21世紀航海図;歴史は何も教えてくれない。ただ学ばない者を罰するだけ。

個人の時代だからこそ、個人を活かす「組織」が栄え、個人を伸ばす「組織」が潤う。人を活かす「組織」の時代。

アンカー効果

2010年08月31日 16時36分29秒 | Weblog
ボールペンが2本あるとします。例えば、AとBだとします。

で、通常Aは500円で売られているボールペンです。購入するためには500円支払わなければなりません。

そして、Bは500円貰えるボールペンです。ボールペンBを受け取ると500円分の商品券が貰えるとします。

ここで、もし地上からお金が無くなったとします。

ポールペンAは無料で配られています。

そして、ボールペンBを受け取っても1円も貰えないとします。

あなたはどっちのボールペンを使いたいですか?

おそらくほとんどの人がボールペン「A」を選ぶでしょう。


単純な話、これがanchoring effect です。
「Anchor」 ってのは「錨」のことです。海底に引っかけて船を止めておくのに使うやつのことです。Aには500円の価値がある。Bには-500円の価値がある。と心のどこかに「引っかかっている」のです。このため、Aを無料で貰えると500円得した気分になり、Bを受け取っても500円貰えないとその分を損した気持になるのです。
ほとんどの人は「損をしたくない」と思っているので、ボールペンAを選ぶのです。



実はこれが「仕事が楽しくない」最大の理由です。
仕事は「お金がもらえる」から楽しくないのです。「お金を貰っている」から、仕事はボールペンB状態になります。タダで貰いたくないからサービス残業はしたくないし、給料が同じなら出来るだけ楽な仕事をしたいと思うのです。

古い欧米式の成果主義が失敗する理由もこのanchoring effectにあります。
人間の心理として、成果主義の場合、
成果を出した分だけ給料を貰える ≒ 給料の分だけしか成果を出さない。
という気持ちが働きます。これだと、言われた仕事しかしない人ばかりになるので、企業全体の創造性・技術革新が停滞して、長期的に見た場合に業績が低迷します。


今では、このanchoring effectの影響が有名になってきたため、欧米企業では「成果主義」と言っても、業績への報酬を「現金以外の形」で出すようになっています。一般的に「業績への報酬は仕事で渡せ」と言われます。



頭の古い人は、「給料を貰って仕事をしているのだから、積極的に動け」と言う場合があります。Anchoring effectを全く理解していない人です。人の心の動きを理解していな人なので、好かれている可能性は低いでしょう。人間は給料を貰っているからこそ積極的に働きたくないのです。給料のために嫌々仕事をしている人ばかりになると、職場はギスギスします。



将来的に管理職になったとして、人を積極的に働かせようと思ったら、「ほめて・おだてる」ことが一番の近道です。これは人の心の中のsocial valueに働きかける方法で、anchoring effectの研究とは少し別の分野の話になります。

労働流動性の問題

2010年08月31日 13時00分27秒 | Weblog
前回ブログ↓↓↓に少し誤解があった。私の主張は「絶対的経済成長率が低いために、収入が伸びにくくなっている。にもかかわらず、多くの人が個人の実力不足で収入が伸びないと勘違いしている。」と言うことである。

そして、企業が採用数を減らしたり、給与水準を引き下げたりしているのは、社会構造変化の「結果」であって、「原因」ではないのである。

企業が人を雇わないからデフレになる、のではなく、デフレだから企業は人を雇わないのである。

例えば、人口が1000人の村があって、自給自足の生活を送っていたとする。
①今まで1000人全員で耕して、1000人分の食料を生産しているとする。

そこに耕運機が導入されて、20人で1000人分が食料を生産できるようになったとする。今まで1000人でやっていた仕事が20人で出来るようになる。

つまり、残りの980人は遊んでいても生きていけるようになる。


②遊んでいる980人の中にオシャレな人がいて、手の込んだ服を作り始めたとする。
最初は全てが「手織り」で、1000人分の服を作るのに980人が働かなければならない。でも、そのうち「機織り機」が導入されて、1000人分の衣料を作るのに20人で十分になる。

つまり、残りの960人は遊んでいても食べ物と衣料が手に入るようになる。


③この遊んでいる960人が家を建て始める。最初は1000分の家の建築に960人の力が必要だったのが、全員分の家を建ててしまえば、あとはリフォーム・改修をすれば良くなるので、30人で1000人分の家を維持できるようになる。

