Zooey's Diary

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扉の向こうに隠された世界「ザ・ホテル」

2014年10月13日 | 


週末の夜に読んだ本の一冊。
伝統と格式を守り続けるロンドンの超高級ホテル「クラリッジ」のホテルマンたちの知られざる
ドラマを描いた「ザ・ホテル」
作家ジェフリー・ロビンソンがそこに五カ月間滞在し、徹底的に取材して書いたといいます。
韓国の大統領訪英、アラブ首長と英国女王陛下との晩餐会などの大きな行事の裏に
どれだけホテルマンたちの努力が隠されていたか、
あるいは無理難題ふっかけるお客たちとの駆け引きの様子が、19章400ページに渡って
冷めた筆致で描かれていて面白い。

ほんの少しご紹介すると
ある客は、ゾウを手配してくれとコンシェルジュに頼んだのだそうです。
「友人たちをゾウに乗せてリージェンツ・パークをひとまわりしたいと思ってね」
「インドゾウでなくては困る。アフリカゾウならいらないから」
コンシェルジュは動物園に電話をして、ゾウを借り出すことが可能であることを確認。
しかし、それで公園を乗り回すには特別な許可が必要であり、
そのためには役所のあちこちで頭を下げて歩き回り、役人の形式主義と闘わなければならないことが
わかって、その顧客はあきらめたのだそうです。

もうひとつ笑えたのは、ホテルの備品を盗む客とホテルとの闘い。
あるテキサス人が一週間の滞在中に、カップとソーサー、コーヒーポットなど
様々なものを盗んでいったのだそうです。

”キャッシャーの前で客に挨拶をすると、総支配人は慎重にちょっとお話があるといった。
彼はなるべく愛想よく、自分の側に間違いもしくは誤解があったら許して頂きたいのだが、
実はこの週のあいだにルームサービスでお届けしたもののうち返ってこないものが沢山あるのだといった。
テキサス人はすかさず守勢を固めた。
「私が盗んだというのかね?」
これは隠し事がある人の典型的な反応だった。
「いえ、お客様。ただ、お客様が何かご存知ではないか、お伺いしているだけでございます」
「私が盗んだなど、言わない方が身のためだ」
「わかりました」
男が嘘をついておることに自信を深め、総支配人はこれ以上議論を続ける意味はないと判断した。
「きっと何かの間違いだったのでしょう。お気を悪くされたら、お詫び申し上げます」”

さて、名門ホテルの総支配人はこの客についてどう対処したか?
ポーターに、その客のカバンを、階段の上から投げ落とすように命じたのだそうです。
”帰国後、陶磁器ががらくたになっているのを見て、テキサス人はどんな顔をしただろうか?
だれも知らない。”

一泊十万円からという高級ホテルの裏側事情は、紹介したらキリがないほどあって
中々興味深いものでした。
金持ちであっても(或は金持ちだからこそか)、色々な習癖の人がいるものですね。
ちなみにこの本の中に一人だけ、日本人客も登場します。
ロンドン、メイフェア地区にあるこの五つ星ホテルの前を、私も通りました。
分不相応という気がしたので前回は寄りませんでしたが
いつかここでせめて、ランチやアフタヌーン・ティなどしてみたいものです。


ホテルク・ラリッジ (Claridge's)

コメント (10)
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