アメリカの奴隷制度が存在していた時代のある女性が書いたノンフィクション。
克明に描かれる奴隷である黒人女性の境遇に、自分が奴隷制度のことを知らないのだと実感した。
当時、主人に買われた奴隷たちは市場のようなところで競売にかけられる。女性が生んだ子どもはその主人の持ち物になる。まさに家畜。
家畜と違うのは女性は時に主人の性の対象となること。それも不道徳な。町には肌の色がまちまちの奴隷がいた。父親である主人は、奴隷に婚外子を産ませても咎められない。
リンダという少女は主人の性的虐待から免れるために別の白人の子どもを宿す。それでも、この主人は執拗に彼女の人生を追いかける。
彼女と二人の子どもは自由を手に入れることができるのか。
この作品は作者の手によって奴隷解放運動の中で出版されたものの克明な記録がかえってフィクションに思われており、実話と証明されたのは1986年のこと。そこからこの本はベストセラーになった。
主人公リンダは、白人の愛人となり子どもを産んだが結婚することもなく、またことさら助けられることもない。周囲の人の助けと冷静な判断、粘り強く時を待つことにより道を拓いていく。
実際の奴隷制度について知ることだけでなく人としての尊厳とはということにも考えさせられた。