Xは彼の才覚ひとつでここまでやって来ている。
大学を出ているわけではないが、頭の回転は非常に速いし、なにより商売の感覚がスピード感にあふれていて
倫理感もあるので、信頼できる男だ。
しかし、遊び方というと以外の古風で田舎のお大人風の遊び方だ。
小姐が伝票も持ってくるが、Xは手元においたまま一向に払う気配がない。
「こちらで払うからいいよ。」とは言ってみたものの、答えはわかりきっている。
「たーさん、成都は僕の縄張り。駄目ですよ。今、金を持ってこさせているので、もうちょっと待ってください。
「持ってこさせる?」
「ええ、次の場所に行くにも持ち合わせがいるでしょ。」
「や、今日はもう寝ようと思っていたんだけど・・・・」
「それや、無理な相談です。付き合ってもらいますよ。成都は面白いんだ。」
「・・・・・・・」
程なくして、素晴らしい美人が到着。Xの横に座った。
「ニンハオ。私はYといいます。よろしくね。」
背は小さいけれど、均整の取れた体つき、センスもいいし、どうも漢民族には見えないところを見ると、この辺に多い小数民族の出身だろうか?とにかくすごい美人だ。
その美人がバッグが取り出したのは、50元札の帯つき二つと、10元札の帯つき。
50元札の帯つきから何枚かを抜き取ると、先ほどの伝票と一緒に小姐に渡す。
もうひとつは彼女に預け、残ったひとつはズボンの後ろポケットに無造作に押し込みつつ、10元札の帯つきをこちらによこして、「たーさん、これはチップに使いますからもっててください。」
「なぬーー!チップに?」
「さあ、たーさんが成都に来たら、ぜひここに連れて行きたいところがあったので、そこに行きましょう。」
銭を持ってきた美人に何事か耳打ちし、先に行かせたXはあくまで上機嫌だ。
上海で仕事をしている、厳しい彼しか見ていなかったが、こんな隙だらけの笑顔をしているのを見るのは初めてだ。
「行くって、どこへ行くんだい?」
「ディスコですよ、ディスコ。」
「へっ?ディスコ?」
学生時代ならいざしらず、ディスコとは・・・・
しかし、この杞憂は現地に到着してみると、吹っ飛んでしまった。
システムというか、このディスコの仕組みは、入場料は男性30元、女性は無料。香港と同じく、ビールはダースがケースで頼む。
まあ、ここまではどこにでもあるディスコ。
しかし、ここからが違っていた。僕らはガラス張りのVIP席に入ったのだが、テーブルに所狭しと酒やつまみが並んだところで、くだんの美人がドアを開けて回りを見渡していると。何だかぞろぞろと女の子たちが集まってくる。
この頃、成都ではドラッグが流行っていたので、ちょっとふらふらしている子もいる。
美人さんが、何か言いながらどうも選んでいるようだ。パスした女の子だけが中に入ってくる。
この女の子たちはロハで入場したものの、酒は高いので頼めない子たちで、大盤振舞いしているところに寄ってきてはお話をしながら、酒をねだるのだった。実はそれだけでなく、殆どが無職や、学生なので、夜のお供もして、趣味と実益を兼ねてアルバイトしているのだ、という。
それでも、集まってきた女の子たちは、さすがにディスコで遊んでいるだけあって、格好も垢抜けているし、話している内容は最新の話題だ。
性に対してあまり、タブーがないというのか(この辺が中国国内でもスパイシーと言われる所以かもしれない。)
どうも馴染めない部分ではある。
つづく。
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