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20201030 吉田一穂の詩について。個人的な感想。

2020-10-30 18:15:50 | 本の要約や感想

20201030


 私は、終夜、遠方に、
 静かな妹を見送る。


吉田一穂の詩「雪」より抜粋

(昭和29年 角川書店発行 昭和詩集から)



私はこの吉田一穂(よしだいっすい)という詩人を知らなかった。
数篇の作品を読んだ感想を書くと、これは良い悪いの評価ではなく私が好きか嫌いかで言うのだが、あまり好きな感じではない。

難しい言葉を探してきて使っているように思えるのと、距離と書いてディスタンス、最弱音と書いてピアニシモと読ませたりと、当時では画期的だったのかもしれないが、その方法が多用されていて、どうもしっくりこない。そのこともあり、また全体の印象としてなんとなく外国の詩集を和訳で読んでいるような感じがするのだ。もちろんこれらすべては私の読み込みと理解の不足だろう。さらっと読んだだけなので。

そのいくつかの彼の詩の中で「雪」という七行の短い作品があり、最後の二行がこのページの冒頭にある抜粋である。私は読んだ彼の作品の中でこの二行に一番心が惹かれた。

厳しい冬、雪に閉ざされた北国の夜、夜通しの道のりを誰かが妹を遠くまで送って行く。その「静かな妹」が生きているのか亡骸なのか七行では判断がつかないが、飾りのない言葉であり、手を伸ばせばそこに妹の身体を感じさせる確かな手応えがある。

とはいえ、私は少し天の邪鬼なので、選び抜かれた言葉を連ねた他の詩に比べて素朴なこの言葉に惹かれたのかもしれない。卑近な例えを書くと、フランス料理を食べて帰宅をし、茶漬けを食べたら感動した。というようなことかもしれない。だから批評はしない。感想であります。

ところが、このページを書くのに何度も読んでいたら、けっこういいな、とも思い始め、もう一篇から抜粋を紹介しておこうか。けっこうというのも失礼か。

それから、一穂先生の似顔絵を描いたからここに貼ろうと思ったのだが、どうせ私の絵です、真面目な先生に怒られそうなので、まあ2,3日してから貼ろうかと、本日は貼りません。


       「死の馭者」から抜粋

 埋れた街々の夜を渉る幽かな鐘の乱打が、
 悶え噎び遠く吹雪の葬列に送られてゆく。




E V O L U C I O



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