つまり、残りの930人は遊んでいても食べ物と衣料・住宅が手に入るようになる。


④この960人の中から、絵を描く人が生まれ、本を書く人が生まれ、作曲する人が生まれる。自動車を作る人も出てくるだろうし、船を作る人も、飛行機を作る人も出てくる。

そして、カメラが登場することで1000人分の自画像(写真)が1人で用意できるようになる。
そして、印刷機が登場することで、1000人が読む本を1人で用意できるようになる。
そして、蓄音器が登場することで、1人が演奏し1人が録音するだけで、1000人が聞く音楽を用意できるようになる。


最初は300人で作っていた自動車も、機械化が進めば30人で作れるようになるだろう。
最初は200人で作っていた船舶も、設備が発達するに従って20人で作れるようになる。
そして、飛行機だって効率化が進めば、ほんのわずかな人数で製造が出来るようになる。


⑤そこで働く必要のなくなった人達が、ITの仕事を始めたり、金融の仕事を始めたり、薬を開発したり・・・想像もできないほど多くのモノやサービスを開発する。


これが「産業構造の変化」ってことだ。産業構造が変化するのにしたがって、労働者は立ち位置を変えないといけない。

最初は「①農業」をしていた人が、次は「②衣料の製造」に、そして「③建築業」に、それから、それから、と職業を変えていかないといけない。「労働流動性」ってことだ。


失業者対策も労働流動性を考慮しないといけない。効率化が進んで人手が余っている産業から、新しく生れかかっている産業へ労働力を移していかないといけない。

20人で1000人分の食料を生産できるほど効率的な「農業」で、補助金を出してまで21人を働かせる意味はない。それは、衣料業でも建設業でも同じだ。

労働市場から押し出されている失業者を、労働者で溢れている業界に押し戻す必要はない。新しく生れ、人手が足りない産業へ送り込むべきなのである。
政府の失業者支援はそのために存在するべきである。新しい産業へ移っていけるように失業者に教育の機会を与えることが重要なのである。「労働流動性が高い」場合、それだけ新しい産業が次から次へと生まれていることを示す。日本ももっと労働流動性を高めていかないといけない。




日本銀行が積極的な円高対策を採用しない大きな理由もここにある。円高対策・円安政策は「必要のなくなった製造業」を支援して、「労働者を不必要に雇用している企業」を延命させる政策である。円高対策を取らないことで、過去の産業を国内から追い出し、新しい産業へと労働力が流動的に動いていくことを、日本銀行は期待しているのだと思う。

8月30日の会合でも、日本銀行が採用したのはほとんど効果のない小手先の新型オペである。円高の進んでいる為替市場に影響を与えるつもりは毛頭ないようである。

若者の平均年収

2010年08月29日 23時59分49秒 | Weblog
「若者の」と言うか、日本人の平均年収が下がってきている。

「成果主義」って名目で給料が引き下げられる。「成果主義」って名目で最初から給料が低い。ってこともある。

成果主義の世界で給料が上がらないのは「個人の責任」と思われるかもしれないが、それは間違っている。

日本の経済成長率は年1%で、中国の経済成長率は年10%である。

営業担当者にとってみれば、日本だと必死で働かないと年1%以上売上高を伸ばすのでさえ難しいが、中国だと何もしなくても10%前後の売上の向上を見込める。

自社内に、日本で毎年売り上げを2%伸ばしている営業部門と、中国で毎年売上を10%伸ばしている営業部門があるとすると、優秀なのは日本の営業だ。経済成長率の2倍以上の急成長をしている。しかし「成果主義」の世界では、中国の営業部門の評価の方が高くなるだろう。

日本で仕事をする以上、実力よりも低い評価に甘んじなければいけない、のは事実だ。

日本人の平均年収が下がってきている最大の要因は、人口減少と経済の低成長である。
経済が成長しないために、給料が下がっているのである。

そして、給料が下がっているためにデフレが起きている。


店員の人柄に惚れ込んでモノを買う。人を選んで買い物をする時代は終わった。
平均年収のデフレが進んでいるこれからの時代は、
値札を見比べて買う時代に入った。
客は値札を見て何を買うのか選ぶわけだ。そこに従業員は必要ない。そこで、社員・パート・アルバイトの給料を抑える。もしくは採用人数を減らすことで、人件費を抑えるインセンティブが働く。人件費が安くなれば、その分だけ商品の価格を抑えることが出来る。、経費を浮かせたうえで、販売価格を下げれば売上が伸びる。
言い換えると、従業員の数を減らしたら、さらに儲かる。ってわけだ。

