道楽ねずみ

ドイツに関するものを中心に美術展,オペラ,映画等の趣味の世界を紹介します。

Ariadne auf Naxos(新国立劇場オペラ研修所)

2014年03月01日 | オペラ道楽
お招きにあずかり、2月28日に新国立劇場オペラ研修所の「ナクソス島のアリアドネ」を見に行きました。
リヒャルト・シュトラウス作曲、フーゴー・フォン・ホフマンスタール台本によるこのオペラは最初モリエールの「町人貴族」の劇中劇として書かれたものを改訂したものということです。

この演目は12年前にも同じく新国立劇場で見たことがありますが、今回は正規のメンバーではなく、新国立劇場オペラ研修所の14期生から16期生の出演するオペラです。
性質からして、本来のオペラを楽しむというよりも応援する気持ちで出かけたのですが、なかなか立派なオペラでありまして、とても素直に感動することができました。

ツェルビネッタ、執事長などの演目は研修生ではなく、既に活躍している歌手ですが、大半の歌手は研修生たちです。ツェルビネッタ役の歌手はとても素晴らしく、それ以外の歌手も大活躍です。テレビ・ドイツ語講座によく出演していたヨズア・バーチュさんが執事長の役で、やや過剰な発音のドイツ語と歌を披露していました。
歌手達のキャリア不足を補おうとするためもあるのでしょうか、オケも良かったです。「ナクソス島のアリアドネ」は小編成のオケで演奏されると聞いていましたが、なかなか迫力のある音楽でした。また、演出も多くの登場人物に同時並行的にいろいろな芸をさせるなど、凝っていてなかなか楽しむことができました。特に最後の場面で、再び劇中劇(オペラ中オペラ)に戻りまして、パートナーを見つけるのが、アリアドネだけではないという演出はとても面白く思えました。
オペラ研修所のオペラとは思えないほど、本格的でよいオペラを楽しむことができました。




新国立劇場のパンフレットから転載します。

(引用初め)

あらすじ
〈プロローグ・舞台裏〉(注・実質第1幕)富豪の邸宅では祝宴の準備中。主人の命により新作の悲劇オペラ「ナクソス島のアリアドネ」が上演されることになっていたが、きまぐれな主人の好みでオペラの後に陽気な歌芝居を追加せよとの司令が下り、音楽教師、作曲家や歌手たちは困惑、一方の舞踊教師と女優ツェルビネッタは大喜び。混乱の中で、主人は悲劇と喜劇を合体させて上演するように、と命ずる。
〈オペラ・ナクソス島のアリアドネ〉(注・実質第2幕)夫テーセウスに捨てられ、嘆き悲しむアリアドネ。道化師たちの慰めも効き目がない。ツェルビネッタは人生と愛について語り、彼女を慰める。そこへバッカス登場。彼を死神と信じるアリアドネは身を委ねようとするが、バッカスはアリアドネの美しさに魅せられ……

配役
【執事長】ヨズア・バールチュ(全日出演)
【音楽教師】駒田敏章(2/28・3/2)/小林啓倫(3/1)
【作曲家】今野沙知恵(2/28・3/2)/原 璃菜子(3/1)
【テノール歌手(バッカス)】伊藤達人(2/28・3/2)/菅野 敦(3/1)
【士官】菅野 敦(2/28・3/2)/伊藤達人(3/1)
【舞踊教師】日浦眞矩(全日出演)
【かつら師】小林啓倫(2/28・3/2)/駒田敏章(3/1)
【下僕】大塚博章(全日出演)
【ツェルビネッタ】天羽明惠(2/28・3/2)/清野友香莉(3/1)
【プリマドンナ(アリアドネ)】林よう子(2/28・3/2)/飯塚茉莉子(3/1)
【ハルレキン】村松恒矢(全日出演)
【スカラムッチョ】岸浪愛学(全日出演)
【トゥルファルディン】松中哲平(全日出演)
【ブリゲッラ】小堀勇介(全日出演)
劇中劇
【アリアドネ】林よう子(2/28・3/2)/飯塚茉莉子(3/1)
【バッカス】伊藤達人(2/28・3/2)/菅野 敦(3/1)
【ナヤーデ(水の精)】種谷典子(全日出演)
【ドリアーデ(木の精)】藤井麻美(全日出演)
【エコー(やまびこ)】原 璃菜子(2/28・3/2)/今野沙知恵(3/1)
【ツェルビネッタ】天羽明惠(2/28・3/2)/清野友香莉(3/1)

【ハルレキン】村松恒矢(全日出演)
【スカラムッチョ】岸浪愛学(全日出演)
【トゥルファルディン】松中哲平(全日出演)
【ブリゲッラ】小堀勇介(全日出演)
(ここで引用終わり)






以下、また道楽ねずみのどうでもよい余談です。
要するに、テセウスにクレタ島の迷宮から脱出する方法(出口を見失わない方法)を教え、これによって怪物ミノタウロスを倒すのを助けたのに、何故かテセウスにナクソス島に置き去りにされたアリアドネのその後の物語です。アリアドネが、テセウスに見捨てられた悲しみから立ち直り、悲しみを乗り越えて新たにバッカスとの愛に目覚める話が、本体といえば、本体なのですが、その上演に至るドタバタを含めて描かれます。
テセウスといえば、プルタルコスの「対比列伝」でも、ローマのロームルスと対比され、確か冒頭に出てきた人物だったような記憶です(内容はもう思い出せません。思い出そうとして出てきたのはペリクレスのことで、それもペリクレスがschwulだったとかどうでもいいことばかりです。)。

それと、改めてオペラを聞きまして、ZahlungsunfähigkeitとかDas ist Ihre Sache.とかドイツにいたときによく耳にしたドイツ語を聞きました。このオペラは純然たる謳いではなく、台詞の部分も多いので、ドイツ語の勉強にも適しているようです。