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偶然の音楽/ボール・オースター(柴田元幸訳)/p5 感想その2「無意味」

2018-01-21 22:33:17 | 本の要約や感想
感想を書くなどといっておいて筋を追ってばかりいて、まだ感も想もないが、
この小説、少しへんな掴みどころのない感じがあり、どうにも攻めあぐねている。
最後まで読んだとしても、大きな感動があるわけじゃなし、成長があるわけでもなし、
教訓もなし、まして涙で心が洗われるようなカタルシスなんかは一切期待できない。

それなら何があるんだ?

私もわからないから、まだ筋を追っている。

そして話の最初から最後まで払拭できない大きな疑問がひとつあり、それは、
この小説は実は意味もしくは主題がないんじゃないか、というもの。

意味がゼロということはないだろうが、大きな意味の存在をふつうの小説なら
どこかで在り在りと感じるものだが、この小説にその影があるような気がしない。

だから不気味なんだよね。

劇中に登場する人や物もジャック・ポッツィーを除いてそれほど意味を持たされていない。

抽象画家がキャンバスに絵の具を無作為にバシャーッと塗ったくった画に、
あとから評論家が無理無理意味付けをしているような構図を思い浮かべてしまう。

だから私が読んでいる途中で強く思ったのは、

「もしかすると、行き当たりばったりで書いたのではないのか」だった。

いや、もちろんそういった小説の書き方はあるだろう。
主人公の設定を終えたら小説の中でどんどんその主人公が勝手に動き出し、
作者はその姿を書き写すだけ。

まあ実際には「だけ」ということもないだろうが、
今のところそれに近い感触をこの小説に感じている。

これは何々を描いた小説だ、とひと言で言えない気持ちの悪さが残る。

つづく。
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