わざわざ高い給料を払ってまで、「いるだけ無駄」な人を置いておく必要はない。当然のことながら、従業員の労働環境は急激に悪化する。

日本の平均給料も下がるだけだ。


毎日のように真夏日なのに、わざわざ買い物に出かけて高いものを買う必要はない。インターネットを使えば、クーラーの効いた涼しい部屋の中から、気軽に買い物を楽しむことが出来る。しかも、ネット販売は店舗コストをかけていない分だけ安い。

そして、ネット販売が中心になれば、売場の従業員はいらなくなる。

それが「デフレスパイラル」なんだろうね。

経済成長への戦略的金融政策

2010年08月28日 22時32分31秒 | Weblog
不景気時に金利を引き下げることで資金の流動性を高めることが出来る。
古典的な金融政策だ。

しかし、金利水準がゼロに近づいてしまえば、経済の浮き沈みに合わせて金利を調節することが難しくなる。

特に現状の金利水準は「ほぼゼロ」であり、古典的な金融政策の効果は限られてきている。


そこで金利の調整以上に、資金の流動性を高めるのに効果を発揮するのが、「量的緩和」だ。

日本銀行が直接資金を出すことで、流動性を高める手段だ。


量的緩和の問題点は、過剰流動性が生まれることで、capital costが消滅してしまうことだ。
資金が非生産的な部門・産業にも流れ込むことで、経済全体の成長率の平均値が低く抑えられてします。
場合によっては、生産性が低い部門に資源・人材が奪われることによって、生産性の高い産業全体の成長率が抑えられてしまうことだ。

「量的緩和」によって、資金不足は解決されるが、変わりに資源不足・人材不足が引き起こされる可能性がある。
そして、次世代の産業への成長率が低く抑えられてしまう心配がある。これは、capital costが消滅することによって引き起こされる問題だ。capital costが消滅することによって経済成長率が低く抑えられてしまうのだ。

そのため、「経済成長への戦略的金融政策」では、capital costを復活させる必要がある。
そして、capital costを復活させるためには、金利が上昇する必要がある。

実際に日本銀行が取れる手段としては「政策金利の引上げ」である。金利が引上げられる事で、capital costが復活し、経済成長率を引き延ばすことが出来る。

資金の流動性を確保するために量的緩和を維持しつつ、capital costを復活させるために政策金利を引き上げる。
それで「戦略的金融政策」と言える。


もちろん、欧米各国が政策金利を低く抑えているなかで、日本銀行だけが政策金利を引き上げれば、金利格差が縮小する。これは円高要因である。円高が起きてしまうため、短期的には輸出企業の足を引っ張ることになるかもしれない。

円高に耐えられる産業構造にする「努力」をしていますか?

2010年08月27日 23時14分18秒 | Weblog
民主党政権は、為替がどれだけ円高に振れようとも、市場介入を実施しようとはしない。なぜか?

民主党政権の他の政策の例を取ると、「子ども手当」にしろ、「高速道路無料化」にしろ、「新卒社会人の就職支援」にしろ、「頑張って・苦労している人たちを助ける政策」になっている。そして「事業仕分」のように、努力をせずに国からの支援だけに頼っている団体・個人への風当たりを強くしている。


民主党政権としては、円高が進んでいるからと言っても、国が為替介入をすることで、円高に強い企業構造を努力で生み出してきた企業から集めた法人税を、努力を怠ってきた企業を救済するためには使いたくないのだろう。

日本経済を支えてきた輸出企業への「申し訳」として、市場への「口先介入」はしているが、物理的な市場介入をするつもりはないのだろう。


例えば、ユニクロはどれだけ円高が進んでも安定的に利益を出し続けている。それは今までの企業努力があってからこそだ。そのユニクロが負担している法人税を浪費して、「円高で収益が圧迫されている企業を救う」という考えが民主党政権には存在しないのだろう。

民主党政権が考えているのは、円高でも利益を上げている企業がある中で、円高で利益を上げられなくなった企業があるとしても、それは「努力が足りないからではないか?」ということだ。

言ってしまえば、「日本国内に製品の製造拠点を持つ企業は、経営努力が十分でない」と民主党政権は考えている、と推測できる。


ちなみに、私個人は、「小沢さんが嫌いで、管さんは好き」なだけで、政党としての民主党は特に支持していません。


前回のブログにも書いた。民主党政権の展開を見ていると、
①円高への危機感が薄い。
②労働者の最低賃金を引き上げようとしている。
③FTA締結交渉が全く前進していない。
の3点が気にかかる。

つまり、民主党政権は日本に輸出産業は必要ないと考えているわけである。

円高への体制が弱く、生産性が低くて、従業員の給与水準が低い「輸出産業」が無くなれば、円高への体制が強く、生産性が高くて、従業員の給与水準が高い「第4次産業」へ日本経済の主軸が移る。そういった理想を、民主党政権は持っているのかもしれない。

3人の命を救うために、1人を殺すことは許されるか??

