平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

青天を衝け 第8回「栄一の祝言」~おれはおのが力で立っていた。青い空に拳を立てていた

2021年04月05日 | 大河ドラマ・時代劇
 栄一(吉沢亮)は千代(橋本愛)に旅の途中で岩山に登って見た景色を語る。
「あの空一面の青は苦労しねえと見られねえ景色だ。
 おれはおのが力で立っていた。青い空に拳を立てていた」

 おおっ、だから『青天を衝け』なのか!
 これが作品全体のモチーフ。
 人生を山登りにたとえるのはよくあるが、いかにも青春真っ盛りという感じ。
 若くてエネルギーのかたまりの栄一はまだ見ぬ景色に心をときめかせている。

 千代とは結婚。
 千代に思いを寄せていた喜作(高良健吾)は千代を賭けて剣術で戦い、栄一に判定で勝つが、千代に言う。
「あいつにはおめえのようなしっかり者の嫁がいた方がいい」
 喜作、イケメン!
 まあ、これもよくあるパターンではあるが。

 千代の兄(田辺誠一)に、栄一と千代が結婚の許しを乞うた時はこんな感じ。
「兄ぃ、お千代を俺の嫁に下さい!」
「兄様、千代も……!」
 すると兄ぃ。
「おまえら思い合っていたのか!
 栄一は俺の同志で弟分だ。そういうわけなら認めぬわけにはいかぬだろう」
 兄ぃ、鈍すぎ……。
 長七郎(満島真之介)や周囲はとっくに気づいているのに。

 白無垢を着た千代の嫁入り道中はなかなかよかった。
 沿道で祝福する村人たち。歌を歌う子供たち。
 嫁を迎える渋沢家の者は家の前で待っていて挨拶。
 栄一の母(和久井映見)は千代の手をとって家の中に導く。
 今作はこういう描写をしっかり描くんだなあ。
 かつての風俗・風習がわかって勉強になる。
 ………………………

 慶喜パートは〝茶歌ぽん〟井伊直弼(岸谷五朗)が登場!
 今までの井伊直弼は権謀術数の悪党として描かれていたが、
 今作では、茶や和歌や能の好きな、およそ政治向きでないただの小心な男。
 周囲は大老に抜擢された直弼を「この難局にあたれる器ではない」と陰口をたたき、直弼も「そうだよな」と思っている。

 そんな直弼を抜擢したのは将軍・家定(渡辺大知)。
 抜擢した理由は、
 慶喜(草彅剛)を絶対に将軍にしたくないから。
 直弼なら言うことを聞いてくれそうだから。
 こういう人事っていつの時代にもあるよな。
 天下国民のことを考えるのなら有能な人材を登用すべきなのに、個人の思惑・私怨で人事を行なってしまう。

 小心で器の小さい人物が権力をもったらどうなるか? の歴史的検証でもある。
 直弼は十四代将軍に徳川慶福を据えると、一橋派の粛清を始めた。
 直弼は権力に酔い始めたのかな?
 自分の一言で周囲が黙り、そのとおりです、と言い始める。
 人事も自分の思うがまま。
 徳川斉昭(竹中直人)も松平慶永(要潤)も慶喜も引退・蟄居に追い込めた。

 一方、弾圧すれば、大きな反動・反発が起きるのが歴史の常。
 その反動・反発が怖いから為政者はもっと過激に弾圧する。
 かくして怒りと憎しみの連鎖。
 だから「安政の大獄」
 そして「桜田門外の変」。

 小心で器の小さい人物が権力をもったらどうなるか?
 次回はさらにそれが見られそうだ。


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