本日,5月23日土曜日にドイツの連邦大統領の選挙が実施されます。
連邦大統領選に先だっては,連邦集会(Bundesversammlung)が開催されます。
連邦集会とは,連邦大統領を選出するためだけの特殊な機関です。連邦集会の構成員は,連邦議会の議員と,州議会から比例代表方式によって選出された投票人(連邦議会議員と同数)であります。後者の投票人は政治家に限らず,スポーツ選手,俳優等様々な職業の人がなるようです。連邦集会の議長は,連邦議会議長が務め,連邦集会は討論を経ずに,いきなり無記名投票の選挙をして連邦大統領を選出することになります。選出の結果を踏まえ,新たな連邦大統領は選挙の結果を受諾し,宣誓を行い,正式に就任します。
したがって,現在の連邦議会と州議会の構成を見ていれば,自然と投票の結果は明らかになるはずなのですが,そこは無記名投票という部分があるので,完全に票を読み切ることまではできないところもあるようです。
今回の大統領選挙は,事実上,現大統領ホルスト・ケーラー(元IMF専務理事)とゲズィーネ・シュヴァーン(フランクフルト・オーダーにあるヨーロッパ大学学長)の一騎打ちです。ケーラー氏は,キリスト教民主同盟(CDU)・同社会同盟(CSU)と自由民主党(FDP)の推す候補であり,シュヴァーンは社会民主党(SPD)と緑の党の推す候補です。以前にもブログに書きましたが,このほかに役者のゾダーン氏が,左派勢力の推挙を受けて立候補していますが,泡沫候補に過ぎません。
ケーラー対シュヴァーンの対決は,前回の2004年の選挙の対決の再現です。
ただし,2004年の大統領選当時は連邦政府では,SPDと緑の党が連立政権を組んでおり,CDU/CSUは野党の立場にありました。しかし,その後,2006年の議会の選挙では,CDU/CSUが第1党,SPDが第2党となり,両者が連立政権を組むという結果になっており,大統領選を取り巻く環境も大きく変わっています(SPDが今回,CDU/CSUと連立政権を組んでいるにもかかわらず,独自候補をたてたことには,CDU/CSU,特にCSUの反発は大きく,一時期は連立を解消するとまで言っていました。)。
前回の大統領選では,州議会の比例代表で選ばれたグロリアさんという女性の投票人が,本来CDU/CSU側から選出されたにもかかわらず,女性であるシュヴァーン氏に投票したということがあり,今回もシュヴァーン氏としてはこの俗に「グロリア効果」と呼ばれる造反に期待したいところです。
しかし,今回は逆にSPD側から,ケーラー氏に投票する造反者が出ることが予め見込まれています。
また,今回は左派勢力が独自候補を擁立しているので,シュヴァーン氏はその票も取り込めないことも痛いです。
加えて,選挙直前に生じたシュヴァーン氏の失言問題も大きいです。シュヴァーン氏は旧東独政府について,明確に「不法国家(又は違法国家)」(Unrechtsstaat)と断じなかったことが問題視され,党の内外から非難を浴びています。例えばヘッセン州首相のローラント・コッホ(CDU)などは,いたずらに社会的不安をあおり,旧東独政府を不法国家と断じる勇気のない者は,国家の最高位の職務を遂行する資格はないとまで言っています。今回のこの失言問題で,シュヴァーン氏はますます苦しい立場に立ちそうです(この内容はSueddeutsche Zeitung のHPを参考にして書きました。)。
このまま順当に行けばケーラー氏が大統領に再任されることはほぼ間違いないと思いますが,これからどのようになりますことやら。また,続報を書きます。
写真は連邦集会の開催される連邦議会の議事堂です。
【補遺】
旧東独政府について,どうしてUnrechtsstaat(非常に強い意味です。)とまで言わなければならないのかという感覚は,日本にいるとわかりにくいところです。しかし,SPDのある政治家もシュヴァーンの発言を受けて,旧東独は独裁国家で,不法国家だった,そのことは疑いようがないとコメントして不快感を露わにしています。ドイツでは,ナチズムだけではなく,シュタージを初め旧東独政府の人権弾圧にも極めて厳しい態度をとっています。
このあたりの感覚は,実際にドイツで暮らし,ドイツのメディアにどっぷりとつからないとわかりにくいところかもしれません。