2010年08月26日 10時32分39秒 | Weblog
ケース・バイ・ケースでしょ。

例えば、繁華街で包丁を持って暴れている人がいる。とかとかの場合、周りの人を守るために暴れている人を殺してしまうことも許されるのかもしれません。(気絶させるだけでも済むかもしれませんが)


少し良心的な例で、「3人の命を救うために、1人を殺しても許される」ケースとしては、
例えば、標高7000m以上の雪山を4人で登っていて、嵐にあった。そして、引き返している途中に1人がクレバスに落ちた。助けるために3人とも残ると嵐に飲み込まれて全員死んでしまう可能性がある。
と言うのであれば、1人を「見殺し」にしても非難は起きないでしょう。


逆に許されないケースとしては、例えば、
死にかけていて臓器移植を待っている人が3人いる。その人達の命を救うために、無関係に道を歩いていた健康な人を「殺す」。と言うのであれば、
話は完全に変わってきます。


個人的な意見として、
何もしなかった場合でも死んでしまう人を、他の3人を助けるために、「見殺し」にするのであれば、許されると思います。
一方で、助かる3人とは全く無関係の人を「殺す」となれば、許されないと思います。



そう言えば、ペルーの鉱山で33人が地中に生き埋めになっています。この鉱山事故の場合、33人はシェルターに避難しているために全員が生きて出てくる可能性が高いです。
でも、もし、どこかに閉じ込められて、「酸素が足りない」「食糧が足りない」といった理由で、「1人が死ねば、3人が生き残れる可能性が高い」が、「4人だと全員生き残れない可能性が高い」場合、あなたならどうしますか? 死にますか? 殺しますか? それとも何もしませんか?

私がそんな状況に陥る可能性は絶対にないので、私は答えを出さないでおきます。笑

市場不介入の真意w

2010年08月26日 00時39分27秒 | Weblog
民主党の取る政策を詳しく見ていくと、15年ぶりの円高水準で輸出企業が採算性の維持に必死の時に、民主党政権が為替市場介入に積極的ではない根拠が見てくる。

民主党マニフェストの次の3点に注目する。
①円高の容認、円売りの市場介入を事実上否定している。
②パート・アルバイトの最低賃金の引上げようとしている。
③ASEAN諸国とのFTA締結交渉が全く進んでいない。


この3つの政策から、民主党政権が発しているメッセージは明確だ。

つまり、
「日本に利益率の低い製造業は必要ない」
と民主党は思っているわけである。

③から考える。
民主党政権はFTA交渉に乗り気ではない。ASEAN諸国とFTAが締結できれば、東南アジアを「内需」として取り込むことが出来る。しかし、ASEAN諸国とのFTA締結はいつになるか分からない。つまり、「国内で製造して海外に輸出する」のではなく、「海外で製造して海外で販売する」企業の数を増やしたいと思っているのである。

②はもっと分かりやすい。
日本の中小企業の中でも、技術的優位性が低い企業は中国・台湾・韓国企業との価格競争に巻き込まれている。そして、多くの従業員に最低賃金レベルで働いてもらっている。ここで最低賃金を上げることで、かろうじて国内に製造拠点を維持している企業にも、海外へ出ていくようプレッシャーをかけることが出来る。


そこで③が出てくる。
15年ぶりの円高水準にもかかわらず、民主党政権の中心からは「事態を慎重に見守る」と受動的な発言しか出てこない。つまり、円高を維持したいのである。企業が「海外に工場を作ろう」と思った時、円高であれば初期投資の費用を抑えることが出来る。
例えば米$1=100円であれば、1haの海外工業用地を1000万円で買えるとする。ここで、
米$1=80円にまで円高が進めば、同じ1haの海外工業用地を800万円で買える計算になる。

