中国編 No.274の続きです。
(書きためておいたUSBが壊れてしまい、遅くなってしまいました。)
走り出すベンツ。
ベンツは危ないからやめたほうが良いと言っても、自分で運転することをやめない老板。
誘拐される心配をしなきゃいけない、こちらの気持ちも考えてもらいたい。
老板とあっし、おねいさんとこっちの彼女と縦にそれぞれが喋っているので、そのうるさいこと、うるさいこと。
どうやら、おねいさんは彼女に一度カラオケに遊びに来いみたいなことを言っている。
「おねいさん、スカウトしないでよ。」
「あら、聞こえた?だって、可愛いんだもの。人気でるわよー。」
「や、どうもそっちのほうはご担当しないということで、働いてるらしいから。」
「若いうちよー。思いきっちゃえば?」
「おおい、やめとけよ。」と老板。
その道のプロであるママさんにスカウトされた本人といえば、顔を真っ赤にしている。
ごちゃごちゃ言っているうちに、お店がある通りの角に到着。
「ありがとうございます。」
「おお、なるべく早く返すからね。」
「行ける時間になったら、電話するから。」
「じゃあ。」
彼女の見送りを受けながら、もうひと走り。
このあたりではなじみの大きな通りを反対側まで行って、2ブロックも行くと、そのママさんがいるカラオケはあった。まだ外は薄明るいので、夜はケバい照明で彩られているこの地域では一番というカラオケも間の抜けた見せ物小屋のようだ。
「じゃあ、あとでね!」 ママが一足先に裏手から建物に入っていく。
こちらはというと、奥にある建物横手にある駐車場に車を止めて、テクテクと歩いて建物に向かう。
車に乗っていると、さして感じない暑さだが、外を歩くとあっという間に汗ばんでくる。まだまだ暑い。
入り口にさしかかると、黒服2人が吹っ飛んできた。
「歓迎光臨!いらっしゃいませ!」
「お二人ですか?」
「ご予約は?」
「ああ、○○で入れてある。」
「どうぞこちらへ!ご案内します。」
2Fへと昇る階段の両側にはびっしりとお嬢さんたちが並んで、口ぐちに”歓迎光臨”を
繰り返している。めぼしいお嬢さんDJを指差すと後ろからトコトコついてくることになる。
二人して部屋に案内されると、二人にしては結構な広さの部屋。ママさんの知り合い(情夫)としては、アップグレードというところだろうか?
「おっ!たーさん、さすがだな。 もう連れてきてたか。」
「まあ、お約束でしょ。 DJは笑顔が良い子がいいもんねえ・・・」
老板は広東語でおにーちゃんにくだんのママさんを呼んで来いと指示。
連れてきたDJはと言えば、お酒の種類と飲み方を聞く。
この日も、たーさん的白酒カクテル、白酒の干梅入り水割りをあっしの指導のもとにせっせと製作中。
着替えてくるのかと思えば、さっきの格好のまま、マミーの登場。
違いはといえば、トランシーバーとヘッドセットを装備してきたことくらい。
「おう!たーさんが途中で帰らないように美人を確保したんだろうな?」
「もちろんよ。入れてもいい?」
「頼む。」
「さあ、入ってきてー!」
ぞろぞろと10人ほどのお嬢さんたちが登場。
大体、一番目に入ってくる組がマミーの一押しだが、日によっては二軍を最初に持ってくることもあるので、やはりじっくりと気になるお嬢さんとは会話などしながら決めるのが一番いい。
「はーい、それじゃあ・・・湖北省と四川省出身の人、手をあげて。」
5人が手をあげる。この中では、左から4番目の子が一番可愛い。
「ん、じゃあ・・・東北の人、手をあげて。」
あらっ?いない。
「じゃあ・・・湖南省の人は?」
2人が手をあげる。さっきの四川省組と比べると残念ながらちと落ちる。
はて?それでは左から4番目の子よりも、さらに綺麗な右から2番目の女の子は
どこの出身なのだろう?
「えっ・・と、右から2番目のあなたはどこの出身?」
「私は江西省です。」
「じゃ、あなたに決まり!」
老板にはマミーが勝手に選んで隣に座らせ、あとの皆さんはご退場と相成り、それぞれに
DJから酒が回され”乾杯”!
マミーはあっしと老板の真中に陣取り、早速おしゃべりと解説。
「たーさんは左から4番目の子と思ってたんだけど、この子になっちゃったわね。」
「なんで4番目?」
「さっきの子は可愛らしい顔をしてたから、あーいうのが好みかと思って・・・」
「んー、可愛い子同士だとキャラがかぶるから、この子にした。こっちは美人系だもんね。」
「なーる!両方楽しもうってわけか?」
「そーいうわけだ!」
それじゃあってことで、酒が一回りすると早速皆さんのカラオケのスタート。
老板は日本の古い演歌が持ち歌で、日本語はできないくせに発音はやたらいい。
お嬢さんたちも何曲か歌ううちに結構酔っ払ってきている様子。確かに白酒の梅干しカクテルは飲みやすいので、ピッチャーに作り置いたにもかかわらず、消費が早いこと、早いこと。
すでに3本目に突入している。
マミーが一旦席をはずして他の部屋を回り、お客さんへの小姐の差配を終わって戻ってきた頃にはDJも混ざって、サイコロ大会の真っ最中。
ものの一時間半しか経っていないというのに、かくいうあっしも大分飲まされてしまっていてヘロヘロになっていた。
「よう、ママお帰り。」
「あらあ、結構飲んじゃってるのね、みんな。」
「飲んじゃってるよー。来る前に焼酎も飲んでたしね。」
「老板は?」
「えー・・・、ご覧の通りだよ。」
「ダメねえ。お酒飲むと。」
「そうなの?」
「あたしが運転しなきゃダメね、今日も。」
「前も自分で運転するって帰って、3ヶ所ぶつけてたのよ。」
「へええ。高かったでしょ?修理費。」
「みたいよ。」
「おーい、たーさん、そっちの組とこっちの組で対抗戦やろう!」
「ダメそうだねえ・・・」
「でしょ。」
「じゃあ、あと30分くらいでお開きにしますか?」
「そのほうがいいみたい。」
「OK」
「で、どうするの?」
「んっ?」
「さっきのあの女の子のところに行くの?」
「そうだね。荷物も彼女の部屋に置いてあるし。」
「あらあ・・・、手回しいいのねえ。」
「いやいやあ、そんなことも・・・。でももし、ダメだったらママに電話するからさ。按配してよ。」
「いいわよ。でも今の子はお客がついちゃうかもね。」
「今の子は電話番号聞いといたよ。念のため。ダメだったら、もう一回戻ってくるかな?」
「そうして。じゃあ、30分ほどしたら車回して迎えにくるから。」
「OK」
出がけに老板のセカンドバッグを探って、どうやら車のキーを持ち去ったようだが、老板は
まったく気付かない。 これじゃ、ママ以外のカラオケに行った日にゃあ、有り金ばらまいているんだろう。
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