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ビッグマック理論

2010年08月24日 11時43分16秒 | Weblog
ビックマック理論って言うのは、外国為替レートの理論値の1つである。「モノの値段はどこでも同じになるはずだ」との思い+経済学者の冗談からできている。

ビックマック理論では、マクドナルドの「ビックマック」の値段を間に挟み込むことで、為替レートの理論値を出す。
例えば、
アメリカではビックマックが3.75ドルで売られていて、
日本では、320円で売られている場合、
$3.75=ビッグマック = 320円
と言うことで、
$3.75=320円で、
$1=85.3円になる。

これが意外と、今日(8月24日)の実際の為替レートに近い。($1=85円ちょうど)

日本マクドナルドは、期間限定でビックマックの値段を200円にする、と言っているので、その場合の理論値は、$3.75=200円で、
$1=約53円になる。

かと言って、$1=53円台まで円高が進むと考える人はいないだろう。


実はこのビックマック理論、成り立たないことが知られている。
為替は変動が大きいので、一時的に理論値と実際の値が同じになることはあるが、長い期間を通して見ると、一致しない期間の方が圧倒的に長い。
マクドナルド一社の1つの商品だけに注目しているだけでは、為替レートの予測はできない。ビッグマック理論を発表した当事者も本気で成り立つとは思ってもいない。あくまでも「冗談」の世界の話だ。



話を少し大きくする。
ビックマックの値段と無関係に為替レートが決まるように、物価上昇率と為替レートには、全く相関関係が無い。

インフレ=通貨価値の下落=円安
デフレ=通貨価値の上昇=円高

って公式は成り立たない。と言うか存在しない。
日本銀行が名目為替レートの他に、貿易額で加重平均してインフレ率を考慮に入れた「実質為替レート」なるものを発表しているが意味が無い。

実質レートを計算して出しても「実質レートには意味が無い」ことを証明することしかできない。


ブレトンウッズ体制が崩壊して、ニクソン・ショックが起きて、変動相場制に移行してから、日本円は一方的に円高に進んできた。1970年代~80年代を通して、日本のインフレ率はアメリカのインフレ率を上回っていたわけだから、物価上昇率が為替レートに影響を与えるとすれば、「円安」になっているべきである。
2000年代に入ってからのアメリカのインフレ率・日本のデフレだけ考慮して、「円高は仕方ない」と言う考えは間違っている。


結論:インフレ率は為替レートに全く影響を与えない。

もしインフレ率が為替に影響を与えるとすれば、年間のインフレ率が10%を超えている中国の元は、インフレ率が3%未満のアメリカ・ドルに対して下落するはずだ。だが現実には、中国元は米$に対して上昇しようとしている。つまり、インフレ率は為替レートに影響を与えない。


「実質為替レート」は計算して出すことが出来るが、あくまで「机上の空論」であって、現実には存在しない。大学の学生が研究に使うのは良いが、日本銀行が現実の政策を動かすのに、「実質為替レート」を参考にするとなると問題がある。


例えば、
サイコロを振る前に「出る目」を予想したとする。どれだけ複雑な理論を使って予想したとして、当たる確率は1/6だ。つまり、6回に一回はあたる。全ては運だ。理論が正しかろうと間違っていようと、6回に1回は当る。

「実質為替レート」の話もそれに近い。理論的に複雑で、正しいような錯覚を受ける。そして、6か月に1か月程度の割合で、為替レートは「理論値」に近い値を取る。しかしそれは、あくまでも「運」の世界だ。為替レートの変動幅を考えれば、全く当たらない予想を発表する方が難しい。


日本銀行は今すぐにでも「実質為替レート」などと言う不可解な基準を捨てて、円高が進む名目為替レートへの対策をとるべきだ。

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