つまり、民主党政権は円高を維持することで、日本企業が海外で工場開発をしたり(海外に投資したり)することを支援しているのである。

民主党政権は、「日本に製造業は必要ない」と考えている。


日本経団連のメンバー企業は、日本政府に「為替介入を依頼する」と言った無駄なことをするのではなく、
現在の円高水準を120%生かして、海外への投資・海外での工場開発・海外での販売網の整備に力を入れるべきなのである。

為替の実質レートと名目レート

2010年08月24日 21時01分02秒 | Weblog
8月24日に書いたもう一つの日記の追加です。

夕方の野田財務省の発言を受けて、日本政府・日本銀行が為替介入することはない、と市場は反応したようです。
1995年6月30日以来、15年ぶりのレベルまで円高が進んでいます。

この「15年ぶりの円高」って言うのは名目レートでの話です。
実質レートでは「過去最高値」の8割程度の水準です。


民主党政権は、代表選挙の準備で忙しいのか、円高への危機感が薄いのか、実質レートで為替を見ているからなのか、為替市場介入に興味を持っていないようです。


もとの日記に「実質レートは、机上の空論に過ぎない」と書きました。

1971年にニクソン・ショックがあり、米$・日本円が変動相場制に移行しました。

日本銀行のウェブ・ページに載っている記録ですが、
(http://www.boj.or.jp/type/exp/stat/exrate.htm)

1973年のレベルを100とすると、

現在の為替レートの名目水準は約400です。
$1が360円の時代から400%以上円高が進んでおり、現在は$1=90円以下のレベルです。

日本のインフレ率、貿易相手のインフレ率を考慮した実質水準は、約130です。
$1が360円の時代から、130%円高が進んだとしたら、$1=276円と言う答えが出ます。

名目値での為替レートは約90円なので、理論値と現実の値の間には300%以上のずれがあります。

たった37年間で、名目値と理論値に300%もズレがあるのは、おかしいと思う。(直感)


もし、政策責任者が「実質レートの計算式は正しい」と信じるのだとしても、円売りの市場介入を実施して30%分の円高を是正する必要があるのではないか。

そして、名目レートのみで、円高・円安を判断するのであれば、15年ぶりの円高を放置するのは問題なのではないかと思う。

ビッグマック理論

2010年08月24日 11時43分16秒 | Weblog
ビックマック理論って言うのは、外国為替レートの理論値の1つである。「モノの値段はどこでも同じになるはずだ」との思い+経済学者の冗談からできている。

ビックマック理論では、マクドナルドの「ビックマック」の値段を間に挟み込むことで、為替レートの理論値を出す。
例えば、
アメリカではビックマックが3.75ドルで売られていて、
日本では、320円で売られている場合、
$3.75=ビッグマック = 320円
と言うことで、
$3.75=320円で、
$1=85.3円になる。

これが意外と、今日(8月24日)の実際の為替レートに近い。($1=85円ちょうど)

日本マクドナルドは、期間限定でビックマックの値段を200円にする、と言っているので、その場合の理論値は、$3.75=200円で、
$1=約53円になる。

かと言って、$1=53円台まで円高が進むと考える人はいないだろう。


実はこのビックマック理論、成り立たないことが知られている。
為替は変動が大きいので、一時的に理論値と実際の値が同じになることはあるが、長い期間を通して見ると、一致しない期間の方が圧倒的に長い。
マクドナルド一社の1つの商品だけに注目しているだけでは、為替レートの予測はできない。ビッグマック理論を発表した当事者も本気で成り立つとは思ってもいない。あくまでも「冗談」の世界の話だ。



話を少し大きくする。
ビックマックの値段と無関係に為替レートが決まるように、物価上昇率と為替レートには、全く相関関係が無い。

インフレ=通貨価値の下落=円安
デフレ=通貨価値の上昇=円高

って公式は成り立たない。と言うか存在しない。
日本銀行が名目為替レートの他に、貿易額で加重平均してインフレ率を考慮に入れた「実質為替レート」なるものを発表しているが意味が無い。

実質レートを計算して出しても「実質レートには意味が無い」ことを証明することしかできない。


ブレトンウッズ体制が崩壊して、ニクソン・ショックが起きて、変動相場制に移行してから、日本円は一方的に円高に進んできた。1970年代~80年代を通して、日本のインフレ率はアメリカのインフレ率を上回っていたわけだから、物価上昇率が為替レートに影響を与えるとすれば、「円安」になっているべきである。
2000年代に入ってからのアメリカのインフレ率・日本のデフレだけ考慮して、「円高は仕方ない」と言う考えは間違っている。


