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財政破綻後の世界・円安になるのか?

2010年08月16日 23時41分36秒 | Weblog
日本が財政破たんしたらどうなるのか、考察したいと思う。

2010年1月に書いておいたアイディアを元にする。
(http://blog.goo.ne.jp/fu-chine/e/8fb554441404f6089fcf54588bd27934)


第二次世界大戦直後のドイツ・マルク、1990年代のロシア危機、アジア通貨危機、アルゼンチンの債務不履行から、2010年のギリシャ・ショックまで、政府が債務不履行に陥る(もしくは陥る不安が高まる)と、その国の通貨価値は下落するのが通例である。

これは、信用不安から、債務不履行に陥った国から流出する資金量が、流入する資金量を大幅に上回るためである。外国人投資家が対象の国債の大部分を所有している場合、デフォルトで投資資金が大量に流出するために、通貨安につながる。


命題・・・では、日本が債務不履行に陥る場合はどうなるのだろう。

日本の場合は、国債の所有者の大部分は日本人・日本企業である。デフォルトが起きても流出する資金量は大した割合にはならない。一方、デフォルトで債券の価格は下落し、名目金利は上昇する。このため、ジャンク・ボンドを対象とした投資資金が流入してくることが考えられる。その結果として円高となることが考えられる。

過去に債務不履行を起こした国の多くは「国際収支(特に貿易収支)が赤字」であり、恒常的に資金の流出が起きていた。デフォルトによって資金の流動性が低下するだけで、通貨安になる下地があったのである。日本の場合は、国際収支は黒字で、貿易収支も黒字である。恒常的に資金の流入があるので、資金の流動性が低下すれば、円高につながる可能性方が高い。

そして、デフォルトから信用不安が起き、国内市場でのリスク資金量が低下すれば、国内の個人投資家が円高に反応して円売りのポジションを取るのも難しくなる。一方、外国人投資家が高金利での運用を狙って日本市場の資金を投入してくれば円高につながる。

通貨安を急進を防止するためには外貨準備を積み上げる必要があるが、通貨の急騰を防止する手段は少ない。日本の外貨準備高は、日本の純輸入額の2年分もあるため、日本円の急落への準備は万端である。デフォルトで資金の流出が起きたとしても、2年間は全く問題がない。また2年後には貿易黒字から積み上がる「新しい外貨準備」が日本円の価値を下支えする。

一方、国債・公債の残高は900兆円を超えており、日本のGDPの約1.8倍である。10分の1がデフォルトを起こすとしても、海外から90兆円もの資金が流入してくる。この場合、日本政府が取れる手段は少ない。$1が85円台まで進んだ今も日本政府は「見透かされた口先介入」しかできないでいる。例え$1=65円になったとしても、取れる手段は限られているだろう。

自国通貨を割安に抑えるために中国政府は「多額の元売り市場介入」を行っている。異常な円高が進んだ場合、日本政府が多額の日本円を市場で売却することも考えられる。この場合、国内に不必要な資金が過剰に供給されることになり、悪性のインフレが引き起こされる可能性がある。

元売り介入を行っている中国のインフレ率は低くても3%だ。経済成長率が10%を超えているため、8%、9%のインフレ率になっても中国経済には問題が無い。市場介入の結果得られる経済成長率が、起こりうるインフレ率よりも高いのであれば、通貨売りの市場介入を実施しても良いのである。

日本の場合、経済成長率が高くても2%前後にとどまる。3%のインフレが起きるだけでも国民生活には大打撃である。また市場介入を実施しても、日本円を相対的な円安水準まで引き下げられる可能性は低い。市場介入をしたところで、異常な円高水準を通常の水準に引き戻す程度である。これでは、輸出企業は勢いを取り戻せないので、高い経済成長率も期待できない。国内で金利が上昇している場合、円売り市場介入はするべきではない。(現状のように、国内金利が低い場合は、積極的に市場介入に乗り出すべきだ)
(http://blog.goo.ne.jp/fu-chine/e/7ac8ec2a14fda418fa66e945c02bbdb3)

結論・・・日本政府がデフォルトを起こした場合、円高につながる可能性が高い。過去にデフォルトを起こした国が通貨安を防止できなかったように、日本政府も円高を防止する手段を持たない。


たとえデフォルトが起きないとしても、財政が悪化するに従って、長・短期資金の金利は上昇して行くだろう。それに従って、リスク資金が日本市場に流入し始め、円高が進んでいくことが考えられる。結果として、輸出企業は国内で製造する採算性悪化を嫌い、製造拠点を海外に移し始めるはずだ。将来的に貿易収支は赤字化する。

その時に必要になるのは、経常収支の黒字を維持してくれる企業だ。日本円高を生かし、日本円を海外の成長事業・高収益事業に積極的に投資して、高い資本コストを上回る収益率を確保する企業が日本には求められている。

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