四川料理の本場、成都のレストランへ向かう。
成都を訪問した先達に言わせると、「たーさん、成都は大変だ。朝から晩まで舌がしびれっ放しだ。おまけにトイレに行くのも一苦労だった。」という、本場の四川料理。
そうは言っても、僕もあちらこちらに行っていて、湖南省も相当に辛いし、重慶の料理もなかなか大したもんだ。そこまでは辛くあるまい、とたかをくくっていたのだが・・・・・
例によって、料理は手早くXが頼んでくれたので、こちらはまずはビールで乾杯だ。
すでにテーブルにはビールと四川の酸っぱ辛い漬物、四川泡菜が運ばれている。
「たーさん、今日はようこそ成都へ。お互いのビジネスの成功を祈って、 かんぺーい。」
Xも僕の嗜好はよく知っていて、給仕の女の子に「ねぎと香菜は別の器でもってこい。」と注文してくれた。
僕は、ねぎ・せり、三つ葉、香菜、紫蘇、ピーマンなどの香りの強い野菜は全く食べられないので、どこに行っても、この食癖のおかげですぐに覚えてもらえる。
或るとき、チャーハンにねぎが入ってしまっていたので、箸で器用にひとつひとつ除けていたら、「芸術的だ!」といわれたこともあるほどで、兎に角、徹底的に食べられない。
ほどなく運ばれてくる本場の四川料理の数々。
うわあ、こりゃ全部唐辛子色だ。 おお、これは重慶では有名な料理だ。豚肉を豆板醤とラー油で調理した奴だ。うんうん、マーボ豆腐は勿論定番だよね。ありゃあ、こいつは鍋だが、油が浮いている。しかもコリャよく見たらラー油そのものじゃあないか。
すでに見ただけで、喉の奥がひりついてくる。
「X、上海生まれの上海育ちのXにはこれは辛いんじゃないの?」
「最初の頃は閉口したけど、今はもうすっかりなれてしまって、逆に上海料理が甘くてしようがないですよ。」
「やっぱり、馴れなのかねえ・・・・」
「いただきまーす。」
「くー!これは辛い!」
唐辛子の鮮度も関係するのかもしれないけれど、熱いのと、辛いのと、痺れるので、ビールが進む、進む。
下手にお茶を飲むと舌が洗われるので、余計に辛さが舌に染み込む。 兎に角、ビールだ。
何せ、魚の煮込みなんざあ、ラー油の膜のうえに、唐辛子が丸で浮かんでいるので、煮込めば煮込むほどラー油の濃度が濃くなっていく仕掛けだ。
僕のお気に入りの料理は鶏肉と唐辛子を高温の油で一緒に揚げたやつ。こいつはうまい。
これだけ、辛いと上海蟹を食べているときと同じで、全員寡黙になってしまう。一生懸命食べていないと、油断すると相当辛いものまで一緒に食べてしまって、強烈に辛い。
さすがのXも汗をかきかき、料理と格闘している。
孔明先生の頃には、四川料理は辛くなかったはずだけれども、当時の料理はどんなものだったのか?
誰に聞いても、「いや、四川料理はこういうのです。」という答えが返ってくるので、よどの四川人には唐辛子のアレンジが風土にしっくりきたに違いない。
重慶あたりでは夏場は相当に暑いので、こんな料理を食べて汗をかいて涼をとったのであろうか?
ひととおり、食事も終わってマイタンとなるが、ここでもXは払わせてくれない。
つづく。
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成都を訪問した先達に言わせると、「たーさん、成都は大変だ。朝から晩まで舌がしびれっ放しだ。おまけにトイレに行くのも一苦労だった。」という、本場の四川料理。
そうは言っても、僕もあちらこちらに行っていて、湖南省も相当に辛いし、重慶の料理もなかなか大したもんだ。そこまでは辛くあるまい、とたかをくくっていたのだが・・・・・
例によって、料理は手早くXが頼んでくれたので、こちらはまずはビールで乾杯だ。
すでにテーブルにはビールと四川の酸っぱ辛い漬物、四川泡菜が運ばれている。
「たーさん、今日はようこそ成都へ。お互いのビジネスの成功を祈って、 かんぺーい。」
Xも僕の嗜好はよく知っていて、給仕の女の子に「ねぎと香菜は別の器でもってこい。」と注文してくれた。
僕は、ねぎ・せり、三つ葉、香菜、紫蘇、ピーマンなどの香りの強い野菜は全く食べられないので、どこに行っても、この食癖のおかげですぐに覚えてもらえる。
或るとき、チャーハンにねぎが入ってしまっていたので、箸で器用にひとつひとつ除けていたら、「芸術的だ!」といわれたこともあるほどで、兎に角、徹底的に食べられない。
ほどなく運ばれてくる本場の四川料理の数々。
うわあ、こりゃ全部唐辛子色だ。 おお、これは重慶では有名な料理だ。豚肉を豆板醤とラー油で調理した奴だ。うんうん、マーボ豆腐は勿論定番だよね。ありゃあ、こいつは鍋だが、油が浮いている。しかもコリャよく見たらラー油そのものじゃあないか。
すでに見ただけで、喉の奥がひりついてくる。
「X、上海生まれの上海育ちのXにはこれは辛いんじゃないの?」
「最初の頃は閉口したけど、今はもうすっかりなれてしまって、逆に上海料理が甘くてしようがないですよ。」
「やっぱり、馴れなのかねえ・・・・」
「いただきまーす。」
「くー!これは辛い!」
唐辛子の鮮度も関係するのかもしれないけれど、熱いのと、辛いのと、痺れるので、ビールが進む、進む。
下手にお茶を飲むと舌が洗われるので、余計に辛さが舌に染み込む。 兎に角、ビールだ。
何せ、魚の煮込みなんざあ、ラー油の膜のうえに、唐辛子が丸で浮かんでいるので、煮込めば煮込むほどラー油の濃度が濃くなっていく仕掛けだ。
僕のお気に入りの料理は鶏肉と唐辛子を高温の油で一緒に揚げたやつ。こいつはうまい。
これだけ、辛いと上海蟹を食べているときと同じで、全員寡黙になってしまう。一生懸命食べていないと、油断すると相当辛いものまで一緒に食べてしまって、強烈に辛い。
さすがのXも汗をかきかき、料理と格闘している。
孔明先生の頃には、四川料理は辛くなかったはずだけれども、当時の料理はどんなものだったのか?
誰に聞いても、「いや、四川料理はこういうのです。」という答えが返ってくるので、よどの四川人には唐辛子のアレンジが風土にしっくりきたに違いない。
重慶あたりでは夏場は相当に暑いので、こんな料理を食べて汗をかいて涼をとったのであろうか?
ひととおり、食事も終わってマイタンとなるが、ここでもXは払わせてくれない。
つづく。
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