連邦大統領選に先だっては,連邦集会(Bundesversammlung)が開催されます。
連邦集会とは,連邦大統領を選出するためだけの特殊な機関です。連邦集会の構成員は,連邦議会の議員と,州議会から比例代表方式によって選出された投票人(連邦議会議員と同数)であります。後者の投票人は政治家に限らず,スポーツ選手,俳優等様々な職業の人がなるようです。連邦集会の議長は,連邦議会議長が務め,連邦集会は討論を経ずに,いきなり無記名投票の選挙をして連邦大統領を選出することになります。選出の結果を踏まえ,新たな連邦大統領は選挙の結果を受諾し,宣誓を行い,正式に就任します。
したがって,現在の連邦議会と州議会の構成を見ていれば,自然と投票の結果は明らかになるはずなのですが,そこは無記名投票という部分があるので,完全に票を読み切ることまではできないところもあるようです。
今回の大統領選挙は,事実上,現大統領ホルスト・ケーラー(元IMF専務理事)とゲズィーネ・シュヴァーン(フランクフルト・オーダーにあるヨーロッパ大学学長)の一騎打ちです。ケーラー氏は,キリスト教民主同盟(CDU)・同社会同盟(CSU)と自由民主党(FDP)の推す候補であり,シュヴァーンは社会民主党(SPD)と緑の党の推す候補です。以前にもブログに書きましたが,このほかに役者のゾダーン氏が,左派勢力の推挙を受けて立候補していますが,泡沫候補に過ぎません。
ケーラー対シュヴァーンの対決は,前回の2004年の選挙の対決の再現です。
ただし,2004年の大統領選当時は連邦政府では,SPDと緑の党が連立政権を組んでおり,CDU/CSUは野党の立場にありました。しかし,その後,2006年の議会の選挙では,CDU/CSUが第1党,SPDが第2党となり,両者が連立政権を組むという結果になっており,大統領選を取り巻く環境も大きく変わっています(SPDが今回,CDU/CSUと連立政権を組んでいるにもかかわらず,独自候補をたてたことには,CDU/CSU,特にCSUの反発は大きく,一時期は連立を解消するとまで言っていました。)。
前回の大統領選では,州議会の比例代表で選ばれたグロリアさんという女性の投票人が,本来CDU/CSU側から選出されたにもかかわらず,女性であるシュヴァーン氏に投票したということがあり,今回もシュヴァーン氏としてはこの俗に「グロリア効果」と呼ばれる造反に期待したいところです。
しかし,今回は逆にSPD側から,ケーラー氏に投票する造反者が出ることが予め見込まれています。
また,今回は左派勢力が独自候補を擁立しているので,シュヴァーン氏はその票も取り込めないことも痛いです。
加えて,選挙直前に生じたシュヴァーン氏の失言問題も大きいです。シュヴァーン氏は旧東独政府について,明確に「不法国家(又は違法国家)」(Unrechtsstaat)と断じなかったことが問題視され,党の内外から非難を浴びています。例えばヘッセン州首相のローラント・コッホ(CDU)などは,いたずらに社会的不安をあおり,旧東独政府を不法国家と断じる勇気のない者は,国家の最高位の職務を遂行する資格はないとまで言っています。今回のこの失言問題で,シュヴァーン氏はますます苦しい立場に立ちそうです(この内容はSueddeutsche Zeitung のHPを参考にして書きました。)。
このまま順当に行けばケーラー氏が大統領に再任されることはほぼ間違いないと思いますが,これからどのようになりますことやら。また,続報を書きます。
写真は連邦集会の開催される連邦議会の議事堂です。
【補遺】
旧東独政府について,どうしてUnrechtsstaat(非常に強い意味です。)とまで言わなければならないのかという感覚は,日本にいるとわかりにくいところです。しかし,SPDのある政治家もシュヴァーンの発言を受けて,旧東独は独裁国家で,不法国家だった,そのことは疑いようがないとコメントして不快感を露わにしています。ドイツでは,ナチズムだけではなく,シュタージを初め旧東独政府の人権弾圧にも極めて厳しい態度をとっています。
このあたりの感覚は,実際にドイツで暮らし,ドイツのメディアにどっぷりとつからないとわかりにくいところかもしれません。
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