結論:インフレ率は為替レートに全く影響を与えない。

もしインフレ率が為替に影響を与えるとすれば、年間のインフレ率が10%を超えている中国の元は、インフレ率が3%未満のアメリカ・ドルに対して下落するはずだ。だが現実には、中国元は米$に対して上昇しようとしている。つまり、インフレ率は為替レートに影響を与えない。


「実質為替レート」は計算して出すことが出来るが、あくまで「机上の空論」であって、現実には存在しない。大学の学生が研究に使うのは良いが、日本銀行が現実の政策を動かすのに、「実質為替レート」を参考にするとなると問題がある。


例えば、
サイコロを振る前に「出る目」を予想したとする。どれだけ複雑な理論を使って予想したとして、当たる確率は1/6だ。つまり、6回に一回はあたる。全ては運だ。理論が正しかろうと間違っていようと、6回に1回は当る。

「実質為替レート」の話もそれに近い。理論的に複雑で、正しいような錯覚を受ける。そして、6か月に1か月程度の割合で、為替レートは「理論値」に近い値を取る。しかしそれは、あくまでも「運」の世界だ。為替レートの変動幅を考えれば、全く当たらない予想を発表する方が難しい。


日本銀行は今すぐにでも「実質為替レート」などと言う不可解な基準を捨てて、円高が進む名目為替レートへの対策をとるべきだ。

財政破綻後の世界・円安になるのか?

2010年08月16日 23時41分36秒 | Weblog
日本が財政破たんしたらどうなるのか、考察したいと思う。

2010年1月に書いておいたアイディアを元にする。
(http://blog.goo.ne.jp/fu-chine/e/8fb554441404f6089fcf54588bd27934)


第二次世界大戦直後のドイツ・マルク、1990年代のロシア危機、アジア通貨危機、アルゼンチンの債務不履行から、2010年のギリシャ・ショックまで、政府が債務不履行に陥る(もしくは陥る不安が高まる)と、その国の通貨価値は下落するのが通例である。

これは、信用不安から、債務不履行に陥った国から流出する資金量が、流入する資金量を大幅に上回るためである。外国人投資家が対象の国債の大部分を所有している場合、デフォルトで投資資金が大量に流出するために、通貨安につながる。


命題・・・では、日本が債務不履行に陥る場合はどうなるのだろう。

日本の場合は、国債の所有者の大部分は日本人・日本企業である。デフォルトが起きても流出する資金量は大した割合にはならない。一方、デフォルトで債券の価格は下落し、名目金利は上昇する。このため、ジャンク・ボンドを対象とした投資資金が流入してくることが考えられる。その結果として円高となることが考えられる。

過去に債務不履行を起こした国の多くは「国際収支(特に貿易収支)が赤字」であり、恒常的に資金の流出が起きていた。デフォルトによって資金の流動性が低下するだけで、通貨安になる下地があったのである。日本の場合は、国際収支は黒字で、貿易収支も黒字である。恒常的に資金の流入があるので、資金の流動性が低下すれば、円高につながる可能性方が高い。

そして、デフォルトから信用不安が起き、国内市場でのリスク資金量が低下すれば、国内の個人投資家が円高に反応して円売りのポジションを取るのも難しくなる。一方、外国人投資家が高金利での運用を狙って日本市場の資金を投入してくれば円高につながる。

通貨安を急進を防止するためには外貨準備を積み上げる必要があるが、通貨の急騰を防止する手段は少ない。日本の外貨準備高は、日本の純輸入額の2年分もあるため、日本円の急落への準備は万端である。デフォルトで資金の流出が起きたとしても、2年間は全く問題がない。また2年後には貿易黒字から積み上がる「新しい外貨準備」が日本円の価値を下支えする。

一方、国債・公債の残高は900兆円を超えており、日本のGDPの約1.8倍である。10分の1がデフォルトを起こすとしても、海外から90兆円もの資金が流入してくる。この場合、日本政府が取れる手段は少ない。$1が85円台まで進んだ今も日本政府は「見透かされた口先介入」しかできないでいる。例え$1=65円になったとしても、取れる手段は限られているだろう。

自国通貨を割安に抑えるために中国政府は「多額の元売り市場介入」を行っている。異常な円高が進んだ場合、日本政府が多額の日本円を市場で売却することも考えられる。この場合、国内に不必要な資金が過剰に供給されることになり、悪性のインフレが引き起こされる可能性がある。

