Zooey's Diary

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「ピエタ」水彩画のような物語

2023年07月11日 | 


ピエタとは、イタリア語で「で「あわれみ」とか「なぐさめ」という意味だそうで、ヴァチカン市国のサン・ピエトロ大聖堂には、イエスの遺骸を抱くマリアの、その名の有名な像があります。
18世紀、爛熟期のヴェネツィア。慈善修道院ピエタで育てられた主人公エミーリアを語り手として、修道院の音楽教師でもあった大作曲家ヴィヴァルディの死から始まる物語。
ヴィヴァルディの遺品の楽譜を探して、捨て子としてピエタで育ったエミーリアが、貴族の娘ヴェロニカ、高級娼婦のクラウディアなどと出会い、彼女たちの人生そして自分の人生とも向き合うことになる。


不思議な物語です。
よく言えば、水の都ベネツィアで織りなされる、大人の童話のような美しい物語。
悪く言えば、生活臭がまるでなく、例えばベネツィアのあの水の生臭さ、絡みつく湿度、当時あったであろう熾烈な格差意識などはまるで描かれていない。
水の都は確かに夢のように綺麗でしたが、ちょっと旅行しただけでも不自由な点も多々あったのに、透き通った水彩画のように美しく描かれています。
リアリティを書くばかりが小説ではないのですから、それはそれとして、18世紀のベネツィアを舞台に生き生きと暮らす女性たちの物語を楽しむことができます。
2012年本屋大賞候補第3位。


「クラウディアさんは少し考え、身分や権威など幻だと思っているところかしら、とわたしに訪ねた。それとも、腐りかけたヴェネツィアの匂いを嗅ぎつけているところかしら。だったらここから出て行けばいいものを、わたしはヴェネツィアを離れられない。愛しているから、この街を。その人もきっとそうなのね。この街には、ベネツィアという籠から出られない小鳥がたくさんいる。」


水の上に造られた神秘的な街。
自動車はおろか、自転車もバイクも使えない不便な街。
ヴェネツィアは、温暖化で2100年までに沈んでしまうという説もあるようです。
人類の遺産として、あの美しい水の都はいつまでも存続して欲しいものです。

コメント (6)
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