Zooey's Diary

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母性の目覚め「愛する人」

2011年10月10日 | 映画
2009年アメリカ映画。DVDで観賞。
観終わった後、しばらく考え込んでしまいました。
母性の喪失と再生がテーマか。
重いテーマであるし、悲しい結末に息を呑みますが、
それでも非常に爽やかな気持ちに包まれます。

年老いた母親を介護しながら働く51歳のカレン(アネット・ベニング)。

彼女は14歳のとき産んだ娘を、その日のうちに養子に出されたという過去を持ち、
それをした母親を未だに許すことができない。
誰に対しても壁を作り、気難しく、喜びのない人生を送っている。
手放された娘エリザベス(ナオミ・ワッツ)は、優秀な弁護士として自立しているが
誰も信じず、誰も愛さず、恋人はおろか友人すらもいない。

ルーシーは、お節介な母親と愛する夫に恵まれているが
子どもが授からず、養子を望んでいる。

この3人の女性たちが、ふとした折に接点を持つことになる…

先の二人の女性が、頑なに心を閉ざして生きている前半の姿は
観ていて息苦しいほどです。
人の善意を信じないばかりか、それを悪意で跳ね返すのですから。
庭で採れたというトマトを同僚に渡されたカレンは、怒鳴ってそれを突き返し、
笑顔で挨拶してきた隣室の若夫婦をエリザベスは、
”必死でいい人ぶっている偽善者たち”と断罪する。
その隣の夫をベッドに誘い込み、自分が履いていた下着を脱いで
その妊娠中の妻の寝室の引き出しにこっそり忍び込ませたりするのですから
こんな隣人がいたらたまったものではありません。
エリザベスが職場のボスを誘惑する方法は、近年観たこうしたシーンの中では最強だったかも。
知的で上品な女弁護士が、ボスを押し倒し、その上に乗っちゃうのですから…
彼女にとって男は、自身の快楽の手段でしかない。

しかしカレンは、その許せなかった母親の死によって
エリザベスは、思いがけない妊娠によって
頑なに閉じていた心を少しずつ開いていく。
凍った大地が春先に溶け出すように、段々と少しずつ。
それまで拒絶していた周りを受け入れることで
モノクロの世界でしかなかった周りが、優しく明るい世界へと変わってゆく。
そして彼女たちの暖かな母性もようやく目覚めるのです。
血が繋がっていなくても、人種が違っていても
命を育み、それを受け渡していくという豊かな母性が。

丁度スティーブ・ジョブズのスピーチを聞いたばかりで
彼が、生まれる前から養子に出されることが決まっていたり、
産みの母親が、養親の学歴などに条件をつけるなどということに驚いたばかりだったので
(こうしたシーンは「ジュノ」など、アメリカ映画で多々観てきたのですが)
中々タイムリーに観ることができました。
望まない妊娠をした十代の女の子たちが「未婚の母の家」みたいなところに集められて
出産を迎えるシーンや
おなかの子を養子に出すことを望む少女が、次々と養親候補を面接するシーンなど。
無責任な妊娠をしておいて、アンタ何様?と思わないでもありませんでしたが
日本のように、安易な中絶や、トイレに産み落として放置死などという悲しい事件が
頻発するよりはマシなのかもしれない。
それでも、親の顔も知らないで養子に出された子どもたちは
成長する過程において、やはり悩み苦しんだりしない訳にはいかないだろうと思うのです。
いかに養親の愛情に包まれていたとしても…

原題は"mother and child"
「愛する人」http://aisuru-hito.com/index.html
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2 コメント

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私が女の子として生まれていたら・・・ (慕辺未行)
2011-10-11 23:55:08
私は違う人生を送っていました。
違う親の下で違う環境の中で育てられたはずでした。しかし”男”だったので父親が養子に出すのを拒んだそうです。
私は4人兄弟の末っ子、4人目の私は女の子だったら、養女に出す約束をしていたそうです。
これは実際に父から聞いたことですので、間違いありません。この話を聞いて以来、私は父を嫌うようになりました。

この映画は見ていませんが、違う観点から考えても理解できそうな気がします。
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慕辺未行さま (zooey)
2011-10-12 00:23:20
そうだったのですか…
昔は、特に親族間などでは、結構簡単に養子のやり取りがおこなわれていたようですね。
慕辺さんのご家庭のことはわかりませんが
きっと御事情があったのでしょうね。

今は養子を迎えるには、経済状態や家庭の状況など
細かく審査されるようです。
養子に出される子どもの幸せを考えてのことでしょうが
自分が産んだというだけで、ネグレクトや虐待をする親も多いのに
皮肉なものだとも思います。
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