元売り介入を行っている中国のインフレ率は低くても3%だ。経済成長率が10%を超えているため、8%、9%のインフレ率になっても中国経済には問題が無い。市場介入の結果得られる経済成長率が、起こりうるインフレ率よりも高いのであれば、通貨売りの市場介入を実施しても良いのである。

日本の場合、経済成長率が高くても2%前後にとどまる。3%のインフレが起きるだけでも国民生活には大打撃である。また市場介入を実施しても、日本円を相対的な円安水準まで引き下げられる可能性は低い。市場介入をしたところで、異常な円高水準を通常の水準に引き戻す程度である。これでは、輸出企業は勢いを取り戻せないので、高い経済成長率も期待できない。国内で金利が上昇している場合、円売り市場介入はするべきではない。(現状のように、国内金利が低い場合は、積極的に市場介入に乗り出すべきだ)
(http://blog.goo.ne.jp/fu-chine/e/7ac8ec2a14fda418fa66e945c02bbdb3)

結論・・・日本政府がデフォルトを起こした場合、円高につながる可能性が高い。過去にデフォルトを起こした国が通貨安を防止できなかったように、日本政府も円高を防止する手段を持たない。


たとえデフォルトが起きないとしても、財政が悪化するに従って、長・短期資金の金利は上昇して行くだろう。それに従って、リスク資金が日本市場に流入し始め、円高が進んでいくことが考えられる。結果として、輸出企業は国内で製造する採算性悪化を嫌い、製造拠点を海外に移し始めるはずだ。将来的に貿易収支は赤字化する。

その時に必要になるのは、経常収支の黒字を維持してくれる企業だ。日本円高を生かし、日本円を海外の成長事業・高収益事業に積極的に投資して、高い資本コストを上回る収益率を確保する企業が日本には求められている。

世界第2位の経済大国だったのに・・・

2010年08月16日 14時55分19秒 | Weblog
8月16日・8時50分に4月~6月のGDP成長率の速報値が発表されました。年率換算で約0.4%のプラス成長でした。マイナスじゃないってことは、日本の景気は回復している、ってことです。よかった、よかった。笑

同じ時期の中国の経済成長率は約10%でした。と言うわけで、これからは中国が「世界第2位の経済大国」です。抜かれました。

公式に、日本は「世界第3位の経済大国」です。

10月ぐらいまでは抜かれないと思われていたんですが、予想よりちょっとだけ早く追い越さされました。

ちなみに、日本と中国のGDPは米$換算で比較されています。なので、円高の日本のGDPは過剰評価されていて、中国元安のGDPは過小評価されています。それにもかかわらず、中国に抜かれたということは、実質的な経済規模は中国の方がかなり大きいということです。今のところ、$1は約85円で約7元です。これがもし、$1=100円=5元とかになれば、米$換算でGDPは約60%変わってきます。

為替の関係で、今月の日本と中国の経済規模は「ほぼ同じ」規模に見えますが、実質的な経済規模は中国の方が60%も大きいです。今後、この差がドンドン明確になって行くと思います。

日本の0.4%の成長率に対して、中国は10%の成長率なんだから、徒歩で歩いている人が、自動車に抜かれるようなものです。2020年までには、中国の経済規模は日本の2倍になります。
中国は、人口が日本の10倍で、面積は日本の23倍あります。中国の経済規模が日本より大きいのは当たり前の話です。


歴史の話をすると、日本は1976年(?)に当時の西ドイツを抜いてから、34年間、世界第二位の経済大国でした。ちなみに、1990年代の一時期は、「1人当たりのGDP」が世界一位だった時代もあります。日本人が世界で最も金持だった時代です。
「偉大なる過去の栄光」ですね。

前にも書きましたが、「1人当たりのGDP」だと、今の日本は世界12位ぐらいです。


1980年代には、慢性的な不景気の表現として「British disease(英国病)」って言葉がありました。

「日本病」って言葉はまだ出てきてないけど、日本も構造的な不景気に陥ってますね。日本は経済政策に「失敗した国」の代表として欧米のメディアに登場します。

金融恐慌が起きた震源地がアメリカにもかかわらず、バーナンキFRB議長は「政策を誤ると、日本のようになる恐れがある。」って発言してます。個人的には「お前らに言われたくねぇよ。」って思ってます。

15年ぐらい前までだと「日本のようになる」って言うと「豊かになる」って意味だった気がするんだけどね。21世紀に入って、「日本のようになる」ってのが「慢性的な不景気状態」を意味するようになるとは。。。時代は変わりますね。



