記憶力をアップさせ、世界に先駆けて日本の研究が
行われていたのです。
島田裕教授
”自信を持って言えますが、今回運動によってMCIの方々、
少し脳の機能が落ちかけていても記憶を中心とした認知機能
を改善することはできます。やった方がいいですよ。”
脳を萎縮させ、人生の記憶まで失う難敵アルツハイマー病、長い
年月を掛けて進行など、病の全貌があきらかになったことで、今、
漸く、克服への希望が見え始めました、研究者たちのたゆまぬ
挑戦でアルツハイマー病を食い止めることのできる時代を切り開
こうとしています。
(完)