テレビとかパソコンを買う時に、「もう少し待って安くなってから買おう」って思ったことはありませんか? それが「日本病」の症状です。

安くないと売れないので、安売りをする。
買い控えをするので、売上が伸びない。

企業の利益が減る。新しく工場を建てる計画を中止する。投資を控える。

仕事が減る。給料が減る。

可処分所得が減る。

って悪循環になることです。デフレ・スパイラルです。

実は、日本人の貯蓄率は既に「マイナス」になってます。主な原因は、引退後の高齢者が貯金を崩しながら生活しているからですが、「日本人全体」としても、収入以上のお金を使って生活している。と言う事実には変わりがありません。

そして、日本企業にはお金が余っていますが、日本企業は日本国内ではお金を使いません。それは、日本国内でお金を使っても利益につながらないからです。

例えば、日産自動車は日本で販売する自動車をタイの工場で作っています。タイの工場で作れば、コストを抑えられる上に、中国・東南アジアに輸出するときに有利になります。
日本に工場を作ってくれれば、工場建設で潤う企業も出てくるし、工場で働く人の分だけ個人消費が増えます。が、そんなことも言ってられません。
日本国内に工場を建てて、収益が悪化して、倒産して、本社・東京で働く人達も失業する。よりかは、工場だけは海外に移して日本に本社機能を残してもらった方が、まだマシ。と言うことで。

人口が1億2000万人の日本国内だと、どれだけ頑張っても、自動車は年間で約300万台しか売れません。
一方で、人口13億人の中国だと、2009年は自動車が1000万台売れていて、2010年には1100万台ぐらい売れそうです。人口が10倍なので、将来的には年間3000万台は売れるようになるでしょう。

日本に本社を置いて、日本車を中国に輸出するよりも、中国に本社を置いて、中国で製造した車を日本に逆輸入する方が理にかなっているような気がします。




さて、俺はどうしようかなぁ~?
どこに住んで、何を仕事にしようかな?

円売り・為替介入を実施せよ。

2010年08月13日 23時23分00秒 | Weblog
このブログで、2010年1月9日にも詳しく書かせてもらった。

急激に円高が進む局面で、日本政府が円売り介入に踏み切れない理由が分からない。

FRBの金融緩和の影響で、金利差は縮小しているとはいえ、

日本国債・10年債の金利が0.98%
米国国債・10年債の金利が2.75%

で、金利差は未だに2%近くある。
10年債だから、満期まで保有すれば、約20%の金利格差があるようなものである。

つまり、日本政府は国債を発行して資金を確保し、米国債に投資するだけで投資額の20%が純収入として期待できるのである。

$1=85円で円売り介入を行って、10年後も$1=85円だとすれば、20%の利益である。

もし、10年後の為替が$1=100円だとすれば、為替差益が約17%もでる。その上に、金利収入が20%だから、複利計算で約40%が純利益になる。もし、10兆円の介入を行うとすれば、将来的に4兆円が純収益として手元に残る計算になる。2009年度の税収が約40兆円だったことを考えれば、約10%分である。もちろん、介入額が20兆円なら、純収益は8兆円である。そして、円安が進み$1=110円に進めば、収益は約55%に膨らむ。

逆に円高に歯止めが効かなかったとしても、金利収入が20%も期待できるのであれば、為替差損を相殺できる。$1=85円よりも10年間で20%円高が進むと言うことは、2020年には$1=70円になっていると言うことである。(金利差が縮小しているので、前回の計算より$が安くなっている)
 言い換えるならば、$1=70円を超えて円高が進むことが無ければ、日本政府は為替介入から利益を確保することが出来ると言うことである。


2020年に$1=70円を超えて円高が進んでいる可能性があるのか?
日本経済の健康状態を見れば、円高が10年以上にわたって続き、$1=70円よりも円高が進む可能性は想像できない。


結論として、

①日本政府は国債を発行して米国債を購入することで、長期的に金利差益を確保できる。
②現状は異常な円高が進んでおり、「円売り」をすることで、将来的に売買差益を期待できる。
③日本政府が「円売り」を進めることで、円高基調が是正される可能性が高い。
④円安に進むことで、日本経済が国際競争力を回復させる。そして、経済成長が加速される可能性がある。

それにもかかわらず、日本政府が、管首相が円売りの市場介入に手を出さない理由が分からない。


「経済を理解できる政治家はいない」って言うからね。